暇つぶし2chat OCCULT
- 暇つぶし2ch92:トおりませんでしょうか? 体調に変化があったりといったことはございませんか? それでは、ここで一つ小休止をとらせて頂きたいと思います。 再開は【20:10】を予定しております……。



93:わらび餅 ◆jlKPI7rooQ @\(^o^)/
15/08/29 22:11:47.43 uO4SmEpe0.net
……時間となりました。
おや? どうやら開始時刻が異空間に迷い込んでしまったようですね……。
それではぺそ ◆qyVZC3tLJoさん、第21話をよろしくお願いいたします。

94:わらび餅 ◆jlKPI7rooQ @\(^o^)/
15/08/29 22:12:43.70 uO4SmEpe0.net
【21話】ぺそ ◆qyVZC3tLJo 様
『家』
今住んでる家のことです。
転勤族なので引越しは多いのですが、今住んでいる物件はかなりいい条件の借家です。
変な時期の引越しだったのによく空いてたな、と思えるほどの綺麗な一軒家です。
しかしハイツなので同じ敷地内に何件かの一軒家が入っている、という環境です。
以前住んでいた家のほうが築年数は遥かに長いのに今の家はちょっと変です。
まず家鳴りがひどい。気温差などでピシッパシッとなることは多いかとは思います。
しかし時間を問わず、常に。特に私が一人でリビングにいるときがひどいです。
そしておそらく・・・います。
階段の途中で気配がしますね。おそらく男性では、と思っていますが。
特に実害もないので共存できるレベルなので時々驚かされても平気です。
リビングにはこれないようで、2階を歩き回ったり(誰もいないときに歩き回る音がするので最初はよく見に上がってました)、時間関係なく玄関がガチャっと音がする程度です。
出て行きたければ出て行ってもらっても構わないんですが、お買いものにでもいってるんでしょうか。
そういえば、主人は2階で寝てるときに私がいないのにキッチンの換気扇が時々回ってる、というのを聞いたことがあるので私がいるせいでリビングにこれないのかもしれないですね。
守護霊がとても強い、といわれたことがあるので。
唯一困ったことといえば、子供部屋で眠れないことです。
どうも行動範囲が階段か子ども部屋が多いらしく、影響してるのかそこで寝ると悪夢をみるか、もう寝れないかのどちらかです。
2階はそこにしかエアコンがないのできついですねぇ。
この話を投下しようか悩んでいるときはラップ音が激しかったです。壁を叩く音もしていました。
ですが、別に悪く思ってないと理解してもらったのか書き始めるとすごく静かになりました。
・・・・・むしろ怒ってるのかな?
おわり

95:わらび餅 ◆jlKPI7rooQ @\(^o^)/
15/08/29 22:13:30.86 uO4SmEpe0.net
21本目の蝋燭が消えました・・・

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猫虫 ◆5G/PPtnDVUさん、第22話をお願いします
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語り部希望は>>1の【準備スレ:2ch.net】へ
雑談、感想は>>1の【雑談スレ:したらば】でお願いします。

96:猫虫 ◆5G/PPtnDVU @\(^o^)/
15/08/29 22:16:02.20 rKZkpF2O0.net
【脳内彼氏】
元カノと同棲していた頃の話。
俺の勤めてた会社と元カノの勤めてた会社は取引先同士で、互いの会社の人間とは幾らか面識があったので、家に帰ってからもよく仕事や職場の話をしていた。
その中でも特によく話題に上っていたのは、元カノの職場の先輩であるYという女性だった。
Yは当時、彼氏のいない30代半ばの独身女性だった。
女性の少ない職場だったせいもあるが、その部署の独身女性はYを含めても四人だけで、うち二人には彼氏がいた。
Yは自分と同じく彼氏のいない唯一の女性とだけ仲良くし、それ以外の社員に対しては男女問わず所謂『お局対応』だった。
ところが、その女性は昔の彼氏とヨリを戻して電撃結婚する事になり、相手の転勤に合わせて寿退社が決まった。
途端にYはその女性と一切口をきかなくなり、挙句に全員参加の送別会では開始五分で帰って場の空気を凍らせたそうだ。
寿退社の一件から半月ほど経った頃、Yは職場の女性達に突然すり寄り始めた。
これまではネチネチと嫌味ばかり言っていたYが妙に優しくなり、女性達は困惑した。
特に元カノのいたグループは何故かYのお気に入りとなってしまい、同期を中心とした若い仲間内でのランチに毎日あたりまえのように同席するようになった。
Yを避けてグループは次第に細分化されていき、二三人ずつの組み合わせで去っていったが、取り残された元カノと通称『天然さん』という女性は最後までYの標的となってしまった。
ある日のランチタイム、天然さんが持ち前の天然っぷりを発揮して、誰も聞けなかった質問をYにぶつけた。
「Y先輩、最近急に優しくなりましたよねー。なんかあったんですかー?」
Yは無遠慮な質問に腹を立てるどころか、待ってましたとばかりに話し始めた。
「やだ、分かる?最近彼氏ができてね、ちょっと幸せオーラ出ちゃってるのかも!」
会社帰りのYをナンパしてきたというその相手は開業医の一人息子で、三つ年下のイケメンなのだそうだ。
やっぱ女性は愛されてこそなんたらかんたらと、Yは昼休みが終わるまで延々と熱弁を振るったらしい。

97:猫虫 ◆5G/PPtnDVU @\(^o^)/
15/08/29 22:18:23.59 rKZkpF2O0.net
それからというもの、Yはランチタイムの度に毎日毎日のろけ話を延々と語るようになった。
いつもプラス思考の天然さんも、さすがにこの事態には相当落ち込み、「ほんとごめんね…私、パンドラの箱を開けちゃったみたい」と元カノに謝った。
毎日飽きもせずのろけ話を繰り返していたYだったが、しばらくすると話の内容に変化が生じ始めた。
曰く、別の男性(イケメン弁護士)からも猛烈なアプローチを受けて二股状態になった、との事。
どっちもすっごい愛してくれてるから選べなくて、などと嬉々として語るY。
無論、内容がどう変わろうとも元カノと天然さんのウンザリ度は変わるはずもなく、二人は作り笑顔を必死に貼り付けた顔で適当に相槌を打っていた。
その空気を感じ取ってか、Yはしきりと「あなた達はどう思う?」「あなただったら何て答える?」などと話を振ってくるようになり、当時の二人のストレスは相当なものだった。
しばらく経つと、今度は四股になりかけて困っていると言いだした。
某俳優と某ジャニーズに似た男性二人から、またしても言い寄られたのだという。
これまでは半信半疑ながらも一応はYの話を信じていた元カノと天然さんだったが、ここにきて「これは明らかにおかしい」と感じ始めた。
次々に繰り出されるYと男達のエピソードも、どんな乙女ゲーだよとツッコミたくなるような内容ばかりだった。
そりゃ、人にはモテ期もあるだろうが、得てしてそれは何らかの変化に伴って始まるものだと思う。
『痩せた』『服や化粧を変えた』『進学や就職などで新しい人間関係が始まった』等、何かしらのきっかけがあってこそモテ始めるものだ。
だが、Yは女性社員へのお局対応をやめた以外、これまでと何ら変わった様子はない。
容姿も『地味』を体現したような雰囲気のままで、相変わらずぽっちゃりをだいぶ通り越してもいた。
勿論そういう女性に目がない男もいるわけだが、ほんの三カ月足らずの間にそういう趣味嗜好をもつイケメン高学歴の男ばかりが突然集まりだすというのは考えにくい。
出会いが婚活パーティーなどであれば多少なりとも話は違うのかもしれないが、なぜか四人ともYをナンパしてきたのが始まりだというのだから、さすがにちょっと無理がある気がする。

98:猫虫 ◆5G/PPtnDVU @\(^o^)/
15/08/29 22:22:17.59 rKZkpF2O0.net
どんな話でも、あまり盛りすぎれば当然ボロが出る。
話が五股になったあたりから、Yのモテ自慢は急激に辻褄が合わないものになっていった。
Aとの思い出が数日後にはBとの思い出に変わっていたり、Cの実家が六本木から代々木に移動していたり、取り繕えば取り繕う程さらに矛盾が増えていった。
Yが今後どう話の収拾をつけていくのか、この頃には元カノも結構面白がっていた。
やがてYは六股目の男を登場させ、その男一人に決めて他の五人とは別れることにした、と言い出した。
広げすぎた風呂敷の畳み方としては悪くない設定だと俺も元カノも思った。
だが、今になって思えば、これこそ彼女が語った唯一の真実だったのかも知れない。
形はどうあれ、彼女はその男に人生を捧げる事になるのだから。
本命を決めたYは、これまでのようにのろけ話を延々と語るような事はしなくなった。
下手に話してボロが出るのを恐れているのかとも思ったが、「彼の事が大事だから、あんまり軽々しく話したくないの」と笑うYは本当に恋をしている顔だった、と元カノは言っていた。
綺麗に化粧をし、明るい色柄の流行りの服を着るようになり、少しずつ痩せてきているようでもあった。
ただ、その一方で何故か仕事のミスが増えていき、上司にこっぴどく叱られる姿をよく目にするようになった。
一度、さすがにちょっと可哀想と思った天然さんが声をかけたらしいが、「いいの、夜になれば彼に会えるから全然平気」と幸せそうに笑っていたという。
本命決定宣言から二カ月もすると、Yは見違えるほど細身になっていた。
だが、目の下には化粧で隠せないほどのクマができ、頬はこけ、どう見ても健康的な痩せ方ではなかった。
同僚達は無理なダイエットや病気を心配したが、Y本人は別にダイエットもしてないし元気だと言って一向に取り合わなかった。
しかし実際、常に上の空でまともに仕事をこなせず、出先で貧血を起こして倒れたりもするような状態だった。

99:猫虫 ◆5G/PPtnDVU @\(^o^)/
15/08/29 22:25:24.17 rKZkpF2O0.net
ある日、事態を重く見た上司に今すぐ健康診断に行けと厳命され、Yは病院へ行くため出勤直後に退勤した。
そして、それきり会社には二度と来なかった。
三日後に上司がYの住むアパートを訪れたのだが、Yはチェーンをかけた状態のドアを少しだけ開けて応対し、近日中に辞表を郵送するとだけ言ってドアを閉めてしまったらしい。
その日の夜に元カノと天然さんもアパートへ見舞いに行ったのだが、どれだけ呼びかけてもYは出てこなかったそうだ。
数ヵ月後、俺と元カノはクリスマス一色になった新宿をぶらぶら歩いていた。
マルイの前まで来た時、「あっ」と小さく叫んで急に元カノが足を止めた。
向こうからふらつきながら歩いてきた女性も、彼女に気付くと同じく足を止め、小さく手を振った。
ガリガリに痩せこけたその女性は、Yだった。
「久しぶりね、元気だった?」
街に流れるクリスマスソングに掻き消えそうな小さな声でYは元カノに話しかけてきた。
仕事で面識があったので俺にも挨拶をしてくれたが、実際ほとんど聞き取れないほど弱々しい声だった。
異常なほど厚着をしているせいで体は膨らんで見えたが、そのぶん骨と皮しかないような顔の異様さが目立っていた。
一体どうしちゃったんですか、体は大丈夫なんですか、今どこでどうしてるんですか、と元カノは矢継ぎ早に質問を並べたが、Yはそれには答えず、うふふと笑ってからこう言った。
「あのねぇ、私、今とっても


100:幸せなの」 「え…あの、幸せって…?」 怪訝な顔で元カノが聞くと、Yは左手の手袋を外して骨ばった手を差し出した。 「ほら、見て。先週もらったのよ。彼、一緒になろうって言ってくれたの」



101:猫虫 ◆5G/PPtnDVU @\(^o^)/
15/08/29 22:28:55.62 rKZkpF2O0.net
Yが嬉しげに右手の指でいじってる左手の薬指には、指輪も何もついてはいなかった。
そんなYの姿に、俺は背筋が凍るような悪寒を感じた。
隣で元カノも絶句していた。
そんな俺達の様子に気付くと、Yは手袋をはめ直しながら真顔になり、「あなたたちには見えないのね」と低い声で呟いた。
一瞬の後、再び満面の笑みをこちらに向け、妙に明るく弾んだ声で続けた。
「いいのよ、私には見えるから。指輪も、彼も、私にはちゃんと見えてるんだもの。クリスマスに彼と一緒になるんだから。もうすぐよ、本当にすぐよ」
じゃあね、と言い残してふらつく足取りで去っていくYの後ろ姿を茫然と見送りながら、元カノはYの言った言葉を反芻した。
「今、『彼も』って言ったよね…」
俺も同じ部分が気になっていたが、元カノには「聞き間違えじゃない?声、小さかったし」と返した。
俺達には見えない『彼』と『一緒』になる、なんて事は考えたくなかった。
その後、Yがどうなったのかは分からない。
Yに会った二日後には元カノと天然さんが再びアパートを訪れたのだが、すでに部屋は引き払われていて空室だったそうだ。
クリスマスから年末にかけては訃報が入るんじゃないかと内心怯えながら過ごしたのだが、結局その後も元カノの会社にそういった連絡は入らなかった。
Yが霊的なものに取り憑かれていたのか、単に正気を失っていただけなのか、今はもう確かめようもない。
ただ、人が短期間でこれほどまで壊れてしまったという事実が俺は本当に怖かった。
【了】

102:猫虫 ◆5G/PPtnDVU @\(^o^)/
15/08/29 22:32:31.66 rKZkpF2O0.net
22本目の蝋燭が消えました・・・

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下級選民 ◆55t.r6W7pAさん、第23話をお願いします
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語り部希望は【準備スレ:2ch.net】へ
雑談、感想は【雑談スレ:したらば】でお願いします。

103:わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ @\(^o^)/
15/08/29 22:34:23.68 uO4SmEpe0.net
【23話】下級選民 ◆55t.r6W7pA 様
『無題』
祖父の七日法要の時の話。
祖父の家は車で40分かかる場所にあり、通夜の日から八泊ほど泊まらせてもらっていたのだが、
俺は朝が弱く、その日も一番最後に起きた。
俺が寝ていたのは仏壇のある部屋の隣で、二つの部屋の横には縁側がある(旧みたいな感じで)。
親が俺を呼んでいたので、リビングに行こうとしたとき、縁側からトトトトトト…と犬が走るような音がした。だが縁側は戸が完全に閉まっていて、猫すらも入ることは不可能だ。
その音は俺のいる部屋の方の突き当たりまで来た後、仏壇の部屋の方の突き当たりにむかって進んでいった。
そして縁側を突き当たりまで行き、また戻り、再び行く…を何度か繰り返す。
ところが、音が仏壇側の突き当たりいったきり、戻ってこなくなった。
気のせいだったのか、と思った俺が向かおうとしたとき、

重い仏壇がガタリと揺れた
【了】

104:猫虫 ◆5G/PPtnDVU @\(^o^)/
15/08/29 22:35:51.56 rKZkpF2O0.net
23本目の蝋燭が消えました・・・

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下級選民 ◆55t.r6W7pAさん、第24話をお願いします
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105:わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ @\(^o^)/
15/08/29 22:37:16.54 uO4SmEpe0.net
【24話】下級選民 ◆55t.r6W7pA 様
『無題』
一人暮らしをしていたある日、深夜に起きると、部屋の中に知らない人が大勢いた
しばらく話をしていたが、朝日が昇るのと同時に意識を失い、次に目が覚めた時に全員消えていた
嘘のようで本当の、夢のようで現実の、とある盆の切ない話です
【了】

106:猫虫 ◆5G/PPtnDVU @\(^o^)/
15/08/29 22:39:24.72 rKZkpF2O0.net
24本目の蝋燭が消えました・・・

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スヴィトリアーク◆lBDllPVzBwさん、第25話をお願いします
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107:スヴィトリアーク ◆CQ0ZL4vfUw @\(^o^)/
15/08/29 22:40:50.74 WCE2gmw+0.net
『公園の怪異』

 こいつは先日、久々に会った大学時代の友人の話。自分の体験談では無いため、そいつの脚色も多少入っている可能性はあるものの、いつも冗談の好きな彼が
この時ばかりは心底嫌そうな表情を浮かべていたのが印象に残っている。

 とある春の日の夜、入社した先の歓迎会であまり得意では無い酒をしこたま飲まされた彼は、千鳥足で帰路についていたそうだ。
「むう、駄目だわこれ。そこの児童公園でちょいと酔い覚まししていくかな」
 あまり規模の大きくない公園に足を踏み入れて年代物のベンチに腰掛けた彼は、ため息まじりで手に持ったウーロン茶のペットボトルのキャップをキュルッと開ける。
 子供たちの歓声に溢れる日中とは異なり、深夜の公園は人っ子一人居ない別世界だ。蛍光管が切れかけてでもいるものか、しきりに明滅を繰り返す街路灯に照ら
された遊具をぼんやりと眺めていた彼は、ふと妙な事に気がついた。
 主の居ないブランコが、春の生温い夜風の中でかすかに揺れていたそうである。
「あはは。風もないのにブ~ラブラ、か」
 酔いのためか若干焦点の定まらぬ視線で、その光景を見やる彼。その時はまだ、彼には笑みをうかべる余裕があったと言う。
 そうしてしばらくするうちに、今度はそのブランコの手前にある球形の骨組みに覆われた回転遊具が鈍い擦過音を伴いながら少しずつ回り始めたそうだ。
「あれれ、今度はあの遊具か。シャフトの軸がどうかしてんじゃないの?あんなのに子供が乗って万が一の事でもあったらどうするつもりだよ。全くお役人ってやつは、
何か事が起きなきゃ重い腰上げねえんだから」
 独り言を呟きながら、それでもなお状況の不自然さを把握しきれていない彼。最初こそじんわりゆっくりとした回転であったその遊具は、あれよあれよという間にまるで
目に見えぬ何者かが勢いよく漕いでいるかの様に、ギュルギュルと力強く回り始めたものである。
「え?まだ酔ってるのか俺…」
 目をこすり、己の頬を平手で勢いよくはたいて見ても、その遊具は自らの回転を止めようとはしなかった。
「ち、ちょっとこれまずいんじゃないの?」
 ようやく我に返って不安に駆られ始めた彼は、震える膝に力を込めて腰掛けたベンチから立ち上がった。
 その時である。

108:スヴィトリアーク ◆CQ0ZL4vfUw @\(^o^)/
15/08/29 22:42:27.65 WCE2gmw+0.net
「ギイギイギイ…ガンッ!」
 彼の間近で更にいきなり、今度は何か重いものでも地面に叩きつけたかの様な派手な音が響き渡った。
「ひっ!」 
 プルシェンコのトリプルアクセル並みの回転速度でその音がした方向に首を向けた彼の視線のすぐ先では、これまた誰も乗っていないシーソーが、
通常ではあり得ない勢いで左右交互に上下運動を繰り返し始めているではないか。
 不気味な叩音は、地面に敷かれたタイルとシーソーの端を覆う金属部とがぶつかり合って生じるそれであった。
「ガンッ!ガンッ!ガンッ!ガンッ…」
 いつ果てるとも無く、夜の帳が降りた公園に不気味な音を響かせ続けるシーソー。
 先ほどまでの酩酊状態はどこへやら、すっかり酔いも覚め切った彼は、叫ぶ事すら忘れて涙目になりながらそのまま転がる様に公園の入口まで
駆けだしたとの事だそうだ。

「ガンガンガンガン!って、ゲッターロボの主題歌みたいだなおい」
 無理矢理冷やかした俺の軽口にも、彼は苦々しげな面持ちを崩さない。
「それでね、這々の体でその公園の入口から出かけた時に初めて、一陣の風が園内の木々の枝を揺らしたと思ってくれよな。そしたらさ…」
「うん、それからどうした?」
 俺の問いにひと呼吸置いて重い口を開いた彼曰く、
「あのさ、確かに聞いたんだよ俺。耳を塞ぎたくなるくらいうるさい木々のざわめきの中で、ほんのかすかに消え入りそうな女の子の声でひと言、『遊んでよ』って…」

【了】

109:スヴィトリアーク ◆CQ0ZL4vfUw @\(^o^)/
15/08/29 22:45:56.96 WCE2gmw+0.net
25本目の蝋燭が消えました・・・

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チッチママ ◆pLru64DMboさん、第26話をお願いします
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語り部希望は【準備スレ:2ch.net】へ
雑談、感想は【雑談スレ:したらば】でお願いします。

110:わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ @\(^o^)/
15/08/29 22:47:12.53 uO4SmEpe0.net
【26話】チッチママ ◆pLru64DMbo 様
『火で焼けた黒い人』
実母の体験談です。
母の実家は昔から地元で有名な大きな農家でした。
母はその末っ子で、母の時代には小さくなっており家族だけになっていました。
大地主の農家の名残で大きな蔵や物置があったそうで、祖父の道楽のガラクタ置場なんかもあったそうです。
母は霊感はなかったのですが、盆と彼岸の時期になると姉妹全員でその日は過ごすようにと言われていたそうです。
ある盆の日に母の持っていた送り火の提灯が突然燃えた事から全てが始まりました。
周囲にいた人たちは騒然となったそうです。7人姉妹の母だけ風もないのに提灯が燃えた事の意味を子供たちだけは知りませんでした。
その日からお守りを持たされ学校の生き返りも必ず姉たちが付き添い、放課後に遊びに行くのも禁止になったそうです。
庭が広かったのでそこで一人で遊んでいると、何か影が見える。
目をこらすとユラユラとゆれて近づいてくる蜃気楼のようだったと。
ただ近づくにつれて「ヴォーヴァー」と小さな音が聞こえてきたそうです。
だんだんとそれが近づいてくるので、母は必死で自宅に戻り祖父に話すと問答無用で塩を頭からかけられ
その足で祖父は外に塩をまきに走って行ったそうです。
次の日に近くの神社で意味のわからぬままにお祓いをされ、数か月は何もなかったそうで皆が安心していました。
母の外出禁止もなくなり友達の家に遊びに行った帰り、とても夕陽が綺麗だったのを覚えているそうです。
帰宅途中のつり橋を渡るときに、急になぜか怖くなってしまったそうです。

111:わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ @\(^o^)/
15/08/29 22:48:09.98 uO4SmEpe0.net
何度も慣れたつり橋でしたが、その時だけは地獄への道のようで渡ると帰れないと感じてしまい
でも通らないと帰れないと涙目で渡って行きました。
足元がガクガク震え、なんとか掴まってわたっていると、突然に前からユラリとあの黒い影が出たそうです。
その時に母は見ました。女性だったそうですが焼け焦げて髪もなく、目だけ穴が開いてお腹が異様にポッコリしていたそうです。
そして母は気絶しました。夜になっても帰らぬ母を心配して地元の人たちが探してくれて母は橋の手前で発見されました。
母は三日目には目が覚めた様子ですが、ただ「ヴァー」と犬のように泣くだけで目も虚ろで、ひたすら水をガブ飲みしていたそうです。
母は記憶を失っており今でも、その間の記憶はありません。記憶が戻ったのは一週間後だそうです。
母がずっと持っていたお守りがボロボロになっていたそうで、一時は地元でも有名になりました。
あの黒い影の正体はハッキリとはわかりません。家が古いので土地で何かあったのか?あの女性は何者なのか?
ただ母だけは盆に送り火禁止となり、毎年一族で行っていた場所に近づくのを�


112:ヨ止されました。 そして、その子である私も近づくことを禁止されており、今では本家の跡取りだけが行っています。 母は記憶がない間に夢を見たそうです。女性の名前も当時は覚えていたそうです。 なんでも愛人の身分で虐げられ、子ができた途端に捨てられてお腹に子がいるのに自殺した女性らしいです。 そして、その女性を捨てたのは私たちの一族の血筋の者。あくまで夢ですが祖父母はその話をきくと激怒したそうです。 夢の中で最初は怖い顔だった女性も、母が延々と「おかーちゃん」と泣いていると、次第に優しい顔になり 慰めてくれたそうです。最後は彼女の腕にいた赤ん坊を抱かせてくれ、母が「可愛いね」と言うと 「お前は許してやる」と言われ、青い花畑を追い出されたそう。 私の母方の身内の男性はいまだに運がありません。それとどう関係あるのかはわかりませんが 真相を知る祖父母も亡くなりました。私も母の実家に近づくと気分が悪くなるので近づきません (終)



113:猫虫 ◆5G/PPtnDVU @\(^o^)/
15/08/29 22:48:53.80 rKZkpF2O0.net
26本目の蝋燭が消えました・・・

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ぺそ ◆qyVZC3tLJoさん、第27話をお願いします
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語り部希望は【準備スレ:2ch.net】へ
雑談、感想は【雑談スレ:したらば】でお願いします。

114:わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ @\(^o^)/
15/08/29 22:49:49.45 uO4SmEpe0.net
【27話】ぺそ ◆qyVZC3tLJo 様
『しなない』
昔から、九死に一生ばかり続いています。
幼少期、3階建てくらいの高さから落ちたのに歯が欠けただけ。
何度も病院で「今日が山場です」といわれたけども、翌日元気に。
車と自転車の衝突事故であと数センチで崖下。
何度も持病で昏倒し、絶対普段人が通らない場所でも発見してもらえる、など。
偶然といえばそれまでなのですが、本当に本当にしなないんです。
関わった人には不思議がられます。
先日たまたま占い師の方に見てもらう機会がありそのとき「守護霊がすごく強いね、しなないでしょ?」といわれびっくりしました。
確かにそうなんです。いわれたからそう感じただけ、とも言えるのですが実際自分自身よく生きてるなとも思うので・・・・。
そういえば小さい時にもなんか言われたことあるなぁと思い出しました。
なにかすごく強いものに守られていると。
偶然であれなんであれ、何かに守られてるのかなと思い日々周りの人、もの、見守ってくれてるモノたちに感謝して生きていたいです。
おわり

115:猫虫 ◆5G/PPtnDVU @\(^o^)/
15/08/29 22:50:37.30 rKZkpF2O0.net
27本目の蝋燭が消えました・・・

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スヴィトリアーク◆lBDllPVzBwさん、第28話をお願いします
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116:スヴィトリアーク ◆CQ0ZL4vfUw @\(^o^)/
15/08/29 22:52:23.97 WCE2gmw+0.net
『事務室に棲む主』

 以前勤めていた会社での飲み会の席上、お世話になったKさんと言う経理課の先輩から教えて貰った、ちょっとした小ネタである。

 時は9月末の決算期、このシーズンになると経理課員も当然仕事に忙殺される。ご他聞に漏れずKさんも、決算書類の処理に追われていた。毎日早朝から夜は他の社員の退社後も
パーテーションに仕切られた個室に籠もり、机上に堆く積まれた収支報告書や各伝票とにらめっこするKさんを見る度に、俺は他人事ながらも軽いため息をついていたものである。
「そんな晩の事なんだけどね…」
 その日もKさんはたった独りで、いつ果てるとも知れないデスマーチの中に身を置きながら悪戦苦闘を続けていた。
「じゃあ悪いけど先に帰るからさ、体壊さない程度に頑張ってな」
 彼の背中に手を置きそう言い残して家路に就く上司の後ろ姿に、聞こえぬ程度の小声で悪態をつくKさん。
「そう思ったら、栄養ドリンクの一本も差し入れて下さいよっつーの…」
 事務所の時計は既に午後10時を回っている。ようやく資料のチェックを追えたKさんは、眠い目をこすりながらも最終計算へと入ったものだ。
 男性にしてはいささか細めのKさんの指に弾かれて、商売道具である算盤の珠が事務室内に軽やかな音を響かせる。
 元々が商業高校出身のKさんは、算盤の技術にはちょっとした自信を持っていた。何しろ「算盤弾きながら生まれて来た」とまで周囲から賞賛されるその腕前たるや、俺がとろとろ
電卓を弾くよりも数倍早く、彼の手にかかると少年ジャンプ程に分厚い資料の山が5分もせずに綺麗さっぱり無くなるくらいである。
 しかしその夜のKさんは、どうやらいつもの彼では無かった模様だった。

117:スヴィトリアーク ◆CQ0ZL4vfUw @\(^o^)/
15/08/29 22:53:53.84 WCE2gmw+0.net
「あれ?」
 単純な加減のみである筈の計算が、何度検算を繰り返してみても弾き出される結果が異なりまくるのである。腕に覚えのKさんのプライドが、この時ばかりは
微妙に揺らぎつつあった。
「いつも通りのありふれた計算のくせ、何で毎回答えが違うんだっけ」
 まだ経理ソフトなど導入されていなかった時代の事である、何度も何度も弾いてはやり直しを延々と続けるKさん。さらにおかしな事には、そうして得られた数値は
検算を繰り返す度に狭まるどころか、振幅が逆にだんだん大きくずれて行く。
 ひと呼吸置いて大きな背伸びの後、再び資料に挑んだものの相変わらず出された計算結果はデタラメな数値を示すだけ…。
「あーもう、やめたやめた。明日仕切り直しをするとして、もう帰るとするか」
 すっかり自棄になり、そそくさとカバンに資料を詰め込んで退社前の戸締まりをするKさん。指先呼称で異状の有無を確認し、事務室の消灯をしてあとは入口ドアの
施錠をするのみであった。そしてドアノブの鍵穴にキーを差し込む段になって、Kさんの耳にはおよそ場違いな「何か」が聞こえたそうである。
「フフフフ…」 
 今しがた照明を落としたばかりの無人の事務室の一角から、悪戯っぽい中性的な含み笑いがドアの隙間越しに響いて来たと言うのだ。
「お、俺一人しかここには居なかった筈だよなあこの事務室…」
 心に広がる不気味な不安を振り払うかの如く、勢いよくドアをロックするKさん。かちりと小さな施錠音が鳴ると同時に、事務室内の奇妙な笑い声もピタリと止んだそうな。
 翌日出社してからKさんが前夜の残り作業を再開すると、今度は一転どうしたものか、初っ端の一発で無事正解が導き出されたとの事である。

「やっぱアレはさ、支社の事務室に憑く得体の知れない何かが俺をからかったんだろうね。そんな事して何が面白いんだっつー話なんだけど、まあ命までは取られないと
思うから良しとしなきゃ、な」
 そこまで一気に語り終えると、Kさんは手にしたグラスの水割りを大きくあおった。

【了】

118:スヴィトリアーク ◆CQ0ZL4vfUw @\(^o^)/
15/08/29 22:55:27.67 WCE2gmw+0.net
28本目の蝋燭が消えました・・・

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猫虫 ◆JmJaz0BtVcさん、第29話をお願いします
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119:猫虫 ◆5G/PPtnDVU @\(^o^)/
15/08/29 22:57:19.30 rKZkpF2O0.net
【ネックレス】
今の彼女と付き合い始めたばかりの頃の話。
とある駅前で彼女と待ち合わせをしていたのだが、その日は時間より早く着いてしまった。
近くに喫煙所があったのでそこで煙草を吸っていると、すぐ近くで黒人男性が露店の準備をし始めた。
並べているのは、カラフルなビーズで作られたネックレスやブレスレット。
どれも鮮やかな原色が多用されており、大ぶりなビーズが多く使われた派手なものばかりだ。
退屈なので横目で品物を見ていると、その黒人が視線に気付いて声をかけてきた。
「オニイサン、見テッテヨ。コレ、アフリカ本物ネ。ケニア、コンゴ、スーダン、イロンナ国ノヨ。安イ安イヨ」
いや俺そんなの付けないし、と断ろうとした時、運悪く彼女が来てしまった。
「お待たせー、あ、カワイイ!」
俺の顔もろくに見ないうちから、彼女の目は色とりどりのアクセサリーに釘付けとなった。
すぐに幾つかのネックレスを手に取ると、置かれた小さな鏡の前で自分の胸元に当て始める。
「最近フォークロアが流行りなんだよねー。私もこういうの一個欲しいなって思ってたんだ」
まずい流れだなと思っていると、案の定彼女はキラキラした笑顔で俺を見つめた。
「買って!」
「やだよ、自分で買え」
「今日、記念日じゃん!買って!」
「何の記念日だよ」
「付き合って、えーと…5週間ちょっと記念日!」
凄まじく半端な記念日を提示され、俺は言葉を失った。
俺の沈黙を勝手に肯定と判断した彼女は、どれにしよっかなーとひとしきり悩んだ後、ひとつのネックレスを手に取った。
「これ…」と呟いた後、笑顔だった彼女の顔から、すっと笑みが消えた。
その瞬間、俺は彼女が別人に変わってしまったかのような感覚を覚え、言いようのない不安を感じた。
彼女はどこかうつろな表情でネックレスを見つめたまま、「これにする。これがいい」と黒人に差し出した。
「アリガトネー、サンゼンエンネー」と言いながら、黒人がネックレスを袋に入れて彼女に手渡す。
正直俺は、このネックレスを彼女に買ってやりたくはなかった。
さっき感じた不安が頭を離れなかったからだ。
だが、黒人に「オニイサン、サンゼンエン」と真顔で催促され、俺は流されるまま金を支払ってしまった。

120:猫虫 ◆5G/PPtnDVU @\(^o^)/
15/08/29 23:02:48.97 rKZkpF2O0.net
「ありがとう、大事にするね!」
そう言って振り返った彼女からは、先ほどの異様な雰囲気はすっかり消え失せていた。
結果的に上手く騙されたような気がしないでもなかったが、彼女はああいう妙な小技を瞬時に繰り出せるほど器用なタイプではない。
あの時の嫌な感じはただの気のせいだと自分に言い聞かせ、「今後、記念日は月一回だけな。それ以上は認めん」と彼女を小突いた。
夕食を摂ろうと入ったレストランで、注文の品が来るまでの暇つぶしに彼女はさっきのネックレスを取り出し、さっそく首に掛けた。
「どう?似合う?」と笑ってみせる彼女は実に嬉しげだったのだが、胸元にかかったそのネックレスをまじまじと見直してから「あれ?」と首をかしげた。
「なんか思ったより地味。こんなだったっけ?」
そのネックレスはバッファローの角を楕円に削った黒と白の大きなビーズの間に、緑と黄色の小さなガラスビーズが交互に挟まれているだけのシンプルなデザインだった。
確かに、これ以外で彼女が手に取っていたのはもっと派手なものばかりだったので、俺も彼女がこれを選んだ時は意外に思ったのだ。
「じゃあ、返品して他のに変えてもらわない?」
怖がらせたくはなかったので理由は明かさず遠回しにそう聞いてみたのだが、彼女の答えは「うーん、まぁシンプルな方が使い回しもきくし、これでいいよ」だった。
まあ、変な感じがしたのはあの時だけだったし、たいして気にするほどの事でもないかもしれない。
ちょうど頼んでいた料理が運ばれてきたのもあって、俺達はそこで話を打ち切った。

121:猫虫 ◆5G/PPtnDVU @\(^o^)/
15/08/29 23:06:02.19 rKZkpF2O0.net
その夜、彼女の部屋で眠っていると、夜中に彼女が突然ガバッと飛び起きた。
その気配につられて俺も目が覚めた。
「何、どうしたの」
眠い目をこすりながら彼女に尋ねると、彼女はしばらく俺の顔を見つめてから「…なんだっけ?」と訳の分からない質問で返してきた。
聞けば、怖い夢を見て飛び起きたのだが、内容をすっかり忘れてしまったのだという。
ああそう、と速攻で寝直す体勢に入った俺は、彼女にぶーぶー文句を言われながらも眠りに落ちていった。
それからほぼ毎日、彼女は悪夢にうなされるようになった。
目が覚めるといつも内容を忘れているのだが、泣きながら目覚めることもあった。
あのネックレスが怪しいと思った俺は、あの日感じた不安をついに彼女に打ち明けた。
「だからさ、やっぱ捨てたほうがいいって。あれ買ってからじゃん、うなされるようになったの」
しかし、俺の主張に彼女は難色を示した。
「あれが原因とは限らないじゃん。違ってたらもったいないもん」
どうしても捨てるのは嫌だと言う彼女と折衝を重ねた結果、とりあえず何日か俺が預かってみることで話が付いた。
俺はネックレスを持ち帰り、彼女がしていたようにベッドの脇に置いて眠ってみたが、特に悪夢は見なかった。
だが、彼女の方は効果覿面だった。
ネックレスを手元に置かなくなってから、悪夢を見る事がなくなったのだ。
明らかな変化に、今度は彼女の方から処分を頼んできた。
彼女は俺が鈍感だから影響を受けないのだと茶化したが、「だからって普通に捨てたりしないで、ちゃんとした人にやってもらってね」と俺の身を案じてくれた。
俺は彼女の言葉に従い、神社で禰宜をやっている知人に処分をお願いした。

122:猫虫 ◆5G/PPtnDVU @\(^o^)/
15/08/29 23:10:04.20 rKZkpF2O0.net
そのネックレスを見るなり、知人は「あー多分これ遺品」と言った。
詳しく話せと言われて経緯を話すと、なるほどねとうなずかれた。
「前に似たようなの預かった事があって調べたんだけど、アフリカとかの貧困地域だと死者の遺品は遺族の大事な収入源なんだよ」
宗教観もあるのだろうが、手元に置いて故人の思い出に浸る事よりも、明日ご飯を食べる事の方がよほど大事なのだろう。
そんなわけで、遺品を安く買い取って物価の高い国に持ち込んで売ってるような露店ってのは結構あるそうだ。
最近だとネットオークションにも多いらしい。
一応「俺が影響を受けないのは鈍感だからですか」と聞いたら、「それもあるかもしんないけど」と大笑いされた。
「まぁ多分、女性の方が影響受けやすいんじゃないかなぁ。霊が憑いてるというより『念が残ってる』って感じなんだけど、そういうのは女性の方が感じやすい。それにこれは女性の持ち物だっただろうから、同性の方が思いを共有しやすいのかもね」
モノが手元を離れれば問題ないとの事だったので、ネックレスだけ供養してもらう事になった。
かくしてアフリカの遺品ネックレスは遥か極東の神社でお焚き上げ供養を受け、天へと還った。
輸入雑貨が持て囃される昨今だが、出処のはっきりしない物を買うという事のリスクを痛感した出来事だった。
【了】

123:猫虫 ◆5G/PPtnDVU @\(^o^)/
15/08/29 23:13:47.57 rKZkpF2O0.net
29本目の蝋燭が消えました・・・

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キツネ ◆8yYI5eodysさん、第30話をお願いします
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124:わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ @\(^o^)/
15/08/29 23:15:13.21 uO4SmEpe0.net
【30話】キツネ様◆8yYI5eodys 様
『回線の向こうの人』
ネットが普及して久しい昨今。
遠くに住んでいる友人や家族と瞬く間に遣り取りができて、いやはや便利になったものでございます。
中には知人のみならず、SNSや掲示板で顔も知らない相手と談笑している方も多いのではないでしょうか。
これは職場の先輩が、数年前に某携帯電話用のSNSで経験した出来事にございます。
そのSNSには「サークル」という機能がありまして、特定の趣味や共通点を持つ利用者が会話を楽しめるのだとか。
ある日、先輩は同じ市内に住む人が集まるサークルを見つけました。
参加者も7名と少なく、2、3日前に立ち上げられたばかり。
のんびり会話を楽しみたかった先輩は、すぐさまそのサークルに参加致しました。
「三毛汰」という女性が主催するそのサークル。
なんとなく居心地が良く、
どこどこの店がおススメといった情報や、
大学の友達が長いこと学校サボってて単位がやばい、
果ては、あそこ幽霊出るらしいよ、
出るって言えば、今包丁で手を切って血がドバドバ出てる・・・等々。
7人の面々が思い思いに取りとめの無い話題で盛り上がっていたそうでございます。
中でも先輩は「三毛汰」さんと気が合ったらしく、相談したり冗談を言ったり。
次第にその気さくな人柄に惹かれるようになったとか。
そんな日々が1か月ほど経った頃でしょうか。
主催者の三毛汰さんがOFF会をやろう、と提案。
日取りもすんなりと決まった頃、三毛汰さんオススメの店があるとのことで、夜、その近くのコンビニ前に集合する運びと相成ったのでございます。

125:わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ @\(^o^)/
15/08/29 23:17:08.79 uO4SmEpe0.net
コンビニ前で待つこと暫く、先輩を含めサークルの面々6人が集まりました。
年の頃は20歳くらいの大学生から30代までの男女。
各々ハンドルネームを名乗り一頻り盛り上がった頃でございましょうか。
三毛汰さん遅いですね、なんて言っていた矢先に先輩の携帯が鳴ります。
見ると、どれは三毛汰さんからのSNS内メールのお知らせでございました。
「先に店で待ってるよ。○○の角を曲がった先の××ビルの4F、『Blue glass』ね」
先輩は集まった6人にその内容を伝え、談笑しながら路地に入っていきました。
街灯が心許なく足元を照らすような路地。
そんな寂れた路地を歩きながら、店なんてあるの?と思い始めた頃。
「ここ……ですかね?」
メンバーの1人が指差します。
皆、つられたように指差したその先を見ると、そこには1件のビルが佇んでおりました。
入口には、なるほど、薄汚れた『××ビル』の文字。
しかし、そのビルには指定された名前の店は疎か、テナントの1店舗も見当たりません。
それどころか、どの窓も光が漏れることなく真っ暗。
廃ビルとしか言い様の無い様相を呈しておりました。
皆で付近を歩いてみますが、『Blue glss』なんて店などございません。
それでも三毛汰さんに会いたいと常々思っていた先輩は、なんとなく彼女に会えるような気がしたそうで、
「ここ、入ってみませんか?」と提案致しました。
が、見るからに不気味な廃ビル。

126:わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ @\(^o^)/
15/08/29 23:19:04.02 uO4SmEpe0.net
年長者の男性から、きっと三毛汰さんに担がれたんだよ、それにこういう所に無断で入るのは良くないよ。
そう、窘められて先輩が徐々に冷静さを取り戻した矢先でございました。

♪♪♪♪~……!!

一斉に、そこに居た全員の携帯が鳴り響いたのでございます。
ビクっ!と身を震わせ、携帯を操作し目に飛び込んできたのは、サークルの解散を伝えるSNSからの通知。
皆、一斉にびくついた顔を見合わせる中。
先ほどの年長者が安心し切ったような顔で、「やっぱり三毛汰さんに担がれてたんだよ」と皆に笑いかけました。
な~んだ、とホッとしたり、悪態をつく面々に気を利かせたのか、年長者の男性が別の店に行こうとしきりに提案。
しかしまあ、三毛汰さんに裏切られたショックや気まずい雰囲気もあってか、その場は解散と相成ったのでございます。
それから1週間ほど経った頃でしょうか。
職場で食事をしていた先輩が何気なく見ていたニュース。
テレビから自分の住んでいる町の名前が聞こえてきました。
珍しいな、なんて思いながら見ていると、映されたのは見覚えのあるビル。
そう、先日サークルの面々が呼び出された、あのビルでございました。
アナウンサーが読み上げる、女性の遺体が見つかった、手首に刃物による傷、死後1か月は経過、1か月ほど前から行方不明になっていた女子大生の△△さんと見て身元の確認を云々。

127:わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ @\(^o^)/
15/08/29 23:20:04.80 uO4SmEpe0.net
唖然とする先輩の横で、ふと、同僚が口を開きました。
「あー、あの子、行き付けのガールズバーに居た子だ。
 なんか客の1人からしつこく付き纏われて辞めたって聞いてたんだけど、可哀想になあ……」
不思議そうな顔の先輩に向けて、同僚は続けてこう言ったそうでございます。
「知らない?※※町の『Blue glass』って店なんだけど」

聞き覚えのある店名。確か、三毛汰さんが指定した店の名前。
慌ててSNSのページを開き、あるページを確認しました。
『三毛汰』という女性のアカウント。
そのページがどうしても見つからない。
それどころか、三毛汰さんと遣り取りしたSNS内のメールやコメントすらも見つからない。
サークルに参加したのは1か月前。
その1か月の間、自分は一体、誰と会話をしていたのか?
『三毛汰』さんの顔も名前も知らない為、先輩はこれ以上は確かめる術もございませんでした。
その後、別の街に転勤になった先輩。
久々に会って酒を酌み交わしていた折のこと、先輩はこの話を語ってくれたのでございます。

128:わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ @\(^o^)/
15/08/29 23:21:30.08 uO4SmEpe0.net
「きっと、亡くなった子が先輩に見つけて欲しかったんじゃないですか?」
何気なく言った私の一言に、いやいや、と先輩は首を振り、
「ビルに言った時点で俺ら彼女を見つけてないだろ?それなのに目的を達したかのようにサークルを解散した」
「はあ…?」
「俺は逆だと思うんだよね」
と言って手近なメモ帳にサラサラと
『三毛汰』
と書きます。

129:わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ @\(^o^)/
15/08/29 23:22:54.84 uO4SmEpe0.net
「つまり俺らに見つけて欲しいんじゃなくて、彼女が俺らの中の誰かを……」
その上にカタカナでルビを付け加えたのを見て、ギョッと致しました。

『 ミ ツ ケ タ 』

どうやら先輩はそのように解釈したようでございます。

今宵お集まりの皆様。
お互いに顔も身元も知らずに百物語を愉しんで居られる訳でございます。
しかし、どうでしょう?
運営や語り部の皆様、雑談スレを盛り上げていらっしゃる名無しさん。
数多くの皆さまが参加しておいでですが、果たして、皆が皆この世に実在する方々なのでございましょうか?
ひょっとすると……この顔の見えない会話の中に、既に幾許かの怪異が潜んでいるのやもしれません。

【完】

130:猫虫 ◆5G/PPtnDVU @\(^o^)/
15/08/29 23:23:42.12 rKZkpF2O0.net
30本目の蝋燭が消えました・・・

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131:スヴィトリアーク ◆CQ0ZL4vfUw @\(^o^)/
15/08/29 23:27:34.39 WCE2gmw+0.net
『蛍狩り』

 晩春から夏にかけての風物詩と言えばズバリ、『蛍(ほたる)』ですよね。
『いきなり何だよその強引な前振りは!』と思われた方、ごめんなさい。
 だけど俺、この小昆虫が好きでしてねえ。夏の夜を彩るあの華奢な容姿からは到底想像出来ないけど、幼虫時にはカワニナとかタニシとかの淡水系巻き貝に手当たり次第
頭を突っこんでは根こそぎ食い散らす、その獰猛さとのギャップがまずたまらない。
 そして成虫期には殆ど餌を口にすること無く、ひと夏の生を終えるってな儚さもまた侘びし気で何とも言えないところである。
 ちなみに聞き慣れぬ響きであるHNの『スヴィトリアーク』ってのも、実はロシア語で『蛍』の意味だったり…。
 無駄話はこのくらいにしておくとして、これからのお話はそんな蛍を愛でるために訪れた山峡の渓流で体験した出来事。

「おーい。高校の頃遊んでた連中集めてさ、お前の帰省祝いにひと晩泊まりがけで蛍見物としゃれ込みたいなって思ってんだけど、どうよ?」
 幼なじみからそんな電話が掛かって来たのは、夏休みに俺が故郷に戻って数日経った頃である。
「そいつはありがたい提案だねえ。しかしさ、足、あるの?」
「俺、この間免許取ったんだよ。それに加えてキャンプ道具も準備万端、心配すんな」
 程無くして、俺と旧友3人を詰め込んだおんぼろハイエースは砂利道の震動に軋んだ悲鳴を上げながら、県境に近い山間の渓流へと赴いたのである。
 蛍の行動が活性化するのはひと晩に三度程と言われている。宵の口と午前0時、そして夜半の午前3時辺りが活発に飛び回る時間帯らしい。そんなタイムスケジュールを
織り込んだ俺らが現地に到着したのは、山の向こうに夕陽が沈みつつある午後7時前であった。

132:スヴィトリアーク ◆CQ0ZL4vfUw @\(^o^)/
15/08/29 23:28:42.51 WCE2gmw+0.net
「まだいくらか明るいうちに準備しちまおうや」
 俺の他3人の友人は、仮に名前をA、B、Cとしておこう。この蛍狩りの発起人となった幼なじみのAはさすがメンバー随一のアウトドア派だ。
手際よく天幕を張って雨溝を掘りペグを打ち、あっという間に宴の場を設営し終えたものである。
 往路の途中で買い込んだおにぎりやスナック菓子へ手を付けるのもそこそこに、俺たちは薄暮の中でようやく互いの再会を祝す乾杯の声を
上げたのであった。
 会話が弾み辺りも闇に包まれた頃、清流のほとりに茂る草木の中で本日の主人公達の淡い光がひとつ、またひとつと瞬き始める。
「お。お出ましになったね」
「一匹光り出すと、次から次へと現れるなあ。まともな一眼レフと三脚でも持ってくれば良かったよ」
 河の面を渡るかすかな涼風に身を委ね、明滅を繰り返しながら闇の中を飛翔し続ける数知れぬ光の粒を目で追う俺たち。
「美しい。これって、最高の贅沢ってやつかも知れねえなあ」
 団扇を扇ぎながら伝法な口調で呟くBに、度の強い眼鏡を光らせながら頷くC。
「うん。確かに都会じゃ滅多にお目にかかれない光景だよね。環境破壊にエアロゾル…」
 そんな幻想的な情景に時が経つのも忘れていた俺たちが腕時計を覗き込んだ頃には、既に時刻は午後の10時を過ぎていた。
 「さて、明日も早いしそろそろおねんねしようかね」
 Aの音頭で皆がテントへと戻ろうとしたその矢先、俺は山の端にポツンと漂う奇妙な光源を認めたのである。

133:スヴィトリアーク ◆CQ0ZL4vfUw @\(^o^)/
15/08/29 23:29:


134:55.96 ID:WCE2gmw+0.net



135:スヴィトリアーク ◆CQ0ZL4vfUw @\(^o^)/
15/08/29 23:31:24.80 WCE2gmw+0.net
 実はこの河では戦国時代にまで遡れる遙か古、道ならぬ恋に落ちた若い男女二人がお互いの身の行く末を儚んで自らの命を絶ったという悲しい言い伝えが…
などと言うありがちな後日談など、これっぽっちも無い。
 あの夜に見たものは一体…。某教授が語る様なプラズマボールだったのか、それともこの世のものならざる何かだったのであろうか。
 それを確認する術を残念ながら俺は持たない。
 あれの正体を知るものはおそらく、漆黒が支配する闇夜の中を無数の光跡を残して舞い続けていた、あの蛍たちだけなのかも知れなかった。

【了】

136:スヴィトリアーク ◆CQ0ZL4vfUw @\(^o^)/
15/08/29 23:32:57.44 WCE2gmw+0.net
31本目の蝋燭が消えました・・・

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suu_o◆QfeyGUP37WSwさん、第32話をお願いします
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137:猫虫(代理投稿) ◆5G/PPtnDVU @\(^o^)/
15/08/29 23:34:52.42 rKZkpF2O0.net
【32話】suu_o◆QfeyGUP37WSw 様
『警備員さんの話』
先月のことなんですが、近くの雑居ビルで深夜にボヤ騒ぎがありました。
警備員さんがすぐに発見し消火に努めたおかげで、被害を最小限に食い止めたと高く評価されたと聞いています。
しかし当の本人は怯えながらもう辞めると連呼していて、様子が尋常でないことから同僚が理由を訊ねたところ、火事自体が色々おかしかったことが分かりました。
まず出火はコンセントを抜いていた機械の内部から起こり、本体は焼け尽きていたそうです。ところがその周囲は、燃えやすいものを積んであったにもかかわらず延焼は無し。
夜勤の見回り中に火を発見した警備員さんは、感知機が作動してないのに気付き、火災報知機を鳴らそうとボタンに指を伸ばしました。
すると報知機からじわじわと五本の指が生えてきて、人差し指を包んだのだそうです。
細く小さい指先に撫でられながらボタンを押すのは、本気で頭がどうにかなるかと思ったとのこと。
炎の熱と煙への危機感から何とか恐怖心を切り替え、消火器ボックスの扉を開けた時。
肌色をした何かがぎゅうぎゅうに詰まっていて、反射的に閉めてしまいました。
とにかく気色の悪さに全身が総毛立ち、後からそれが蠢いていたことに衝撃を受け、自分が逃げ出さずにいるのが不思議なぐらいだったとか。
火を食い止めたい一心で、勇気を振り絞って扉を開けると奇怪な物体は影も形も無かったそうです。
しかし消火剤を散布するあいだもホースをぐいぐい引っ張られたり、揺さ振られて難儀したと。
あまりに気味が悪くて精神的に挫けかけたころ、消防士さんが駆け付けてくれてボヤは鎮火しました。
警備員さんはクタクタに疲れて詰め所に戻る途中、耳元で子供の甲高い笑い声が響き、もう無理だと思ったそうです。
話の顛末を聞いた同僚は、その不気味な存在に怒りを覚え「何だそいつ、腹立つな!」と壁を殴った瞬間。
きゃっ! と声がして、ぺたぺたと逃げるような足音を、確かに耳にしたんだよ……。
と思い出しながら、同僚(=私の勤めるビルの警備員さん)が話をしてくれました。
そこで私が「こんなふうに?」と、書棚をバンッと叩いたところ。
きゃっ!? と机の下辺りで驚いた声がして、ぺたぺた走り去る音が……。
【了】

138:わらび餅(進行) ◆jlKPI7rooQ @\(^o^)/
15/08/29 23:37:01.39 uO4SmEpe0.net
32本目の蝋燭が消えました・・・

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139:スヴィトリアーク ◆CQ0ZL4vfUw @\(^o^)/
15/08/29 23:37:47.49 WCE2gmw+0.net
『河川敷』

「レントゲンとMRIの結果が出ましたよお。こりゃあ頸椎椎間板ヘルニアですね」 
「第5・第6頸椎の髄核…ホラこれね。これが剥がれて神経を潰しかけてるんですよ。症状は結構深刻な部類なんで、出来れば手術の後にリハビリ含めたひと月程度の入院を…」
「ん~、致し方ないですねえ。どうにか早いうちにこれ治したいんで合意しますわ」
 不承不承頷く俺を見た医師はこちらが怯んだとでも思ってか、ニヤリと意地悪気な笑みを浮かべる。
「あ、手術自体はそれほど面倒じゃありませんから安心して。…けどね、少し腑に落ちないトコがあるんですよねえ」
「え?、何でしょう」
 再び眉間に皺を寄せた壮年の医師が言うには、
「いえね、通常ここまで病状が進行するまでにはもっと長いスパンがかかるもんなんですけど…本当に自覚症状が起きたのはたった1ヶ月前だったんですか?他に何か心当たりは無いの?」
「ええ。まあ…無いっちゃー無いっつーかあるっちゃーあるかも知れなかったり…」
 心当たりは確かにあった。整形外科医に語ったところで一笑に付された挙げ句、そう遠く無い精神病院への転院を勧められそうな心当たりが…。
 話はひと月ちょいと前に遡る事にしよう。
 梅雨も終わりに近いその頃、俺は郊外にある二級河川のほとりで孤軍奮闘していた。
 河川管理業者の下請けである伐採屋の友人から極秘裏のうちに頼まれ、本来の仕事が週休であるにも関わらずこの河川敷の雑草刈りに駆り出されていたのだ。

140:スヴィトリアーク ◆CQ0ZL4vfUw @\(^o^)/
15/08/29 23:39:07


141:.13 ID:WCE2gmw+0.net



142:スヴィトリアーク ◆CQ0ZL4vfUw @\(^o^)/
15/08/29 23:41:07.34 WCE2gmw+0.net
 それから二日と経たぬうちに、俺の左肩を名状し難い感覚が襲った。
 左首筋から肩胛骨にかけて、肩こりにも似た鈍痛が支配し始めたのである。
「久々の草刈りで疲れが出たのかね?それにしちゃあイヤな痛みだな、取りあえず湿布でも貼っとこ」
 その痺れを伴う感覚は二の腕を経て肘を経て、またたく間に左手指の先端にまで降りてきた。
 多忙な日々に追われつつ、それでもまだ「どこ吹く風」とばかりに暢気な俺。その後も病状は改善を見せず、遂には肘から先は痺れを通り越して千枚通しを刺されても何も感じぬ神経マヒ、
それとは逆に寝返りどころか仰向けに寝ても耐えられぬ程の激痛が左肩を蝕んだ時点で初めて、俺は冒頭の整形外科へと赴くために重い腰を上げたのである。
 先生の執刀は完璧だったものの、何故か術後の経過がよろしく無い。ガラパゴスゾウガメの歩みにも劣る回復速度。リハビリに至っては、術後二週目を過ぎてもたかが1㎏程度の鉄アレイ
ですら30秒垂直に掲げるだけで額に脂汗が滲む体たらくである


143: 「先生も首傾げてましたよ。困りましたねえ」 「実を言うとね、あんたと別れる日を迎えるのが辛いからこうして居座ってんのさ」  すっかり気のおけぬ会話を交わす仲となった看護師の娘にそんな冗談で応じてはみたが、心中ではどうしようも無くいらついていたものだった。  入院してから三週目を数えた頃だろうか。病室の窓を叩く夜半の風雨と雷鳴の音で俺はまどろみを侵された。かねてから囁かれていた台風擬きの爆弾低気圧が、どうやらこの地を直撃した 模様なのだ。  窓ガラス越しに時折瞬光する稲妻に照らされながら、今まで左肩を痛めつけていたものがスッと何処かに昇華していく感覚を、真夜中のベッドの上で俺はかすかに、しかし確かに感じたものである。



144:スヴィトリアーク ◆CQ0ZL4vfUw @\(^o^)/
15/08/29 23:42:15.77 WCE2gmw+0.net
 何のはずみかどうした事か、そこから先の事態は目を見張るばかりの急転直下、俺の体調はそれまでの雌伏の期間がまるで嘘であるかの如くメキメキと快方へ
と向かっていった。 首を傾げて左肩に耳をつけたら「メキメキッ!」ってな音が聞こえたくらいである、ウソだけどw
「一週間前の握力測定左腕18㎏の人が今日は56㎏って…どういう事です?」
「何て言うか、あんたの可愛い顔もいい加減見飽きたからねえ」
 それから程無くして、俺は病院を辞した。退院したら、手に掛けたあの日本人形を手厚く葬る…ってワケでもないけど、せめてちゃんとした所に持ってって供養したい
とも思い彼の地に向かったのだが、それは結局叶えられぬ願いとなったものだ。
 近所の婆さん曰く、件の河川敷はどうやら丁度あの夜の豪雨で氾濫し、ほとりにあった刈草を初めありとあらゆる岸辺の雑物を綺麗さっぱり流し尽くしてしまったみたい。
 久々に訪れた俺を迎えてくれたその河は、付近数十戸を床上浸水に巻き込んだとされる鬼の形相はどこへやら、ゆるい陽光を浴びながら長閑に水浴びを楽しんでいる
数羽の鴨をその面に抱きつつ、さわさわと流れ続けているばかりであった。
 
 長々と書き連ねたけど、『後日思い返してそう言われてみれば…』的な思い込み以外の何物でも無いよね、人間ってもんはひとつの事象を何かと己の因果にこじつけ
たがる生き物だし。
 けどさあ、やっぱ時々思うんだよ。あの人形、今どこに居るのかな?大海に辿り着いて紺碧の波上に漂っているのかな?それとも下流の澱みに引っかかりながら濡れ
そぼった目で未だにこっちを恨めしげに見つめているのかな?ってね…。

【了】

145:スヴィトリアーク ◆CQ0ZL4vfUw @\(^o^)/
15/08/29 23:43:00.27 WCE2gmw+0.net
33本目の蝋燭が消えました・・・

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NNN ◆fRBuZwgwpさん、第34話をお願いします
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146:猫虫(代理投稿) ◆5G/PPtnDVU @\(^o^)/
15/08/29 23:44:32.39 rKZkpF2O0.net
【三十四話】NNN ◆fRBuZwgwp 様
『無題』
20年くらい前の出来事です。
夜寝ていて、ふと気がつくと妙に体がこわばって、動こうとしても
どうにも動かすことができません。
これはもしかして金縛りというやつか?と思い、隣で寝ている夫に
助けを求めようとしましたが、声も出せませんでした。
以前、金縛り中に目を開けると、傍らに落ち武者が立って睨みつけて
いる、とか、老婆が斧を振り上げている、とか聞いたことを思い出し、
目を開けるのも怖くてそのままじっと、金縛りが解けるまで
我慢するしかありませんでした。
どれくらい時間がかかったかは覚えていませんが、ようやく動けて
声も出せるようになったので隣の夫に、今金縛りにあって、呼ぼう
としたんだけど声も出なかった、と伝えると、なんと夫も私と全く
同じ状況だったとのこと。
夫も私も全く霊感はなく、不思議な体験は後にも先にもこれだけです。
当時アパート住まいで、隣がお寺だったので、そこから何かが私たちの
上を通過していったのかな、と今でもそう思っています。
<終了>

147:わらび餅(進行) ◆jlKPI7rooQ @\(^o^)/
15/08/29 23:48:03.39 uO4SmEpe0.net
34本目の蝋燭が消えました・・・

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【35話】デッドエンド ◆JY70SElFKIさん、第35話をお願いします
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148:わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ @\(^o^)/
15/08/29 23:49:08.94 uO4SmEpe0.net
【35話】デッドエンド ◆JY70SElFKI 様
『壁越し』
私が昔住んでいたマンションでのことです。
ことの発端は、ある日の朝TVを観ながらダラダラとしていたら、ベランダの方から焦げたような臭いがしてきました。
なんだろ?と思い見てみると、何かが燃えたカスがありました。
私の住んでたマンションは7階建ての7階です。放火?ビックリしたのと怖いので警察に連絡し現場を見てもらいました。
そして、燃えカスの中に見覚えのある赤いテープをみつけ、つい最近ベランダに設置してあるガスの箱のようなパイプの付いたなんかうまく説明できないけど、それを全室新品に交換する工事があり、それに巻いてある
やつだと思いますと警察の方に説明しました。
すると警察の人はベランダから両隣を除き家の中に戻ってから小さな声で「おそらくこちら側の人やと思います。
水面下で調査しますのでなんかあったら直ぐ連絡して下さい」と言い燃えカスを持って帰って行きました。
そして管理会社に電話して事情を話すと「犯人は?隣の人でしょ!」と、なぜそう言うのか私は不思議に思いましたけど、その後直ぐに管理会社の人が隣の人のとこに来て数か月分の家賃を払ってくれと催促したことで
なんとなく理解しました。

149:本当にあった怖い名無し@\(^o^)/
15/08/29 23:49:57.33 eAXrYNbH0.net
1/3とか書いてほしいんだけど

150:わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ @\(^o^)/
15/08/29 23:50:02.04 uO4SmEpe0.net
その後、隣人は部屋の中で毎日荒れていて、夜になると女の人のすすり泣く声とそれに話しかける男の人の声が聞こえて複雑な気持ちになりました。
ある日、壁にもたれてTVを見ていたら、ドンッ!と爆発した音と衝撃があり部屋が揺れました。
ビックリしたもののしばらく様子をみてなにもなかったので通報はしませんでした。
ところがそれからしばらくしたある晩、ベットに入り寝ようとしていたら、やけに隣が静かでふと隣の人死んだんかなと思いました。
で、眠りに落ち急に目がパッと覚め部屋の空気が生温かく異様なことに気づくと同時に人の気配も感じました。
怖いけど枕から少しだけ離れるか離れないかくらい頭を持ち上げチラっとみて布団をかぶって目をつぶりました。
灰色のズボンを履いた男の人が立っていたんです。もう言葉にならないくらいの恐怖で逃げたくても逃げれない。
ジッとしていると、気配が消えた!今や!とベットから飛び出そうとした瞬間、バンッ!とその男の人の両手が私の両足を叩きつけました。
もうパニックになった私はワーなのかギャーなのかわからない声を出しながら跳び上がり部屋中の電気という電気を無我夢中で付けて回り朝まで眠れず、昼前頃、経験したことのない臭いがしました。
なんの臭いかと思っていたら、マンションの廊下から「早く来て下さい!」「たぶん死んでます」「この部屋の◯◯さんやと思います」と電話してる人の声が聞こえてきました。
その数十分後に警察や鑑識の人が来て話をしました。
警察の方の話では部屋に灯油を撒き火


151:を点けたが失敗に終わり、結局のところ隣人の死因は餓死で死後2週間くらい立ってますとのことでした。 警察の人達はよく火事にならなかったもんやと首を傾げていました。 昨日まで私が聞いていたあの声は一体なんだったんでしょうか?流石にそれは警察には言えませんでした。 終



152:わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ @\(^o^)/
15/08/29 23:51:26.38 uO4SmEpe0.net
35本目の蝋燭が消えました・・・

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未帰還 ◆H3nLk5uPzさん、第36話をお願いします
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153:猫虫(代理投稿) ◆5G/PPtnDVU @\(^o^)/
15/08/29 23:52:24.29 rKZkpF2O0.net
【36話】未帰還 ◆H3nLk5uPzc 様
『呼吸』
私が小学生の頃、曾祖母が亡くなった時の話です。
母方の曾祖母が亡くなったという報せを真夜中に受け、母の実家に急遽帰省する事になりました。
親戚はとても多いのですが私達は親戚の内では近くに住んでいたため私達より早かったのは伯母の家族だけで、母の実家の大きな家にはあまり人が居ませんでした。
両親とともに顔布を掛けられた曾祖母と対面したのですが、恥ずかしながらその頃私はまだ「死」というものを理解しておらず、何故曾祖母の顔を隠すのか分かりませんでした。
その後集まってくる親戚の出迎えなどで家中が忙しくなり、とんでもない話ですが曾祖母の部屋に小学生の私一人しかいないという時間がありました。
なんとなく「今は大人しくしていなければならない」というのは伝わっていたので、悪戯するような事はありませんでしたが。
その時、私は曾祖母の顔に掛けられた布が、曾祖母が呼吸しているかのように上下に動いているのに気付きました。
しかし「死」を理解していない私はその事を特に不思議には思わず、ただ「自分が吸って吐くのと、ひいばあちゃんが吸って吐くのが一緒だな」と考えていました。
そんな不自然な一致や、真夜中だった事から今考えてみると、単にうとうとして夢を見ただけだったのかもしれません。
ただ、戻ってきた両親に「顔布が乱れている、悪戯するな」としこたま怒られて、「自分は悪くない」とかなんとか泣き出してしまったのは覚えています。


154:わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ @\(^o^)/
15/08/29 23:54:46.28 uO4SmEpe0.net
36本目の蝋燭が消えました・・・

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スヴィトリアーク◆lBDllPVzBwさん、第37話をお願いします
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155:スヴィトリアーク ◆CQ0ZL4vfUw @\(^o^)/
15/08/29 23:57:42.11 WCE2gmw+0.net
『誘(いざな)われたら気をつけて』

 俺はかつて駆け出しのライダーだった頃、地元のバイクショップが主催するツーリングクラブに所属していた。そこで俺はバイクのメンテナンスやツーリングのノウハウを
諸先輩の皆様に色々と叩き込まれたものだ。そうした先輩の一人にNさんという方が居た。
 飄々としたいでたちのそのNさんはひと口で言えばホント『いいひと』。
 つまらない相談にも笑顔で接してくれる上に、クラブの新参者で年下で、しかも中型バイクまでしか乗れない俺にすら、いつも敬語で受け答えしてくれたものだ。
 とある春の日に、ショップのテーブル越しに彼が語ってくれたのが以下のお話。

 大型免許取りたてだった頃のNさんは、1週間程度のスケジュールで東日本をのんびりと旅した事があったらしい。そして道行きには、彼の友人の住む地に立ち寄り旧交を
温めるというプランも含まれていたそうだ。
 それは、まさにその旧友の実家に立ち寄らんとしていた時の出来事であったと言う。
 盛夏の深夜、Nさんを乗せたカワサキGPZ900Rは、心地良いエキゾースト・ノートを奏でながら緩やかなカーブの続く路上を疾走していた。
 開通したてであるとのその道路は、路面の各種表示も綺麗に真っ白真黄色、アスファルトはひび一つ無い濡れ羽色、雨でも降れば湯気のひとつも立ちそうなそれこそ文字
通り


156:の『ヴァージン・ロード』だったそうだ。自然とNさんの心も躍る。 「気持ちのいい道だなあ。この分なら早朝にはあいつの街に着けるかもな」  その時、Nさんの目には前方で扇状に揺れる赤い灯が見えた。  細かく点滅する光源に近づくにつれ、それが道路工事における片側一車線規制の交通誘導員が振る誘導棒の生み出す赤色灯である事が判ったNさん。  ちなみに『片側一車線規制』とは、中央線を挟んで上下を通過出来る車両が一台分ずつの道路の片側どちらか一方で路面工事などの作業が行われている場合、作業中の 車線を通過しようとする車両をとうせんぼしてから反対車線の交通状況を確認後、一時的に反対車線での通行を促して工事区間終了後に本来の車線へと復帰させる規制の 事であるッ!…って、頭じゃ判ってても文字に起こすと何言ってるのか判んない状況ですね。ですからあんまり鵜呑みにしない方がいいです、責任持てませんので…閑話休題



157:スヴィトリアーク ◆CQ0ZL4vfUw @\(^o^)/
15/08/29 23:59:20.73 WCE2gmw+0.net
「開通してさほど経って無いってのに、この真夜中に保守作業か何かかな…大変だなあ」 扇状に振られていた手の動きを止め、頭上に誘導棒をピタリと静止させた誘導員の数メートル手前まで
徐々に減速してゆくNさん。それに伴い愛車GPZのエンジン音も、まるで鍋物でも煮ているかの様なアイドリング時のそれに変わってゆく。
 そんなNさんに今度は深々と頭を下げる誘導員。
 バイクを停車させたまではよかったものの、Nさんはちょいと首を捻った。
 それも当然、通常ならば派手な注意標識や進路指示灯、そして何よりも五月蠅い作業音がこれでもかとばかりに自己主張する工事現場が前方に見える筈であるのに、そこには静寂に包まれた
深夜の暗がりしか広がっていなかったわけなのだから。
「してみりゃ、誘導員の前に『○○メートル先工事中』の看板、あったっけか?」
 そんなNさんの心中を知ってか知らずか、今度は誘導員は頭上にかざしていた誘導灯を自分の体と平行に、下半身沿いの半弧を描く形で進行方向へと向けて何度も何度も振り流す。これは
常識的に考えると、勿論『青信号』と同等の意味を有するジェスチャーだ。
『え、いいの?対向車両はまだ一台も通過して無いんだよ。いいの?』
 前方を指さしながらフルフェイスのバイザーを開き、アイコンタクトを試みるNさん。 誘導員はそんなNさんを一瞥し、薄明かりの下でその表情までは窺い知れなかったものの、確かにこくりと頷いた。
「本当にいいのかなあ」
 納得いかぬ気持ちのまま、Nさんのバイクは対向車線へと躍り出てゆく。
 走り出してから十数秒、左車線をいくらチラ見しても相変わらず工事の『こ』の字も窺えない。ただのっぺりとした路面だけが、青白い道路照明灯にぼんやりと照らされているのみである。
 不可解な誘導員の存在に対する疑念が心中を支配していたせいか、Nさんの集中力は若干弛緩していたのであろう。けたたましいクラクションの響きでふと気がつくと、彼の僅か前方には猛然と
迫り来る一対の馬鹿でかいヘッドライトが目映い銀光を放っていた。

158:スヴィトリアーク ◆CQ0ZL4vfUw @\(^o^)/
15/08/30 00:00:24.13 ujnfAOrg0.net
「…うぉっ!」
『視覚情報が脳みそに届く前に、反射的に舵切ってました』とは後日のNさんの弁。間一髪で本来の走行車線へ流れた彼をあざ笑うかの如く、轟音と共に傍らをすれ違ってゆく大型貨物…。
「あのまま行ってたら、逝ってたわ。しかしあの立ちんぼ野郎、どこの誰だか知らないがこんな辺鄙な山ん中でタチの悪い悪戯しやがって…」
 本来は温厚である筈のNさんの怒りは、翌日彼の友人に会うまで治まる事は無かったそ
うだ。
「…しかしな、お前の『こっち来る時はこの道来いよ。出来たてのホヤホヤだから走り心地いいと思うよ』ってな台詞を真に受けて、えらい目に遭いそうになったぞ」
 Nさんの愚痴をひと通り聞いていた彼の友人は、一部始終を聞き終えて口を開いた。
「悪い事したなあ。お前が言ってたその場所で、ちょうど開通する一年ほど前に工事作業車の誘導してたおっさんが、よろけたはずみでダンプに巻き込まれちゃったんだそうだよ。炎天下の
誘導だったから頭がボーッとしちゃってたのかもって事で、現場の安全管理ミス含めてこっちじゃ当時、さんざんニュースで取り上げられてたもん。それかもな」
「それかもなってお前、あっさり…ってか、それ知ってたんなら何でそんな道を俺に!」「仕方ないだろ、俺だってそんなもんが出るなんてのは初耳だもの。しかしまた何でだろうね、昔の現場が
懐かしくて出ただけならともかくその誘導員、ひょっとしたら寂しくてお前をこの世じゃないどこかへ誘導しようと…」
「やめてくれよお…」
 先程までの腸の煮えくり返りもどこへやら、終いにはすっかり涙目のNさんだったそうで…。

159:スヴィトリアーク ◆CQ0ZL4vfUw @\(^o^)/
15/08/30 00:01:52.63 ujnfAOrg0.net
「…それでですね、俺ってビビリなもんだから、帰りは不案内ながらも別ルート駆けて来たんですよ。そこでもかなり怖い思い、しましてねえ」
「そいつは大変でしたねNさん、口調が稲川淳二ですよ。それからどうしました?」
 そこまで話し終えた後、トレードマークのバンダナ頭を掻くNさんのネクスト・ストーリーに更なる興味が湧いた俺。
「別ルートも同じく深夜走行を余儀なくされたんですよ。そしたら漆黒の闇の中、延々と砂利道の続く九十九折れの山道でしょ…ちょっと気を抜けば谷底ですよ、谷底!ようやっと
舗装路に出たら今度は対面から威勢のいい四輪の走り屋どもが中央車線はみ出して特攻紛いのコーナリングして来るしで、あの晩何度死にかけましたかね俺」
「…ひょっとして、今ここにいるのは本当に生きてるNさんなんですか?はははは」
 おちゃらけてテーブルの下を覗き込み、足の有無を確かめる素振りの俺にNさんは少し唇の端を歪める。
「笑いごとじゃありませんよ。ホントにあの誘導員、どうせなら他人の迷惑顧みねえあの走り屋どもの前に化けて出て、奴らをまとめてあの世へいざないやがれってんだよ。使えね
野郎だぜ、全く…」
『Nさんのその喋り方、面前で初めて聞いた!』
 前半と後半との彼の口調の見事なギャップがやたらと可笑しかった半面、ちょっとNさんの本性が垣間見えてどことなく怖い気がした春の夕暮れだった…。

【了】

160:スヴィトリアーク ◆CQ0ZL4vfUw @\(^o^)/
15/08/30 00:03:28.73 ujnfAOrg0.net
37本目の蝋燭が消えました・・・

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チッチママ ◆pLru64DMboさん、第38話をお願いします
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161:猫虫(代理投稿) ◆5G/PPtnDVU @\(^o^)/
15/08/30 00:04:54.26 slHZZ5U50.net
【38話】チッチママ ◆pLru64DMbo 様
『子供の記憶』
うちの子がお腹にいた時から不思議な体験をしました。
めったに雪の降らない土地に雪が降った日、どうしても用事があった私が車で出かけました。
交差点の信号が青だったのですが急にお腹が張り、ブレーキをかけて停止した瞬間に
信号無視で雪で滑った車が勢いよく目の前を通過しました。
停止していなければ衝突していたでしょう。
子が生まれてからもドライブ中、機嫌が良かった娘が突然泣き出しました。
唐突でビックリして路肩に止めた瞬間に対向車のトラックが横道からきた乗用車と衝突しました。
部品はこちらに飛んできましたが停止していたために巻き込まれずに済みました。
そもそも、この子の出産は大変で本当に命の危険がある難産でした。
医者からも覚悟をして欲しいと言われ、万が一を考えた対応で出産に挑みました。
その時点で私はすでに虫の息で必死で我が子を出すだけで意識を繋いでいました。
酸素マスクを口につけられ、数々の点滴や機械に繋がれ、暴れないようにと手足を固定されての出産。
出産中に私意識を失い、どうも生死の境をさまよい、世で言う三途の川に行った様子です。
川ではなく光の集合体が暗い闇の中で川のように真横に流れていました。
フワフワとホタルより大きく、けれど暖かみのある光が周囲に幾つかフワフワと舞っていました。
川の向こうで亡くなった祖母を見つけ、私はただ嬉しくて「おーぃ」と手を振ったのです。
すると祖母は険しい見た事もない顔でこちらをにらみつけ、何も言わずに手でシッシッとあしらわれました。
シッシッって犬かよ!!と私がイラついた瞬間に小さな、でもはっきりした声で
「おかーさーん」って声が聞こえて目が覚めました。
婦長さんが私にまたがって私の頬をたたきがら「目を覚ましなさい」と叫んでいました。
そしてなんとか出産もできましたが、子はとても小さな子でした。

162:猫虫(代理投稿) ◆5G/PPtnDVU @\(^o^)/
15/08/30 00:09:43.71 slHZZ5U50.net
私には霊感がありませんが、霊を否定する気もありませんでした。
ですが子が3歳程度になるまでは、見えない場所と会話をゴニョゴニョとしていたり手を振ったり
娘の写真に光が写っている確率が高かったりと色々と迷いました。
今でも娘の小さい頃の写真には、そんな不思議なモノが写っています。
持っている石が人の顔だったり、撮った背景の鏡に見知らぬ老人がいたりです。
3歳程度の時に娘とお風呂に入っていると娘が急に言いました。
「お腹の中でおかーちゃんの声きいてたよ?はやく会いたかったんだよ。
あのね、お空でどのおかーしゃんにするって時に、おかーしゃんがいいって思ったの
ずーっとお腹でここにいるよーってキックキックしてたんだよ」
それからも不思議な事は保育園時代まで続きました。
保育園に珍しく行きたくないと言った日は近くの山が家事になったり
あのトンネルは嫌と行った次


163:の日に、そのトンネルで事故があったり。 ですが小学校に入る頃には収まり、今では怖いテレビを見て「キャー」なんて言ってます 今では普通の子ですが、親としてはこの方が安心できます (終)



164:わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ @\(^o^)/
15/08/30 00:11:59.20 AgCPeYID0.net
38本目の蝋燭が消えました・・・

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165:スヴィトリアーク ◆CQ0ZL4vfUw @\(^o^)/
15/08/30 00:13:17.69 ujnfAOrg0.net
『鏡よ鏡よ鏡さん』

 学生だった当時、某サークルでの会報作成に忙殺されていた頃の話だ。
 夕暮れのサークル室、同期のY子と二人きりで与太話をしながら作業を進めていたのであるが、どんな経緯を経たのかは失念したものの、やはり話はそっちの方向へと…。
「小学校の頃なんだけど、私、変な目に遭っちゃってさ…」

 彼女の実家は信州だったか甲州だったか、とにかくその辺りだとの事。勿論彼の地でも神社の縁日ともなれば沿道に露店が軒を連ねるワケで、その晩は当然お祭り好き
のY子も兄と連れだって賑やかな人混みの中にいた。
 さっそく輪投げに興じ始めたY子の兄であったが、何度投げても狙った的に嫌われるばかりで持ち輪はどんどん少なくなってゆく。
 そして業を煮やした挙げ句に気合いを込めて放った最後の一投は、ようやく彼の執念が通じたものか、狙いは外したとは言えとある景品の台に見事すっぽりと収まった。
「つまんねえなあ。こんなの、俺使わねえからお前にやるよ」
 狙っていた超合金のおもちゃを取りそこねていささかご機嫌斜めの兄がY子に手渡したその景品とは、『ひみつのアッコちゃん』の商売道具でお馴染みの丸形コンパクト
ミラーだったのである。
「やたっ!ありがとう兄ちゃん」
「知らない誰かが使った鏡を貰うのって、お婆ちゃんあんまり感心しないねえ」
 家に戻って家族に件の戦利品を見せるや否や、彼女の祖母は眉を顰めてそう呟いた。
 そのコンパクトは直径6㎝程度の年季物ではあるものの、いわゆる『いい仕事してますね』的な完成度を誇る、素人目に見ても極上の一品だったと後のY子は述懐する。
 微細なエングレーブで縁取られたその上蓋の面には薄紅色に咲き誇る夾竹桃の周りを舞う蝶の群れが、精緻を尽くした螺鈿細工の技法により美しく描かれている。そして
金粉の散らされた裏蓋にはススキの穂を思わせる放射状の飾り絵の中、元の持ち主の名前と思しき草書体の文字が彫られていた。
 何れにしろ、およそ露店の香具師が子供騙しのアイテムとして扱う様な代物では無い。
 信心深かったとのY子の祖母は、なおも心配げに小さく囁く。
「今からでも遅くないよ。返しに行った方がいいんじゃないかえ?」
「いやだもん。古道具屋さんから買ったと思えばいいじゃない!」

166:スヴィトリアーク ◆CQ0ZL4vfUw @\(^o^)/
15/08/30 00:15:16.03 ujnfAOrg0.net
 翌日からY子はそのコンパクトを肌身離さず持ち歩き始めたと言う。学校では先生に見つからぬ様に休み時間ともなればこっそりとそれを取り出し鏡に映る己の顔を飽きもせずうっと
り見つめ、放課後はそれを繰り返し友達に見せびらかして…という具合。
 照れくさ気に頬を掻きながらの彼女曰く、
「ちょっと大人になったかな?みたいな気にさせてくれたあのコンパクトに、何て言うか、情が湧いちゃってねえ」とか。
 やがてY子がコンパクトの異変に気づくのには、さほどの日数を要しなかった。
「あれっ?」
 その日もいつも通り鏡の中の自分に見惚れていた彼女であったのだが、ひと重で自他共に認めるドングリ目玉である自分の目がほんの一瞬、二重で切れ長のそれに見えたのだと言う。
 そしてまたある時は自分の背後に吊されているカレンダーの文字が、普通であれば反転されるはずであるのに当たり前の表示のままで鏡には映っていたりして。
 何れの場合も共通するのは、ハッとして鏡を二度見した時にはいつも同様に普通の映り具合に戻っているという事であった。
 一度であれば見間違いと言う事もあろう。しかしそれが二度三度と続くとなると、さすがの彼女も一抹の不安を覚えざるを得なくなると言うものである。
 その他にも、確かに洗面台脇に置いたはずのコンパクトが、顔を洗い終えて見ると玄関の下駄箱の上に鎮座していたり、パチンと閉じたかと思えば少し目を離した隙にバネ仕掛けの
蝶番でも無いその蓋が、囲炉裏で炙ったホタテの如く何故かパックリと開いていたり。
 にも関わらず、Y子はコンパクトを手放す気にはなれなかったそうである。そう、まるで何かに魅入られたかの様に…。
 そしてある夜、決定的な出来事が起こった。
 ここ数日体調が思わしくないものの、それでも就寝前にいつもの如くコンパクトを開いて鏡の中の自分と対面するY子。
「あたし寝るよ。あんたもおやすみ…」
 そして蓋を閉じかけたその時、上蓋と下蓋の隙間で何かが瞬いた様に彼女には思えた。
「え?」
 閉じかけていた蓋を再び開けたY子はコンパクトに顔を近づけ、青光りする鏡面を再びまじまじと覗き込む。
 その瞬間彼女は見たそうだ。鏡の中の自分の唇が、本来無いはずの八重歯を覗かせてニヤリと薄気味悪く微笑んだのを…。
「パリンッ!」

167:スヴィトリアーク ◆CQ0ZL4vfUw @\(^o^)/
15/08/30 00:16:14.12 ujnfAOrg0.net
 後の記憶は霧中の如く漠然としているために彼女には思い出せない。ただどこか遠いところで、
「タイヘンダ!カアサン!タオル ト ホウタイ ダア! アト ハヤク イシャ…」
「ダカラ イッタンダヨ!アンタ ガ ヘンナモノ ヲ コノコ ニ アゲルカラ…」
「ンナコト イッタッテ オ オレ シラネエヨオ…」
 そんな喧噪が聞こえていたのだけは覚えている…との事。

「次の日、コンパクトはお婆ちゃんが近くのお寺に持ってっちゃったみたい。今でこそ兄貴も『あの鏡さ、多分お前が美しすぎるから割れたんだよ。ほら、パタリロのオープニングみたいにさあ』
なんて茶化しやがるけど、その後は普通の鏡さえもしばらくの間見られなかったもんね、あたし」
 言い終えた後に、小さく肩をすくめるY子。
「ほう。怖くて普通の鏡も、か。Y子も男勝りに見えて結構、可愛いとこあるじゃないの…しかしその話、本当かい?」
 自分の話を疑われ、Y子は紅潮して頬を膨らませた。
「嘘じゃ無いのに!ホラ、もっとこっち来てあたしの顔、じっくり見なさいよ」
 言われた通りお互いの吐息が交錯するほどの間近でよく見ると、なるほど彼女の両頬には確かに鋭利な何かを散らされたかの様な小さい古傷の窪みがうっすらと数カ所見て取れる。
「ね、判ってくれた?」
「ああ、よ~く判ったよ。お前さんの厚化粧の理由がな」
 俺の何気ない失言が彼女の中のデリケートな何かをいたく刺激したものか、その後しばらくの間Y子はひと言も口を利いてはくれなかった。
 もっともその後、丁度彼女に顔を近づけていたところを忘れ物を取りに来た同サークルの後輩が偶然目撃した様で、誤解を解くために俺はさんざん要らぬ苦労を強いられる羽目になってしまった
のだが、それはまた別の話。

【了】 

168:スヴィトリアーク ◆CQ0ZL4vfUw @\(^o^)/
15/08/30 00:19:11.97 ujnfAOrg0.net
39本目の蝋燭が消えました・・・

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儚 ◆Um9yHBDNIMLwさん、第40話をお願いします
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169:わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ @\(^o^)/
15/08/30 00:19:28.99 AgCPeYID0.net
【40話】儚 ◆Um9yHBDNIMLw 様
『無題』
小6の時に私が体験した話です
当時通ってた小学校にはいくつか怪談がありました
いわゆる学校の七不思議というやつです
休み時間中に仲のいい友達3人とその話で盛り上がり放課後確認することになりました
私たちは1つずつ確認していくも
6つ目まで何も起こらず
?やっぱ七不思議なんて全部ウソだよね~?なんて言いながら最後の7つ目を実行すべく体育館に向かいました
7つ目の七不思議は
一人で体育館の真ん中にボールを置いて?一緒に遊ぼう?と3回言いボールに背を向ける
霊が来るとボールが勝手に動き出すというものでした
これは一人でやらなければならないためじゃんけんで負けたアヤちゃん(仮名)が実行役になりました
その間私たち3人は舞台横の用具室に隠れることに
ドアの隙間から覗いてましたがやはり何も起こらず
がっかりしていると一緒に覗いてたはずのカナちゃんがいません
名前を呼ぶと?みんなこっち来てー!?と舞台の方から声がするので行くと
?放送室空いてる!?と興奮気味
放送室は舞台横の階段の上にあります
普段は先生や放送委員の人しか入れない上いつもは鍵がしまっている場所
中に入ると当然普通の放送室ですが脇にある窓から体育館が見下ろせるのでいつもと違う気分が味わえました
秘密基地みたいだねなんて話してたらアヤちゃんが?ボールなくなってる?と…
確かに窓からさっき使ったボールは見当たらず

170:わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ @\(^o^)/
15/08/30 00:20:32.80 AgCPeYID0.net
?アヤちゃんが片付けたんじゃないの??
?私触ってない。そのままにしてこっち来た?
?見回りの先生もう来ちゃったんじゃない!??
?見つからないうちに逃げよう?
私が先にドアに近づくと向こうからコツコツコツコツと足音が
私は人差し指を立て?静かに?の合図をして小声で?先生こっち来てる?と伝えました
カナちゃんが?鍵、鍵しめて見つかったらヤバい?と言うので私はなるべく音が出ないようそっと鍵を締めました
鍵が閉まってればわざわざそこを開けたりはしないはずです
私たちは息を殺してドアを見ながらじっとしてました
すると突然ガンガンガンガンガン!!とものすごい勢いでドアが叩かれました
とても一人でやってるとは思えない勢いでガンガンガンガンガン!!ガンガンガンガンガン!!
?アケテーアケテーアケテー?
ノックの音に混じって歪んだような女の声
こんな声の先生は知りません
瞬時に得体の知れないナニカだと思いました
他の3人もこれは先生ではないと気付き真っ青になりました
ヤバいきっと七不思議なんか試したりしたから変なのを呼んでしまったんだ
どうしようどうしようとみんなパニックっておろおろするしか出来ない
私はランドセルに付けてたお守りを握りひたすら?神様お願いします守って下さいお願いします?と心の中で唱えました
しばらくすると音は止み去ったかと思ったら今度はペシャペシャと湿り気のある気味の悪い音
ドアの向こうで何をしてるのか
ぞっとしました
窓の一番近くにいたリサちゃんが?先生来た!先生来た!?と言うので見たらちゃんと知ってる先生がそこに!
私たちはもう怒られるとかそんなのはどうでもよくなって必死に窓を叩いて?先生!先生!?と呼びました
それに気づいて舞台の方に駆けていく先生を見てホッとしました
いつの間にかペシャという音はなかなっていて階段を登ってくる音

171:わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ @\(^o^)/
15/08/30 00:22:00.21 AgCPeYID0.net
?どうしたの?何かあったの??
私たちはドアを開けて正直に今起こっていたことを話しました
先生は?誰かのイタズラじゃないの??と言って舞台の周りなどを見て回るも誰も見当たりませんでした
先生もこちらに向かうさいに誰かとすれ違うこともなかったとのこと
怖がってる私たちを可哀相に思ったのかこの事は担任には言わないでおいてくれました
それから半年ほどして私たちは卒業式を向かえました
式の後あの先生にも挨拶に行くと
?あの時あなたたち怯えてたから言わなかったけどあそこ出るみたいなのよ。
ほら去年までいた保健のサトウ先生(仮名)覚えてる?サトウ先生霊感強かったみたいでね体育館は“アレ”がいるからなるべく近づきたくないてよく言ってたのよ。
アレって何?て聞いても教えてくれなかったから先生もよく分からないんだけどね。
もしかしてあなたたちが遭遇したのはサトウ先生が感じてたアレなのかもしれないわね。ごめんなさいね今更怖がらせちゃったかな。でもアレはあそこから動けないから憑いたりはしないそうよ。だから安心して?
今も体育館にアレはいるのか
確かめようがないし確かめたくありませんが母校の前を通ると思い出します


172:猫虫 ◆5G/PPtnDVU @\(^o^)/
15/08/30 00:23:41.61 slHZZ5U50.net
40本目の蝋燭が消えました・・・

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チッチママ ◆pLru64DMboさん、第41話をお願いします
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語り部希望は【準備スレ:2ch.net】へ
雑談、感想は【雑談スレ:したらば】でお願いします。

173:わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ @\(^o^)/
15/08/30 00:25:51.80 AgCPeYID0.net
【41話】チッチママ ◆pLru64DMbo 様
『道向いの家の影』
私の家系は昔から猫が好きで自然と猫がいます
現在も縁で猫が4匹いるのです
昔から我が家に何かあると猫が消えたり亡くなります
私の身内は「身代わりになってくれたんだね」と土地に埋めて拝みます
我が家の猫は完全な室内飼育です(事故とか嫌なので)
家の窓から外を見張るのが大好きです
車が窓外に通ると「ナーナー」ときたよきたよと教えてくれます
飽きもせずジーッと何時間でも見ているのですが、この前のお盆から
どうも様子がちょっと違います
決まっているのが夜7時過ぎからの時間で道向いの家の小さな小窓を見ています
気づいたのは小さく唸り声をあげている時があるからです
実は霊感のない私は向いの、その小窓を見るのが嫌です
近所づきあいしないので、だいたいの家族構成しか知りません
夜はカーテンを閉めて向いを見えないようにしていますが
猫がヒョイっと自分の顔をつっこむスペースを開けて観察しています
私には何も見えないし、なんとなく黒いカーテンがたまに人影に見えるのが
嫌なだけなんですけど、この前ここの息子さんが言うんですよ
「寝ようとすると、女がずっとこっちみてる感じがして気持ち悪い」って
似たヤンチャな友達に笑われてました
今日もずーっとカーテンは閉まったままです
(終)

174:猫虫 ◆5G/PPtnDVU @\(^o^)/
15/08/30 00:27:39.32 slHZZ5U50.net
41本目の蝋燭が消えました・・・

                      γ
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        (  _   ,、'"    ̄
         `ー--─'"
スヴィトリアーク◆lBDllPVzBwさん、第42話をお願いします
.-----------------------------------------------------
語り部希望は【準備スレ:2ch.net】へ
雑談、感想は【雑談スレ:したらば】でお願いします。

175:スヴィトリアーク ◆CQ0ZL4vfUw @\(^o^)/
15/08/30 00:29:44.89 ujnfAOrg0.net
『感性の違い』

「あのさ、ただであげるからこのチケット、要らないか」
 映画マニアである父の友人は気さくな口調でそう笑い、俺の手にとある名画座のチケットを握らせた。
「え、いいんですか。何の映画?」
「ああ、アンドレイ・タルコフスキーってソ連の監督が昔撮った作品。君は若いからちょっと退屈するかもなあ。だけど、それでもまあ話の種にはなる思うよ」
 翌日そのチケットを胸ポケットに忍ばせて、俺は早速夕暮れの街に踏み出した。
 街外れにその名画座はある。それまでも何度か訪れた場所だがこの映画館、採算性に牙を剥いているとしか思えぬ様な、趣味的で超マニアック作品しか扱っているのを
見た事のない、小ぢんまりとしたシアターだった。
 ライブハウスを改装したとされるこのシアターは一般的な映画館のスクリーン設置位置と比しても遥かに低いそれに加え、リノリウム貼りの上に据えられたシート数はほんの
百席弱。フロアそのものが平坦であるため、通常でも鑑賞の際は観辛い事この上無い。
 そんな場内に足を踏み入れると、上映5分前だと言うのに来館者はた�


176:チたの俺一人。「まあこんなのも貸し切りみたいで、いいか」  4列目の真ん中辺りに腰を下ろし、あまり期待もせずに俺は開演のベルを待ったものである。 「やばい。貴重な時間を無駄にしたか」  始まってから俺がそう後悔するまでに、さほどの時間は要しなかった。肝心の題名は失念したもののこの映画、開演以降ろくな台詞も無いままに、河やら雲やら農村やらの 情景が延々と流れ続けている、いわゆる『アート系環境映画』的な代物だったのだ。  玄人にはおそらく高評価な作品なのであろうが、バカでも判るスペクタクル超大作を好む俺にとって、この展開は苦痛以外の何物でも無い。 「ひょっとしてこれが最後まで続くのかなあ。涙目のせいか、スクリーンが霞んできたよ」  欠伸を繰り返す俺の瞳の中で、銀盤の風景がじわりと滲んでいる。  いや、しかし…その滲み方が何か変?



177:スヴィトリアーク ◆CQ0ZL4vfUw @\(^o^)/
15/08/30 00:30:46.27 ujnfAOrg0.net
 誰も座っていない最前列中央、ちょうど俺の視線の先が真っ正面に捉える席上だけが、丁度肩から上の人型に歪んでいるのだ。それ以外のスクリーンは鮮明に見えている。
 ほら、『光学迷彩』ってのを想像して欲しいんだけど、あたかもそれを纏った人間が前々々のシートにこちらに背を向け座っている様な不思議な構図。その半透明のシルエットが
動くと同時にその空間範囲だけ、映写されている光景が部分的にぐにゃりと歪む。
 その正体が何なのかはひとまず置き、普通であればスクリーンがもう少しはよく見える座席までの移動を試みれば良さそうなものであるが、上映作品も肩透かしな上に猛烈な
眠気に襲われた俺には、もうそれすら努力する意欲が既に残ってはいなかった。
 程なくして俺は睡魔に負け、深い眠りへ真っ逆さまに落ちていったものである。
「パチ、パチ、パチ…」
 神社を参拝する際の柏手にも似たその響きで、俺は目を覚ました。
「んん、やっと終わったか。しかしこんな映画でもブラボーするのがいるんだな。俺が寝てる間に他の客でも来館したか」
 館内照明が再点灯し始めた薄明かりの中、眠気の残る目を擦りながらフロア内をぐるりと見渡す俺。しかし劇場の中には入館時までと同様、俺以外の客は見当たらなかった。
「パチ、パチ、パチパチパチ…」
 若干速度を速めながらも続いているその拍手は、どうやら例の最前列中央の席から確かに聞こえているらしい。
『何だかなあ。さすが目に見えない誰かさんの芸術的感性ってのは、生きた人間のしかも凡夫たる俺なんかとはどうやら一線を画すみたいだわ…』
 かび臭いロビーを抜けて、今やとっぷりと日も暮れた街を吹く木枯らしに再び身を晒した俺は、肩を窄めながらも前方の空車タクシーに向かって右手を振ったものだった。
 蛇足ではあるが、当然の如くこの名画座は潰れてしまって今は無い。

【了】


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