百物語 2014  本スレat OCCULT
百物語 2014  本スレ - 暇つぶし2ch50: ◆ElPl8xGQc2 @\(^o^)/
14/08/23 19:51:29.32 JSbHM1NW0.net
14本目の蝋燭が消えました・・・
成 ◆0ute.wyqdY さん、ありがとうございました


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釣師官兵衛 ◆vW7zauZqAA さん、第15話をお願いします
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51:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/23 19:53:51.35 HxZdyY1N0.net
【第15話】 釣師官兵衛 ◆vW7zauZqAA 様
『夜釣り』

(1/2)

これは去年の春の話。
この年も3月くらいから春のミズイカ狙いで毎週末、仲間と佐賀・長崎方面に釣行にでていた。
今回は平戸・生月方面に向かうこととなり、参加は俺と師匠の2人、金曜日朝出発で土曜日のお昼~夕まづめ~深夜まで釣りをし、
仮眠をとり、日曜日の朝まづめを狙い、帰路につくという予定であった。
木曜日に師匠から『土曜日急用ができちゃったから、
土曜日深夜に合流する。酒買い込んで行くから合流したら酒盛りしよう 』という連絡があった。

師匠が遅れて合流するってことで俺はひとりで出発した。お昼過ぎにお目当ての釣場に着き、釣りを始めた。
ミズイカは2はい釣れたが、根掛かりしての海藻をその数十倍釣り上げていた。
リールを巻きながら海藻の固まりが海面に上がってくると、
人間の髪の毛に見えるので、深夜にひとりだとかなりビビるよ。
深夜12時もすぎ、ロッドにぐぐっと負荷がかかる。
また、海藻かと思いきや、海面に上がってきたものは、なんと長靴ではないか。
ため息をつきながらタモを出し、ルアー(エギ)を回収しなければならないため、長靴ごとタモ入れしすくい上げた。

長靴に引っ掛かったルアー(エギ)を取ろうとした瞬間、長靴の中(足をいれる部分)から
ひょいって手が出てきてルアーを取ったと思ったら、エギを握ったまま長靴の中に手かは戻っていった。
私は、いきなりなことに腰を抜かし、道具も置き去りにして、這いつくばりながら、車まで逃げ帰った。
なぜに長靴から手が?寝ぼけていたのか?
車に逃げ帰ってから数分のドキュメンタリーが過ぎたと思うが、
コンコン、コンコンと車の運転席側のガラスを叩く手が、長靴の手がここまで追ってきたのかと思いブルブル震えていたが、
それはなんと師匠の手であった。遅れていた師匠が到着したのであった。

52:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/23 19:55:01.79 HxZdyY1N0.net
(2/2)

師匠と釣場に長靴を確認するために戻ることとなった。
ぶっちゃけ明るくなるまで戻りたくはなかったが、高価な道具もあったんでやもえずね。
現場に戻ると長靴はタモの中にあり、ロッドから伸びるラインは長靴の中に入っていた。
恐る恐る長靴の中も覗きこんだが中には例の手は潜んでいなかった。
やっぱり目の錯覚だったのか、寝ぼけていたのか・・・
師匠が、なんだこれ?指差す方をみるとタモ脇に濡れた掌の後が4跡、
防波堤際までついているのを発見した。やつは海に戻っていったのか?

長靴の中に伸びたラインを引っ張りルアー(エギ)を取り出そうとしたところ、
『ジャラジャラ』と、自分のエギに古びた錆び付いた十数個のエギやルアーが絡み付いて、一緒に出てきたのであった。
あの手はルアー集めをしていたのか?
まあ気持ち悪いよな(笑)長靴の中のルアーは全部海に捨てることにした。

釣りをしていると根掛かりでルアーをロストすることがあるが、もしかすると・・・
いや間違いなくあの手の仕業なだろうと酒盛りをしながら師匠が納得するのであった(汗)

【了】

53: ◆ElPl8xGQc2 @\(^o^)/
14/08/23 19:57:02.77 JSbHM1NW0.net
15本目の蝋燭が消えました・・・
釣師官兵衛 ◆vW7zauZqAA さん、ありがとうございました


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備担◆.1AOTdzS5s さん、第16話をお願いします
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54:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/23 20:01:40.66 HxZdyY1N0.net
【第16話】 備担◆.1AOTdzS5s 様
『父の入院』
(1/2)
祖母が亡くなって四十九日も経たないうちに父が倒れた。
原因は祖母と同じ、脳卒中だった。相当悪かったらしく病院に行くなり即入院、その日のうちに手術という流れだった。
術後の説明で主治医は「ほんとうにどうなるかわかりません」と言った。医者っていうのは普通、むやみに希望を
持たせることは言わないもんなんだけど、この場合はつまり、駄目でも諦めろって予防線をはったわけ。

私は父も祖母も好きじゃなかった。祖母は、田舎の農家にありがちな長男溺愛タイプで、早くして夫、つまり私の祖父を
亡くしてからはその傾向に拍車をかけたらしい。その結果甘やかされた父は、酒を飲んでは癇癪を起こし、箪笥の財布
から金を抜いてはパチンコにいくようなダメ人間になっていた。
だけど、そんなダメ人間でも母にとっては夫で、だから母の動揺は大変なものだった。

麻酔が切れても、父は眠ったままだった。次の日も、次の日も、その次の日もずっと。
座薬を入れても熱が40度代から下がらず、体中浮腫んでパンパンで、親類は祖母が父を連れて行くんじゃないかなんて
噂してた、まぁ無理もないけど。母は連日病室に泊まり込んでいたけど、体力的にどうかと思ったのでさすがに
一週間も続いたころ強いて家に帰らせた。私が代わりに泊まるって条件で。

病室に簡易寝台もあったけど、ナースステーションの隣にあるベンチで寝ることにした。消灯時間になれば人はめったに
通らないとはいえ、廊下からまる見えの場所で落ち着かないし慣れない場所でもあるしで、夜半過ぎても寝付けず。
明りを付けることもできないから、目を閉じて時が過ぎるのをじりじり待っていたんだけど、そのうち寝落ちしたみたい。

55:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/23 20:03:25.63 HxZdyY1N0.net
(2/3)

ふっと目が覚めると、私のすぐ横の廊下を誰かが歩いて、エレベーターのあるホールから病室のほうに向かっていった。
トイレかなぁなんて思ってまた寝ようとしたときに、ふと気づいた。並び順として、ホール→ベンチ→ナースステーション
→トイレ→病室なわけで、ホールから病室のほうに向かって歩くのは、外から来た人しかいないわけ。
入院患者がエレベーター使ってどこかに行って戻ってきたってこともありうるけど、脳外科患者のいる病棟だから、
ほとんどは車いすか介添え付きで移動する。
あれ?と思って見ると、暗いからよくわからないけどナース服着てる感じじゃない。

その人はナースステーション近くの病室に入った。ちなみに父の病室もそのあたり。
やっぱり入院患者だったのかなぁなんて思いながら寝なおそうとして、でも目が冴えてしまったんで、トイレに行くついで
に父の様子を見に行くことにした。仮眠中なのか、ナースステーションに看護師の姿はない。深夜の病院の廊下は、
床も壁も天井もグレーの濃淡で、非常灯の緑色の明りだけが唯一といっていい色彩。人影もないし、まともに見ると
ちょっと怖い。なので、あまりきょろきょろせず病室をひょいと覗た。
4人部屋で、父は右側の奥のベッド。

起さないように静かに…と思ってたら、ぐぐぅというか、へんな声が聞こえた。
イビキかと思ったら、小さな咳っぽい音もする。
ん?と思った。私は喘息持ちなんだけど、その音、気管が炎症起こして息ができないし咳をする体力もない時に出る
咳っぽいのに似てたんだよね。そうっと病室に入って確認すると、音の出所は右側の奥のベッド、つまり父だった。
暗かったけど、酸素のマスクが少しずれているのが見えた。

56:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/23 20:04:23.17 HxZdyY1N0.net
(3/3)
後は、深夜のひと騒動。
ナースコールのボタンを押すと、看護師がふっとんできて、当直の医師もふっとんできた。医師は父の口をこじ開け、
咽喉の奥を見て、器材を口の中に突っ込み、何かを引っ張り出して、金属の皿の上に置いた。
どろどろの体液にまみれた、ぱっとみ軟骨のような、直径3,4cm程度の薄い円盤状のもの。
これが父の咽喉を塞いでいたらしい。

その軟骨っぽいのが何時父の咽喉に入り込んだのか。
手術したのは脳だから手術のときに紛れ込むわけはないし、食事をとれる状態でないから飲み込む機会があるわけでも
ない。
何より、それの正体が何だかわからず、医師も首を捻るばかり。

ともかく、処置は済み、父の呼吸は元通りになった。
それから三日程度して父は目覚め、半年後には完全に退院した。

私が見た人影と、父の咽喉に詰まった物との関連はわからない。
主治医はそれを調査に出すと言っていたけど、聞くタイミングを逃したし、彼は今は別の病院に移動したという。
【了】

57: ◆ElPl8xGQc2 @\(^o^)/
14/08/23 20:06:34.74 JSbHM1NW0.net
16本目の蝋燭が消えました・・・
備担◆.1AOTdzS5s さん、ありがとうございました


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ヤプール ◆v0h8dExI/ytY さん、第17話をお願いします
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58:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/23 20:08:44.22 HxZdyY1N0.net
【第17話】 ヤプール ◆v0h8dExI/ytY 様
『気まぐれなカーナビ』

(1/2)

大学時代に友人のSから聞いた話。
お盆の少し前、彼の地元の友達が遊びに来たとき。

Sの友人の一人が、近くに最近テレビで紹介された心霊スポットがあるとの情報を入手し、
SとSの彼女、地元友人2人の4人でその心霊スポットへ肝試しに行くことにしたそうだ。

友人の一人がだいたいの住所まで調べてきたので、Sの車のカーナビに目的地を登録して出発した。

だがこのカーナビ、かなり旧式のもので、新しい道がまだ登録されてなかったり古い道がまだあったりと、
かなり使い勝手の悪いものだった。
それでも最終的につけばいい、という考えのSは使い続けていたが、目的地到着までかなり寄り道させられることも多かった。
さらには電波も入りずらいのか、ちょっと山奥に入るとそのままフリーズ状態になることも多かった。

そしてその日も、山に入るとすぐにフリーズしてしまった。
一応地図も持ってきたものの、初めて行く場所だし道も複雑だしでかなり迷ったそうだ。

30分ほどさまよったとき、ふいにカーナビが
「目的地周辺です、音声案内を終了s目的地周辺です、音声案内を終了s…」
と、壊れたようにしゃべりだした。さっきまではフリーズしたままだったのに。
ほかの3人は驚いていたが、Sは、「まぁもう寿命だから、こんなこともあるか」程度にしか考えなかったそうだ。

車を止め、周囲を見回すと、前方に廃墟らしき影が見えた。
おそらくここが目的地だろうと思い、4人は中を探索することにした。
Sの彼女と友人の一人はそれぞれカメラを持ち、何かうつりそうな場所を見つけては写真を撮っていた。

そして、ある程度進んだところで、カメラのチェックをしていたSの彼女が
「あ、これやばいかも…。」とつぶやいた。

59:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/23 20:10:04.04 HxZdyY1N0.net
(2/2)

なにがやばいんだよ、とSたちが近づこうとすると、彼女は出口に向かって一目散に逃げて行ってしまった。
何やらやばい空気を察した彼らは彼女を追いかけ、そのまま車に乗り込みその場を後にしたそうだ。

「…で、この場所に一緒に行ってほしいと?」

Sの彼女は逃げる時にカメラを落としてしまい、それを一緒に見つけてほしいとSから依頼が来た。
Sの彼女はもうあそこに行きたくないそうだし、地元の友人たちは帰ってしまい一人で行くのも気が引けるらしい。

「これがそのカメラなんだけど…。」
Sがその廃墟で撮られた写真の一枚を見せてきた。
ぶっちゃけ、ガッツリよからぬものが写っていてカメラどころではなかったが、Sは触れなかったので私もそっとしておくことにした。

翌日、今度はちゃんと道順を調べてきたSとともに例の廃墟へ向かった。
一応カーナビにもダメもとで目的地設定したが、今回はあっけなく到着した。

しかし、到着したSは第一声「…違う。」と言い放った。
「俺が来たのは、この廃墟じゃない…。」

暗くて見間違えたんじゃないの?という私にSは一枚の写真を手渡す。
「あの夜とった廃墟の全体像だ。全然違うだろ…。」

目の前にある廃墟は二階建ての木造のこじゃれた家。
しかし、写真に写っているのは、暗くてはっりは見えないがどうもコンクリート造りのようだ。
少なくとも、今目の前にある家とはまるで別物。
辺りを見渡すが、ほかに建物らしいものは見当たらない。

結局その場所はわからずじまい。カメラも当然見つからず、写っていたものがなんだったのかも結局不明。

あの気まぐれなカーナビは、あの夜彼らをどこに連れて行ったんだろう…。
【了】

60:進行マモ ◆100mD2jqic @\(^o^)/
14/08/23 20:11:10.52 af0oyBtJ0.net
17本目の蝋燭が消えました・・・
ヤプール ◆v0h8dExI/ytY さん、ありがとうございました
                      γ
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釣師官兵衛 ◆vW7zauZqAA さん、第18話をお願いします
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雑談、感想は【雑談スレ:したらば】でお願いします。

61:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/23 20:13:21.06 HxZdyY1N0.net
【第18話】釣師官兵衛 ◆vW7zauZqAA 様

『虫の知らせ』


俺がガキの頃の話なんだけど、当時、母方の婆ちゃんが入退院をくりかえしていた。婆ちゃんはあまりよくない病状だった
らしい。お袋は4人兄弟の末っ子で婆ちゃんからはかなり可愛がられたとのこと。あっお袋の母ってことな。
ある日寝室で寝ていたお袋は明け方近くに金縛りにあった。そして閉めてあった寝室のドアがすーってゆっくり開いた
らしい。
でも人の気配はなかったんだって。数秒後、電話が鳴った。その電話で金縛りはとけ急いで電話を出たところ電話は母の
実家からで婆ちゃんが亡くなったって連絡だったんだって。
婆ちゃんが自分の娘のところに亡くなる寸前に会いにきたんだろうな。

【了】

62:進行マモ ◆100mD2jqic @\(^o^)/
14/08/23 20:14:21.93 af0oyBtJ0.net
18本目の蝋燭が消えました・・・
釣師官兵衛 ◆vW7zauZqAA さん、ありがとうございました
                      γ
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かーん ◆UiIW3kGSB さん、第19話をお願いします
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63:かーん ◆UiIW3kGSB. @\(^o^)/
14/08/23 20:16:05.83 MZyfIGDL0.net
【第十九話】 
『ずっと前からそこにいた』
(1/2)

私が夏休みを利用して父の実家近くの教習所に通っていた時の話。
進路の決まった高校生や夏休みの学生が合宿を利用して通ってくる、いわゆる繁忙期の前に入校した私は
ほぼ毎日学校に通いあっという間に路上での実習が始まっていた。
当然車に慣れたともいえないまま他の運転手に混じり道路を走る五十分間は
その頃の私にとって常に緊張と恐怖との戦いでした。
そして初めてのトンネルの走行時に私は有得ないものを見てしまったのです。


64:> 「昔はこの辺りも事故が多かったんやけど、工事してからはもうすっかり」 道路開通に合わせて数年前に対面から二車線に変えたこのトンネルは時間帯もあって車が通っている気配もない。 そうは言っても山を切り開いて作ったトンネルの入り口出口は中々の急カーブ。 一人緊張感をつのらせる私に気付かず指導員は話し続ける。 助手席の指導員が話す他の2種の教習者のライトの説明に耳を傾けながらハンドルを握る私が見たものは こちらに近づいてくる対向車のライトでした。 「えっ」 「ん?」 「いや、前…あっと…いえ、何でも…」 思わず声を出した私にのんびりした声でどうしたと返されてしまったのでつい横を見てしまう。 がちがちにハンドルを握っていた為に車が揺れ自分が車を運転していることを思い出す。 車体をまっすぐにする為に前を見た時にはライトもなければ前を走行する車もありませんでした。 パニックになる気持ちを静めて何でもないと返すだけで精いっぱいでした。 不意に蛇行運転なんかした私に指導員は笑いながら早く慣れなよと言われ 復讐項目にハンドル操作とバッチリ書かれてその日は何もなく終わりました。 きっと不必要なほどに緊張していた私の頭が勝手に作り出したものとその時はスルーしていたのですが



65:かーん ◆UiIW3kGSB. @\(^o^)/
14/08/23 20:18:12.45 MZyfIGDL0.net
(2/2)

そんな出来事からしばらくたったある日。
路上での運転にもそれなりに慣れた頃の学校の帰りに興味深い話を聞いたのです。
単発の送迎バスに一人乗り帰途に着く道すがら運転手さんと話していた時の事。
「お。そうそうこの前ね。とうとう見たよ」
「何ですか?サルですか?」
「サルはここらへんどこにでもおるよ。そうでなくて、前は影も形もなかったけどね
 …このトンネル出るようになったらしいんだわ」
「出るって幽霊ですか?マジで?」
「まあ幽霊言うてもライトだけや。トンネル入ってしばらく走ると向こうからライトが近づいてくるっていう」
「それってこのトンネルなんですか?」
その話は場所は違えど私が先日体験した話に酷く似ていました。
聞くとその車は赤だったり白だったりスポーツカーであったりワゴンであったりと様々なようですが
決まってライトが近づいてくると思った瞬間消えてしまうのだそうです。
「ここ最近は大きな事故もなかったのに何でそんな噂が出るかねと仲間と話しとったんやけどね」

その時何故だか私は話に乗る気になれなくて、不思議ですねと簡単に返し違う話をしてしてしまいました。
きっと姿を確認できるようになったのがつい最近というだけなのだろうと思ったのです。
彼らはきっとずっと前からそこにいて、でも気付かれなかっただけなのだと。
対向車のなくなったトンネルではきっとよく見える。
そして…当然私たちが使っているこの車線にもきっと、運転する私たちに紛れるように…
彼らはずっと前からここにだっているのかもしれません。

【了】

66:進行マモ ◆100mD2jqic @\(^o^)/
14/08/23 20:19:36.47 af0oyBtJ0.net
19本目の蝋燭が消えました・・・
かーん ◆UiIW3kGSB さん、ありがとうございました
                      γ
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サンズリバー ◆X0uk49LcEU さん、第20話をお願いします
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67:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/23 20:22:41.03 HxZdyY1N0.net
【第20話】 サンズリバー ◆QNxpn.SauU 様
『幽体飛行』

(1/2)

一昨年まで祖母の介護を独りでしていた。ある日、彼女の体調が急変、緊急入院となった。
最初は治療も順調だった。3月中旬、いつも通り見舞いに行ったが、瞳が今までにない程澄んでいて、
僕の顔を無言で見つめた。

  ●深く深く 澄みて清らな大き眼に 菩薩宿れりぢっと見つめる

もう、半月も持たないという直感が働き、覚悟して一旦帰宅した。

数日後、病院から「もう危ない」と電話があり、大急ぎで向かった。まだ意識のあった祖母の第一声は
「私は死ぬる事になっとる。苦労かけて…。」幼少期に両親と死別した僕は、初めて祖母の前で泣いた。
約10日間、病院に寝泊まり、最期は添い寝して看取った。

  ●吾が手首程の太腿さすりつつ 幾度握り計りしてみる

「嬉しい」と「ありがとう」が最後の言葉。
うっすら目を開け、僕の顔を見て静かに息を引き取った。

  ●限られし命に主治医 優しかり事のみ せめて嬉しかりける

68:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/23 20:24:21.37 HxZdyY1N0.net
(2/2)



月日が流れ穏やかになるかと思いきや、幽体離脱が頻繁に始まった。まず身体から魂が抜け浮遊する。
壁や窓、扉まですり抜け空中を飛び交い墓地へと向かう。そして我が魂を入れ込もうと試みるが、
祖母が光りに囲まれて跳ね返し、現世に戻ってしまう。
ある時は、家の仏壇から我が魂を送り込もうとするが、結果は同じ。
これらの現象が2年に渡り続いている。しかし、その間は安堵感で満たされている。

ある日、友人が来て言った。「もう一人いる。おばあさんやね。」
別の日、別の友人が言った。「俺らの話し、おばあちゃんに聞かれてる…。ここにいるよ。」
近所の人たちが口々に言う。「おばあちゃんに護られてるね、幸せになるよ。」

これらの現象は、全て事実で現在進行形である。ほら、今日も……。

【了】

69:進行マモ ◆100mD2jqic @\(^o^)/
14/08/23 20:32:26.42 af0oyBtJ0.net
20本目の蝋燭が消えました・・・
サンズリバー ◆X0uk49LcEU さん、ありがとうございました
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二十の怪異が語られました
皆様緊張でお疲れではございませんか?
ここから少々の休息とまいりましょう
うっかり暗闇に近付いてそのまま囚われたりなさらぬよう、重々お気を付けて…

それではまたしばし後に

70:進行マモ ◆100mD2jqic @\(^o^)/
14/08/23 20:38:16.15 af0oyBtJ0.net
皆様ご無事でいらっしゃいますか?
それは良うございました
百が終わるまで、どうぞ皆様揃ってお付き合い下さいませ



それでは百物語2014 続きとまいりましょう

かいじゅうのこども ◆dxakKNa1zM さん、第21話をお願いします
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語り部希望は【受付スレ:したらば】へ
雑談、感想は【雑談スレ:したらば】でお願いします。

71:本当にあった怖い名無し@\(^o^)/
14/08/23 20:40:10.07 zA3/GSW60.net
【第21話】かいじゅうのこども ◆dxakKNa1zM
『ガリ、ガリ…』

(1/5)

臨死体験をご存知でしょう。
死に面した人間が、息を吹き返す。
そして死と戦っていた間、その意識の端に焼き付けた景色。
ぽつり…ぽつりと、物語る…。

ある科学者が、臨死体験者に統計をとった。
それによると、臨死体験として語られる映像に、その人の意識が深く関わっている、というのはほんとらしい。
生まれた国と染まった文化、信じた宗教によって、語られる景色にはクラスタがある。
日本だと三途の川。キリストの国では、長い白い階段…。

所詮、朦朧とした意識の中で見た、深層心理の夢のようなものにすぎないと、ときに乱暴に片付けられる、ひそかな伝説。

それが、臨死体験。
果てのないトンネルの闇、いつかは己が吞み込まれて行く、その闇の、向こう側を、恐れ、ときに憧れて…。

では、そのあべこべは?
言うなれば、「臨生体験」。

死者が噂し合う、生者の世界の記憶…。
もっとも、古くから盆には死者が”黄泉帰り”、生者の世界に里帰りすると言いますから、死者達にとって故郷は死の世界であって、生者の世界は思いつきの旅行でしかないのかもしれません。
それでも僕らがそうであるように、旅から戻ったあとに、それぞれの旅した場所を肴に退屈をしのいでいるかもしれませんよ。
闇の帳から、死者たちの囁き声が聞こえてはこないでしょうか。

ガリガリ…ガリガリ…。

72:本当にあった怖い名無し@\(^o^)/
14/08/23 20:40:47.37 zA3/GSW60.net
(2/5)

東大阪の画材屋に、絵の具を買いに行った帰りでした。
一見、ありふれた道でした。現場の変形は僅かなもので、そこにある違和感といえば、色彩だけでした。まるでチューブからひねり出したかのように血の飛び散ったガードレール。
今でも忘れられません。
兄はまだ二十歳でした。

兄には、恋人がいました。

2人について知っていたことは、そう多くはありません。
一度だけ、家の玄関にいたそのヒトを、ちらと見かけたくらいでしょうか。
兄の通夜の席で、喪服に身を包んだそのヒトと、二時間ほど話をしました。
2人の出会い。
つき合いだして二年だったこと。
彼女が引き継ぐ家業のこと。
兄が語った夢のこと。

お腹に宿した命のこと。

兄はいつも街へ出ていた。
兄のいない、キャンバスと、iMacと、粘土と、いろいろの作品のあるだけの空っぽの部屋は、だから普通の部屋のはずだったけれど。
僕にはそうは思えませんでした。

―部屋が寂しく思えたんじゃない。
感じるんだ。
布団に腰を埋めていると、背中に兄の息づかいを……。
もしかしたら生きていたときより、ずっと生々しい……―

葬儀も終わって大分落ち着いてきたとき、あのヒトにその話をしました。
彼女は何も言わなかったけれど、話を聞くその瞳は誠実でした。

73:本当にあった怖い名無し@\(^o^)/
14/08/23 20:41:25.97 zA3/GSW60.net
(3/5)

彼女が母の家事を手伝っている間に、僕は兄の部屋に上がると、あの絵の描かれた画用紙を外しました。

晩ご飯を一緒にしながら、彼女に絵の話をしました。
絵のおおよそは出来上がっていたようでした。
だから僕にも、描かれているのが京都のある有名な寺の景色らしいことは分かっていました。
僕にとっての謎は、絵の具についてでした。
絵の中の、濃密な緑の世界に、バーミリオンを施すような余地は、どこにもないように思われました。
そして兄は絵を始めた子供の頃から、一度に二つの作品に取りかかることは決してしませんでした。

玄関でその絵を見せると、彼女は欲しいと言ってくれました。
僕は油絵の具のそこら一面に散らばったパレットと、まだそこに加わっていないあの赤い絵の具を渡しました。あのヒトもまた、絵描きでしたから。

ある晩、僕は彼女と2人で話をしました。
ずっと兄を憎んでいたことを。
母との喧嘩を治めるために包丁を持ちだしたことがあることを。
勉強をまともにやらず、母を泣かせてばかりいた兄を見下していたことを。
ある日を境に、口をきかなくなったことを。

僕が中学に上がった辺りの頃から、隣の兄の部屋からはガリガリと、何かを削る音がしていたことも、話しました。
彼女は、その音は多分油絵の具を削っている音だと言ったけれど、僕はそれの正体を、結局知らずじまいだった。
その頃から、僕も母も、兄の部屋をノックすることはなくなっていたから。
僕はただ、蛍光灯の下で、静かに兄を呪っていました。
食事も別々にとるようになっていたから、兄に対する憎しみとは、もはやその音に対する憎しみでした。不思議なことに僕はその音を、兄が家を開けることが多くなってからも、空のはずの部屋の向こうから、時折聞いたのでした。

二週間後、彼女は入院しました。
そしてひと月も経たないうちに、死産しました。
赤ん坊の、世界への扉は少しだけ開かれて、むなしくも閉ざされたのです。
死んだ赤子は、僕らの世界に何を見て、何を持ち帰ったのでしょう。

74:かいじゅうのこども ◆dxakKNa1zM @\(^o^)/
14/08/23 20:42:27.33 zA3/GSW60.net
(4/5)
少しして、僕と母は彼女の実家に招かれました。
襖で仕切られただけの畳の空間が、古い農家における、彼女のプライバシーでした。
あの絵が額縁に嵌って、部屋の仕切りのところから僕らを見下ろしていました。
彼女は椅子を持ってくると、その上に立ちました。シャツから背中が見えるくらいに背伸びをしたあのヒト。
代わりにやりますとは言えずに、僕はただ見ていました。
彼女は絵を下ろし、部屋の障子を少しだけ開けると、光の差した壁に立てかけました。
絵は生まれ変わっていました。

対比の技法。
色のグラデーションを描くと、ぐるりと輪になる。
この環を色相環<しきそうかん>といいます。
色相環の、それぞれ反対側に位置する色同士を補色といって、お互いを引き立て合う。
そして、緑の補色は、赤。

彼女はあの赤い絵の具で、新緑の寺の風景のところどころをなぞったのでした。
それだけで、葉っぱの一枚一枚が魔法がかけられたかのように命を宿したのです。
描かれた景色の瑞々しい空気が、こちら側に流れ込んでくるかのようでした。

僕らは洋服を着たまま和室に八の字に正座したまま、しばらくの間、このすこしちぐはぐなこの時を過ごしました。
僕は気付かれないよう、横に視線を流しました。
通夜の席での、あどけない顔に似合わない喪服に身を包んだ彼女の、しかし黒の中で不思議と鮮やかに見えた彼女の、あの表情を思い浮かべていました。
彼女の横顔は薄暗くてよく見えなくて、線香の匂いと古い家の匂いに混じって、今風の香水の匂いがほんのわずかに漂っているだけでした。

彼女が学生としてこうして絵を描いていられるのも、もう長くはないのだと、ふと僕は思いました。
その日は九月でしたが、あの人の人生もまた、夏を終えようとしていました。
部屋照らす日の光が、赤みを帯びてきました。遠くで虫が鳴いています。
実りの秋が近づいていました。

75:かいじゅうのこども ◆dxakKNa1zM @\(^o^)/
14/08/23 20:44:39.58 zA3/GSW60.net
(5/5)
この家と田んぼを1人で継いで子を育てていく、彼女の将来のことを思いました。
暗闇の中に沈んだ彼女の横顔を、じっと眺めました。
彼女の白い横顔と、赤い唇を、じっと見つめました。
汗がぽたぽたと畳に垂れる音を、彼女は聞こえていたでしょうか。
ジーンズの上から太ももをつねって、獣の衝動と闘っていました。
背中から、彼女の名前を呼ぶ声がしました。
雨はいつの間にか止んでいました。
庭の木々や土のそれに混じって、飯の匂いがしてきました。
釜で炊いたであろうその匂いは、都会育ちの僕には、不思議と現実離れした、嗅ぎ慣れぬものに思えました。
彼女に続いて縁側へと歩きながら、振り返りたいという欲求を僕を押しとどめました。
あの絵はまるで、死と生を繋ぐ窓のようにも思えました。
けれど。どちらが生の世界で、どちらが死の世界なのでしょうか。
しわがれた声が僕らを呼んでいます。
僕は彼女の少し後ろを続きながら、彼女をろくに見ることができずに、庭のほうを眺めながら、兄の部屋から、生々しい”匂い”が消えたんです、と言いました。
死を見失うということは、生を見失うのと同じことなのかもしれません。
あの絵の緑が、赤い絵の具で息を吹き返したように。
明日の朝、この田舎の山道を駅まで歩いて行くことを、僕は思いました。待ち遠しいと思いました。
人生で一番清々しい朝になると、予感していました。
彼女と、兄の遺骨に手を合わせました。
いつものように呪いの言葉を吐き終わった後、少しだけ、兄に感謝をしました。
―ありがとう。僕は変われたよ。
きっと誰かが。
誰かが僕の緑のキャンバスから、赤い絵の具を削っていたのです。
ガリガリ、ガリガリ、と。その音がいつしか消えて。
チューブから、赤い絵の具がひねり出された。呪いは終わりました。
僕は、生まれていたことを知ったのでした。

あれから一年が経ちます。
あの日を迎えたら、僕は必ず、しかしこっそりと、こうつぶやくのです。
ハッピーバースデー。

76:かいじゅうのこども ◆dxakKNa1zM @\(^o^)/
14/08/23 20:45:49.46 zA3/GSW60.net
                         【了】

77:進行マモ ◆100mD2jqic @\(^o^)/
14/08/23 20:47:10.04 af0oyBtJ0.net
21本目の蝋燭が消えました・・・
かいじゅうのこども ◆dxakKNa1zM さん、ありがとうございました


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サンズリバー ◆X0uk49LcEU さん、第22話をお願いします
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78:いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw @\(^o^)/
14/08/23 20:49:08.27 2yX9zsEM0.net
【第22話】 サンズリバー ◆QNxpn.SauU
『神か死神か…』

(1/2)

一昨年、祖母を看取ってから、周囲の高齢者の人々が旅立っている。
祖母が他界したのは春の彼岸の中日。四十九日・初盆を終え、秋の彼岸になった。
近所の友人のお父さんの体調が悪化し、救急搬送された。お母さんは早くに海で転落死しており、
病気で入院中の兄しか家族がいない。そこで、私が付き添う事となり、救急車の後を車で追った。

病院に着くと、即座に様々な検査が始まった。
友人のお父さんは、夏前に一度体調を崩し治療を受けており、その時も私が付き添い喜んで頂いた経緯がある。
自宅療養中、私が背中をさすった時に不思議な言葉を発していた。
「○○さん(私の名)の手には不思議な力がある。まるで神の手だ。」という内容だった。
私は笑いながら「この手で元気を送ってるからね。」と、冗談めかしに返答した。

更にこの救急搬送される数日前には、「貴方と話しをすると、頭の中の霧が晴れたみたいだ。もうワシは長くない。
感謝してるよ。」と言われた。悟っていると感じた私は無言で頷くだけだった。

この様な事が頭の中を駆け巡っている間に、検査が終わり主治医との面談が始まった。
今夜は付き添って泊まり込みして欲しいという内容だった。私は快諾し、書類にサインをした。
お父さんは意識はあるが、酸素マスクをして、もはや話す事ができない。しかし、しっかり目を開け私の顔をジッと見た。
澄み切ったとても美しい瞳だ。そして彼はベッドに横たわりながらも、三度お辞儀をし目を閉じた。

一夜を越え夜明け前、友人のお父さんは旅立った。そして、他人の私が葬儀の手配をするという異例の事態となった。
離れた土地から帰郷した親族に感謝されつつ、無事に葬儀を終えた。

79:いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw @\(^o^)/
14/08/23 20:50:59.82 2yX9zsEM0.net
(2/2)


月日は流れ12月上旬、私は歯医者の帰りに、見知らぬお婆さんが道路で倒れるのを目の当たりにした。
慌てて駆け寄って声をかけたが、全く反応がない。通りすがりの男性に声をかけ手伝ってもらい、すぐ119番通報した。
幸い近くに医者があり、AEDを持ってきてもらったが、ショックの必要なしとのガイダンス。
心臓ではなく脳だと直感したが、救急車が到着するまで20分以上かかり、お婆さんは意識を取り戻す事なく他界した。
親族は御礼をしてくださったが、複雑な気分だった。

年が明け4月。親戚の叔母の訃報の連絡が入った。3月に会った時にはとても元気だったので、耳を疑った。
叔父は既に他界しており、子は息子一人だけ。また葬儀だ。関わった人たちが次々に亡くなり、精神的に参ってしまった。
「俺は死神かもしれん……」と思うようになった。
葬儀が終わり自宅へ帰ってベッドに横たわった。ウトウトしかけると金縛りに合い、また離脱した。
先祖の眠る墓へ飛んで行こうとするが、大きな力が邪魔をして家から出られない。いつもは簡単にすり抜けるのに…。
「また、ばあちゃんか…」と思ったが違っていた。亡くなった身内が総出である。こんなの初めてだ。
母が一歩近づいて言った、「安心しなさい。後は私に任せなさい。」……そして元に戻って眠った。

近所の高齢者の人たちは言う。「○○君(私の名)は、人を見送る運命なのよ。それが貴方の役割。」
友人のお父さんが言った"私の神の手"でも、命を救えなかった。神か死神か…、答えは未だ見つかっていない。
もしかしたら、答えは私があの世に行ってから、遺った人が出すんじゃないかと最近ふと思う。

【了】

80:進行マモ ◆100mD2jqic @\(^o^)/
14/08/23 20:53:22.34 af0oyBtJ0.net
22本目の蝋燭が消えました・・・
サンズリバー ◆X0uk49LcEU さん、ありがとうございました
                      γ
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白孔雀 ◆EiiyoouYFo さん、第23話をお願いします
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雑談、感想は【雑談スレ:したらば】でお願いします。

81:いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw @\(^o^)/
14/08/23 20:56:16.36 2yX9zsEM0.net
【第23話】  白孔雀 ◆EiiyoouYFo 様
『指先』

私が高校生の時の話です。

夏だというのに毎日勉強で忙しい日々でした。
時々父が「映画を見に行こう」と誘ってきてもタイミングが合わないくらい。
そのせいか私と父が顔を合わせることなんて休日以外なかったような気がします。

その日はどういう訳か、昼から父が家にいたのです。遠方の祖母もなぜか一緒でした。
学校帰りの私は二人に誘われるままに父の車に乗り込んだのです。
私はどこかへ食事にでも出かけるのだろうと思っていました。

車に乗ると父と助手席の祖母が談笑しています。
目的地までには思ったより距離があるようでした。車でゆられているうちに私は瞼が重くなってしまいました。
そして眠りに落ちる寸前、すーと何かが私の頬をかすめたのです…。

目が覚めて車から降りてみるとそこは山奥の墓地でした。
今日の外出は曾祖母の墓参りが目的だったのです。
そして私はその葬式に、学業が忙しいという理由で出席していなかったことを思い出しました。

私の頬を撫でたのは死者の指先だったのでしょうか。

【完】

82:進行マモ ◆100mD2jqic @\(^o^)/
14/08/23 20:58:12.70 af0oyBtJ0.net
23本目の蝋燭が消えました・・・
白孔雀 ◆EiiyoouYFo さん、ありがとうございました
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釣師官兵衛 ◆vW7zauZqAA さん、第24話をお願いします
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83:いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw @\(^o^)/
14/08/23 21:01:26.53 2yX9zsEM0.net
【第24話】釣師官兵衛 ◆vW7zauZqAA 様
『人面魚』

35年前くらいに、ワイドショーなんかで人面魚が話題になってたよね。
結構各地の池で人面魚が発見されてて、俺の地元の庭園の池でも人面魚を発見されたのよ。

たぶん20年前くらいかな、飲んだ勢いだったんだけど、その地元の池の人面魚釣っちまおうって話になって、
3人でその発見された庭園に忍び込んだのよ。
すんなり忍び込んで、マルキューの練り餌さ練って釣り始めたんだけど、全然釣れないのね。
釣れないもんだから、しまいにはタモですくいあげて、20ひきくらいかな、
すくいあげちゃって確認したんだけど、全然人面模様ないのよ。

とりあえずその庭園には池が3箇所あったんで、次の池に行こうとさっきの20ひきの鯉を元の池に戻したんだけど、
戻した瞬間池の水面が逃がした鯉が暴れて波だったのね。
その瞬間、うなり声のようなのが聞こえたと思ったらその波立った水面に、ハッキリと大きな顔が浮かび上がったのよ。
それを3人共にはっきり見ちまって。怒った武士っぽい顔立ちだったのを今でも思い出す。ありゃなんだったんだろうな?

そういやあん時、竿持って慌てて逃げ帰ったんだけど、タモと練り餌さは忘れてきちゃってさ。
庭園の入口に忘れ物って貼り紙貼ってタモがあったのを後日見た時は笑っちまった。
あっさすがに練り餌さは忘れ物コーナーに置いてなかったわ(笑)

【了】

84:進行マモ ◆100mD2jqic @\(^o^)/
14/08/23 21:04:25.31 af0oyBtJ0.net
24本目の蝋燭が消えました・・・
釣師官兵衛 ◆vW7zauZqAA さん、ありがとうございました
                      γ
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雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM さん、第25話をお願いします
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語り部希望は【受付スレ:したらば】へ
雑談、感想は【雑談スレ:したらば】でお願いします。

85:いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw @\(^o^)/
14/08/23 21:07:37.15 2yX9zsEM0.net
【第25話】 雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM 様
『あついよー!』

知り合いの話。

彼女が以前住んでいた町には、小さな公園があった。
家の近所にあるその公園は、夕暮れになると焦げくさい臭いがしていたという。
と言っても、臭いを感じていたのは、家族の中でも彼女だけだったらしいが。

ある夜、遅い時間にそこを通りかかると、これまでにないほど強い焦げ臭がした。
吃驚して公園内を見ると、真っ黒焦げの人型が、よろよろとこちらに向かってくる。
所々に赤い燦めきが見えるのは残り火であろうか。
あまりのことに、彼女は立ち竦んでしまった。

「あついよー!」

人型はいきなりそう叫ぶと、彼女に向かって走り出した。

必死で逃げ出したそうだ。
家に辿り着き、わんわんと泣く彼女に驚いた家族は、公園へ確認しに行ってみた。
何も怪しいモノの姿はなく、焦げた臭いも感じられなかったという。

その後すぐに別の町に引っ越したので、その公園が今どうなっているのかは、
家族の誰も知らないのだそうだ。

【了】

86: ◆ElPl8xGQc2 @\(^o^)/
14/08/23 21:10:41.35 JSbHM1NW0.net
25本目の蝋燭が消えました・・・
雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM さん、ありがとうございました


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ヨサック ◆skAMDOCpdQ さん、第26話をお願いします
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語り部希望は【受付スレ:したらば】へ
雑談、感想は【雑談スレ:したらば】でお願いします。

87:いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw @\(^o^)/
14/08/23 21:13:31.19 2yX9zsEM0.net
【第26話】 ヨサック ◆skAMDOCpdQ 様
『お気に入りのワンピース』

(1/2)

知人の祖母・Nさんが若い頃体験した話だ。

Nさんにはお気に入りの服があった。生成り地に小花が少し刺繍された、可愛らしいデザインのワンピース。
Nさんはその日も、お気に入りのワンピースを着て買い物に出かけた。
そして帰宅後はすぐに着替え、ワンピースをハンガーに通して鴨居にかける。湿気を飛ばしてからしまう為だ。
そうしている内に、外出の疲れからか、ついうたた寝をしてしまったのだそうだ。

しばらくして目が覚めたNさんは、ぼんやりとあたりを見回した。
すると、鴨居にかけたワンピースが、風もないのに揺れているではないか。
不思議に思い目をこらすと、裾から見え隠れする物がある。
生成りのワンピースより、もっと白い何か。
それは音もなく降りて来た。

人の爪先であった。

凍りつくNさんをよそに、白い脚はゆっくりと降りて来て、その姿を現して行く。
爪先から甲、くるぶし、ふくらはぎ…
だがいつまでたっても膝は見えず、それが更に不気味だった。
とうとう、力なく垂れた足先が床まで届いた。
その途端、脚全体がぐにゃりと曲がった。まるで飴細工の様だったという。
脚はなおも伸び続け、白く長く、畳に二筋のとぐろを巻いている。

88:いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw @\(^o^)/
14/08/23 21:14:19.52 2yX9zsEM0.net
(2/2)

これは一体何なのか。
恐る恐る視線を上げたNさんの目に飛び込んで来たのは、
今まさに、ワンピースの襟元から出て来ようとしている、真っ黒な頭だった。
Nさんは我に返り、這う様に逃げ出したという。

このワンピースは、結局捨ててしまったそうだ。

【了】

89: ◆ElPl8xGQc2 @\(^o^)/
14/08/23 21:17:19.08 JSbHM1NW0.net
26本目の蝋燭が消えました・・・
ヨサック ◆skAMDOCpdQ さん、ありがとうございました


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釣師官兵衛 ◆vW7zauZqAA さん、第27話をお願いします
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語り部希望は>>1の【受付スレ:したらば】へ
雑談、感想は>>1の【雑談スレ:したらば】でお願いします。

90:いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw @\(^o^)/
14/08/23 21:22:31.44 2yX9zsEM0.net
【第27話】 釣師官兵衛 ◆vW7zauZqAA 様
『タクシー』

昔、通ってた釣り場付近での話です。
時間は22時を過ぎてい�


91:スと思います。前を走るタクシーが賃走になっていたので こんな田舎なのにタクシー乗る人いるのかなって不思議に思ったんです。 無性に気になってしまって赤信号で止まった時に右折車線に入って並んでみたんです。 それでタクシーの方を覗き込んだんですけどお客さんは乗ってなかったんです。 屋根上の表示灯も消えていて、助手席のダッシュボードのところの表示も賃走になってたんですけど。 後で聞いた話なんですがその近くに自殺で有名なスポットがあって、タクシーが自殺者の霊を乗せてしまうことがよく あるらしいです。 またまたそんな場面に出くわしてしまったのかもしれませんね。 【了】



92: ◆ElPl8xGQc2 @\(^o^)/
14/08/23 21:25:32.56 JSbHM1NW0.net
27本目の蝋燭が消えました・・・
釣師官兵衛 ◆vW7zauZqAA さん、ありがとうございました


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ヤマカガシ ◆c3a1zy1rE2 さん、第28話をお願いします
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93:いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw @\(^o^)/
14/08/23 21:27:35.05 2yX9zsEM0.net
【第28話】ヤマカガシ ◆aATRQSwClI 様
『無題』

今日あった話なんだが
職場の休憩中に食堂で一人テレビを見てたんだわ
有吉と竹山とかが出てたやつ
一人だけ休憩時間が違うのは法律的にどうなのかは置いといて
仕事の都合でそうなっていたわけだが
ふと音と共にドアというか扉がゆっくりあいたんだ
風でも吹いたかと、ちらりと見てテレビに目線を戻したわけだが
また音をたてたので、ちらりと見たら黒い髪が扉の隙間から見えて扉が閉じた
それは前にネット上でちょっと話題になった、
不動産の写真で少し開いた物置に髪が写っちゃったやつあったやん
あんな感じ
まあ誰かがちらりとこちらを見て閉じたんだろうけど
ただその扉は半透明のガラスの部分が全体にあるやつで
人がいるような動きはなかったんだよね
まあ職場の幽霊話はそこそこあるようだし、もしかしたら幽霊かもね

94: ◆ElPl8xGQc2 @\(^o^)/
14/08/23 21:30:52.24 JSbHM1NW0.net
28本目の蝋燭が消えました・・・
ヤマカガシ ◆c3a1zy1rE2 さん、ありがとうございました


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備担◆.1AOTdzS5s さん、第29話をお願いします
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雑談、感想は>>1の【雑談スレ:したらば】でお願いします。

95:いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw @\(^o^)/
14/08/23 21:33:16.03 2yX9zsEM0.net
【第29話】 備担◆.1AOTdzS5s 様
『郷土資料館』

会社の先輩は、地元で生まれ育ち、地元の学校に進学し、地元の会社、つまり、当時自分が働いていた会社に入社した
生粋の地元っ子だった。自分が住んでいた場所の近くに、地方の小さな町にありがちな郷土資料館があったのでその話を
したら、なんと彼は、そこでバイトをしたことがあるという。深夜の警備の仕事だったそうだ。

郷土資料館って名前からわかるように、そんなに大した展示品はなくて、埴輪の欠片や、価値があるのかどうかも
わからない古文書が少々。ただ、郷土資料館そのものが城跡に建ってることからわかるように、それなりの歴史はある
地方で、鎧一式が何個か展示されていた。

で、その先輩、真顔で言うんだよ。「あそこ、ヤバイよ」って。
夜に見回りにいくと、ラップ音がひどいんだと。特に鎧のあたりが。ちょっとびっくりしたわけよ。先輩、オカルト
じみたこと言い出すような人じゃなかったから。だから「落ち武者の幽霊でも見れるんですか」って、冗談のつもりで
聞いてみた。

「う?ん、落ち武者というか、あれは女性


96:じゃないかな」 「はい?」 「なんていうか知らないけど、時代劇に出てくる裾を引きずる着物着てたんだよ」 「えっ、それって幽霊ですか?」 「どうだろ。階段のほうに消える着物の裾っぽいのしか見てないしさ。ただ…」 先輩いわく、それを追っかけてみると、上り階段に張ってある立ち入り禁止の紐がゆらゆらと揺れてるんだそうだ。 だから、たとえあれが幽霊だったとしても実体があるもんじゃないのかなと笑っていた。 【了】



97: ◆ElPl8xGQc2 @\(^o^)/
14/08/23 21:36:12.53 JSbHM1NW0.net
29本目の蝋燭が消えました・・・
備担◆.1AOTdzS5s さん、ありがとうございました


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サンズリバー ◆X0uk49LcEU さん、第30話をお願いします
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雑談、感想は>>1の【雑談スレ:したらば】でお願いします。

98:いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw @\(^o^)/
14/08/23 21:39:32.37 2yX9zsEM0.net
【第30話】 サンズリバー ◆QNxpn.SauU 様
『ばぁばと佛』

(1/2)

僕の亡き祖母が元気だった頃の話しである。

祖母は、自分の子二人を病気で失い、気丈に振る舞いながらもどこか淋しげだった。
それ故か、とても信心深く、自分の命以上に佛様を大切にし、墓参りも欠かさない人だった。
そして更に、明晰夢も度々見ていたようだった。必ず自分の亡き子や兄弟が出てきていたようだ。
そう、感も勘も鋭かった。

ある真夜中、祖母が突然起きて仏壇の前に座った。「佛様が起こっている!」と叫んだ。
今の仏壇の祀り方が気に入らないと、ご先祖が伝えたと言う。
認知症はなく、1ヶ月に20句近い俳句を詠んでいた程だから、間違いないだろう。

僕が休みの日にホームセンターで壁紙を買い、仏壇周りをリフレッシュした。
祖母は大層喜び、僕も嬉しくて記念に写真を撮った。
しかし……、そこには白い靄がかかり、ハッキリと写っていないのだ。
試しに別の場所で撮影したが、鮮明に写った。一瞬ゾクッとした。
その写真はお蔵入りである。祖母にも見せないままだった。

毎朝毎晩と供養を続けて先祖の御霊を慰め、盆・正月・彼岸もきちんと行っていた。

99:いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw @\(^o^)/
14/08/23 21:40:02.40 2yX9zsEM0.net
(2/2)

それから数年が経ち、一昨年祖母は大往生した。
最後の約束は、僕が佛様を受け継ぎ祀り続けるという事だ。
勿論、一日たりとも欠かしていない。それよりも、更にグレードアップした程だ。

昨年、僕はタブレット端末を新しく購入した。
そして再び仏壇を撮影した。そこには……、白い靄がかかっている。
あの時と同じようにしたが、結果は全く一緒だ。
いつも仏間兼居間は澄んでいるし、離れた所からも肉眼ではハッキリ見えている。
写真だけが、どうしても靄に包まれるのだ。

もう、仏壇の撮影は封印した。二度と写す事はないだろう。
そして、この事は解明されない方が良い。
もう決して失礼な事はしないからね、ご先祖様…。
そして、どうか見守ってください。僕がそこへ行く迄ずっと……。

【了】

100: ◆ElPl8xGQc2 @\(^o^)/
14/08/23 21:43:30.91 JSbHM1NW0.net
30本目の蝋燭が消えました・・・
サンズリバー ◆X0uk49LcEU さん、ありがとうございました


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ヤプール ◆v0h8dExI/ytY さん、第31話をお願いします
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雑談、感想は>>1の【雑談スレ:したらば】でお願いします。

101:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/23 21:45:21.21 HxZdyY1N0.net
【第三十一話】ヤプール ◆v0h8dExI/ytY 様

『タイムシフト』

去年の百物語での話。

私は今年同様、去年もこの百物語の朗読を行っていた。
放送形式は今年と異なりニコ生だが。

最初は一人で読み続けることに不安を感じていたが、始まってみると20話くらいまではスムーズに読み続けることができた。

しかし、20話過ぎたあたりで急に疲れが押し寄せてきて、
ちょうど「神隠し」多発で朗読が追い付きそうだったので休憩をとることにした。

休憩中、タイムシフトを利用して自分の朗読を聞いていた。
朗読とかしたことある人はわかると思うが、自分の声というものは自分が思っているものとは大きく異なって聞こえるものだ。

しかし、ちょうど休憩に入る前の枠での自分の声は今までの自分の声とも自分が思っているものとも異なっていた。

なんか前枠より遠くでしゃべっているような…。

さらに、しばしばノイズが入ってくる。というより、自分以外の誰かが話に相槌を打っているような…。

そして枠の最後、ががががっと大きめのノイズが4つ入った。

詳しくは聞き取れないが、「あ、え、い、え」と何かしら訴えているような声が聞こえた。

休憩前の私は、単純につかれてるだけだったんだろうか…。

【了】

102: ◆ElPl8xGQc2 @\(^o^)/
14/08/23 21:48:31.17 JSbHM1NW0.net
31本目の蝋燭が消えました・・・
ヤプール ◆v0h8dExI/ytY さん、ありがとうございました


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ヨサック ◆skAMDOCpdQ さん、第32話をお願いします
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103:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/23 21:50:55.30 HxZdyY1N0.net
【第三十二話】 ヨサック ◆skAMDOCpdQ 様
『緑』

(1/2)

知人の女性・Sさんは数年前に父親を亡くした。
通夜だ葬式だ初七日だ、と忙しかった日々も一段落してしばらくした頃、
Sさんは急に深酒をする様になったのだという。
元々酒が好きではなかったので、おかしい、やめようと思うのだが、
意に反して夜になれば酒をあおり、酔いつぶれるまで飲んでしまう。
亡くなった父親は大酒飲みであったので、さては父の仕業かと思い至った。
だが仏壇に酒を供え、止めてくれるように手を合わせても、まったく効果がない。
実家を離れていた妹さんもSさんの異変に気付き、遠まわしに病院に行ってみないかと勧めてくる。
それもそうだな、と受診を考え出したそんなある日の事だ。

また酔いつぶれ居間で眠っていたSさんは、ふすまが開く気配で目を覚ました。
見ると、亡くなった父が立っている。不思議と恐怖は感じなかった。
父の方も久しぶり、等とごく普通にふるまう。向かいに座った父にSさんは尋ねてみた。
「お父さん、私の体借りてお酒飲んでるでしょう?」
「うん…すまんな」
「体が辛いから、もう止めてもらえない?お酒はお供えするから」
「分かったよ」
ばつが悪そうに頭を掻く仕草は、生前の姿そのままだった。

しばらく他愛もない会話をしていたが、夜が明けるのを見た父は、そろそろ行くかと腰を上げた。
Sさんも外まで見送るよ、と一緒に玄関に向かう。
だが、父が開けたドアの外は、いつもの景色ではなかった。
見知らぬ何処かの住宅街が広がっている。でもそれだけではない。

104:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/23 21:52:46.56 HxZdyY1N0.net
(2/2)
緑。緑。
色セロハン越しに眺めたように、世界中が緑色に包まれていた。

ああ、この人とはもう住む世界が違うんだ。
そう感じた途端、急に恐ろしくなり足が竦んだ。
「…それじゃあな」
父は軽く振り返ると静かに扉を閉めた。Sさんはどうしても外に出る事が出来なかった。
この日を境に、Sさんの深酒はぴたりと止んだそうだ。

父親の四十九日、その朝の出来事だという。

【了】

105: ◆ElPl8xGQc2 @\(^o^)/
14/08/23 21:55:45.17 JSbHM1NW0.net
32本目の蝋燭が消えました・・・
ヨサック ◆skAMDOCpdQ さん、ありがとうございました


                      γ
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むよ ◆x/HUavFqms さん、第33話をお願いします
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106:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/23 21:57:54.89 HxZdyY1N0.net
【第三十三話】 むよ ◆x/HUavFqms 様
『もやもや』

(1/2)

私はC県C市にあるクリニックに務めています。お陰さまで、かなり沢山の方にご利用いただいております。
クリニックはビルの中にあり、一階と二階がクリニックの施設になっています。
一階はオペ室や安静室、小さめの待合室、ラボなどがあります。二階が診察室やメインの待合室になっています。
院内には四ヶ所にセキュリティカメラがあり、その映像は診察室の机の脇にあるモニターで常時確認できる状態に
なっています。
ある冬の日のことです。午後7時近くになり、院内には殆ど患者はいませんでした。
たまたま診察介助の当番になっていた私は、診察室の中にいました。医師も書類作成等を行っており、診察室の机に
座っていました。
少々手持ち無沙汰になっていた私は、見るともなしにセキュリティカメラのモニターに目をやりました。
モニターは四分割されており、一階のオペ室前の待合室のカメラの映像が下段右側に映っていました。一階にはもう
スタッフ及び患者はいないようでメインの電気が消されており、非常口を示す緑色の明かりと、ラボの常夜灯だけが
ついていました。
薄暗いのですが、待合室の様子などは確認できます。ぼんやり映像を見ていた私は、自分の目を疑いました。つい
先ほどまで何ら異常を示していなかった映像の中に、もやもやとした白い煙のようなものが映っています。
クリニック内には煙探知機がありますが、それが反応している様子はありません。また、煙ならば空気の動きに影響
されますが、モニターに映っているその白いもやもやは、一点に止まったまま動こうとしません。

107:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/23 21:59:46.90 HxZdyY1N0.net
(2/2)

多分、一分近くモニターを凝視していたと思います。医師が何となく異常を感じとったのか、顔を上げました。
「先生、一階のモニターに…」私の言葉を聞いて、医師がモニターに目をやりました。
その間も、モニターには白いもやもやが映っています。二人で無言のままモニターを見つめていました。30秒ほどして、
医師が言った言葉は「確認してきて」でした。
私は怖さよりも不思議さが先にたち、一階に続く階段を降りました。
階段の先には、薄暗くはありますがいつもと変わらない待合室がありました。モニターに映っていた、あの白いもやもや
はありませんでした。
私は診察室に戻り、医師に異常は無かったことを伝えました。モニターに目をやると、白いもやもやは消えていました。
医師は「あのあとすぐに消えたよ」と言っていました。
当クリニックは開院当初より、一人も院内で亡くなった方はいらっしゃいません。
ただ、毎週2~5例は、D&Cを行ってはおりますが…。

【了】

108: ◆ElPl8xGQc2 @\(^o^)/
14/08/23 22:02:39.90 JSbHM1NW0.net
33本目の蝋燭が消えました・・・
むよ ◆x/HUavFqms さん、ありがとうございました


                      γ
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釣師官兵衛 ◆vW7zauZqAA さん、第34話をお願いします
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語り部希望は>>1の【受付スレ:したらば】へ
雑談、感想は>>1の【雑談スレ:したらば】でお願いします。

109:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/23 22:03:48.84 HxZdyY1N0.net
【第三十四話】 釣師官兵衛 ◆vW7zauZqAA 様
『冬の波止での話』

そこの波止に到着したのは21時くらいになる。車が1台停まっていたので、先行者がいるようでした。
ギャフもだしショルダーバッグを肩にかけロッドを持ち波止めを歩き始めた。
波止めは100mくらいの長さで真ん中から先端が実績があったため、真ん中くらいから始めた。
『ジッジッ』『ジッジッ』小気味よく私のロッドをしゃくる音が響いた。ふとすると、すぐ横で『ヒュンヒュン』ロッドが風を切る音が聞こえた。
あっ先行者の方だなと思っていると、隣から話しかけられた。
先行者『どうですか、釣れましたか?』
私『今、きたばかりなので・・・』
私『そちらはどうですか?』
先行者『今いたばかりですよ』
会話を交わしながら釣りをしていました。
次の波止移動しようと思い、
私『そろそろ行きますわ。頑張ってください』と声をかけ、
先行者『私は後少ししたらいきます。気をつけて』と返ってきました。
私はその波止めを後にした。

数日後、その波止で夜釣り中に海に落下し亡くなられた方がいることをニュースで知りました。私の隣で釣りをしていた方のようでした。
そう言えば会話の中で『今いたばかりなので』って『今逝ったばかりなので』と言っていたんですかね?

【了】

110:進行マモ ◆100mD2jqic @\(^o^)/
14/08/23 22:08:48.39 af0oyBtJ0.net
34本目の蝋燭が消えました・・・
釣師官兵衛 ◆vW7zauZqAA さん、ありがとうございました
                      γ
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タメ人参◆i.m1cVbrghng さん、第35話をお願いします
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111:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/23 22:11:01.64 HxZdyY1N0.net
【第三十五話】 タメ人参 ◆i.m1cVbrghng 様
『深夜のカップル』

(1/2)

もう7年くらい前の話なんですが
当時から両親とは別々に暮らしてまして、金がなく、お腹空いたんで実家にご飯を食べさしてもらいに行こうと思ったんです
深夜に(笑)
距離にして自転車で40分くらいの距離
でも自転車がパンクしてて徒歩だったんですトホホ(スイマセン)
季節は真夏の蒸し暑い深夜
汗だくになりながら人気のない橋を歩いてました
歩いてると自転車に2人乗りした若いカップルがゆっくり通り過ぎたんですね
大体気配ありますよね
人が自分の横の位置くらいまでこられると
通り過ぎるまで全く気付かなかったんです
その時はあまり気にもしませんでしたが
橋を渡り切り大きな道路に出ました
俺の歩いてた道はほぼ直線で向こうの方まで見渡せる道路横の歩道を歩いてました
歩いてると
ふと道路を挟んだ反対側の歩道を見たんですね
先ほどの自転車に乗ったカップルがゆっくり自転車こぎながら僕より後方にいるんですよ
その時も俺は、カップルはどこかで降りて喋ってて俺が気付かない内に追い越したのかなぁくらいに思ってました
また自転車で追い越される俺…その道にはコンビニとかはないんですね
飲食店もありませんし
またトコトコ歩く俺

112:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/23 22:12:14.77 HxZdyY1N0.net
(2/2)


しばらくして反対側の自分より後ろの方の歩道を見ると
またいるんですよ
そん時は、えっ?ってなりまして
この時点で二回も俺を追い越してるんですよ
曲がり門なんてないし寄る所もないんですよ
止まるしか、また自転車に追い越されてしばらく歩きます
ふと反対側の俺より後ろの方の歩道を見たら自転車に乗ったカップルがいるんです
この前の時点で反対側の歩道は意識してましたから自転車が止まり俺が追い越せば気付きますし
俺の後ろなんて事はないはずなんです
もう見ないようにして実家についてから
落ち着いて思い出したんです
初めカップルが通り過ぎた時、彼らには影がなかったんです
皆さんも人とすれ違う時は影があるか確認してみて下さい
ひょっとすると影がないかも知れないですよ…

【了】

113:進行マモ ◆100mD2jqic @\(^o^)/
14/08/23 22:15:35.03 af0oyBtJ0.net
35本目の蝋燭が消えました・・・
タメ人参◆i.m1cVbrghng さん、ありがとうございました

                      γ
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コソコソ ◆.PiLQRq.0A さん、第36話をお願いします
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114:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/23 22:17:10.69 HxZdyY1N0.net
第三十六話  コソコソ ◆.PiLQRq.0A 様
『死神』

(1/4)

群馬県に住む叔母は、カカア天下を地で行くような人だったのだが、
60の坂を超えた頃から胃腸や心臓などを悪くしており、多くの病院にかかっていた。
しかし、多くの病院をはしごするのも疲れてきたので、総合病院一つでまとめてしまおうと考え、
今年の春に各病院への挨拶回りも兼ねて紹介状を貰って回っていた。

叔母が受診していた多くの病院の一つ。
2014年8月23日現在、絶賛営業中の病院なので名前は伏せるが、消化器内科を専門にしている病院である。
個人病院ではあるが、バブル期の真っ只中に立てられたこともあり、三階建てで中庭を有する立派な病院らしい。
二階以上は以前は入院施設として使われていたようだが、医師の減少や経営の悪化に伴い縮小され、
現在は入院患者の受け入れを止めており、一階の診察室の一つのみが機能しているとのことだ。

その病院を訪れた叔母は、病院を変える経緯を説明し、紹介状を貰えることになった。
その時、医師から「胃カメラを前倒しでやってみてはどうか?」と提案されたそうだ。
以前に胃潰瘍を患った叔母は、半年に一回、定期健診で胃カメラを受けていたらしい。
幸い、その日は患者も少なく、希望すればすぐにでも胃カメラを受けることができるそうだ。

あまり胃カメラが得意ではない叔母は一瞬迷ったが、胃カメラ挿入の際の苦痛は医師の腕によるところも大きい。
―転院先の病院で下手は医者に当たるくらいなら。
叔母は結局、その日胃カメラを飲むことを決めた。

胃カメラは思っていたよりもすんなりと終わった。
もう何度か経験して叔母のほうもコツが分かってきたのか、全く苦痛はなかったと言う。
胃カメラを飲むのが苦手な叔母は、毎回苦痛を軽減するために鎮静剤を使っていたらしい。
―こんなことなら局部麻酔でも良かったかも。
鎮静剤はぼうっとするので、自分で運転して家に帰るにはしばらくの間病院で休まなければならなかった。

115:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/23 22:18:08.01 HxZdyY1N0.net
(2/4)

叔母は電話で家人に帰りが遅くなることを告げ、待合室のソファに座り、何をするでもなくぼうっとしていると、
「二階にベッドがありますけど、そちらで休んでいかれます?」
そう看護師が声をかけてきた。
一旦は辞退したが「胃カメラの後はベッドで休まれる人も多いですから」という看護師の言葉に
「そういうことなら」と腰を上げた。正直なところ、横になって一眠りしてしまいたかった。

看護師に連れられ、二階へ上がる。
経営が苦しい病院とはいえ、待合室には世間話をしている老人が居て、受付には看護師が居た。
それとは打って変わって、二階は静まり返っている。
節電のためか、窓の無い、暗い廊下の両脇には緑色に光る非常灯だけがぼんやりと浮かび上がっていた。
階段を上がってすぐ左手の扉を看護師が開けながら、叔母を招き入れる。
「こちらのベッド、どれでもいいんで使ってください。しばらくしたら呼びに来ますから」
そう言って看護師は忙しなく階下へと降りていった。
叔母はそれを見送ると、入り口から一番遠いベッドに横になって目をつぶり、すぐさま眠りに落ちた。

……ガラッ、という音で叔母は目を覚ました。
病室の窓から差し込む光がオレンジ色になっており、
―あ、大分時間が経ったみたいだし、看護師さんかな
まどろみの中で叔母はそう思った。
一瞬覚醒した意識がまた眠りへと引き込まれそうになったとき、カツ、カツ、カツ、カツ、という足音が部屋の中を回り始めた。

―何をしているんだろう?
なんとなく起きるタイミングも眠りに落ちるタイミングも逸してしまった叔母はそのまま足音に耳を傾けた。

116:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/23 22:19:32.33 HxZdyY1N0.net
(3/4)

カツ、カツ、カツ、カツ、カツ。

―あれ、この音、看護師さんじゃない。
―看護師さん、スニーカーだったし、こんな硬い音はしない。
胡乱な頭が思い至った瞬間、叔母の寝ているベッドのすぐ脇で地面を蹴る硬い音が響き、叔母は思わず目を開いた。

叔母の目の前、それこそ息も掛かりそうなほど近く、
サングラスをして、白髪をオールバックにした初老の男の顔があった。

悲鳴を挙げようと叔母は息を吸い込む。瞬間、叔母の鳩尾の辺りを男が強く押した。
叔母の喉から「ぐぇっ」と声が漏れ、吸い込んだ息が押し出される。
必死になって手を退けようと叩くが、男は全体重をかけるようにしてなおも叔母の鳩尾を押し込んでくる。
腕を引っかき、両手で揺さぶって、必死になって男を退けようとするが、男はびくとも動かない。

―殺される!
叔母は本気でそう思った。必死で抵抗する叔母の顔を見つめ、サングラスの奥で男の目がぐにゃり、と歪んだ。
―この人、普通の人じゃない!
必死で抵抗する叔母が拳を握り締め、男のサングラスめがけて叩き込んだ。
叔母の拳が当たり、男が倒れる。叔母はすぐさま立ち上がって、転げるように階段を下りた。

血相を変えて待合室に飛び込んだ叔母はそこにいた看護師に事情を説明した。
「もう診療時間は終わってますから、患者さんは誰も残っていないですよ」
看護師がそう言って、叔母の居た病室を見に行ったが、部屋はもぬけの殻だった。
結局、寝起きに悪い夢でも見たのだろうという笑い話になり、叔母は恥ずかしい思いをしながら家路へと着いた。

117:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/23 22:20:45.17 HxZdyY1N0.net
(4/4)

それからしばらくして、総合病院へ転院した叔母は定期健診を受けることになった。
胃カメラは例の病院でしていたため、医師からは「今回はやらなくても良い」と提案があったが、
例の一件以降、どうにも胸焼けがする叔母はレントゲンを撮ってもらうことにしたと言う。

検査後、叔母は複雑な表情を浮かべる医師の前に呼び出されていた。
「胃の上部に影が見られます。詳しく検査してみないと分かりませんが……」
数週間前の胃カメラでは全く映らず、今回のレントゲンで見つかった影。
「恐らく何かが映りこんだんだと思います。レントゲンを見れば、胃の入り口まで影は来ている。
 これが腫瘍だとすれば胃カメラで見落とすことはまず無いし、その時の胃の内部写真にも異常はありませんでした。
 数週間でここまで腫瘍が肥大化することもありえませんし……」
医師も首を傾げながら説明し、叔母はその日の内に再び胃カメラを飲んだ。

影はガンだった。

この夏、叔母は胃の殆どを切除する手術を受け、すっかりやせ細ったにも拘らず、軽快に「死にはしないわよ」と笑っていた。
「だって、ガンを身体に入れている最中の死神を殴り飛ばしたんだもの」

【了】

118:進行マモ ◆100mD2jqic @\(^o^)/
14/08/23 22:25:03.26 af0oyBtJ0.net
36本目の蝋燭が消えました・・・
コソコソ ◆.PiLQRq.0A さん、ありがとうございました

                      γ
                      (
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杏仁 ◆1YN5ZdoG2w さん、第37話をお願いします
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語り部希望は>>1の【受付スレ:したらば】へ
雑談、感想は>>1の【雑談スレ:したらば】でお願いします。

119:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/23 22:27:00.71 HxZdyY1N0.net
【第37話】 杏仁 ◆1YN5ZdoG2w 様
『無題』

(1/3)

これは、私が高校3年の時に実際に体験した話です。
7月の終わりに差し掛かった頃。時間は深夜の1時。
そろそろ寝ようかと布団に入りました。
うとうととしていたその時、体が急に縛り付けられた感覚に陥り、全く自由がきかなくなってしまいました。

金縛りです。

これまで一度も体験したことがなかったので、(お!これが金縛りってやつかっw)なんて、のんきな事を考えて
いました。

それからしばらく、体が動かないという状況を半ば楽しんでいた時です。

コンコン、コンコン、、、

私の寝ている枕の上の方にある窓をノックする音が聞こえてきたのです。
(親かな?でもこんな時間に外から?おかしいな…)
依然として体が動かない私は、その音に不信感を抱きながらじっとしていました。

コンコン、コンコン…

再びノックをする音が聞こえてきました。
その音は次第に大きくなり、やがて、
ドンドンドンッ!ドンドンドンッ!

120:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/23 22:28:10.27 HxZdyY1N0.net
(2/3)

窓を思いっきり叩く音に変わっていました。
(窓の向こうに得体の知れない何かがいる…!)
私はそう直感しました。
さっきまでこの状況を楽しんでいた自分が嘘のように、一気に恐怖感が襲ってきました。
なおも金縛りは続いています。
私はどうする事もできないまま、ただただ部屋中に広がるその「音」に耐えていました。

………

音が止んだ。

と、その時、

ガラガラガラッ!

なんと窓が開く音が聞こえてきたのです。
私は心臓が飛び出しそうになりました。

そしてその「何者か」が、私の寝ている布団に近づいてくる足音が聞こえてきたのです。
(どうしようどうしようどうしよう…)
とてつもない恐怖で震えている私の方へ、そいつはゆっくりと近づいてきます。

………………

121:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/23 22:28:57.27 HxZdyY1N0.net
(3/3)

どれくらい時間が経ったでしょうか?
ものすごく長い時間が経過したように感じましたが、あることに気がつきました。
金縛りが解けています。
金縛りの間、恐怖でぎゅっと目をつぶっていましたが、うっすらと開けてみました。
そこにはなにもいませんでした。

あとあとになって考えてみると、これは金縛りになった際に聞こえてきた幻聴だったのでしょう。
その時はそんな事を考える余裕など全くありませんでしたが。

これが、私が唯一経験した心霊体験です。

【了】

122:進行マモ ◆100mD2jqic @\(^o^)/
14/08/23 22:33:09.11 af0oyBtJ0.net
37本目の蝋燭が消えました・・・
杏仁 ◆1YN5ZdoG2w さん、ありがとうございました

                      γ
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        (  _   ,、'"�


123:@   ̄          `ー--─'" コソコソ ◆.PiLQRq.0A さん、第38話をお願いします  ----------------------------------------------------- 語り部希望は>>1の【受付スレ:したらば】へ 雑談、感想は>>1の【雑談スレ:したらば】でお願いします。



124:いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw @\(^o^)/
14/08/23 22:40:00.94 2yX9zsEM0.net
第38話  コソコソ ◆.PiLQRq.0A 様
『自殺者の末路』

(1/3)

自殺した者の魂は浮かばれない、という話を良く聞く。
賽の河原で延々と石を積むとか、成仏できないまま現世をさまよい続けるだとか、色々な話がある。
毎夏、怪談が好きな人間を集めて怪談会を開いているが、今年は何の流れだかそういう話になった。
「自殺はやっぱ駄目だね」と場が収まりかけたとき、その中の一人が神妙な面持ちで話し始めた。
「自殺者の末路ってさ、ちょっと違うと思うんだけど……」と前置きをして。

この話をしてくれたSという男の知り合いに梶という男がいた。
梶は弱いくせにギャンブルが好きで好きで仕方なく、いつもどこかに借金をしていた。
そのくせ、プライドは一人前以上に持ち合わせており、『いつか俺はビッグになる』と信じているような奴だった。
当時、梶は都内の割と広いマンションに住んでいたと言う。
しかし、そんな男だから、家賃や光熱費などは滞納し放題。ついには管理会社から立ち退きを命じられてしまったらしい。
梶は新しい部屋を探すとき、彼が不動産会社に出した提案は『とにかく安く、とにかく洒落ていて、都内のマンション』だったそうだ。
不動産会社は最初の内はくつか安い物件を紹介していたが、梶の無茶な要求に対して、
「決してお勧めではないんですが、もうこれくらいしか……」と、一つの物件を紹介した。

都内の一等地、広さは前に梶が住んでいたマンションよりも広く、家賃はなんと10,000円だと言う。
ただし、確実に「出る」と紹介された。

梶は即座にこの物件に決めた。
再三バツが悪そうに止める不動産会社を振り切って、部屋の中を見ることもなく、その場で契約を結ぼうとしたそうだ。
しかし、不動産会社は契約するためにある条件を出した。
『その部屋に梶が一週間泊まり、その間毎日、不動産会社へ連絡を入れること』
梶は二つ返事で頷いた。

125:いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw @\(^o^)/
14/08/23 22:41:02.50 2yX9zsEM0.net
(2/3)

一日目、梶は一週間の宿泊に必要な物を持ってそのマンションを訪れた。
玄関を入るとダイニングキッチンがあり、曇りガラスがはめ込まれた仕切戸の向こうには広々としたリビング広がっていた。
梶は荷物を置くやいなや早速パチンコへ出かけ、帰ってきたのは深夜0時に近い時間だった。
缶ビールを何本か空け、不動産会社が用意してくれた布団に身体を預けた。

どれくらい眠ってしまったのかは分からない。『ドスンッ!』と言う大きな音で目が覚めた。
音の出所に視線を向け、梶は思わず息を呑んだ。
リビングとダイニングキッチンを隔てる曇りガラスの仕切戸に影が映っていた。
最初は何か分からなかった梶も、しばらく見ているとようやくその正体が分かった。

―首吊りだ。
それは地面から数十センチほど浮きあがり、頭を垂れている人間の影だった。
首を支点にして左右にゆらゆらと揺れ動き、その度に『ズリ…ズリ…ズズッ……』という縄がこすれる音が辺りに響く。
梶はまんじりともせず、その影を睨み付けていた。
徐々に影の振れ幅は小さくなり、こすれる音が止むと同時に影は消えた。

二日目、梶は昨夜に体験したことを不動産会社で夢中になって話した。
不動産会社からは『やめておきませんか?』と何度も薦められ、他の物件も紹介されたが、
『特に何をされるわけでもないから』と梶は首を横に振り、その部屋に泊まり続けることを決めた。

その夜も次の夜も、梶の眠りは首吊りの音で妨げられた。
しかし、四日目ともなるとさすがに少しは慣れ、梶はその音が決まって深夜2時に鳴ることに気がついた。
―じゃあ、その時間、部屋にいなければいいじゃないか。
五日目、そう思い立ち、0時近くに部屋を出て安い居酒屋で酒を煽っていた。
頃合を見て部屋へ戻り、何事もなく朝まで過ごすことが出来た。
―こりゃあいい
梶はそれから毎日、飲み歩くようになった。

約束の一週間が過ぎ、梶はなおも渋る不動産会社から部屋を契約した。

126:いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw @\(^o^)/
14/08/23 22:42:22.41 2yX9zsEM0.net
(3/3)

「でね、ここからは俺の想像なんだけど……」
そう前置きをして、酒を舐め、Sは話を続けた。

「梶はもともと金が無い奴だし、さすがに毎日飲み歩くわけにも行かなくなったんじゃないかな。
 しばらくは知り合いの家に泊まったりしたのかもしれない。
 でも、それも出来なくなって、仕方なくあの部屋に戻ったんだと思う。
 それで、多分また見たんだよ、首吊りの影」
 
「俺さ、自殺者の末路ってさ、賽の河原で石積みでも浮遊霊になって彷徨うんでも無いと思う。
 きっと繰り返すんだよ、自殺を。死んだ瞬間からずっと。
 だから『死ねば楽になる』なんて絶対嘘だと思う。死ぬ思いってのが延々と続くんだし。
 死に続けて、死に続けて、もう何がなんだか分からないようになって……
 代わりを見つけて、引きずり込むんだろうなぁ」

Sはそう言って話を終えた。
梶の訃報が届いたのは、Sが都内の不動産会社を辞め、地方で再就職をしてから四日後のことだったそうだ。

【了】

127:進行マモ ◆100mD2jqic @\(^o^)/
14/08/23 22:44:49.19 af0oyBtJ0.net
38本目の蝋燭が消えました・・・
コソコソ ◆.PiLQRq.0A さん、ありがとうございました

                      γ
                      (
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仮の人 ◆sFvsmjhswAfh さん、第39話をお願いします
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語り部希望は>>1の【受付スレ:したらば】へ
雑談、感想は>>1の【雑談スレ:したらば】でお願いします。

128:卍3286卍ss@\(^o^)/
14/08/23 22:44:55.39 NF0S3q2R0.net
「2時20分」

あの出来事は 高校受験が終わり やっと肩の荷がおりた 中学3年生の時の出来事です...

何時ものように午前0時を回った頃 当時買ったばかりのステレオで音楽を聴きながら寝るのが日課になっていました。
自分の部屋は自宅二階の北側にあり 脇の倉庫によじ登り屋根伝いに窓から出入り出来る状態で 悪友達が急に
夜中に窓から遊びに来ることもしばしばで それが普通になってました。

ある夜 仰向けで寝ているところを逆さまに頭から覗かれた感じがして 目が覚めました...
オレは夜中よく遊びに来ていた友人が来たのだと思い 起き上がりながら「Sなのか?」と声をかけましたが そこに友人の姿は無く
「何だ...ユメか...」って感じでまた直ぐ寝ました。

翌日学校でS君に「昨日の夜 ウチに遊びに来なかった?」と聞いたところ。。
「オレ昨日は行って無いよ 誰か違う奴じゃないの?」とS君に言われ そうなのかナって感じで深く考えませんでした。。

その夜 何時もの様に音楽を聴きながら眠りにつくと 夜中に目が覚め 寝ながらステレオのデジタル時計を見ると「2時20分」
それと同時に ゾーッともの凄い殺気に襲われ 足元を見ると暗闇に誰かが立っている...
誰だっ!っと思ってもカラダは動かず声も出ない... だんだんボンヤリと青緑色の姿が近づいてくる...
「これはいったい何なんだ?」と心の中で叫ぶが 声にならない...
動けない状態のオレに そいつは徐々に足元から覆い被さってくる...
「ヤバイ...人間じゃ無い...」幼い頃から不思議な体験が多かったせいか 直ぐに判った。。

「どーすりゃいいんだ? 」恐怖で半分パニックになりながら考えるがどーにもならない...

129:進行マモ ◆100mD2jqic @\(^o^)/
14/08/23 22:51:40.58 af0oyBtJ0.net
>>122
おやお客様  いえ、迷い人でしょうか?
狐狸妖怪に惑わされたのか、入り口とお席が違うようでございます

どうぞこちらの入り口URLリンク(jbbs.shitaraba.net)
からお入りになって下さいませ

130:仮の人 ◆sFvsmjhswAfh @\(^o^)/
14/08/23 22:54:05.04 xjoFQ2ov0.net
【第三十九話】
『幽霊実験』

(1/2)

A子さんはある晩、テレビで心霊番組を観ていたそうだ。
その時やっていたのが、自分の部屋に幽霊がいるかどうか調べる方法というものだった。
やり方は、
1、自分の部屋の玄関をイメージする
2、そのまま部屋に入り、窓を開けていく
というもので、その間に誰かがいればそれが部屋にいる幽霊だ、とのこと。
お手軽だしちょっと面白そうだと感じたA子さんは、自分でも試してみることにした。
一人暮らしの自分の1ルームマンションの玄関をイメージする。
ドアを開けると右手にキッチン、左手にトイレとバス。誰もいない。
さらにドアを開き、狭い自分の部屋を見渡す。

誰か居る。

部屋の右奥、ソファーの真横。天井まで頭が付きそうな程背の高い、全身真っ黒な男が俯いて立っていた。
「きゃっ!」
驚いて目を開け、その場所を振り向く。もちろんそんな男はいない。
多少気味は悪かったが、心霊番組を観ていたせいで変なイメージが残っていただけだろうとA子さんは納得することにした。

その日の深夜。
A子さんは寝苦しさで目が覚めた。
どうも視線を感じて眠れない。頭の中に先ほどの黒い男のイメージが浮かび離れない。
怖いテレビ見たから。気のせい、気のせい。
そうやって何度も自分に言い聞かせ、その日はどうにか眠ることができた。

131:仮の人 ◆sFvsmjhswAfh @\(^o^)/
14/08/23 22:54:32.97 xjoFQ2ov0.net
(2/2)

しかし、次の日からふとした時に部屋の中のあの場所から視線を感じるようになった。
毎日というわけではない。だが、気味の悪さは抑えきれない。
しかも、日が経つにつれその視線を外でも感じるようになってきてしまった。
ふとした瞬間の電柱の影。職場のロッカーの隅。電車の窓の向こう側。
気が付くとあの男の姿が見える気がしてA子さんは精神的にまいってしまっていた。
あんな実験したから。あんな部屋に住んでるから。
友人に愚痴をこぼすと、「じゃあ、引っ越したら?」と軽い返事。
でも、案外いい考えかもしれない。
このままだと気が狂いそうだし、そういえばそろそろマンションの賃貸契約の更新があった。ついでにもっと職場に近い所に引っ越そう。

引っ越しの日、A子さんは久しぶりに晴れ晴れとした気分で新居の荷物を解いていた。
疲れたな。ちょっとソファーで横になろう。
ごろんと横になり、目を閉じて休憩していたA子さんが再び目を開いた時、自分を見下ろすあの男の姿があった。

【了】

132:進行マモ ◆100mD2jqic @\(^o^)/
14/08/23 22:56:57.02 af0oyBtJ0.net
39本目の蝋燭が消えました・・・
仮の人 ◆sFvsmjhswAfh さん、ありがとうございました

                      γ
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                      _ノ

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ロクイチマル ◆5wVJdkoU4E さん、第40話をお願いします
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語り部希望は>>1の【受付スレ:したらば】へ
雑談、感想は>>1の【雑談スレ:したらば】でお願いします。

133:ロクイチマル ◆5wVJdkoU4E @\(^o^)/
14/08/23 22:57:30.72 fYC5LdIC0.net
【第四十話】『怖い夢』

[1/2]
夢っていうものは大概、見ている最中はまるでそれが現実のように感じられて、目が覚めた瞬間は内容を鮮明に覚えているのに、
起きて顔でも洗っているうちに頭に霧でも掛かったみたいにそれがどんな夢だったかを忘れてしまう、そんなものだと思う。
俺が普段見る夢も大抵そういう感じなんだが、昔見た夢で、その内容の隅々まで克明に覚えているものがある。

それは俺が小学1~2年生くらいの頃に見た夢だった。
はじめ、当時小学生の俺は、壁一面に変な象形文字みたいなものが書かれた古代エジプトの遺跡の中で、
無機的な表情のマネキンみたいなお化けに追いかけられていた。
(同年代の人には分かると思うけど、寝る前に読んでた某カードゲーム漫画の影響を多大に受けてるw)
そこまではしょっちゅう見るようなありふれた怖い夢だったんだけど、マネキンお化けから逃げるうちに、
ふと俺はそれが夢であることに気づいた。
何かきっかけがあったわけでもないんだけど、何故か「あ、これ夢だ」って分かったんだ。
自分が夢を見ていると気づいた瞬間、いつのまにか俺は古代エジプトの遺跡ではなく、
背丈と同じくらいの高さの草(芦?)が生えた土手みたいなところにいた。
そして不思議なことに、まだ何かに追いかけられているという実感があった。
さっきみたいにマネキンお化けの姿は見えないが、逃げなくてはいけないという気持ちに駆られた俺は、
それが夢だと分かっていながらも何となく怖くて、草をかき分けながら走り続けた。

走って逃げいている途中で、何人かの大人が立っていた。
もちろん俺は助けを求めるために話しかけたんだが、そこに立っていたモブキャラみたいな大人は皆、
顔がムンクの叫び?とは少し違うけど、そんな感じの人間とは思えない形相をしていた。
俺は走りながら、懲りずに何度も出会う大人の顔を覗き込むけど、揃いも揃ってムンク状態。
そうして逃げているうちに、俺はなんとなく、この夢はこのままずっと覚めることがないんじゃないか?
という予感がしてきた。
それに気づいた時はマジで怖くなって、誰でもいいから助けて、と泣きながら立ち止まってしまった。

と、そこで後ろから、俺の肩にポンと手が置かれた。


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