22/11/09 05:57:45.73 DpgcIbX/0.net
「密輸」
ここはヨーロッパ。
ラティカは寒村の国境沿いで働く税関の職員だった。
仕事はほとんどないが、彼はそれでよかった。
彼の税関に、月に一度スティヴナという男が訪れた。
スティヴナは必ず大きなトラックで来たが、なぜかいつも中身は空であった。
ラティカは、「コイツは怪しい、密輸入者だろう」と疑って、トラックの中を毎回調べたが、
不審な物は何一つとして見つからなかった。
ある日、ラティカはスティヴナに訊いた。
「おまえの職業はいったいなんだい?」
すると、スティヴナは薄ら笑いを浮かべて言った。
「ヘヘヘ、密輸入者だよ」
数年後、ラティカは退職してシカゴに引っ越した。
ある晩、ラティカはレストランで夕食を取っているとき、ふと向こうにスティヴナがいることに気づいた。
「おう、スティヴナ、俺のことを覚えているかい?」
「もちろんだよ。ラティカ。税関の仕事はどうした」
「もう退職してこっちに引っ越してきたのさ。ところで訊いていいか?
おまえは密輸入者だって言っていたけれど、トラックの中には何もなかったぞ。いったい何を密輸していたんだ」
「だからトラックだよ」