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橋本吾郎『自殺を買う話』
Ａ氏が、「自殺を買いたい。ただし、善良な人物に限る」という新聞広告を出す
それを見た友人が訳を聞きに行くと、Ａ氏は過去を語り始める
かつて困窮して食い詰めたＡ氏は、自殺を試みたことがあった
すると見ず知らずの男Ｂ氏が現れてＡ氏の自殺を阻止し、「君の自殺を買いたい」と言う
Ｂ氏が言うには、代金はとある名家の令嬢が払ってくれるとのことだった
Ａ氏はＢ氏から指示された通り令嬢の家へ行き、「令嬢に会いたい」と番頭へ告げる
すると番頭はＡ氏のことをＢ氏だと人違いした様子で、「幾ら欲しいか？」と聞いてくる
ここで一か八か、Ａ氏が少し高めの値段を吹っ掛けてみると、番頭の計らいで色を付けた法外な大金を渡される
Ａ氏は悟った
Ｂ氏は令嬢と恋仲だったのだが、それが家の都合か何かで叶わなくなり、この大金は「手切れ金」なのだと
Ａ氏が金を持ってＢ氏の所へ戻ると、Ｂ氏は既に自殺しており、Ａ氏に宛てた遺書が残されていた
Ｂ氏のお陰でＡ氏は生活と勉強をつけることが出来て、後に成功を掴めたのだ
しかし今現在、Ａ氏にもＢ氏と同じような運命が訪れてしまったため、Ａ氏は同じ方法でＢ氏の後を追うことにしたのだ
友人は、ただ永久に売手が現れないことを祈りながら、若しくは、Ａ氏の恋が叶うことを祈りながら、その場を後にするのであった