22/09/09 16:27:31.27 NKHtlj3z00909.net
取引先の話
彼がまだ若かった頃というから、ずいぶん昔の話だ。
まだペーペーだった彼は、地質調査会社の仕事をしていた。
こう呼ぶと格好良いが、
「要は『山師』だぁね」
ある時、山越えの道路が計画され、峠にトンネルを掘る事となった。
トンネルは一旦、ある沢で地上に顔を出し、直ぐ次のトンネルに続く図面だった。
彼はその建設会社の下見の先導を請け負ったのだが、何分狭い世界の事、その事は山師仲間内に知れ渡ってしまったらしい。
幾日か後、さして親しくも無かった山師仲間の一人が、深刻な顔で彼の自宅を訪れた。
「あの沢だけはやめとけ」
家人にそれだけ言い残すと、プイッと去って行ったそうな。