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〔設問2〕
⑴ GのHに対する明渡し請求の可否
1.合意解除の対抗力(原則:民法613条3項)
賃貸人と賃借人が賃貸借契約を合意解除しても、原則として転借人には対抗できない
。これは、転借人の権利が賃借権を基礎としている以上、
当事者の合意のみでこれを消滅させることは信義則(民法1条2項)に反するからである。
2.債務不履行解除権がある場合の特例
もっとも、解除当時、賃貸人が賃借人の債務不履行を理由とする解除権を有していた場合はどうか。
判例(最判昭37.2.1)によれば、賃貸借が債務不履行により解除されるべき運命にある場合、
賃貸人と賃借人が合意により契約を終了させても、それは実質的に不履行解除と変わらないため、
賃貸人は転借人に対して明渡しを請求できるとする。
3.あてはめと結論
本件では、Fに4ヶ月分の賃料不払があり、Gは相当期間を定めて催告を行っている(事実Ⅲ9)。
Gは適法な解除権を有していたといえる。
よって、GはHに対し、合意解除を理由として丙土地の明渡しを請求することが認められる。
⑵ 差押えと対抗関係
① Iによる相殺の対抗
1.問題の所在
差押え後に取得した債権を自働債権として相殺できるか。民法511条2項の「差押え前の原因」の解釈が問題となる。
2.規範とあてはめ
民法511条2項は、差押え後に取得した債権であっても、
それが差押え前の原因(契約等)に基づき発生したものであれば相殺を認めている。
本件において、Iが取得する将来の賃料債権は、
差押え(令和7年7月1日)より前の令和6年10月20日に締結された賃貸借契約に基づき発生するものである。
3.結論
したがって、Iは債権βと賃料債権を相殺することをGに対抗できる。
② GによるLからの賃料取立て
1.賃貸人たる地位の移転(民法605条の2第1項)
不動産が譲渡され、対抗要件(登記)が備えられた場合、賃貸人の地位は譲受人に移転する。
本件では令和7年8月1日に登記が移転しており、これ以降の賃料債権は新所有者Lに帰属する。
2.差押えの効力の及ぶ範囲
差押えの効力は、債務者Fの責任財産にのみ及ぶ。賃貸人の地位がLに移転したことにより、
将来賃料債権はFの財産から離脱している。
判例(最判平10.1.30)によれば、賃料債権の差押え後であっても、
不動産譲渡による賃貸人地位の移転は有効であり、差押債権者は新所有者に帰属した賃料を取り立てることはできない。
3.結論
よって、GはLに対して差押えの効力を主張できず、8月分以降の賃料をKから取り立てることはできない。