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☆タンパク質の話(6)~プリオン・発狂するタンパク質 URLリンク(www.org-chem.org)
タンパク質は一定の形に折りたたまれて初めてその機能を発揮します。そして20種類のアミノ酸の
並び順、数さえ決まれば、仕上がりのタンパクの形は必ずたった一つの形態に落ち着く、とこれまで
は考えられてきました。
ところが近年になり、その根本法則に反例が発見されました。しかもその反例は、世界を震撼させる
恐るべき病原体としてその姿を現したのです。病原体の名はプリオン、そしてその病気の名は―狂牛病です。
この病気の病原体は、細菌でもウィルスでもないのです。まずこの病気にかかった生物(マウスやミンク、
サルなど種の壁を越えて伝染します)は炎症反応、免疫反応を起こしていません。細菌などの外敵が入り
込むと必ず生体はこれらの防御機構を働かせるはずなのですが、CJD病原体はこうした生体の防衛網を
やすやすとくぐり抜けているのです。
遺伝子を持たず、タンパクだけで自己増殖をする、しかも不死身の病原体―。これまでの生物学の知識
がまるで通用しない、まるでSFのような「生命体」の登場は、あらゆる分野の科学者の頭を抱えさせるに十分でした。
しかしプルシナーは執念をもってこの病原体を追い詰め続けます。そして1982年、ついに彼らは265個のアミノ酸
から成るプリオンタンパク質を分離しました。謎のタンパクの正体はどんなものだったのか……アミノ酸配列を調
べてみた彼らは再び仰天するはめになりました。それは健康な人間の体内で常に生産されている、ごく普通の
タンパクだったのです。
いろいろと調べてみた結果、人体が作る正常プリオンと、スポンジ状脳症の動物から採った異常プリオンは、
アミノ酸配列は同じでもその折りたたみ方が違っていることがわかりました。
このプリオン学説の提案者プルシナーは1997年、ついに念願のノーベル医学生理学賞を、単独受賞という
最高の形で手にします。しかしこれで狂牛病の謎がすっかり解けたのかといえば、実はそうでもないのです。
まず肝心の、異常プリオンがどのようにして正常プリオンを変形させるのか、詳しい分子レベルでの機構は
まったくわかっていません。