百物語 2014  本スレat OCCULT
百物語 2014  本スレ - 暇つぶし2ch172:進行マモ ◆100mD2jqic @\(^o^)/
14/08/24 00:22:26.30 Dh7XLcnW0.net
53本目の蝋燭が消えました・・・
りんご酢 ◆.un5wFVaHw さん、ありがとうございました

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チャゴ ◆ePOonrVZq6 さん、第54話をお願いします
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173:いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw @\(^o^)/
14/08/24 00:24:02.42 iVpQyD8K0.net
【第54話】 チャゴ ◆ePOonrVZq6 様

『のっぺらぼう』
(1/3)

あるとき、会社の飲み会でとある同僚の隣になったことがありました。
飲み会はだいぶ盛り上がって、寝始める人や帰る人もいる中、
お酒が強い私と同僚はほとんど飲み比べのようになっていました。

しばらくして、ふと同僚がグラスを載せる紙の丸いコースターに
人の顔を描いていることに気がつきました。
ずいぶん子どもっぽいことをするなあと思った私は、
「それ何してるの?」
と同僚に訊ねました。

すると同僚は、ああ、と返事をして、
「酔っていると思って聞いて」
と言いました。
「鼻からそのつもりだよ」
と私が答えると、同僚はこんなことを言い始めました。

「実はさ、俺むかしからしょっちゅうのっぺらぼうを見るんだよ」

同僚の地元は温泉街で、家にあるお風呂に入るよりも
近所の温泉に行くことの方が多いような土地だったそうです。

同僚は毎日夕方になると近所の同級生たちと温泉に行っていたのですが、
温泉は朝の5時から開いており、たまに朝風呂に行くこともあったのだとか。

174:いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw @\(^o^)/
14/08/24 00:25:15.98 iVpQyD8K0.net
(2/3)

そんな彼が小学生のとき、朝風呂に行くと一人のおじいさんが身体を洗っていました。
同僚が「おはようございます」と背中に声をかけると、おじいさんは
「あーい、おはよう」と答えました。

その声としゃべり方で同僚は、近所のあのおじさんだ、と分かったそうで、
自分もお風呂に入って身体を洗うことにしました。

しばらくして同僚が湯船に浸かろうとしたときでした。おじいさんがふと
「きれいになったか?」
と聞いてきたそうです。

声につられておじいさんを見ると、おじいさんは眼も鼻も口もなかったそうです。

怖くなった同僚は慌ててお風呂を出て、一目散に家に逃げ帰ったとのことでした。

この話を聞いて私が
「狐にでも化かされたんじゃないの?」
と言うと、同僚は
「それなら良かったんだけど……」
と歯切れの悪い言い方をしました。

175:いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw @\(^o^)/
14/08/24 00:26:12.07 iVpQyD8K0.net
(3/3)

気になって話を聞いてみると、実はそのおじいさんはその日の夕方警察に捕まったのだとか。
なんでも前の日の夜、奥さんと口論になって殺してしまったそうで、
同僚と一緒にお風呂に入っている時にはすでに奥さんを殺した後だったとのこと。

「ニュースにもなったからビックリしてさ。それから俺なんか分かんないけど
○を見ると怖くなるっていうか、どうしても顔を描いちゃうんだよね」

そんなことを良いながらコースターに顔を描いている同僚に、
「へえ、不思議なこともあるね」
と言っていたのですが、私はあることが気になっていました。

それは同僚が最初に言った台詞。
「実はさ、俺むかしから『しょっちゅう』のっぺらぼうを見るんだよ」

殺人を犯した人が、同僚にはのっぺらぼうに見えるのだとしたら、
彼は今までどれくらいの「のっぺらぼう」を見てきたのでしょうか。

【おわり】

176:進行マモ ◆100mD2jqic @\(^o^)/
14/08/24 00:27:23.19 Dh7XLcnW0.net
54本目の蝋燭が消えました・・・
チャゴ ◆eP


177:OonrVZq6 さん、ありがとうございました                       γ                       (                       _ノ                    /                 __              ,、'"   .  `' 、              i`ー  _    ', .             l| !|      i""!|                  }: }i    |{  !j                〈| 'J |!   }j  :}             _ノ;し  i}  {J  |          ,、-,、'         ハ- 、          ( .( '、_    _ ,ノ  ノ:i   )         ,、'""`ー---‐'"フ、_ - _,、' -'"         (  _   ,、'"    ̄          `ー--─'" 蓬莱◆hB4rS4et48Vf さん、第55話をお願いします  ----------------------------------------------------- 語り部希望は>>1の【受付スレ:したらば】へ 雑談、感想は>>1の【雑談スレ:したらば】でお願いします。



178:蓬莱 ◆hB4rS4et48Vf @\(^o^)/
14/08/24 00:31:47.05 eHuULVV/0.net
「第五十五話」『たどり着けない聖地』

(1/4)
これは友人との会話を文章にしたものです。
彼は霊は一切感じない、むしろそれを楽しんでいる感じのタイプ。
ある日、いつもの居酒屋で飲んでる時に心霊の話になった…

「お前は心霊とか信じるか?」
「富士の樹海にテントを貼って、数日過ごしたら面白いかもなあ(笑)」
って本気で言ってる人間で、聞いてみるとけっこう悪さもしてた。

「霊なんて見えないから怖くないって。子供のとき夜中に墓場に行って、
お墓の前で丑三つ時にカッターを歯に仕込んで鏡を見たら後ろにヤバいモノが見えるって怪しげな儀式をきいて試したんだ」
「でも結局、何もなかったし、そのとき歯ぐきにカッターの刃が刺さって血が止まらなかったのは困ったな」
「腹が立ってお墓にオシッコかけてきてやったな(笑)」

「あと、むかしコックリさんが流行ってる時に、わざと十円玉の指を強引に、
“み・な・ご・ろ・し”って動かしてやったら、参加してた女子生徒の何人かが本当に具合が悪くなって、
その子たち一週間ほど学校を休んでたっけ(笑) 俺はそれを見て腹の中で笑ってたなー。要は「集団ヒステリー」ってやつだ」

そうやってケタケタ笑うを友人をみてこいつは一生、霊とは縁がないなって思った。
しかしふっと思い出したように彼は、
「でも…今でも何故か不思議だな~って思う出来事があるなあ…ユタって…知ってるか?」
「ユタ?霊媒師のことだろ?」

・ここからいわゆる体験談になるのです。

彼は沖縄出身で、知らない方もいらっしゃると思うので、
彼女ら“ユタ”とは沖縄の独特の霊能者の呼称です。
「巫女」とか「シャーマン」と呼ばれる人たちのことです。
まれに呪術めいた事を行なったりすると聞きました。
彼にとって「ユタ」は意外に身近な存在だったらしいですが…

179:蓬莱 ◆hB4rS4et48Vf @\(^o^)/
14/08/24 00:33:40.48 eHuULVV/0.net
(2/4)
小学6年生のとき、「ユタの聖地」に興味本位で行ってみたくなって、そこで何か起こったらそれを
夏休みの自由研究にしようと思い立ったんだ。
要はユタの女性たちが修行場で使っていた所なんだけど、そこって男子禁制って云われてる場所で、
地元の特にお年寄り連中は絶対に場所を言おうとしないんだ
でも色々と情報を集めて、ある程度ここだなって場所は割れたんだ、で
とりあえず計画を立てて、お金を貯めて、いざ「聖地」へ行こうって時の3日前に、
友人たちとグラウンドでサッカーをしてる最中に、ボールを蹴るつもりが地面の出っ張った所を思い切り蹴って左足を骨折してな
そのまま病院へ運ばれて、レントゲンを撮られてギブス付けられて痛み止めを処方されたけど、
じつは俺は薬のアレルギーがあって、
薬アレルギーの旨をドクターに告げたんだけど、たまたま同じ苗字の人物がいて、ぜんぜん合わない薬を処方されて、
そのショックで2日間意識不明になってな
あと5分処置が遅れてたら助からなかったと言われて…、その年はそれで聖地巡業は断念したんだ。まあ偶然だろうな。

2年目の年の、中学1年生の夏休みに、また自由研究で例のユタ聖地に行こうと思ったんだ
でも行くと決めた前日に、俺を含める家族全員が食中毒になったんだ、未だに原因は分からない、
またまた入院してしまって、夏休みラスト4日目だったし、下痢はひどいし仕方なくその年も断念した。
ま、これも偶然だろうな

3年目…中学2年生の夏休みに、今年こそは絶対に行くぞ!って決めて、また例の場所へ行こうと綿密な計画を立てたんだ
行くと決めた日の5日前に、家族で車でドライブに出かけてて俺は後部座席に座っていて、
そのドライブ中に、俺の後ろの座ってた席に横から狙い撃ちするように、ホロの付けたトラックが追突してきて、
シートベルトしてなかったから思い切りガラスに頭を痛打してな気を失って、額から血がダラダラ流れて気を失ってな、
気がついたらまたも病院のベットの上だったんだ。
2週間ほど入院して、退院の時はすでに学校が始まってから、その年もユタの聖地巡礼は断念するかたちになってしまったんだ。

180:蓬莱 ◆hB4rS4et48Vf @\(^o^)/
14/08/24 00:36:28.93 eHuULVV/0.net
(3/4)
4年目…中学3年生の夏休み、今年こそは何もないように、早めにきちんと計画を練ってその年は前回のこともあって、早めに計画を立てたんだ
その時は友人にも声をかけて、行こうと意気込んでた心霊好きな友人2人を誘えることに成功した。
出立2日前に、余裕があったし、俺を含め一緒にその行く友人と関係ない2人、全員5人で近くの浜辺で�


181:aBQして海水浴をしていたんだ。 その海でみんなで泳いでいて、一緒に行く2人が同時に溺れたんだ。しかも肩が付く程度の浅瀬でな… 俺ら3人は必死に救助して、浜辺に引き上げたら2人の両足首にくっきりとミミズ腫れができてた 沖縄はクラゲもいるから、それに刺されたと思ったけど、他の友人は手の跡に似てるとか騒いでたよ そのおかげで2人ともビビって聖地行きはキャンセルしたけど、おれは一人でも行くぞ!って意気込んでいたよ で、当日はもしやの沖縄独特の、台風が来るかもしれない天気だった まあ大丈夫だろうと思って部屋で寝てたんだ いきなりドーンって感じの衝撃があって気がついたら、部屋の柱が落ちてきて、 壁に穴が空いていて、屋根も一部壊れてて、それは庭のヤシの木が折れて俺の部屋だけに倒れてたんだよ 柱に挟まれ動けなくなったけど、どうにか抜け出して家から家族で祖母の家に避難してな、台風が去った次の日 ヤシの木をどかして部屋の片付けをしてたんだ。部屋には行くための準備をしていたリュックがあったんだけど 中には食料とか、衣服などを入れてて、行くまでのバス乗り継ぎ、タクシー代として6000円だったから、カンカンの中に入れてたんだ でもなぜかリュックはあるのに中から、カンカンだけがそっくり消えていて辺りを探しても見当たらなくって、また仕方なく断念したんだ 次の年に、高校を中退して上京したから結局は行けずじまいでな…



182:蓬莱 ◆hB4rS4et48Vf @\(^o^)/
14/08/24 00:37:40.33 eHuULVV/0.net
(4/4)
「たしかに偶然ぽいといえばそうだが、余談があってな…」

じつは…4年目に聖地に行こうって誘った友人のうちの1人だけど、あの後すぐ家族に不幸があってな
とつぜん父親が倒れたんだ
で、介抱していた母親が疲労から卒中になって半身不随。
ちょっとして弟が家の前で突然車の交通事故
家を出た途端に、とつぜん車に跳ねられて重症でそのまま入院。
あまりにも不幸が続いてたので大騒ぎになって、なにかの呪いかと噂になってしまって、
結局ユタを呼ぼうって事になったんだ
内容はよくわからないけど、お祓いしてもらったときに、その儀式で鶏の首をはねたらしい
たぶん身代わりなんだろうな…
まあ結局、不幸は収まっんだけど働き頭の父と母は亡くなってしまった…
その後、父が隠していた借金が発覚してな、家を差し押さえという状態になってしまった
友人は借金返済のために働き詰めになってな、
3年くらい頑張ってたかな…、友人は借金返済のため頑張っていたけど…あと2、3ヶ月で差し押さえ期限が近づいてたんだけど
その最中に、そいつは車で事故死。たまたま助手席に座っていたらしいんだけどな
幸か不幸かそいつは生命保険に入っていて、おかげでその金でどうにか借金は返済できたんだ
でな…その依頼したユタってのが、例の聖地で修行を積んだ人物だったんだ……

【了】

183:進行マモ ◆100mD2jqic @\(^o^)/
14/08/24 00:38:26.57 Dh7XLcnW0.net
55本目の蝋燭が消えました・・・
蓬莱◆hB4rS4et48Vf さん、ありがとうございました

                      γ
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葛 ◆.zethFtqnU さん、第56話をお願いします
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184:みかん山 ◆.TybZR8Ddk @\(^o^)/
14/08/24 00:39:50.20 8PvyQZd70.net
【第五十六話】黒い神様

(1/2)
自分の祖母が生まれた東北の漁村の話
昔そこの村に信心深いおばあさんがいて、どこからか拾ってきた白木のエビス像を家の離れの祠に
祀っていた。
その像を祀って以来、おばあさんは翌日の天候や漁の具合を頻繁に予言し、それがよく当たるので
いつしか村の人たちは おばあさんとおばあさんが祀っているエビス像を崇めるようになっていった。

昭和20年頃そのおばあさんは亡くなり、おばあさんのエビス像は地区を見下ろす丘の上に
お堂を作って安置された
村の者たちはよくそのお堂に手を合わせていたそうだ
しかし数年たった頃から、お堂の中の真っ白だったエビス像が黒っぽくなってる事にみんな気付いた
木でできた物だからそういうこともあるだろう、と思っていたが
像の黒ずみは年々ひどくなって、ほとんど灰色に近い像になってしまった。
さすがに村の人たちも気味悪がって「何か不吉なことが起こるんじゃなかろうか」と思い始めた。

185:進行マモ ◆100mD2jqic @\(^o^)/
14/08/24 00:40:01.04 Dh7XLcnW0.net
失礼致しました

みかん山◆.TybZR8Ddk さん、第56話をお願いします
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186:本当にあった怖い名無し@\(^o^)/
14/08/24 00:41:54.99 8PvyQZd70.net
(2/2)
ある時、通りすがりの旅の山伏が、「この像は多くの厄を吸い過ぎて厄の塊になっておる」
「祈祷して厄を浄化しないと村に災いが起こるだろう」と言ってきた
祈祷を頼んだところ、当時としては高額な金額を要求されたが、丸一日の祈祷の結果、
エビス像は見事に元の白い像に戻った。
みんな大変驚き、信心深い村の人たちは「こりゃ大したものだ」と満足していた。

それから数年は何事もなかったが、ある年の春、またエビス像の様子がおかしいなってきたので
調べてみると、エビス像の表面が剥げてきているのが分かった-あの山伏は像の表面に白い塗料を
塗っただけだったのだ。
村の人たちは憤慨したが、それ以上の問題があった
塗料の剥げた下から出てきたエビス像の肌は以前に増してどす黒い色に成り果てていたのである。

いよいよ不吉な予感が高まる中、5月になってエビス像の置いてあるお堂が深夜に急に発火した
村の人たちは大変だとお堂に駆け付けたが既にお堂は全焼でエビス像は真っ黒の炭になってしまった
突然の火事に驚いた村人が段々と集まってくるうちに周囲が変事が訪れた
突然、轟音とともに巨大な津波がその地区を襲ったのだ。
周囲の村が大きな被害をだし、その村も多くの家が倒壊したが、住人は丘の上のお堂に集まっていたため
死者はほとんど出なかったという。

津波の原因は外国の地震だったそうだが、村人の日頃の信心にエビス像が応えてくれたのかもしれない。

【終わり】

187:進行マモ ◆100mD2jqic @\(^o^)/
14/08/24 00:42:29.32 Dh7XLcnW0.net
56本目の蝋燭が消えました・・・
みかん山◆.TybZR8Ddk さん、ありがとうございました

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葛 ◆.zethFtqnUさん、第57話をお願いします
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188:いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw @\(^o^)/
14/08/24 00:43:31.84 iVpQyD8K0.net
【第57話】 葛◆.zethFtqnU 様

『声』

普段はメールでやり取りしているのに、その時だけは何故か電話で話をした

『でさ?、この御時世(…ザザッ…)に、仕事があるだけいいのかもしれないけど、(…ザザッ…)毎日残業でさ、
 帰るのいつも10時(…ザザッ…)くらいになってさー』
その日はやけに彼女の声に混じってノイズがひどく、聞きづらかった
そのうち、ノイズがどうも人の声のように聞こえてくるので、彼女に聞いてみた
「……今、テレビかなんかつけてる?」
すると彼女は、『あ、またかぁ?』とあっけらかんとして教えてくれた
『ここ(…ザザッ…)最近さ、電話して(…ザザッ…)るとよく言われ(…ザザッ…)るんだ。
 「今テレビつけてる?」と(…ザザッ…)か、「後ろ、誰かいる?」とか』
他にも、電話でなくても「今何か言った?」と最近になってよく聞かれるようになったと彼女は言う
その時ちょうど会話が途切れて、ほんの少し沈黙が下りた
『……ザザッ……ザザッ……ボソボソ……ザザッ……』
やっぱり人が喋っているように聞こえる。こちらが聞き取ろうとしているのを察してか、彼女も息をひそめる
耳を澄ませ、受話器の向こうに神経を尖らせると、
『ボソッ……、……ロ、…ゲ…、……ザザッ……、……』
聞きづらいノイズに混じって微かに聞こえた一つの単語
「……気のせいかもしれないけど、この声『逃ゲロ』って言ってない……?」
恐る恐る切り出すと、怒るかと思った彼女はむしろ持ち前の明るい声で、
『ヤだ、怖いこと言わないでよ。「逃げろ」って、一体何から「逃げる」って言うのよ。そもそも何処に逃げればいいのよw』
「そう……だよね。やっぱり気のせい……かな。ごめんね、変なこと言って」
そう言って他愛のない話をしてから電話を切る

2011年3月7日
それが、彼女の声を聞いた最後になった

【了】

189:進行マモ ◆100mD2jqic @\(^o^)/
14/08/24 00:45:34.32 Dh7XLcnW0.net
57本目の蝋燭が消えました・・・
葛 ◆.zethFtqnUさん さん、ありがとうございました

                      γ
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UTF16 ◆IIYCd0pMW6 さん、第58話をお願いします
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190:いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw @\(^o^)/
14/08/24 00:46:06.36 iVpQyD8K0.net
【第五十八話】UTF16 ◆IIYCd0pMW6 様

『クワッ』

弟の友人の野崎君は学生時代、倉庫作業のバイトをしていた。
運送会社の倉庫の中で、ダンボールに入った商品の詰め替えをしたり、出荷時に入れ忘れた付属品などを入れたり、
商品規格が印刷されたシールを延々貼り付けたり、といった作業内容だった。
ある日も倉庫で、炊飯器の入ったダンボール箱をひたすら開封する作業をしていると。
箱の中に、炊飯器ではない妙なものが入っていた。
それは人の頭ほどの大きさで丸い形をしており、縁が白くて真ん中あたりは濃い茶色で、その中心は黒い……
はじめは何かわからなかった。
が、どうやらそれは大きな目玉であるらしかった。
ダンボール箱の中いっぱいに収まっている大きな目玉は、
野崎君をよく見ようとでもするかの様に、真ん中の黒い瞳の部分がクワッ、と拡大した。
「……!」
野崎君は声にならない声をあげた。その後の記憶が無い。
どうやらそのまま昏倒してしまった様で、
様子を見に来た倉庫会社の社員にダンボール箱の中で倒れているところを発見され、事務所に担ぎ込まれた。
野崎君が事務所で意識を取り戻すと、社員たちが貧血でも起こしたのか、救急車を呼ぼうか、と言うので
「何か変なものがダンボール箱の中にいた様な」
とまだぼんやりとした頭でこたえると
「ああ……そう」
と社員たちは顔を見合わせそれきり何も言わず、その日の帰り間際に
「これ、取っときな」
と何故か課長が五千円札の入った封筒をくれた。

現場にはいくつかの倉庫があったが、以降、目玉を見た倉庫では、野崎君が作業をする事は無かった。

【終わり】

191:進行マモ ◆100mD2jqic @\(^o^)/
14/08/24 00:47:34.99 Dh7XLcnW0.net
58本目の蝋燭が消えました・・・
UTF16 ◆IIYCd0pMW6 さん、ありがとうございました

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いそべ ◆8JXCKM3oNw さん、第59話をお願いします
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192:いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw @\(^o^)/
14/08/24 00:48:49.51 iVpQyD8K0.net
『観葉植物の話』

あるとき、父と母と私、家族3人で近所の大型スーパーに行った。
ちょうどなにかのキャンペーンをやっていて、1人1つずつ観葉植物がもらえた。
3人それぞれの分として、リビングの日当たりのよいスペースに並べて置いた。

1週間後に母が倒れ、まもなく死んだ。
持病もなかった母との、突然すぎる別れだった。
時を同じくして、母の植物は枯れた。
母が倒れる直前まで青々としていた葉っぱが、見る見るうちに枯れた。

それからしばらく経ち、今度は父の植物に元気がなくなってきた。
やがて、父から打ち明け話をされた。
交際している女性がいるという。
父は家族ではなくなった。
父の植物も、すぐに枯れた。

家族がいなくなるたびに、家族でもらった観葉植物は消えていく。
それとも、自分自身が他のもののエネルギーを吸い取ってしまっていたのだろうか。
悪いオーラのようなものを、自分の周囲にまき散らしてしまっていたのだろうか。
1つだけ残った私の観葉植物は、部屋の片隅でぽつんとしながらも、今でも不自然なほどに元気で成長を続けている。

【了】

193:進行マモ ◆100mD2jqic @\(^o^)/
14/08/24 00:51:37.28 Dh7XLcnW0.net
9本目の蝋燭が消えました・・・
いそべ ◆8JXCKM3oNw さん、ありがとうございました

                      γ
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酒カス ◆H5txFPpUg2 さん、第60話をお願いします
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194:進行マモ ◆100mD2jqic @\(^o^)/
14/08/24 00:52:44.93 Dh7XLcnW0.net
5が次元の彼方に飛んでいました
59本目の蝋燭が消えたところでございます

195:いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw @\(^o^)/
14/08/24 00:53:23.33 iVpQyD8K0.net
【第60話】 酒カス ◆H5txFPpUg2 様
『東京オフ』

2chの心霊スポットオフで心霊スポットへ凸した時の話。
その日は都内で待ち合わせして現地へ向かったんだけど、ひとり待ち合わせ時間に間に合わないのがいて、先に
出ちゃったんだ。一応、遅れたヤツには待てないので出発することを捨アドで伝えました。
1箇所目、2箇所目ってスポットを回っていた時に、その遅れたヤツからメールがきたんですね、
「現地待ち合わせしたいです。」とか「次は何処にいきますか?」って。
最初は断りの返信をしてたんだけど、こっちは車で相手は電車だから到底スポットで待ち合わせすることが難しいの。
もう終電の時間も過ぎてたしね。釣りだろうなってことで返信するのはやめました。

深夜3時に千葉最恐の東金の○○廃ホテルに憑き、俺はユーストで配信始めてぐるぐる回り始めたんだけど、
2階にいる時に何人か女性の声聞いたりとか1階の時は2階で足音が聞こえたりとか。
配信見てた人からは女性の声が聞こえる、配信してる人の隣に霊らしき者いないかってコメントが入ってきて。
俺もビビりながら前後左右確認したんだけど、まったくわからず。動画にも何も写ってないようだった。

同行者には話してないんだけど、廃ホテルを出た後に携帯をチェックしたら捨アドにメールが10件ほどきていた。
遅れたヤツからのメールだった。全部は確認しなかったのだが3時頃からの3メールくらい確認したら、
「○○廃ホテルに着きました。もう中にいますか?」
「今、あなたの隣にいます。」
「早く気づいてください。」とかって内容だったんでびっくりしちゃって。
2chスレでもユーストでも凸時は通報対策でスポット名伏せてたから遅れたヤツが○○廃ホテルに俺達がいることって
わかるはずないんだよね。
配信中に俺の横にいた霊らしき者ってその遅れたヤツだったのかな。俺、霊とメールのやり取りしてたってこと?
気持ち悪かったんで使ってた捨アドのアプリは削除したよ。

【了】

196:進行マモ ◆100mD2jqic @\(^o^)/
14/08/24 00:54:18.40 Dh7XLcnW0.net
60本目の蝋燭が消えました・・・
酒カス ◆H5txFPpUg2 さん、ありがとうございました

                      γ
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ぬこ ◆RMw3.cMGUE さん、第61話をお願いします
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197:ぬこ ◆RMw3.cMGUE @\(^o^)/
14/08/24 01:00:19.83 UA2hn1p9I.net
【第61話】『飛ぶもの』
これは私が唯一体験した不思議な出来事。
今から5年ほど前の早春の黄昏時、私は自転車をひきながらトボトボと家路をたどっていた。
時刻は5時半ごろだっただろうか。あたりは薄暗く大気もひんやりと冷たかった。
ふと空をみあげると白い光点が空を飛んでいるのがみえた。一瞬、飛行機かな?と思ったがよくみると動きがおかしかった。
その光点は左右にふらふらと移動しながら飛ぶという奇妙な動きをしていた。
それは東の空から西の空へと飛んでいきやがて私の視界から消えていった。
あの光は何だったのか、あれから5年たつが今でもわからない。
【了】

198:進行マモ ◆100mD2jqic @\(^o^)/
14/08/24 01:01:25.37 Dh7XLcnW0.net
61本目の蝋燭が消えました・・・
ぬこ ◆RMw3.cMGUE さん、ありがとうございました


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UTF16 ◆IIYCd0pMW6 さん、第62話をお願いします
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199:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/24 01:02:09.34 bIEXoD6G0.net
【第六十二話】UTF16 ◆IIYCd0pMW6様

『作業現場』
(1/6)

派遣現場で一緒に仕事をしていた中尾君から聞いた話。
以前、中尾君は某個人商店のプ
ログラム作成を担当していた。
開発作業場所に提供されたのは、商店裏庭の二階建て倉庫の二階の、六畳程の狭い部屋だった。
そこにリーダー、設計者、プログラマー、テスト担当者、
といつも6、7人の20代から30代の男性ばかりがひしめいて作業していたという。
プログラムの多くは自社ですでに作成されていたが、
それを本番環境に乗せて調整するのに手間取り、本番稼動日を目前に毎日終電帰りを余儀なくされていた。
本当なら徹夜の突貫作業をして遅れを取り戻したいところだったが、その現場では出来なかった。
その現場は半端なく<出る>ところだったので。
商店のオーナーたちもその事はよくわかっており、
「そこにはあまり遅くまでいない方がいいよ。徹夜作業をするのはいいけど、何かあってもうちは知らないから」
とはっきりと釘を刺されていた。
商店のオーナーや家族たちも、同じ裏庭の敷地に建てられた家や店舗の二階に住んでいたが、
そこでは妙な事は起こっていない様だった。
作業場所に提供された倉庫というのは古い、木造モルタル建ての建物で、元々は倉庫として建てられたものではなく、
普通の住まいとして建てられたらしい家だった。
実際、建物のあちこちには生活臭のあるテーブルや箪笥や本棚や子供の玩具や、
オークションに出せばレトロ品として売れそうな古いテレビやラジオが乱雑に置かれており、
箪笥の引き出しには、埃まみれになって変色した衣類がきちんと畳んで詰まったままになっていたという。

200:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/24 01:03:06.62 bIEXoD6G0.net
(2/6)

そういった物を隅に押しやって、商店のイベントの看板や景品の残りや、
もう使わない様なものがまた乱雑に積み上げられているだけの、倉庫とは名ばかりのガラクタ置場の様なところだった。
「酷いでしょ。そんなとこで作業させるのって。もちろん本番稼動でパソコンやプリンター置くのはお店の事務所なんですけど。
 その事務所が狭くて僕たちが座る場所が無くって、準備作業はボロ倉庫でやる事になったんです。
 作業してたのがまた真夏の暑い時期で。
 クーラーはとりあえずありましたけど、これまた年代物の古ーい、昼間はほとんど冷えない様なボロで。
 狭い部屋に野郎ばっかりひしめいて、汗ダラダラかきながらプログラム作ってたんですよ。それで痩せましたもん、僕」
と中尾君はブツブツ言っていた。
「で、そこで毎日同じ時間の頃に見られたのがね」
中尾君たちが作業していた部屋には、高さ1メートル80センチ、幅1メートル程のスチール製の本棚があり、
棚にはプログラム仕様書の分厚いファイルや環境設定マニュアル本などがぎっしりと並べられていた。
それが夜の8時くらいになると

ドッスンドッスン
ガタガタグラグラ

とひとりでに、派手に動くのだという。
「百キロニ百キロのもんですよ。それが勝手にガタガタ音をたてて動くんです。それも縦揺れ横揺れ斜め揺れ入り乱れて。
 みんなの見てる前で。やかましいわそのたんびに本が落ちて散らばるわ。
 初めはびっくりしましたけど、しばらくしたら慣れちゃって。時間になったらコンビニで買ってきた弁当食べながら
 『そろそろはじまるぞ……ほれ、はじまった』
 ってみんなで見物する様になっちゃいました。


 中にはカリカリきて『うるせー!やめろ!』とか『散らかるだろ』とか言って
 棚が動いてる前で本を拾った奴もいましたけど、他には何も起きませんでした」
また、怪異はこれだけではないらしく
「これも決まった時間なんですけどね」
と中尾君は続けた。

201:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/24 01:04:33.85 bIEXoD6G0.net
(3/6)

「倉庫の裏には細い路地があって、その向こうにはよその家が建ってて、路地と倉庫の間は生け垣になってるんですけどね。
 夜中の11時を過ぎると、そこの路地を下駄でカラコロ歩く奴がいるんです。
 ただ歩いて通り過ぎるんじゃなくて、僕たちがいる倉庫のあたりを何度も何度もずーっと行き来し続けるんですよ」
 路地は舗装されていない土が剥き出しの道で、昼間でも通る者はほとんどいない。
 夜中であたりが静かだとはいえ、地面が土なのだから下駄の音もそんなに聞こえるわけでもなさそうなのにやけに響き、
 うるさいなぁ、と窓を開けてみると誰もいない。窓を開ける直前まで、そのカラコロという音は路地から聞こえていたのだが。
「僕は電車通勤だったらその時刻まではあんまりいなかったんですけど。でも何回か聞きましたよ。
 はじめはね、僕たちが遅くまで部屋の明かりを付けて作業してるから、
 近所の人が何か文句を言いたくて来てるのかと思ってたんです。でも、窓を開けてもいつも誰もいないし。
 で、いつだったか僕が帰った後に、作業してた奴の一人がいきなり窓を開けて
 『うるさいッ!』
 って怒鳴った事があったらしくて。そしたら」
窓を開けた時にはやはり路地には誰もいなかったが、しばらくすると、自分たちがいる二階の部屋の窓の真下の、一階の壁が

ドンドンドンドン!

ともの凄い勢いで叩かれたという。
その音に部屋にいた者たちは顔を見合わせて
「怒ったぞ」
「あ、あんな事言うから」
などと言ったが、もう後の祭である。そう言っている間にも、元々ボロ屋の倉庫の壁が砕けそうな勢いで壁を叩く音は続いている。
音は深夜のご近所に鳴り響いており、
騒ぎを聞きつけた商店のオーナーたちが来てくれないかな、などとも思ったがその様子は無さそうだった。

どうしよう、とみなで顔を見合わせ、いい歳をした男たちがおびえまくるものの音は依然として鳴りやまず、
揃って青い顔をしているとやがて壁を叩く音がふっと止み、代わりに

ガリッ

と、壁を引っ掻く様な音が聞こえてきた。

202:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/24 01:05:51.33 bIEXoD6G0.net
(4/6)

それに
(何だ?)
とまたも顔を見合わせていると

ガリッ、ガリッ、ガリッ……
と。その音はどうやら近づいて来ている様だった。
一階から、自分たちがいる部屋の窓へと壁を這い上って。
(……!)
みなは目を見開け、いいっと歯を食いしばった表情でお互いの顔を、そして音が近づいて来る窓を一心に見つめた。
と、次の瞬間、路地に向かってうるさいッ!と怒鳴った同僚が部屋にあった電気ポットを持ち上げ、蓋を開けると、
窓の外を見ないように顔をそむけたままいきなり窓をガラッと開けて
ポットの熱湯を窓の真下にぶちまけた。

音はパタリと止んだ。

窓の外には何もおらず、同僚は顔をそむけたまますぐに窓をピシャリと閉めた。部屋にはポットを持ったままの同僚の、
荒い息だけが響いた。
その夜はさすがに作業を切り上げ、みなで逃げ出したという。
それからも路地での足音は変わらず毎日聞こえたらしいが、もう誰も相手にはしなくなった。

「他にもホンットに色々あったんですけどね。物はよく無くなったし。確かにそこにあったのに、
 ちょっと目を離したら無くなっててとんでもないとこに移動してるとか。作業してたら肩を叩かれたとか。
 トイレで用を足してたら後ろから押されたりとか。
 一階の玄関の扉が開いて誰かが入ってくる音とか、階段を上ってくる足音がして、
 僕たちが作業してる部屋のあたりまで来るんだけど、見てみたら誰もいないとか。
 一階には誰もいないはずなのに誰かがドタバタする音がしたり、子供の声がしたり。本当にキリがないとこでしたよ。
 どこから持ち出したのか知らないけど、僕たちが帰ろうとしたら玄関のたたきのところに、
 でかい洋服箪笥が斜めに突っ込んであったり。そんな事商店のオーナーたちはやらないし、何人かでないと出来ないし、
 でもそんな物音は全然しなかったし。で、リーダーと、他の何人かはね……」

203:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/24 01:07:02.20 bIEXoD6G0.net
(5/6)

倉庫の戸締まりは、商店側から予備の鍵を渡され、中尾君たちが行っていた。
ある日も午前0時近くまで作業をして、現場リーダーと2、3人の者が戸締まりをして最後に玄関を施錠して帰ろうとした。
玄関の戸はやはり時間が止まったままの様な、真横にガラガラとスライドさせて開閉する古びた木とガラスの引き戸で、
現場から出る時は玄関の明かりも消してしまうので真っ暗になり、
鍵をかける時は鍵穴のあたりを懐中電灯やペンライトで照らしていた。その日も
「ほいリーダー、見えますかぁ?」
「お、さんきゅ」
と手元を照らしてもらいリーダーが鍵をかけていると、ガラス戸に映る、同僚が照らしてくれている明かりの輪が、何か
ぼわん
といきなり大きくなった。
が、リーダーは気にせず、そのまま鍵を鍵穴から抜き取って振り向いた。そして
「じゃ、帰りま……」
と言っている同僚たちの後ろに
大きな白い光の球が、こちらへと向かって飛んで来るのが見えた。
「う、うわわわわわ!」
それを見てリーダーがわけのわからない声をあげると、同僚たちも振り向き、すぐに気付いて
「げっ!」
「ぎゃっ!」
などと悲鳴をあげてそれぞれに逃げ出した。
リーダーもすぐに逃げようとしたが、その時まだ、玄関の施錠確認をしていない事を何故か思い出し、
この非常事態だというのに、ガラス戸の鍵がちゃんとかかっているかどうか後ろ手で戸をガタガタと動かして確認……
しているすぐ真横を1メートルはありそうな巨大な、しかも車のヘッドライトの様に強烈な白い発光体が
ガラス戸を突き抜けて、建物の中へと入って行った。
光の球の中には何か人影の様なものも見えたが、そんな事はどうでもよかった。
リーダーは大きな発光体を目の前で見ながら施錠を確認し、飛んで逃げた。
「もし施錠し忘れてたら、責任問題だろうが。俺の立場としてはそっちの方が怖いから。幽霊よりも」
と後にリーダーはぼやいていたという。

204:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/24 01:08:21.93 bIEXoD6G0.net
(6/6)

「結局なんとか納品できましたけどね。まずはメインの部分だけ。
 でも本番に乗せてからも普通なら考えられないバグやエラーが出まくるし、ディスクも何度か飛ぶしプリンターも何台か壊れるし。
 買ってきたばかりの新品のケーブルがどういうわけか壊れてるとか、マウスの中のボールがいつの間にか割れてるとか。
 もうお手上げでしたよ。僕は本番が動きだしてから他の現場の担当になりましたけど。
 ホント、あらゆる意味でとにかく早く逃げ出したかったです」
その商店は今も営業しており、裏庭の倉庫もまだあるという。

倉庫についてのいわくは
<聞くな>
と会社から命令されていたので、わからずじまいだそうだ。


【終わり】

205:仮の人 ◆sFvsmjhswAfh @\(^o^)/
14/08/24 01:08:57.27 ixm8gm6D0.net
62本目の蝋燭が消えました・・・
UTF16 ◆IIYCd0pMW6さん、ありがとうございました


                      γ
                      �


206:i                       _ノ                    /                 __              ,、'"   .  `' 、              i`ー  _    ', .             l| !|      i""!|                  }: }i    |{  !j                〈| 'J |!   }j  :}             _ノ;し  i}  {J  |          ,、-,、'         ハ- 、          ( .( '、_    _ ,ノ  ノ:i   )         ,、'""`ー---‐'"フ、_ - _,、' -'"         (  _   ,、'"    ̄          `ー--─'" ら年 ◆9w6FQlB7l1rE さん、第63話をお願いします ----------------------------------------------------- 語り部希望は>>1の【受付スレ:したらば】へ 雑談、感想は>>1の【雑談スレ:したらば】でお願いします。



207:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/24 01:10:32.34 bIEXoD6G0.net
【第63話】 ら年 ◆9w6FQlB7l1rE 様
『先輩が一人旅でしばらく滞在した某地方で、夜中に鬼ごっこなどした話。』

(1/5)

先輩が一人旅でしばらく滞在した某地方で、夜中に鬼ごっこなどした話。

先輩は宿代を浮かそうとして、山村の掘建て小屋のようなもんを安く借りた。
小屋にガスと風呂はなかったが、電気も水道もあり、トイレは水洗だし、
寝具一式には新しいカバーをかけてあったので、先輩は全く不満はなかった。
到着は夜で、小屋から少し離れた所につくねんと電灯が灯っていた。
ぽつぽつと民家があるようだったが、他に灯りは見えず、ほぼ真っ暗で寂しいところだ。
先輩は早々に布団に潜りこんだ。季節は春、しかし山の夜はやはり寒かった。

最初の晩はそうして過ぎた。

208:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/24 01:11:47.62 bIEXoD6G0.net
(2/5)

翌朝、先輩は小屋を出ると、起伏の多い道を歩いて少し山を下り、バス停へ向かった。
人影はない。しかし明るくなってみると、辺りは昨夜とは見違えるような印象だった。
民家はまばらだが、どの家にも美しい生け垣があり、所々鮮やかな花の色がこぼれていた。
それらを新緑が大きく包むような、いかにものどかな山村の風景だ。
やがて路線バスが来て、先輩はそれに乗って観光に出かけた。

そして晩に小屋に戻り、隅に布団を敷いて寝ようとすると…

「おおおおおぉぉお」

奇妙な音が鳴り響いた。
電気も消して寝る寸前だった先輩は、布団の中で飛び上がった。
サイレンや警報などではない。しかし何かが、小屋の外で音を立てている。
「おおおおぉおおぉお」「ぉおおおぉおおぉぉぉ」
少なくとも人間の声とは思えなかったと言う。人間だったら逆に怖い。

…が、割と図太い先輩は、疲れて眠い!という理由で、そのまま寝ることにした。
しばらくの間その音は続いたが、先輩は布団をかぶって無視して眠った。

二日目の晩はそうして過ぎた。

209:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/24 01:13:07.33 bIEXoD6G0.net
(3/5)

翌日、先輩は温泉巡りに出かけ、晩に戻って来て寝ようとすると、また、
「ぉおおおぉおおお」
…野犬か、何か獣の吠え声か?脅かしてやるから逃げてくれ。
先輩はそう願って、声のする方の窓を勢いよくガラッと開けた。

何もいなかった。
しかし、
「ぉおぉおぉおぉおおぉおおおぉおお」
声は近くから聞こえ、一層大きく響いた。
小屋にあった懐中電灯で窓の外を照らしてみたが、木々と茂みの他は何も見えない。
イタズラか?ムカッと来た先輩は後先考えずに、懐中電灯片手に表に飛び出した。
「おおぉおお」「おおぉおおお」「おぉぉおお」「ぉぉおおおおぉおお」
姿は見えないが、声はさらにけたたましくなった。
数歩近付くと、何かがすっと下がる気配がした、「ぉぉぉお」
数歩退くと、今度はすっと寄って来る気配だ、「おぉおぉお」
何なんだこいつ!?と、先輩は小屋の周りをぐるぐる回って追っかけたが、
向こうは付かず離れずの距離を保ち続け、それ以上近付くことは出来なかった。

結局正体はわからず、小屋から離れるのもさすがに怖かったので、
いい加減あきらめて、戸締まりして布団かぶって寝ることにした。
窓の外ではおぉおぉがしばらく聞こえていた。

三日目の晩はそうして過ぎた。

四日目の早朝、
「…ぉぉ…ぉぉぉ…ぉ…」
そんな、遠くから聞こえるような音を耳にして、目が覚めたそうだ。
しかしこれは夢だかどうだかわからない、と先輩は言う。

210:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/24 01:14:24.67 bIEXoD6G0.net
(4/5)

そしてその四日目の晩、電気を消して寝ようとすると、待ち構えたかのように、
「おおおおおおおおお」
「おぉおおおぉおおおおおおおお」
またか、うるさい。先輩はうんざりして、もう起きるのもめんどくさかったので、
横になったまま思いっきり壁ドンした。
ドンドンドンドン。
「おおおおおおおお」
ドンドンドンドン。
壁を叩き続けるうち、妙な事に、壁ドンとおぉおぉが交互に続く、
という、掛け合いのような展開になっていった。

ドンドン。
「おおおお」
ドンドンドン。
「おおおおおお」
ドン。
「おお」
ドッ。
「おぉ」
ド。
「お」
トトトト。
「ぉぉぉぉ」
ト。
「ぉ」
…。
「…」

…四日目の晩はそうして静まった。

211:50@投稿代理 ◆4gJVpc7IX. @\(^o^)/
14/08/24 01:22:47.32 JeOcyvlKi.net
(5/5)

そして五日目の晩からは、何の物音にも悩まされず、寝る事が出来たそうな。
他に怪異に遭遇する事もなく、先輩は無事滞在先から帰って来た。

「アレが動物か何かわからないが、多分かまって欲しかったんだと思う」
と先輩は言う。
 アレ は、相手をしてもらえたので、満足して去ったのだろうか?…
また先輩は「最終的に、壁叩いてる時、俺もちょっと面白かった」とも言った。

そんな先輩は後にバンドを組んで、ドラムを叩くようになり、
今も趣味のセッションを楽しんでいるそうだ。

【了】

212:仮の人 ◆sFvsmjhswAfh @\(^o^)/
14/08/24 01:23:24.15 ixm8gm6D0.net
63本目の蝋燭が消えました・・・
ら年 ◆9w6FQlB7l1rEさん、ありがとうございました


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ガタロー ◆l7Mb16VB82 さん、第64話をお願いします
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213:ガタロー ◆l7Mb16VB82 @\(^o^)/
14/08/24 01:23:50.38 5HvraHkU0.net
【第六十四話】『奇妙なオジサン』

幼少の頃、奇妙なオジサンと遊んでいた
俺が3歳か4歳くらいの頃だったと思う。両親は自営業で自宅の隣に店を出して働いていた。
まあすぐに行き来できるから俺が自宅の部屋に一人で遊んでることもよくあった
その時に現れるのがそのオジサン。うろ覚えだが憶えてる限り書くと、現れる時はいつも押入れから出てくる。
そのオジサンは常に四つん這いで動く、そしてそれ以上に奇妙なのは首が180度上を向いてて背中から上を見る状態でいる事。
俺は最初怖くて泣き叫んでたが、オジサンは普通にやさしく接してくれてすぐに慣れて一緒に遊んでくれた。
そしていなくなる時は突然に、毎回いつの間にか消えていた。だがその時は不思議とそんなものだと俺は思っていた。
オジサンについては、名前は聞いたけど忘れた。首は怪我して立てなくなってこんな状態らしい。
そのオジサンの事を親に話ても仕事が忙しい事やいい加減な性格であまり真剣に聞いてくれなかった。
オジサンと一緒に居る時はおもちゃで遊んだり、話をしたりした。お菓子はあげたけど俺が食べなと言って食う事は無かった。
話については、どこどこの誰が生まれた、誰が死んだってのが多かったが、子供だったのでそれが誰なのかは全く分からなかった
ただ、夕飯とかで両親が話し込んでる時に聞く名前もあったので実在の人物なのだろうとは思った。
結局そのオジサンは1ヶ月もしないうちに仕事で遠くに行く、また会えるかもなと言って握手してくれた後
初めてトイレに行くと言ってトイレに入ってそれっきり。トイレを開けてもそこには誰もいなかった。
それが子供の作り出した幻覚なのか、家々を行き来する座敷童や疫病神の類なのかは分からない。
この間飲み屋で隣の客が似たようなオジサンの話をしてて何故か今の今まで忘れててイキナリ思い出した話

【終】

214:仮の人 ◆sFvsmjhswAfh @\(^o^)/
14/08/24 01:24:43.15 ixm8gm6D0.net
64本目の蝋燭が消えました・・・
ガタロー ◆l7Mb16VB82さん、ありがとうございました


                      γ
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雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM さん、第65話をお願いします
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215:50@投稿代理 ◆4gJVpc7IX. @\(^o^)/
14/08/24 01:28:22.28 JeOcyvlKi.net
【第65話】 雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM様
『挨拶』


知り合いの話。

彼女は山菜を採るため、近場の山へちょくちょくと出掛けている。
途中にいつも腰を下ろして休憩している石があるのだが、そこで休んでいると
「やぁこんにちは。今朝も元気そうですね」
決まってそう挨拶をしてくる何者かがいるのだと。
しかし、周りには人っ子一人見えない。

彼女はいつものように
「はい、こんにちは。そちらも元気そうですねぇ」
と何もいない空中に挨拶を返してから、山の奥へ向かうのだそうだ。

声の主については、彼女は特に気にしていないという。
「姿が見えないのはアレだけど、声の調子からすると、悪いモノじゃないよぉ」
そう言って笑っていた。

【了】

216:仮の人 ◆sFvsmjhswAfh @\(^o^)/
14/08/24 01:28:55.23 ixm8gm6D0.net
65本目の蝋燭が消えました・・・
雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOMさん、ありがとうございました


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ころげっと ◆8Tb0.jWhUc さん、第66話をお願いします
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217:本当にあった怖い名無し@\(^o^)/
14/08/24 01:30:55.47 2cZ/9YcqO.net


218:50@投稿代理 ◆4gJVpc7IX. @\(^o^)/
14/08/24 01:34:42.43 JeOcyvlKi.net
【第66話】 ころげっと ◆8Tb0.jWhUc 様
『守護するもの』

(1/5)
これは昨年の冬も近いころ、私自身に起きた出来事です。
酒の席での恥のため顰蹙を買いそうですが、お話しします。
酒嫌いの方には、あらかじめ謝ります。ごめんなさい。

会社で仲の良い後輩が、同じ会社の長年片思いしていた男性に告白したところ、ふられて失恋。
落ち込んでいる彼女を放っておけず、ちょうど私自身も仕事でストレスがあり、
お互い酒好き同士だったため、翌日仕事が休みの日を選び、さしで飲む事にしました。
とはいえ、奥手で恋愛に疎い私。
良いアドバイスも出来ず、うまい励ましの言葉も出ず、ひたすら思いのたけを聞くしか出来ません。
注いで注がれるまま、ちゃんぽんで飲み続けました。
最後には、お店の人にストップをかけられるぐらいで。
お互い帰りは逆方向だったため、後輩とは店の外で別れました。

別れてすぐ、マズイと思いました。
後輩の前では自制心が働き平気だったのですが、一人になった途端に酔いが回って来たのです。
とにかく家に帰らなくては。一刻も早く家に帰って休みたい。
帰巣本能というのでしょうか。私の頭にあったのは、その一心。

219:50@投稿代理 ◆4gJVpc7IX. @\(^o^)/
14/08/24 01:35:28.29 JeOcyvlKi.net
(2/5)
二つ上の兄と住むマンションは、幸い、電車で一本のところです。
座れたのと、車内は明るく、人も乗っていたため、なんとか正気を保ち、最寄り駅で下車。
十五分の道のりを歩いて帰る自信はありませんでしたが、
遅くに兄に迎えに来てもらうのも気が引けましたし、
こんな状態では、口の悪い兄の事ですから、何を言われるかわかりません。
それに、兄の到着を待っている間に倒れ込んでしまう予感もあり、一人で歩いて帰ろうと決心しました。
とはいえ、ひょっとすると、兄は帰りの遅い私を心配してくれているかもしれない。
だとしたら、メールぐらい出そうかと携帯電話を取り出すべく、バッグをあさりました。
しかし、どこへしまったのか、携帯が見つかりません。
探すのもめんどうになり、連絡するのを諦めた瞬間、
なぜか、ここから記憶がすっぽりと抜け落ちています。

次にある記憶は、自宅の便器にしがみついているところです。
誰かが背中を強くさすっています。
「吐けよ。吐かないと死ぬぞ。お前、死にたいのかよ。俺、この年で、お前の葬式出すの嫌だからな」
遠くから聞こえる兄の声。
という事は、自力で帰れたのでしょう。
その日、私の着ていた服は、一目ぼれして買ったばかりのウールのワンピースでした。
やだ、お兄ちゃん、強くさすらないでよ。ワンピースが毛羽立っちゃうじゃん。
なんて、緊張感なく考えていた覚えがあります。
やかんの口の先を突っ込まれ、ひたすら水をがぶ飲みさせられました。
「飲んで全部吐き出せ」
「いやだ! 苦しいよう。コン、コンッ」
息苦しくて咳きこみ、ここで、また記憶が飛びます。

220:50@投稿代理 ◆4gJVpc7IX. @\(^o^)/
14/08/24 01:36:10.85 JeOcyvlKi.net
(3/5)
その次の記憶は、ベッドの中です。
すでに外はすっかり明るく、時計を見ると十三時を過ぎていました。
例のワンピースを着たままです。
頭がガンガンし、胸もムカムカします。当然ながら、二日酔いです。
なぜか、顔がヒリヒリしていました。鏡を見ると、うっすらと赤いすり傷が数本出来ています。
兄は仕事に出かけており、家には私一人。
キッチンのテーブルに、一本のリ○ビタンDが置かれていました。傍には兄の手書きのメモが。
「これでも飲んでゆっくり休め。疲れているんだろう。たまには休めよ」
兄はろくに寝ずに仕事に出かけたんだろうと思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

痛む頭を取り替えたいと、ベッドの上でのたうち回っていたら、自宅の電話が鳴りました。
兄からでした。
「そろそろ起きる頃じゃないかと思って。大丈夫か、生きているか?」
「うん、だいじょぶ。頭、痛いけど。気持ちも悪いけど」
「お前、ほんとバカだなあ」
「うん」
いつもなら言い返すのですが、大人しくうなづきました。
「今夜はメシ作らなくていいぞ。なんか適当に買ってくから」
「うん、分かった。ありがと」
「やけに素直で気持ち悪いな。昨日は本当にビビったぜ。お前が死ぬんじゃないかと思って。
吐けっつっても、なかなか吐こうとしないし。こいつ、死にたがってるんじゃないかって。
なーに、俺よりいい男が見つからないからって、人生、悲観する事はないぜ」
「バッカじゃないの」
「あはははっ。元気が出てきたな。安心したぜ。
そういや、昨日のメール、あれ、何だよ。マジでビビった。こいつ、とうとう気が変になったって」
「メール? 何の事?」
「あの、訳わかんないやつだよ。お陰でウトウトしてたのに飛び起きたわ。そんで、慌てて迎えに行ったんだ。
タバコ屋の前の生垣に頭突っ込んで倒れてて。叩き起こしたら、いきなりすごい咳きこむの。コンコンって。
まあ、いいや、横になれ。今日は、俺、早く帰るから。帰ったら、土下座して感謝しろよ」
立っているのもやっとだったため、これ幸いと、すぐにベッドに戻りかけましたが、兄の言葉が気にかかります。

221:50@投稿代理 ◆4gJVpc7IX. @\(^o^)/
14/08/24 01:37:10.74 JeOcyvlKi.net
(4/5)

携帯のメールを見ようと、バッグの中の携帯を探し始めました。が、ありません。
ワンピースも探しましたが、飾り用のポケットがあるだけで本物はついていませんから、当然ありません。
家の中? 自宅電話を使って鳴らしても反応なし。
ひょっとして、歩きながらカバンをゴソゴソやった時、落としてしまったんじゃないか。
駅までの道を歩きましたが、落ちていません。
駅前交番、駅の事務室にも確認しましたが、ダメでした。
タバコ屋前で倒れている時に、カバンから盗まれた?

半泣きで家に戻り、玄関のカギを開けようとしていると、またもや家の電話の鳴る音が。
靴を脱ぎ捨て、急いで出れば、聞き覚えのない爽やかな男性の声。
「携帯電話を忘れておられませんか?」
昨晩飲んだ居酒屋の店員さんでした。
私たちが店を出てすぐ、テーブルに携帯が置き忘れられているのに気が付き、
追いかけたものの、すでに姿は見当たらなかったそうです。
二日酔いもすっかり吹き飛び、居酒屋へ急ぎました。
応対してくれたのは、電話で話した男性。拾ってくれたのも彼でした。
何度も何度も頭を下げて、携帯を受け取りました。
「すぐにご連絡すればよかったんですが、片付けやらなんやらで忙しくて、
俺もだけど、皆、忘れちゃってたんですよ。で、今日仕事来て思い出して。すみませんでした」
謝るのはこちらの方だと伝え、丁重にお礼を言って、店を出ました。

222:50@投稿代理 ◆4gJVpc7IX. @\(^o^)/
14/08/24 01:39:19.39 JeOcyvlKi.net
(5/5)
さっそく、兄への送信メールを見てみました。
そこに書かれていた文章を読み、わさわさわさっと全身に鳥肌が立ちました。
書かれていたのは、こうでした。
「ヤバイじゃん今またいやばい! シヌカ」

支離滅裂な言葉の羅列。
酔っぱらって書いたのかと思いましたが、送信時刻と状況から考えて、私が書いたものではありません。
だとしたら、誰が?
ふと、中学生の時、友人とやったコックリさんで、守護霊を尋ねてみたのを思い出しました。
十円玉が動いた先の文字は、「シ、ロ、イ、キ、ツ、ネ」でした。
確かに実家の裏には神社があり、白狐が祀られていました。
兄や友達と遊ぶ約束をしていない日は、一人でその境内で遊んでいました。
一人でも不思議と怖くありませんでした。

これが、私の経験した守護霊は本当にいるのかもと思った出来事です。
こんなダメ人間でも助けてくれるなんて、ありがたい事です。

それはそうと、完全なる余談ですが、後日、お礼を兼ねて、あの居酒屋に客として訪れました。
もちろん、今度は節度を保って飲みました。
そして、あの爽やか店員さんと親しくなりたいと、守護霊にお願いしてみたのですが、
何も起こりませんでした。
それぐらい、自分で何とかしろよって事なんでしょうね。

【了】

223:仮の人 ◆sFvsmjhswAfh @\(^o^)/
14/08/24 01:40:21.18 ixm8gm6D0.net
66本目の蝋燭が消えました・・・
ころげっと ◆8Tb0.jWhUcさん、ありがとうございました


                      γ
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かーん ◆UiIW3kGSB さん、第67話をお願いします
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224:かーん ◆UiIW3kGSB. @\(^o^)/
14/08/24 01:41:05.41 NhStOnDC0.net
【第六十七話】
『作り物の怪』
(1/2)

私が小学生の頃学年内で結構長い怪談・心霊ブームがきた。
放課後PC室に忍び込んで色々やらかしたのもこの頃の話である。
びっくり系のフラッシュや読んでも読んでもなくならない怖い話。
インターネットのおかげで私たちは実にたくさんの怪談やオカルトな知識を得ることが出来た。
いつの間にか読むだけ、見るだけで物足らなくなっていた私たちは自分達で実践する方向にシフトしていっていた。
こっくりさんやトイレの花子さんの呼び出し…みんなが持ち寄った情報を片っ端から実践していた。
しかし大抵は空振り。こっくりさんで少し不思議な体験をした程度だった。
いつの間にか実践からまた怖い話を集めることに熱を出した私たちはとんでもないことをしてしまう。
始めは学校のすぐそばにある児童館に併設された三角公園で遊んでいた男の子が事故死して彷徨っている…
という実際にそんな事があれば怪談として伝わる前に学校から注意喚起が広がるようないかにも創作といった話でした。
それではつまらないと私たちは「アレンジ」を加えてしまったのです。

この話を聞いた人は一週間以内に7人にこの話をしないと男の子が足を奪いにくる

この一文を言うだけでみんなの反応は180度変わってくる。このニセ怪談は瞬く間に学校中に広がっていた。
私たちはその結果に大いに満足していたのだが次第におかしな展開に広がっていった。

「この話をきいたAちゃん、信じてなくて7人に言わなかったから骨折したんだって」
「B君は3人からその話を聞いたから21人にその話しなくちゃいけなくなって怖くて学校休んじゃったよ」
7人に言わなくたって男の子は来ない。だって私たちが付け足したものだから。
それなのにだんだんと足に不調を抱えた子が増え始めたのだ。
校庭で鬼ごっこをしていて転んでしまったのも怪談で足を挫いたのもすべてその男の子の仕業となっていた。
こうなってしまっては嘘が嘘でなくなってしまう。
そこで素直に全てを白状すれば良かったもののまた余計な事になってしまったのだ。

225:かーん ◆UiIW3kGSB. @\(^o^)/
14/08/24 01:43:10.13 NhStOnDC0.net
(2/2)

一週間以内に言えなくても三角公園を三周すれば呪いは解ける

それを人伝に聞いた時には流石に信じる人はいないだろうと笑ってしまったのだが
暫くの間それほど広くない三角公園は小学生でいっぱいになっていた。
そして三角公園を三周しない私を一緒に「アレンジ」をした友人までもが心配をし始める。
そうなるとなんだか私も右足が痛い気がしてくるのだ。
それまでそんなデタラメと切り捨てていた子まで足を掴まれたなんて言い出して
まだノロイをといていない子がみんなから責められるおかしなことになっていた。
しかし偽物のノロイに屈するのは負けた気がして意地でも三角公園には行かないと決めていた。

結果を言うと、私はノロイに勝てず、
運動会の組体操中、ピラミッドのいちばん上に上がる最中に逆側から崩れ私は足をひどく捻挫した。
それでも行かない私の代わりにみんなが三角公園を三周し無事ノロイは解けたようだが改めて怪談の力を思い知ったのだった。
小学生のトンデモ理論と怪談は抜群に相性が良いようだ。

【了】

226:仮の人 ◆sFvsmjhswAfh @\(^o^)/
14/08/24 01:43:43.48 ixm8gm6D0.net
67本目の蝋燭が消えました・・・
かーん ◆UiIW3kGSBさん、ありがとうございました


                      γ
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りほ ◆aZ4fR7hJwM さん、第68話をお願いします
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227:50@投稿代理 ◆4gJVpc7IX. @\(^o^)/
14/08/24 01:45:48.72 JeOcyvlKi.net
【第68話】 りほ ◆aZ4fR7hJwM 様
『群生轢死』
(1/3)

不思議系の話を一つ。
確か小学生になったばかり位の頃。
当時の記憶なんてほとんど薄れてしまっているが、一つ強烈に焼き付いているものがある。

夏の時期だった。
今は亡き祖父と共に山へ行き、祖父は畑仕事、俺はその間辺りを探検という名の散歩をしていた。
アスファルトで舗装された細い道路を川へと向かう。
多種多様な生き物が数多く住まう山の中、道路上には色々な生き物の轢死体がポツポツと散らばり蟻の餌となっていた。
毛虫の死体を見つけては気持ち悪がり、クワガタ、カブトなら勿体無いと悔しがり、蛇を見ればスゲえ!と声をあげつつ
進む中、ふと先を見ると今まで灰色だった道路がとある区間だけまるで枯葉を散りばめた様な色となっていた。
範囲としては30~50mてとこだろうか…
あそこだけどうして?と気になり走って向かったところ、近づくにつれそれの正体が分かった。

バッタだ。
トノサマ、ショウリョウ、イナゴ、オンブ、キリギリスにウマオイetc
大小種類様々なバッタの轢死体が一面隙間なく広がり、更にその上をもぞもぞと生きてるバッタ達が蠢いていた。
童心にも異様と感じれる光景に呆気にとられてる最中、1台の車が通過していったのだが、バッタ達はジャンプして逃げ
る事もなくただプチプチと潰され、道路に新たな模様を刻み続けていた。

道の脇は草むらなのになんでそっちに逃げないんだろう?
草むらに行きたくないのかな…そうだ!きっとこの草むらにはカマキリが沢山いてそれでバッタが怖がって行きたがら
ないんだ!

何故かその光景を見た時にバッタ達が草むらを恐れ、道路に逃げ出しているという確信があった為、バッタが怖がる=天敵
がいる=カマキリというアホな方程式が組み上がり、嬉々として藪の様な草むらに飛び込み、夢中で探し回ったのだが、
そんな思惑も虚しく結局見つける事はできなかった。
なんでいないんだ!と悔しがると同時にふと、違和感に気付いた。

228:50@投稿代理 ◆4gJVpc7IX. @\(^o^)/
14/08/24 01:46:46.61 JeOcyvlKi.net
(2/3)

カマキリどころではない、草むらに生物の気配が全く無いのである。
本来夏山の草むらに飛び込もうものなら、小さな羽虫達が一斉に飛び立ち、逃げ惑うはずなのだが、それが一切無い
のである。

自分の知ってるものと違う生気の無い草むら、道路一面に広がるバッタの死骸と蠢く姿を思い出すと気持ち悪くなり
帰ろうと思ったのだが、気付けば大分深くまで来てしまったようだ。
一度道路まで出て戻ろうとしたが、そこはもうバッタ絨毯のど真ん中。
通るものなら死骸や生きてる奴らをブチブチ潰しながら歩かなくてはならない。
生物大好き少年と言えど、さすがにそれは気持ちが悪過ぎる…
諦めて草むら伝いに戻る事にしたのだが…おかしい。

草むらが長過ぎるのだ。夢中になっていたということを考慮しても本当にこんな歩いたのか?と疑問に感じる程で
あった。
周りを見渡したところで子供の背丈では鬱蒼と生い茂った草しか見えない。
おそらく自分が進んで来た軌跡であろう、かすかに沈んだ草の跡だけを頼りにひたすら進むのだが、永遠と続く様な
草むらにもしかして迷って帰れないんじゃないかと不安になる。
動揺と恐怖で泣き出しそうになっていると、突如目の前を小さなものが横切った。
思わず目をやりじっと見ると、どうやらそれは米粒程の小さなバッタのようだ。
自分以外に動く物を見つけた嬉しさに先の奇怪な光景や恐怖も忘れてバッタの方へと向う。
草むらの中で近づいては逃げられるという追いかけっこを繰り返えしていくうちに、突然周りからそのバッタ以外の
虫達が飛び上がった。

飛び交う虫達を見た途端、出られた!と直感し、そのまま道路まで出ると一目散に祖父のもとへ逃げ帰った。
祖父はなんの収穫もなしに走って帰って来たのを見て怪訝そうな顔をしていたが、先の話を伝えるとしばらく考えた後に
「きっと誰か薬でも撒いたんだな。それで虫どもは嫌がって道路に出てたんだろう。
それに帰りは登り道だし、怖い時や嫌な時ってのは時間が長く感じられるもんだ。
まぁ、体に薬がついたかもしれんから風呂に入るぞ」
と、言うと小屋に向かい、そのまま冷水で丸洗いされ、衣服は同上の理由により畑で燃やしていたのを覚えている。

229:50@投稿代理 ◆YJf7AjT32aOX @\(^o^)/
14/08/24 01:49:24.85 jSil/F2Bi.net
(3/3)

当時は祖父の説明で納得したものだが、周りの環境も理解できるようになり、改めて思い出すと様々な疑問が生じる。
あの道路周辺には所々に畑や田んぼがあり、周りに広がる恐れがある為、基本薬品類は撒かずに除草するにしても刈払い
機を使うのが常識となっている。
例外的に外来種の毛虫等、木々の被害が酷過ぎる時には使用することもあるが、その場合付近に薬品散布の目印を立てる
上、薬品が滴る様な散布直後の状態でもない限りは虫が全くいないという状況はない。
仮にとんでもない劇薬を撒いたのだとしたら植物にも影響はでるはずだ。
そもそもあんな放置された草むらにわざわざ手を入れる必要性もなければ、逆に手を入れるべき畑や田んぼは普段と変わ
らず生き物が湧いていた。
道路に蠢くバッタ達にしろ、あの区間のみに集約してただけで、その年に大量発生したということでもない。
そしてそれらの疑念は他でもない、祖父自身が一番に分かっていたはずだ。
子供の戯言と相手にしなかったのか、それとも他に何か理由があったのかは今となっては知る由もない。

その後も毎年夏に何度となく近辺を通る事があったが、同じような情景にあう事は無く、草むらも現在は整地され畑と
なってしまった。

だが、道路一面に広がりただ潰されていくだけのバッタ達、青々としているが生気を感じることのない草むら、そして
笑いながらも有無を言わせない強い力で小屋まで一直線に俺を引っ張っていく祖父の姿…

あの夏の思い出だけは20年近く経つ今でも鮮明に焼き付いている。

【了】

230:仮の人 ◆sFvsmjhswAfh @\(^o^)/
14/08/24 01:51:12.73 ixm8gm6D0.net
68本目の蝋燭が消えました・・・
りほ ◆aZ4fR7hJwMさん、ありがとうございました


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葛 ◆.zethFtqnU さん、第69話をお願いします
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232:葛 ◆.zethFtqnU @\(^o^)/
14/08/24 01:52:03.78 4Bnkoi68O.net
トラック-1/2

ちょっとした小旅行も兼ねて、一泊の予定で片道5時間かけて友達のところに遊びに行った
……というのに、急遽予定が変わったせいで結局、深夜だというのに運転して帰る羽目になった
主要国道を繋ぐバイパスになっているせいで昼間は交通量の多い県道も、午前2時ともなるとすれ違う車もなく、しんとした空気が降りていた

しばらく走っていると、バックミラーにライトがちらつき始めた。どうやらトラックのようだ
……と思っていると、ライトはあっという間に背後に迫っていた。どうも、かなり急いでいるようだ
パッシングされたわけでもないし、まだ少し距離はあったのだが、ちょうど避けやすいスペースがあったのでそこに避ける
トラックは減速することもなく、横を通り過ぎて行った
激しい風圧で車が揺れる

みるみる小さくなるトラックを見送って、車線に戻る
……また数分走ったところで、バックミラーにライトがちらつき始めた。どうやら次もトラックのようだ

(深夜は飛ばすトラックが多いなあ……)
ちょうどバス停があったので、少し早いがそこに避ける
するとトラックは、減速することもなく横を通り過ぎて……
「……ん?」
今のトラックは、さっき追い越して行ったトラックに似ていたような……?
特に意識していなかったので、ハッキリ「似ている」とは言えないけれど……
(……同じ会社なのかな?)
見る間に小さくなるトラックの、背後に書かれた『○○運送』の文字を見ながら車線に戻る
ものの数秒足らずで、トラックはライトさえ見えなくなった

またしばらく走ったところで、背後にライトの明かりが見え始めた
早い段階で路肩に避けて停車し、近付いてくるトラックを見る
……うん、やっぱり似てる
追い越していくトラックの背後に書かれた『○○運送』の文字
今度はナンバーもしっかり記憶した
既に小さくなったトラックを見送って、発進する

233:葛 ◆.zethFtqnU @\(^o^)/
14/08/24 01:54:32.31 4Bnkoi68O.net
2/3

……数分後。案の定、見覚えのあるトラックが近付いてくる
今度は早めに避けず、近付くのを待つ
バックミラー越しに読み取ったナンバーは、記憶していたものに一致した
それを確認してから、ぶつかるほどに幅寄せしてくるトラックを、減速して路肩に寄せながら追い抜かさせる
続けざまに、追い掛けるように発進したが、すぐにトラックとの距離は開いていく
トラックがあっという間にカーブの先に消える
慌てて自分もカーブを曲がる……が、カーブの先にトラックの姿は、影も形も無かった
いくらトラックが飛ばしていたといっても、今回はすぐに追い掛けたのだから、そんな、見えなくなるほど距離は引き離されていないはずだ
半ば呆然と前を見つめて運転していると、後ろからトラックが近付いてくる……

追いつかれては追い抜かせ、追いつかれては追い抜かせ。もう何度目かわからないやり取りを繰り返していると、あるT字路に差し掛かった
右に曲がれば、高速のインターがある。そのT字路のちょっと手前で避けた自分を、トラックが追い越し、

トラックが交差点に入った瞬間、ふっ……とトラックの姿が、まるで幻であったかのように掻き消えた
「!?」
驚いて周囲を見るが、トラックの姿はどこにも見えなかった

234:葛 ◆.zethFtqnU @\(^o^)/
14/08/24 01:56:35.23 4Bnkoi68O.net
3/3

まるで悪い夢でも見ていたような気分で、その先のコンビニに立ち寄った
よほど青い顔をしていたのだろうか。店員さんがちょっと探るような笑みを向けてくる
「どうしました、お客さん。幽霊でも見ましたか」
そう言われて反射的にビクっとなる自分に、店員さんは理解を示すような表情を浮かべる
「それってもしかして、トラックの幽霊じゃないですか」
「……知ってるんですか?」
ホットのコーヒーを買いながら問いかけると、店員さんが頷く
「昔、そこのT字路で事故があったんすよ。会社が結構無茶な運送やらせてたらしくて。赤信号に突っ込んでそのまま……だったらしいっす」
それ以降、深夜に走るそのトラックが現れるようになったのだという
他にお客も居ないので、店員さんは親切に教えてくれた
「幽霊だと気付かないで煽ったりしてたヤツらが、結構そこの交差点で事故ったりするんすよ」
……お客さんは無事で良かったですね
そう言った店員さんに礼を言って店を出ると、T字路に差し掛かったトラックが、ふっ……と姿を消したところだった

運転手は今でも運転を続けては事故を繰り返しているのだろう
いつまでも、いつまでも



235:仮の人 ◆sFvsmjhswAfh @\(^o^)/
14/08/24 01:57:26.82 ixm8gm6D0.net
69本目の蝋燭が消えました・・・
葛 ◆.zethFtqnUさん、ありがとうございました


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サンズリバー ◆X0uk49LcEU さん、第70話をお願いします
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語り部希望は
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236:いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw @\(^o^)/
14/08/24 02:05:34.69 iVpQyD8K0.net
【 第70話 】サンズリバー ◆X0uk49LcEU 様

『真夜中のドライブ[関西編]』
(1/2)

いつの日だったか、運転免許取得記念ドライブを僕と友人3人の計4人で決行。
18歳だったと思う。場所は滋賀県の比叡山ドライブウェイ。初めての真夜中のドライブで、みんな大興奮だった。

比叡山から奥比叡へ行く予定を立てた。まだカーナビなど無い時代だから、地図を片手に…。
まずは友人Aが運転し、みんなで交代しながら各々の好きなミュージックをかけるという決まり。
僕はMadonnaと松田聖子のカセットテープを用意していた。
他にはサザンオールスターズや自作のマイベスト等、人それぞれでワクワクしていた。

道のりは順調そのもので、スナック菓子を食べながら、とても盛り上がって楽しんでいた。

比叡山ドライブウェイも難なくスイスイ走り抜けていた。
途中で道が分かれていたが、地図の事などすっかり忘れ、感覚で突き進んで行った。
友人Aが僕に言った。「なぁ、そろそろ疲れたから、運転代わってーなー。」
僕は「おう、ええで!」と即答し、どこかキリのいい所で代わる事にした。

しばらく走ると自動販売機が見えたので、そこで缶ジュースでも買って休憩し、運転を代わる事にした。
車を一旦止め、みんなで缶ジュースを買い、再び車に乗り込んだ。
次の運転は僕なので、もちろん運転席に座った。

ドンドン!  皆「ヘッ!?」  ドンドンドン…  「ハッ!?」
ピカーッ!! ……対向車はない。
みんな口々に「しょうもない事すんなや?」 「誰やねん?」

237:いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw @\(^o^)/
14/08/24 02:06:08.11 iVpQyD8K0.net
(2/2)

僕が「はよ行かなヤバいんちゃうか?」と言った矢先に金縛りに遭った。人生初の金縛りである。
友人達は「オイ!オイ!!」「どないしてん!?」と口にするが、僕は応えられない。
あっという間に車内は静まり返った。勇気を出して目を開けると、みんなが硬直状態である。
しかし、あの光もなく自動販売機以外は暗闇の中だ。人影も何も見えない。

どのくらいの時間が経ったのだろうか、僕達の身体は元に戻った。しかし放心状態である。

不思議な事に、記憶はここで途絶えている。後日、何度かこの出来事について話しをしたが、
みんな同じように途中からの出来事を思い出せず、また、どうやって無事帰ったのか覚えていない。
僕達は、この話しは自然と封印してしまった。
それ以来、比叡山へは行っていない。あれは何だったのか今でも謎である。

【完】

238:仮の人 ◆sFvsmjhswAfh @\(^o^)/
14/08/24 02:06:36.10 ixm8gm6D0.net
70本目の蝋燭が消えました・・・
サンズリバー ◆X0uk49LcEUさん、ありがとうございました


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雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM さん、第71話をお願いします
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239:いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw @\(^o^)/
14/08/24 02:07:42.53 iVpQyD8K0.net
【第917話】 雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM 様

『温泉街の按摩士』
(1/3)

元同僚の話。

仕事の元請先に誘われて、温泉旅行に出かけたのだという。
温泉と料理を一頻り堪能して「さぁ寝るか」という頃、仲居さんに声を掛けられた。
「お休みになる前にマッサージはいかがですか?
 ここにはとびきり腕の良い按摩士がいますよ」

彼は肩凝りが酷く、それが原因での偏頭痛にも悩まされていた。
それを仕事仲間に零しているのを、どうやら仲居さんに聞かれたらしい。
「腕が良いっていうのならお願いしようかな」
という訳でマッサージを頼むことにした。

やって来た按摩士は、壮年の男性だった。
佇まいに何というか雰囲気があって、
「あぁこれは確かに腕が良さそうだ」と感じられたのだそうだ。
マッサージを受ける前に色々なことを聞かれたが、なぜかそれだけでかなり凝りが
取れたように感じられた。
「肉をリラックスさせて柔らかくするのも技術の一つですよ」と按摩士は笑う。

「おぉ、確かにこれは随分と硬いですね。一回だけじゃほぐれないかもなぁ」
施療に入った按摩士は、彼の身体に手を触れるとそう口にした。
しかし技倆は確かなようで、揉みほぐされる部位からどんどんと強ばりが取れていく。
ほぅと息を吐きながら身を任せていると、その内おかしな事に気がついた。

240:いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw @\(^o^)/
14/08/24 02:10:14.38 iVpQyD8K0.net
(2/3)

按摩士の動きが変だ。
揉んだり押したりするのはわかる。
しかし時々、指を肉の中に突っ込んで、何かを抜き取るような動作をしているのだ。
俯せになっているので何をしているのか見えないが、どうにも気になる。
やがて仰向けに体位を変え足を揉む段になり、初めて按摩士の行動を確認できた。

施療しながら、按摩士は彼の身体から何か黒い物を引っ張り出していた。
非常に小さくてジタバタと暴れている何かを。
黒くぼやけていてはっきりと見ることが出来ない。
それが抜かれると、ふーっと身体が楽になった。

じっと見ている彼を気にも止めず、按摩士はそれをサッサと手元の袋に押し込んで、
平然とマッサージを続けている。

我慢が出来ず、問うてみた。
「今さっき、一体何を抜き取ったんですか? まさか生き物じゃないですよね?」

按摩士曰く、
「あぁ、アレが見えますか。
 あれは疲労と悪い念とが混じって、凝り固まったものですよ。
 勤め人の抱える業とでも言いますか。
 肉だけじゃなく頭まで柔らかくなると、動いて見えることもあるのです。
 一種の錯覚というか、脳が視覚情報としてそう捉えるのでしょうな。
 見えない人にはまったく見えないらしいのですが。
 勿論、生き物なんかじゃありませんよ」

241:いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw @\(^o^)/
14/08/24 02:11:15.74 iVpQyD8K0.net
(3/3)

何となく、上手いこと誤魔化されたような気がする。
「霊が見える人」などと同様に、肩凝りの元も「見える人」と「見えない人」とが
いるとでもいうのだろうか。

腑に落ちないまま、なおも尋ねてみる。
「その抜き取ったヤツ、ええと業ですか。それ、一体どうするんです?」

按摩士は返答した。
「食べるんですよ。人間の業っていうヤツは、堪らないほど美味なんです」

マジマジと見つめたところ、按摩士は、
「あれ、真に受けられましたか?
 嫌だなぁ、冗談ですよ、冗談。
 単なる田舎按摩士のつまらない手妻だと思って下さい」
と笑いながら手を振って話を終わらせた。

その後は特に変わった話題も出なくてなり、やがてマッサージは終わった。
腕は確かに素晴らしくて、長年悩んでいた凝りが嘘のように取れたという。
しかし今でも、あのもぞもぞと動く何かが気になって仕方がないそうだ。

【了】

242:仮の人 ◆sFvsmjhswAfh @\(^o^)/
14/08/24 02:13:01.05 ixm8gm6D0.net
大変失礼いたしました。
ただいまのお話、第七十一話でございます。
どうやら未来からのメッセージがあった模様・・・

71本目の蝋燭が消えました・・・
雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOMさん、ありがとうございました


                      γ
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チャゴ ◆ePOonrVZq6さん、第72話をお願いします
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243:いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw @\(^o^)/
14/08/24 02:14:58.45 iVpQyD8K0.net
【第72話】 チャゴ ◆ePOonrVZq6
『隙間の眼』

(1/3)

これは高校時代に部活の顧問の先生から聞いたお話です。

先生のお母さんの実家は四国にある小さな漁村でした。
母屋の他に、小さな道を挟んで二階建ての古い建物があり、
昔はその建物で民宿を営んでいたそうです。
親戚が帰ってきたときなどは、その元民宿に泊まるというのが決まりになっていました。

さて、そんな先生が中学生だった夏休みのこと。
先生のお母さんが風邪をこじらせて入院してしまい、
夏休みはお母さんの実家に預けられることになりました。

先生のおばあちゃんはそんな先生をとても優しく迎えてくれたそうで、
先生もきれいな海とのんびりした雰囲気の田舎暮らしを楽しみにしてました。

先生が実家に到着した夜のことです。
先生は母屋ではなく例の元民宿に寝泊まりすることになったのですが、
押し入れから布団を引っ張り出して、畳八帖もある広い部屋の真ん中に敷いてみると、
途端に大きな建物にひとりぼっちだということに気がついて怖くなりました。

「テレビと部屋の電気を点けたまま寝よう」

先生は布団のそばにテレビを持ってくると、そのまま布団に入って寝ることにしました。
長旅で疲れていたのでしょう。眠気はすぐにやってきました。

244:いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw @\(^o^)/
14/08/24 02:16:05.50 iVpQyD8K0.net
(2/3)

どれくらい経ったでしょうか。
ふと、先生が目を覚ますと、点けていたはずのテレビと部屋の電気が消えていました。

「きっとおばあちゃんが消してくれたんだろう」

そう思った先生が寝返りを打ったときです。

布団が入っていた押し入れが少しだけ開いているのです。

「おかしいな。確かに閉めたはずなのに」

ぼんやりする頭の中でそう考えながら先生はその隙間を見ていたそうです。

すると、ぽっと赤い火のような灯りが隙間の中に見えました。
「あれは何だろう?」
先生が眼をこすりながらよく見てみると、

それは人の片眼だったそうです。

その眼はじっと先生を見据えていました。
怖くなった先生は慌てて眼を離そうとしますが身体がいうことをききません。

やがて、その眼はゆっくりゆっくり、まるで怒っている人のように
吊り上がってきたそうです。
「ああ、怖い!」
そう思った先生がやっと布団を被ることができると、
次に気がついた時にはもう朝になっていました。

245:いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw @\(^o^)/
14/08/24 02:17:30.48 iVpQyD8K0.net
(3/3)

母屋にいたおばあちゃんに先生がその話をしたところ、
おばあちゃんは次のような話をしてくれたそうです。

「ずっとむかし、この漁村にものすごく大きな台風が来たことがあってね。
可哀想に小さな女の子が波にさらわれて、助けようとした母親と一緒に亡くなったんだよ。
その親子はあの民宿に泊まっていたんだけれど、それ以来、妙な話を聞くようになってね。
もう民宿はやってないから最近は聞かなかったけど、お前も見たんだね」

お前も、という言い方が気になった先生は、
「おばあちゃんも見たの?」と訊ねました。

「ああ、見たよ。お前のお母さんもね。実はあの眼をみた女はね、女しか生めなくなるんだよ」

その瞬間、先生は鳥肌が立ったそうです。
おばあちゃんは全部で6人の子を産みましたが、すべて女ばかりだったのです。

この話をしていた先生とは、私が高校を卒業してからしばらく会っていません。
噂ではもう結婚して子どももいるそうですが、
私は怖くて、その子が女の子なのか聞けずにいます。

【了】

246:進行マモ ◆100mD2jqic @\(^o^)/
14/08/24 02:18:07.48 Dh7XLcnW0.net
72本目の蝋燭が消えました・・・
チャゴ ◆ePOonrVZq6 さん、ありがとうございました

                      γ
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仮の人 ◆4zKtBm.faU さん、第73話をお願いします
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247:仮の人 ◆sFvsmjhswAfh @\(^o^)/
14/08/24 02:18:49.91 ixm8gm6D0.net
【第七十三話】 

『蔵に住む者』

(1/3)

K子さんが子供の時分の話だ。
夏休みになるとH県にある母の田舎で2週間程過ごすのが毎年の慣習となっていて、その年もK子さんは母に連れられ、田舎に帰省することとなった。
しかし、K子さんは不満だった。
年の近い親戚の子たちはみんな男の子であまり一緒に遊べないし、毎年遊んでくれていたお姉さんは今年はアルバイトがあるとかでこちらに帰って来ないらしい。
K子さんは殆どの時間を一人で過ごすこととなった。
はじめは近くを散策したり、一人遊びをしてみたがすぐに飽きた。
持ってきた宿題も終わらせてしまって、さあ、やることがない。
そこでK子さんは思いついた。
K子さんが滞在している祖父母の家には、古い蔵がある。
古い農具などを仕舞っているから危ないと、絶対に入ってはいけないと口をすっぱくして言われていた蔵だ。
そこを冒険しよう!
思いついたら吉と、蔵まで走る。しかし当然のことながら、蔵の扉には鍵が掛けられていた。
暫くガチャガチャやってみたが、古い錠前は意外に丈夫で開けることはできない。
そこで止めていれば良かったのだが、K子さんは諦めきれず、鍵を探すことにした。

次の日。
遊びに行ってきますと家を飛び出したK子さんの手には蔵の鍵が握られていた。
几帳面な祖母がまとめて管理していたおかげで、あっさりと鍵は見つかり、こっそりと拝借してきたのだった。
辺りを見回し、蔵に入り込む。電気がちゃんと生きていてほっとする。
蔵の中には様々なものが溢れていた。ガラクタと骨董品と用具が入り混じっており、それを眺めるだけでもワクワクする。
その日から、蔵はK子さんの秘密基地になった。

248:仮の人 ◆sFvsmjhswAfh @\(^o^)/
14/08/24 02:19:36.50 ixm8gm6D0.net
(2/3)

蔵に入り浸るようになってから数日後。
K子さんは蔵の奥に大きな屏風を発見して、それをもっと広げて見てみたいと奮闘していた。
1辺が畳1畳分程のあるそれは結構重い。そこで、後ろから押してみたらどうだろうと屏風の裏に回り込んだ。

「あれ、ドアがある」
今まで屏風で隠されており気が付かなかったが、閂の掛けられた木製の黒い扉がそこにはあった。
表面には黄色く変色した紙が貼ってあり、なにやら書かれていたが、当時のK子さんには難しい漢字で読めない。
K子さんは少しだけ躊躇った後、扉を開くことにした。

ぎいぃぃぃぃぃ。
鈍い音を立て、扉が開く。カビ臭い。
暗闇の奥で、何かが動いた。
「……だれ?」
震える声で問いかけると、その問いに応じるように影がゆっくりとこちらに向かってきた。
やがて姿を現したのは、真っ赤な服に身を包んだ、髪の長い女だった。
「……だれ?」
K子さんがもう一度同じことを聞く。
女は答えず、K子さんに向かって腕を伸ばした。K子さんの首に手が掛かる。――氷の様に冷たい手だった。
女が蛇のような細い目で笑った。

「いやあああああああああああああああ!!!!!!」
K子さんは声の限り叫ぶと、女を突き飛ばして駆けだした。
もつれる足でなんとか蔵の外に飛び出すと、その場でへたり込んで泣き出してしまった。
泣き声を聞きつけ、祖父が駆け寄ってくる。その顔を見てほっとしたK子さんは更に泣いた。

249:仮の人 ◆sFvsmjhswAfh @\(^o^)/
14/08/24 02:20:03.57 ixm8gm6D0.net
(3/3)

漸く泣き止んだK子さんが何があったかを話すと、祖父は青い顔で、
「そうか、まぁだいたんけぇ」
と呟き、じい様に聞いた話だが、とこんな話をしてくれた。

この蔵がまだ建てられた直後、子供が行方不明になる事件が相次いだ。
犯人は若い女で、この蔵で子供の首を絞めているところを発見され、そのまま蔵の奥に閉じ込めてしまった。
暫く経って見に行くと、飲まず食わずのはずなのに女はまだ生きている。
また閉じ込めて、もう死んだだろうと見に行くが、まだ女は生きている。
それが何度も繰り返され、何年経っても、何十年経っても、女はその時のままの姿で居るそうだ。
そして、もう殆どの人が女を忘れた今でも、暗い蔵の奥に女は閉じ込められたままなのだと。

「大丈夫だぁ。なんでかはわからんが、あいつはあっこから出てこれはせん」
祖父は、ぽんとK子さんの背中を叩くと蔵の中に消えた。奥の扉を閉めに行ったのだろう。
戻って来た祖父がなんでもない顔で蔵の鍵を閉めると、やっとK子さんは安心することができた。
その後蔵の鍵は厳重に保管されることになり、誰も蔵には入れなくなった。
このまま蔵が朽ち果てるまで、そのままにするのだと言う。記憶のまま消えてしまうのが一番良いのだと。

しかし、あれから十数年が過ぎた今も、K子さんは思い出す。
今もあの蔵の中に、あの女はいるのだろうか、と。

【了】

250:進行マモ ◆100mD2jqic @\(^o^)/
14/08/24 02:20:56.06 Dh7XLcnW0.net
73本目の蝋燭が消えました・・・
仮の人 ◆4zKtBm.faU さん、ありがとうございました

                      γ
                      (
                      _ノ

                   /
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         ,、-,、'         ハ- 、
         ( .( '、_    _ ,ノ  ノ:i   )
        ,、'""`ー---‐'"フ、_ - _,、' -'"
        (  _   ,、'"    ̄
         `ー--─'"

まんじゅう ◆PP2Ugyol5s さん、第74話をお願いします
 -----------------------------------------------------
語り部希望は>>1の【受付スレ:したらば】へ
雑談、感想は>>1の【雑談スレ:したらば】でお願いします。

251:いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw @\(^o^)/
14/08/24 02:21:21.35 iVpQyD8K0.net
【第74話】 まんじゅう ◆PP2Ugyol5s 様

『千葉県S駅』
(1/2)

現在は改装が済み、明るくお洒落な雰囲気の駅ですが、以前は怪しげな話をよく聞きました。

Cさんは地区のPTA会長をしている女性で、S駅を日常的に使用していたそうです。
その日も、いつも通りS駅からU線の地元駅行きの各停電車に乗り、
なんとなく夕暮れの窓の外を眺めていると、ふいに違和感を感じました。

いつもと同じ景色、車内の筈ですが、やけに薄暗い。
乗り込んだ車両の電気が切れたのかと周りを見渡せば
前後の車両の灯りもなく、真っ暗な電車がスピードを上げて進んでいます。
車内を照らすのは、景色とともに流れていく外の頼りない光だけでした。

自分の感じた異変を、他の乗客も感じているのだろうか?
列車は空席が目立ちましたが、十数人は同じ車両に乗っています。

Cさんは自分以外の乗客に目を向けた途端ぞっとしました。
老人・若者・ビシネスマン、全ての乗客が体を折りたたむかのように、深く俯いているのです。

真っ暗な車内、俯いたまま微動だにしない乗客達、重苦しく凍りつくような沈黙に包まれた異様な車内。
CさんがS駅から乗り込んだ際は、間違いなく、何の変哲もない普通の電車だった筈なのに。

Cさんに聞こえるのは自分の荒い吐息だけで、
パニックに陥りそうになる自分を必死に抑え、早く次の駅に着くよう必死に祈りました。

そんな願いと裏腹に電車はいくつかの駅を通り過ぎ、随分時間が過ぎた頃、
ようやくスピードを緩め、ゆっくりホームに止まりました。

252:OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E @\(^o^)/
14/08/24 02:23:26.10 bIEXoD6G0.net
(2/2)

一目散に電車から降りたCさんは、
明るいホームにへたへたと座りこんでしまい、声を掛けられた途端飛び上がってしまいました。

青い顔をした初老の女性は、Cさんと同じく酷く動揺しているようで、

「あ、あなたもですか。絶対今のおかしかったですよね…」

彼女も先程の電車に乗り合わせた乗客で、全く同じ体験をしており、更に信じられない事をCさんに言うのです。

「私、S駅からU線に乗ったんですよ。確かに。でもこの駅…O駅ですよね?K線の」

地元民でないと分かり辛いのですが。O駅にCさんが乗ったU線から行くには、最低1回は乗換が必要です。
そもそもS駅からO駅には直通の路線はありません。

何で何で…とオロオロする女性に、
愕然としたCさんはかける言葉もなく、しばらくホームに2人立ちすくんでいたそうです。

【了】


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