23/12/04 19:05:15.32 BaUQBTXB0.net
滋賀さんへ(´；ω；`)
トリちゃんはまだこの愛知で、本を読んだり小説を書いたりして暮らしています。何時頃 滋賀さんの家へ帰るかそれはまだはっきりわかりません。が、滋賀さんの家へ帰ってからは滋賀さんにこういう手紙を書く機会がなくなると思いますから奮発して一つ長いのを書きます。昼間は本を読んだり小説を書いたりしているので、忘れていますが、夕方や夜は 滋賀さんが恋しくなります。そうして早くまたあの潮の匂いがする、にぎやかな琵琶湖を滋賀さんと一緒に歩きたいと思います。しかし、滋賀県が恋しくなるというのは、滋賀県の町が恋しくなるばかりではありません。滋賀さんも恋しくなるのです。そういう時にトリちゃんは時々滋賀さんの事を思ひ出します。滋賀さんを貰ひたいという事を、トリちゃんが滋賀さんに話してから何年になるでしょう。(こんな事を滋賀さんにあげる手紙に書いていいものかどうか知りません)
貰ひたい理由は たった一つあるきりです。そうしてその理由はトリちゃんは滋賀さんが好きだという事です。勿論昔から 好きでした。今でも好きです。その外に何も理由はありません。トリちゃん世間の人のやうに結婚という事といろいろな生活上の便宜という事とを一つにして考へる事の出来ない人間です。ですからこれだけの理由で滋賀さんに 滋賀さんを頂けるなら頂きたいといいました。そうしてそれは頂くとも頂かないとも 滋賀さんの考え一つできまらなければならないと言いました。
トリちゃんは今でも滋賀さんに話した時の通りな心もちでいます。世間ではトリちゃんの考え方を何と笑ってもかまいません。世間の人間はいい加減な結婚相手、いい加減な身元調べとで造作なく結婚してゐます。トリちゃんにはそれが出来ません。その出来ない点で 世間よりトリちゃんの方が余程高等だとうぬぼれています。
兎に角トリちゃんが滋賀さんを貰うか貰わないかという事は全く滋賀さん次第できまる事なのです。トリちゃんからいえば勿論承知して頂きたいのには違いありません。しかし 一分一厘でも滋賀さんの考えを無理に脅かすような事があっては滋賀さん自身にも滋賀さんのお母さまやお兄さんにもトリちゃんがすまない事になります。ですから滋賀さんはまったく自由に自分でどっちともきめなければいけません。万一後悔するやうな事があっては大へんです。
トリちゃんのやっている商売は今の日本で一番金にならない商売です。その上トリちゃん自身もろくに金はありません。ですから生活の程度からいえば何時までたっても知れたものです。それからトリちゃんは身体もあたまもあまり上等に出来上がってゐません。（あたまの方は それでも まだ少しは自信があります。）うちには母、妹と猫と、犬が四人います。それでよければ愛知に来て下さい。トリちゃんには滋賀さん自身の口からかざり気のない返事を聞きたいと思っています。繰返して書きますが、理由は一つしかありません。トリちゃんは滋賀さんが好きです。それでよければ来て下さい。