19/01/03 20:50:07.33 .net
「カス子、そいつ元の名を陳加寿雄いいまんねん。萬田はんとかいいはったな。こんな名前の通りのカス、煮るなり焼くなり好きなようにしとくなはれ」
と、くわえ煙草の煙をたなびかせながら店の奥から出てきた男は、年の頃50前後、どこをどう切っても堅気の肉など出るはずもない極道である。
「わしが守りをやっとるホールでチンケなゴトしくさったんや。バネいじりよったんですわ」
とエナメルキッドの尖った靴先で土下座して
いるカス子、いや今では加寿雄の頭を小突き倒し、その動きで金髪のウイッグが外れてしまい、一本の髪もない地肌が脂汗でテカテカと光りながら現れた。
「あちゃ~ヒ・サ・ン…ププッ」
公平は笑いが吹き出さないように自分の口元を手で覆った。
「なんやパチについて、そのホールで素人相手におのれも素人のくせして能書き垂れくさって偉そうにしとったんや。余計にわしらマークしまんがな」
くわえていた煙草を手にして、五十路の極道は加寿雄の禿頭にこすりつけて火を消した。
「ひぃーっ。あつう、あつい、やめてくれ」加寿雄は頭を抱えて転げ回る。
「のう、加寿雄、わしのこの店でおまえに貸しとるバンスの債権もこの萬田銀行の頭取はんに譲渡するで。ええな。
おまえがこの店で働く稼ぎから月々端した金ハネても返済がいつになるかわからへんがな。いっぺんにきれいにしよやないけ。その方がおまえも楽やろ。
ママ、こいつのバンスなんぼや。なに?100万ちょいか。
萬田はん、折れちゅうとこでよろしいわ。折半でんな。わしはミナミの鬼の向こう岸に立つ気はさらさらおまへん。沢木はんとことモメることになったら事でっさかいな」
「ほうでっか。わしも思わん小遣い稼ぎ出来ましたわ。おい公平」
「へい。立たんかいおっさん」
公平はよろける加寿雄の胸ぐらをつかみなんとか立たせる。
その前に萬田銀次郎は立ちはだかって「しばらくの間、マグロ漁船に乗ってもらうか。それとも腎臓片方売ってもらおか。好きな方選べや」と口の端をゆがめた。
「か、か、堪忍しとくなはれ。社長も萬田はんも。たのんますわ」
「うわ。アニキ、このおっさんションベン垂れしてまっせ、くさ~えげつな~」
公平は大仰に顔をしかめ鼻をつまんだ。
伝線が入りまくった黒ストッキングの股間に大きな染みを作って加寿雄は禿頭をさらしたままうなだれるだけであった。