15/08/30 05:15:29.93 AgCPeYID0.net
そのぐらいのもんです。
でも後部座席の“なにか”が、ゆ っ く り と運転席の自分のほうへ顔を近づけてくるのがわかった。
どんな奴なんだろう。
彼女、不意にそう思ったそうです。よし、正体みてやろうと思って、スピードを若干緩めた。
緩めながら、ルームミラー越しに、その何かに目をやった。
途端、
う゛う゛う゛っ!!!
全身がぞくっとして、体が固まってしまったそうです。
後部座席に乗ってたそれ。
人だったそうです。
ただそれ、正確には、この世に存在してはいけないヒトだった。
それ、自分とまったく同じ顔・姿・格好をした、ナニカなんです。
もう一人の自分が、後部座席に座って、ミラー越しに自分のほうをじぃ~っと睨んでる。
その顔がなおも、ぐぐっと自分のほうへ寄ってくるのがわかる。
―やばいやばいやばいやばいどうしようどうなっちゃうんだろう。
色々みてきたけれども、とうとう“自分自身”が出てきてしまった。
これはまずい。初めてそう感じたそうです。
ハンドルを握る手をガタガタ震わせていると、その顔がもう自分の斜め後方すぐ傍にある。
その口が、彼女の耳元までぐっと近づいてきて。
「お ま え だ れ だ。わ た し は ふ た り も い ら な い ん だ よ」
あまりの恐怖に目の前が真っ暗になって、そこから目的地の駐車場までの道程の記憶があまり無いそうです。
しかし、ともかく事故にも遭わず無事に辿り着いた。