22/04/20 22:26:54.45 6IYzsthN0.net
登山が趣味の叔父が、懇意にしている人から昔聞いた話ね
その人は登山口で土産物屋をやってたんだけど
おにぎりとかも売ってたから夜明けとともに登ろうとする登山客のために夜明け前から店を開けてた
その日も店の前で団体さんがその時を待ってたんだけど彼らが急にざわつきだして
何事だろうと思って自分も店前に出て行った
みんなの視線の先には土まみれの男が山から下りてきていた
それだけでも異常なんだけどその男は誰かを背負っている様子だった
誰も言葉を無くして動けなかったんだけどその男は店の前まで歩いてくると力尽きて倒れてしまった
それでみんな正気に戻って救急車を呼んで二人を介抱したんだけど
負ぶっていた男の方は気絶していただけだったけれど
負ぶわれていた男の方は全身を骨折していて腐敗臭もひどくだいぶ前に死んだようだった
だから事故で死んだ友人を置いていくのが忍びなくて背負って下りてきたんだろうって話になった
子供や軽い女性を背負って歩くのも実際はかなり大変で同体格の男性ならばその比ではない
その上、足元が定かでない山道、それも夜
登山経験者ならその困難さがありありと理解できて彼に畏敬の念を持った
やがて救急車が到着し救急隊員が応急処置をしていると彼が意識を取り戻して言った
「友人が縄場で落ちて谷に落ちてしまったんです。助けに行ってください」
もう一人いるのか、ってことで登山客や青年団から有志を募ってすぐに救助に向かった
叔父が懇意にしていた人も店を他の人に任せて参加した
一か所しかない縄場に着いて慣れた人が下りて行き
しばらくして転落したであろう場所は見つけたんだけど肝心の転落した人が見つからない
落ちた距離を考えると五体無事だとはとても思えないんだけどその体で山中を彷徨っているらしい
結局、見つからないまま日暮れを迎えてしまいその日の捜索は打ち切られた