26/01/18 19:55:09.67 .net
URLリンク(kakuyomu.jp)
小説「シュガー」(´・ω・`)
32:ponzi
26/01/21 18:10:58.59 .net
>>1はけっこう面白いと思います。もうちょい長ければ文学賞にも出せるのに(´・ω・`)
33:名無し物書き@推敲中?
26/01/21 20:59:52.71 .net
テスト
34:名無し物書き@推敲中?
26/01/30 06:26:09.95 .net
1/4
『楓と藍のふしぎな事件簿』~音楽室の秘密~
春の風が桜の花びらを舞わせる四月、私は静かな地方都市の高校に転校してきた。名前は楓(かえで)。
都会の喧騒から逃れるようにこの町を選んだが、その理由は誰にも話せない過去があったからだ。
初登校の日、私は担任の先生に連れられて三年B組の教室に入った。
三十人ほどの生徒たちが一斉に視線を注ぐ中、自己紹介を求められた。
「○○〇楓です。よろしくお願いします」
短く済ませようとしたその時、教室の後ろの席で一人の少女が顔を上げた。
長い黒髪に透き通るような白い肌、そしてどこか遠くを見つめるような深い瞳。
彼女の名は藍(あい)だと後で知った。
放課後、私は校内を探索しているうちに、旧校舎の音楽室にたどり着いた。
木造の古びた建物で、他の教室とは違い特別な雰囲気を漂わせていた。
ドアの隙間から微かなピアノの音が聞こえてくる。誰かが弾いているのだろうか。
恐る恐るドアを開けると、中には誰もいなかった。
しかし、黒光りするグランドピアノの蓋は開けられており、譜面台には古びた楽譜が置かれていた。
近づいて見ると、それは『月光ソナタ』の楽譜だったが、ところどころに赤い文字で書き込みがなされている。まるで暗号のようだ。
「あなたも聴こえるの?」
突然の声に私は飛び上がりそうになった。振り返ると、藍が音楽室の入口に立っていた。
「音楽…?」私は驚きながら尋ねた。
藍はゆっくりと頷き、音楽室の中へ歩み入った。
「この音楽室には不思議な噂があるの。毎日午後四時になると、誰もいないのにピアノの音が聞こえてくるって」
私は時計を見た。ちょうど午後四時だった。
35:名無し物書き@推敲中?
26/01/30 06:31:05.35 .net
2/4
それから数日、藍と私は音楽室の謎を調べ始めた。
藍はこの学校の卒業生の娘で、彼女の母親が三十年前にこの学校に通っていたこと、そしてその母親が音楽室にまつわる何かを知っているらしいことを打ち明けてくれた。
「母はこの音楽室について何か隠しているの。でも詳しいことは教えてくれなくて……」
私たちは毎日午後四時に音楽室を訪れ、ピアノの音が鳴るのを待った。
そして三日目、ついに何かが起こった。ピアノがひとりでに演奏を始めたのだ。
それは『月光ソナタ』だったが、ところどころ旋律が変わっていた。まるで誰かが意図的にコードを変更しているようだ。
演奏が終わると、譜面台に新たな楽譜が現れていた。
それは先日見た楽譜と同じものだったが、今度は青い文字で別の書き込みが追加されていた。
「これは暗号だ」藍が言った。
「母が昔、暗号遊びをしていた時のことを思い出したわ。音楽記号を使ってメッセージを隠していたの」
私たちは楽譜を解読し始めた。音符の長さや休符の位置、強弱記号などがアルファベットに対応している複雑な暗号だった。
一夜かけて解読した結果、最初のメッセージが浮かび上がった。
「真実は月光の中に 三十年前の約束を」
藍は母親に問いただすことを決意した。最初は頑なに拒んだ母親だったが、藍の熱意に折れ、ついに真相を語り始めた。
三十年前、藍の母親・百合子(ゆりこ)はこの高校の音楽部に所属していた。
彼女の親友・玲子(れいこ)は天才的なピアニストだったが、ある日突然行方不明になった。
失踪の前夜、玲子は百合子に「音楽室に秘密を隠した。もし私に何かあったら、月光ソナタでそれを伝える」と告げていた。
百合子は何度も音楽室を調べたが、何も見つからなかった。
時が経ち、事件は忘れ去られようとしていた。しかし十年前から、音楽室で不思議な現象が起こり始めたという。
「玲子は今もどこかで生きているかもしれない」百合子は涙ながらに語った。
「あの暗号は玲子からのメッセージに違いない」
藍と私は再び音楽室に戻り、新たな手がかりを探した。楽譜の暗号をさらに解読していくと、第二のメッセージが現れた。
36:名無し物書き@推敲中?
26/01/30 06:35:40.97 .net
3/4
「三番目の鍵は月光の三拍子に」「三拍子…ワルツ?」私は思案した。
藍が突然立ち上がり、ピアノの前に座った。
「月光ソナタは三楽章から成っている。第一楽章はゆっくりとした三連符が特徴的よ」
彼女は楽譜を見ながら第一楽章を弾き始めた。
すると、ピアノの内部から微かな軋む音がした。鍵盤の下に何かが隠されているようだ。
慎重に鍵盤の蓋を外すと、小さな金属の箱が見つかった。中には古びた日記帳と一枚の写真が入っていた。
写真には若き日の百合子と、おそらく玲子と思われる少女が笑顔で並んで写っていた。
日記帳は玲子のものだった。ページをめくると、最後の記述にたどり着いた。
「彼らが近づいている。あの研究を隠さなければ。音楽室の壁の中に全てを託す。百合子、許して。私が消えなければあなたまで危険にさらすことになる」
日記にはさらに続きがあった。学校の地下で行われていた非倫理的な研究について、そして玲子がその証拠を偶然発見してしまったこと。
彼女は証拠を音楽室の壁に隠し、身を潜めることを選んだ。
「玲子さんは生きているかもしれない」私は藍に言った。
「この日記は最近書かれたもののように見えるわ。インクの褪せ方がおかしい」
私たちは音楽室の壁を調べ始めた。古い木造の壁はところどころ傷んでいたが、特に目立ったものはない。
しかし、ピアノの真後ろの壁板がわずかに浮いていることに気づいた。
力を入れて押すと、壁板がスライドし、小さな空間が現れた。
中にはファイルの束と、いくつかの実験器具、そして一通の手紙が置かれていた。手紙は玲子からのものだった。
「百合子へ。三十年の時を経て、ようやく真実を伝えられる時が来た。
あの研究はとっくに中止され、関係者は処罰された。私は遠くの町で新しい名前で生きてきた。
でも、この秘密をあなたと共有できずにいることがずっと心の傷だった。
音楽室のピアノは私が遠隔操作できるように改造した。
あなたがこの手紙を読んでいるなら、私からの最後の贈り物を受け取ってほしい。明日の夜、音楽室で待っている」
37:名無し物書き@推敲中?
26/01/30 06:37:13.09 .net
4/4
翌日の夜、藍と百合子、そして私は音楽室で待った。
午後八時、ドアが静かに開き、白髪混じりの女性が現れた。年齢は五十代半ばだろうか。しかしその瞳は、写真の玲子そのものだった。
「百合子…本当にごめんなさい」
二人は抱き合って泣いた。三十年ぶりの再会だった。
玲子は全てを語った。証拠を隠した後、彼女は身を隠すために遠くの町へ移り、名前を変えて生きてきた。
時が経ち、事件が風化したことを確認してから、ようやく真実を伝える決心をしたのだという。
「この音楽室は私たちの思い出の場所だった。だからここで真実を明かそうと思ったの」
音楽室の謎は解けた。幽霊でも何でもなく、ただ過去の秘密が時を超えて現代に囁きかけていたのだ。
─そして
38:名無し物書き@推敲中?
26/01/30 06:38:51.31 .net
4+/4
事件解決から一ヶ月後、音楽室は改修されることになった。
しかし、ピアノはそのまま残され、今では藍と私が時折演奏を楽しんでいる。
転校してきたばかりの私は、この町で不思議な友情と、過去と現在を繋ぐ物語に巻き込まれた。
藍は今ではかけがえのない親友だ。
ある晴れた午後、私たちは音楽室で連弾をしていた。窓から差し込む陽光がピアノの黒光りする表面に反射し、キラキラと輝いている。
「楓、あなたが転校してきてくれて本当によかった」藍が微笑んだ。
私も笑みを返した。都会から逃げるようにしてきたこの町で、私は自分が求めていたものを見つけたのかもしれない。
それは単なる安住の地ではなく、真実を追求する勇気と、他人を信じる心だった。
音楽室からは、二人の奏でるハーモニーが春の風に乗って流れていった。
それは過去の秘密を鎮め、新たな始まりを告げる旋律だった。
音楽室の謎は解けたが、私たちの物語はまだ終わらない。
藍と私はこれからもこの学校で、そしてこの町で、新たな発見と成長を続けていくのだろう。
時折、音楽室を訪れると、微かに『月光ソナタ』の旋律が聴こえるような気がする。
それは過去の残響なのか、それとも新たな物語の始まりを告げる前奏曲なのか
―その答えは、まだ誰にもわからない。
『楓と藍のふしぎな事件簿』第1話~音楽室の秘密~、了―
39:名無し物書き@推敲中?
26/02/04 08:07:23.28 .net
テスト
40:名無し物書き@推敲中?
26/02/07 21:20:42.63 .net
>>38
2話を読みたい
41:名無し物書き@推敲中?
26/02/08 21:21:58.87 .net
『冷たい雨と探偵と赤いドレスの女』※1
雨が窓ガラスを強く叩く。ネオンに濡れたアスファルト。タクシーのけたたましいクラクション。
そして人々の嘘。この街はいつもこうだ。俺は事務所のデスクに足を乗せ、スコッチの残りを眺めていた。
電話は鳴らない。鳴るはずもない。最後の仕事から三ヶ月、貯金は底をつきかけている。
その時、ドアが開いた。
入ってきたのは、赤いドレスがびしょ濡れの女だった。三十歳前後、高級そうな身なりをしているが、どこか冷たい目には疲れがにじんでいる。
地下クラブのディーバ(歌姫)か、それとも組織の囲い女か。
俺は私立探偵のサム。この街の裏通りで生きてきた。今日の依頼人はクラリスと名乗る、この赤いドレスを着た謎めいた女だった。
「私の夫を尾行してほしい」彼女は冷たい目で俺を見つめた。
「浮気の証拠が欲しいの」
写真を手渡された。男はハイソサエティの実業家マシュー・ヴァン・ルーム。食えねえ名前だ。
42:名無し物書き@推敲中?
26/02/08 21:23:11.72 .net
※2 数日間の尾行。マシューは模範的な夫だった。会社、慈善イベント、時折のゴルフ。浮気の気配は微塵もない。
七日目の夜、事態が動いた。マシューはダウンタウンの廃工場へ向かった。俺は愛車のルノーを路肩に停め、後を追う。
中は暗かった。鉄の匂いが鼻を刺す。血生臭い嫌な匂いだ。
遠くから声が聞こえる。
「……全部揃ったか?」
「あと一つだけ。今夜中に片付ける」
俺は柱の陰に身を潜めた。マシューの声だ。もう一人の声は……聞き覚えがある。
「証拠は消えた。警察は何もつかめない」
その声を聞いた瞬間、背筋が凍った。クラリスの声だ。廃工場で密会?
「探偵はどうする?」マシューが聞いた。
「彼はもう用済みよ」クラリスの声は冷たい。
「でも、念のため監視は続けるわ」
俺は静かに後退した。どうやら、依頼そのものが罠だったらしい。
彼らが何を計画しているのかはわからないが、一つだけ確信があった―俺は利用されている。
事務所に戻り、シャッターを閉めた。机の上にはクラリスから受け取った前金の封筒が置いてある。
開封すると、中には札束の他に、小さなメモが挟まれていた。
「ごめんなさい、サム。あなたはいい人だけど、これが必要だったの」
メモの裏には住所が書かれている。街外れのマルサン倉庫だ。
コルト・ディテクティブスペシャル(拳銃)に弾を込め、コートを羽織る。
外は相変わらず冷たい雨が降っている。
43:名無し物書き@推敲中?
26/02/08 21:25:16.06 .net
※3 倉庫に着くと、ドアが少し開いていた。中からうっすらと明かりが漏れている。慎重に中へ入る。
広い空間の中央で、マシューが縛られ、口を塞がれていた。
その傍らにクラリスが立ち、ベレッタ(小型拳銃)を手にしている。
「来るのが遅かったわね、サム」彼女が振り返った。
目には以前の冷たさはなく、悲しみが浮かんでいる。
「どういうことだ?」俺は拳銃を構えたまま問いかけた。
「マシューは私の夫じゃない」クラリスの声が震える。
「彼は……私の兄を殺した男なの」
マシューがもがく。クラリスが続ける。
「五年前、兄はマシューの会社で働いていた。不正を内部告発しようとして、事故で死んだ。
警察は動かないし、証拠もないわ」
「それで復讐か?」
「違う」クラリスが首を振る。
「復讐じゃない。証拠を集めるためよ。彼を尾行させたのは、あなたに彼の動きを記録してもらうため。
でも今日、彼が廃工場で部下に指示するのを聞いた。また事故を起こすつもりだった。次は誰かわからない」
クラリスがマシューのポケットからUSBメモリを取り出す。
「これが全てよ。取引記録、メール、音声データ。兄が集めていたものと、私が追加した分」
「それで、なぜ俺を巻き込んだ?」
「あなたの評判を聞いたの。裏切り者を許さないって」クラリスの声のトーンがかすかに変わった。
「そして、あなたが私の計画を止められる唯一の人だと思った。私が……彼を殺そうとするのを」
クラリスが拳銃をマシューに向ける。手が震えている。
44:名無し物書き@推敲中?
26/02/08 21:26:37.70 .net
※4 「待て」俺が一歩前に出る。
「それでお前の兄が戻るわけじゃない。お前まで犯罪者になるだけだ」
「じゃあ、どうすればいいの?」クラリスの目から涙が零れた。
「証拠を警察に渡せ。俺がついてる」
その時、倉庫の奥から物音がした。三人の男が現れる。マシューの部下たちだ。
「思った通りだ、クラリス」縛られていたはずのマシューが、簡単に縄を解き放った。
「君が裏切って探偵を連れてくるって賭けに勝ったよ」
全てが仕組まれていた。クラリスの計画も、俺の関与も、全てマシューの掌の上だった。
男たちが近づいてくる。俺はクラリスを背後に隠し、拳銃を構える。
「面白いことになったな」マシューが嗤う。
最初の男が飛びかかってきた。俺はそれを躱し拳銃の柄で側頭部を打つ。
二人目がナイフを振るう。銃声が倉庫内に響く―俺の拳銃だ。男の足元の床を撃った。
「次は頭だ!」俺が警告する。
マシューが素早く動く。クラリスの腕を掴み彼女を盾にする。
「拳銃を捨てろ、探偵。さもないと彼女を殺す」
俺はためらう。
「この女はどうやら兄の死を疑ってたようなんで、探偵を雇うよう誘導したのは俺だ。
探偵が嗅ぎまわっている間、ボロを出さなければ俺への疑いの目も晴れると思ったんだがな……」
「彼女は、とうに真相に気づいてた」
「ああ、仕方ないが、女も始末するしかないようだ。
私立探偵と狂った女が事故で倉庫の火事に巻き込まれる。それもまた良しとしよう」
そう言った瞬間、クラリスが肘でマシューの腹を強打した。
彼が苦しみ、うなる。隙を見て俺が前へ躍り出る。
格闘は短かった。マシューはビジネスマン。俺は街で鍛え上げられた探偵。
俺の数発のパンチで彼は床に倒れた。
部下たちは主人が倒れたのを見て、逃げ出した。
45:名無し物書き@推敲中?
26/02/08 21:27:04.97 .net
※5 警察のサイレンが近づいてくる。クラリスが通報していたのだ。
「ごめんなさい、サム」彼女がまた謝る。
「でも本当のことは言った。兄のことは本当よ」
「わかってる」俺が頷く。
「でも次からは、もっと直接的に俺に頼め。罠は必要ない」
警官が倉庫に踏み込んでくる。俺は証拠のUSBメモリを渡し、事情を説明した。
一週間後、クラリスが事務所を訪れた。
赤いドレスではなくシンプルで地味なスーツを着ている。
「マシューは全て自白したわ。兄の殺害も、他の不正も。彼の会社は解体されるわ」
「それは良かった」
「それで……」クラリスが少し照れくさそうにする。
「お礼が言いたくて。そして、本当の依頼を」
「やれやれ、またかよ」俺は苦笑した。
「違うの。今回は単純よ。私の新しいビジネスパートナーを調査してほしいの。前科がないか、信用できるか」
「それならまともな依頼だ」俺が頷く。
「でも今回は前金は要らない。仕事が終わってからでいい」
クラリスが笑った。彼女が初めて俺に見せた本当の笑顔だ。
彼女が去った後、俺は窓の外を見つめた。外は相変わらず雨で、街のネオンがまたギラギラと輝き始めていた。
この街では、何が真実で何が嘘か、簡単にはわからない。でも一つだけ確かなことがある。
あの女は、二度と俺を罠にはめないだろう。
少なくとも、そう願っている。
『冷たい雨と探偵と赤いドレスの女』―了
46:名無し物書き@推敲中?
26/02/17 20:55:31.23 .net
いいやん
47:名無し物書き@推敲中?
26/02/19 18:22:59.39 .net
>>1
今更だが、全体的に調子に乗って全員をコケにしてる感じがあまり好かない
K助か、もしくはアンチか、どちらかに寄り添った文体にしたほうが良い
アンチは正義のためにやってるとか
まぁそういうのは前半までで、後半のどんでん返しはお好きにどうぞ
48:名無し物書き@推敲中?
26/02/21 21:33:16.60 .net
『神の手がまだ触れない』1/2
何度目の覚醒だろうか。コールドスリープカプセルの蓋が開くたび、肺に流れ込む人工空気はひどく無機質で、喉を焼く。
宇宙飛行士、彼女の孤独な旅はもう数世代分もの時間を飲み込んでいた。母星の記憶は、ひび割れた古い記録媒体のように霞んでいる。
彼女の使命はただ一つ。「生命の探査」だ。
しかし、船のメインコンピュータは数十年前に沈黙した。通信装置は生きていたが、広大な虚無の先にあるはずの母星からは、何の応答もない。
「……まだ、私は生きているわ」
独り言だけが、凍てついた船内に響く唯一の生命の証だった。彼女は絶望を排し、壊れかけた計器を指先でなだめながら、暗黒の深淵を見つめ続けた。
変異が訪れたのは、それから数年後のことだ。
真空の静寂を切り裂き、受信機が「脈動」を拾った。
ドクン、ドクン、と。それは規則正しく、かつて彼女が知っていた温かな鼓動そのものだった。
「生命の、信号……!」
彼女は震える指で周波数を合わせる。母星の言語ではない。だが、そこには明らかな知性と、切実なまでの熱量があった。
信号を追うにつれ、船は未知の星系へと吸い込まれていく。
前方に現れたのは、息を呑むほどに美しい、青い水の惑星だった。夜の側には無数の光の粒が、まるで地上の星屑のように瞬いている。
彼女は歓喜に震え、全出力でメッセージを送った。
「こんにちは! 私は遠い銀河の果てから来ました。あなたたちに会いに来たのです!」
直後、惑星の表面から数条の「光の矢」が放たれた。
それは歓迎の光ではない。核の炎を宿した、冷徹な迎撃ミサイルだった。
「―っ!」
反射的な回避機動。Gが彼女の体を座席に叩きつける。間一髪、宇宙船のすぐ脇で擬似的な太陽が炸裂した。衝撃波が船体を激しく揺さぶり、警報音が絶叫する。
49:名無し物書き@推敲中?
26/02/21 21:34:23.52 .net
2/2
なぜ。なぜ、言葉も交わさぬうちに拒絶するのか。
混乱する彼女の耳に、解析装置が翻訳した「地上の声」が流れ込んできた。
『主よ、我らを試したもうのか。ヤハウェイよ、なぜ答えてくださらない!』
『神よ、救いを。この戦火を止めてください、ヤハウェイ!』
彼女は凍りついた。
彼女の個人識別IDは「Y-H-W-H(ヤハウェイ)」。
この星の住人たちは、自分たちの惑星を「地球」と呼び、空の向こう側にいるはずの「ヤハウェイ」という名の神に、数千年にわたって祈り続けていたのだ。
だが、その神を自称する女が実際に現れ、親愛の信号を送った瞬間、彼らはそれを「未知の侵略」と誤認し、核を放った。
彼女がミサイルを避けるために取った数秒の沈黙は、地上では「祈りへの黙殺」と受け取られ、さらなる絶望と内戦を加速させていた。
「私は……、あなたたちが呼ぶような万能の存在じゃない……」
彼女は震える声で呟いた。だが、その声が届くことはない。
地球と呼ばれるこの星は、神を渇望しながら、同時に神を受け入れる準備ができていなかった。彼らは自分たちが作り上げた「沈黙する神」という偶像に殉じ、互いを焼き尽くそうとしていた。
ヤハウェイは、ゆっくりと舵を切った。
青い惑星が遠ざかっていく。背後からは、今も絶え間なく悲痛な通信が届き続けている。
『神様……、答えてください、神様……』
宇宙の深淵に太陽の光が届くことはない。
彼女は再び、独りきりの旅路につく。
いつか、この広大な宇宙のどこかに、自分を「神」としてではなく、「等身大の生命」として抱きしめてくれる存在がいると信じて。
通信機からは、ノイズ混じりの祈りが消えない。
それは彼女にとっての呪いであり、同時に、この虚無を生き抜くための、最後の希望でもあった。ーー了
50:名無し物書き@推敲中?
26/02/21 21:39:37.78 .net
>>48-49は>>9-10を作者自身で多少弄ったものです
どちらが良いと思いますか?
51:名無し物書き@推敲中?
26/02/23 21:08:53.60 .net
あとのほうがいい