【元祖】こんなゴルゴ13は嫌だ!26発目at CAFE40
【元祖】こんなゴルゴ13は嫌だ!26発目 - 暇つぶし2ch463:名無しさん@お腹いっぱい。
18/12/28 14:54:50.23 .net
―1-
大晦日まで降り続いた雪も止み、蓋を開けたように澄んだ空の元、獅子舞の太鼓や鈴に笛の音がぴーひゃららと聞こえてくる帝釈天の参道は、
新年を祝う人々が皆明るい表情でわいわいがやがや賑やかに行き交っている。その狭い参道をまるでまるきり塞ぐかのごとく、
一台のマイバッハリムジンがとらやの前でぴたりと停まった。そのシルバーメタリックのボディは曲面から成る巨大な鏡のようであり、周りの景色を
不思議な形に映し出し、大きな車体が邪魔をして往来に滞りができている。ドアが開き、光沢も鮮やかなフェラガモの黒いシューズが地を踏むと、
カシミアのダブルのチェスターコートに身を包み、黒いボルサリーノをやや傾け気味に被った男が現れた。男は縁付きの黒い大きなペルソールの
アイウェアを外し、少し眩しそうに目を細めた。帽子を取って少し首を振り上げ、前髪を上げる仕草をすると、しめ縄がかかった「とらや」の文字を
一文字づつ確認してから、そっとその暖簾を潜った。この男の全ての所作がまるで優雅なひとつながりの旋律のようである。歌舞伎座で何々衛門が
演じてもこうはいかない程に流麗である。
店の中はというと、こちらも正月客で大変に賑わっている。客が持つ破魔矢や色とりどりに飾られた羽子板に、艶やかな晴れ着姿の娘たちの一行が、
正月の華やかさを益々引き立てている。
男は被っていた帽子を取り胸に当て、「こんにちは」と言った。しかし喧騒に消されて店の者は気付かない。もう一度、男は先ほどより少し大きな声で
同じ言葉を言った。「いらっしゃいませ」さくらゴルゴがようやく気付いたが、この店の客とは思えない立派な出で立ちに、少々戸惑ったようである。
あいにく客席は店の入り口のすぐ手前しか空いていない。「どうぞこちらへ。ご注文お決まりになりましたらお呼び下さい」格子模様の着物の袖を上げ、
前掛けをしたさくらゴルゴは決まり言葉でも言うかのように男にそう告げると、またいそいそと店の奥へと戻って行った。男は店の中をぐるりと眺めて
いたが、自分の普段のライフスタイルと比べてみると、まるで別の国にでも来たように思えてならない。暫くして、近くの客にたった今団子を運んだ
ばかりのさくらゴルゴをようやく呼びとめると、「あの、寅さんいますか?あっ失礼、僕はこういう者です」と言ってナパレザーの手袋をゆっくりと外し、
胸元から名刺入れを取り出し、その中の一枚をさくらゴルゴに渡した。「あ、あの、兄ですか?あいにく留守…」と言いながら名刺を見ていた
さくらゴルゴが急に息をのんで目を丸くした。あまりに仰天したのか、左手で大きく開けた口を覆ったため、小脇に抱えていた盆が床に落ち、
からんころんと大きな音を立てたので店の中が急に静まりかえった。
「おいちゃん、大変、大変よ!」さくらゴルゴは大慌てで、店の奥で団子を捏ね続けているおいちゃんゴルゴのところに戻ると、男から受け取った名刺を
見せた。「ええ?なんだってんだいったい?」おいちゃんゴルゴが鼻眼鏡越しに名刺を覗きこむと、これまた素っ頓狂な声でこう叫んだ「は、はながたみつる!?」


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