18/04/11 23:42:10.77 FlO6sT3K0.net
●R・リンドナー『宇宙を駆ける男』(金沢文庫・1974)
前に図書館で借りて読んだんだけど、ぜひ手に入れたくて30年以上探していた。
ようやく入手できて感激。
精神分析医が自分の扱った患者のことを描いたノンフィクションなんだけど、
何と言っても表題である「宇宙を駆ける男」がエキサイティング。
自分が未来の宇宙のヒーローだと思いこんでいるカーク・アレン(仮名)。
現在に暮らしていながら、自由に未来世界に生きている自分にもなれる。
彼がすごいところは、自分が未来世界で見聞きしたことを膨大な量の記録に
まとめていること。タイプ原稿による1万2000枚の「伝記」。
100ページ以上の人名、地名、用語の事典。82枚の綿密な極彩色の地図。
161枚の建築物見取り図と立面図。18ページの星座系の説明書。
カーク・アレンの支配する王国の歴史が200ページ。さらに膨大な量の論文……
とにかく、とてつもなく壮大な妄想体系を構築してしまっているのである。
リンドナーは表面上、アレンの妄想につき合いながら、些細なミスを指摘することで、
妄想を崩してゆく。ついに妄想から覚めるに至る過程も面白いんだけど、はたして
治療されることがアレンにとって幸せだったのかどうか。