CHEMISTRY No.262at MUSICJG
CHEMISTRY No.262 - 暇つぶし2ch454:、何かが、始まる。 そう予感させている中、僕らの浅草はいつもと変わらない様相。 周囲は舞っている黄味がかった結晶に驚きの声を上げていた。 何でもない中に降り注ぐ非日常。 それが街の景色を徐々に塗り変えていく。 最初はどうというものではなかった。 ただ、それは少しずつ、それでいて確実に降り積もっていく。 積もった先にあるのもの。 それが全ての終わりだった。 帝聖を怒らせてはいけない。 先人は幾度となく警告を発していた。 教訓は常々、後になってから活かされる。 それは最も愚かで、最も悲しい歴史でもある。 それを知っている者たちは皆、歴史の彼方へと追いやられてしまっていた。 その教訓が、この赤黒い空を生んだのだろうか。 それは定かではない。 浅草の人間は、自然に逆らう術を知らない。 ただそこに住み、大きな流れに身をまかせる。 異変が起きても、時がいずれどうにかしてくれる。 人々は口癖のように云う。 その結果が、この惨状である。 昨日までは無邪気に笑っていた人々の姿はそこにはなく、ただただ惑うばかりの姿が、そこにはあった。 結晶は、それから街の全てを黄土色に埋め立てしまった。 何も出来ないまま、一週間が過ぎようとしていた。 交通、物流、あらゆる手段が麻痺して、孤立してしまった街。 叫喚としている街の姿を意に介することなく、結晶は降り続けている。 太陽だと思っていたものは、穴だった。 どれだけ悲鳴を上げていても、全てはあの上空の黒い穴に吸い込まれていく。 五感はとうに麻痺しているのに、この臭いは脳まで染み込んでしまっているようだ。 空気はじっとり湿っていた。 街はむせ返るように暑かった。 人の声は、もう聞こえなくなっていた。 僕らはいつ、帝聖を怒らせたんだろう。 僕らはいつ、吸い込まれてしまったんだろう。 僕らはいつ、ここから出られるんだろう。




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