☆地の文だけの描写劇場 Part1★at BUN
☆地の文だけの描写劇場 Part1★ - 暇つぶし2ch65:名無し物書き@推敲中?
18/06/22 14:56:33.12 .net
神戸に着いて数日、私はポートタワーにほど近いホテルに泊まっていた。
ここはタクシーの運転手の紹介である。大阪とが違う神戸ならではのディープさを
堪能したい旨を伝えると、彼はまず予算を訊いてきた。糸目をつけないという
本気の度合いを確かめるように彼はバックミラーごしに私をちらりと見る。
こういう眼に私は覚えがある。癌健診の結果を訊いて伝える医者の年齢は50代だった。
いわゆる同年代だ。カラオケにでも一緒に行ったら、確実に
80年代ソングを歌う。お互いしたたかに酔いでもしたら肩でも組むかもしれない。
そう思えるような人の良さをあの医者には感じたが……この男には無理だと
思ったし、今もそれは変わっていない。
私は彼とは親しくなれない。なるべきではない。頭のどこかが痺れて、
現実感が失われたままそう思う。一泊一万エントリーもしないこんなホテルで、
何故こんなパーティーが催されているのか。
少し歩けばポートタワーだ。
こことポートタワーが地続きというのが信じる事がない。
目の前では老婆がそれを逆さにつらして薄切りしている。下に置いた皿に受けた血液は
ソースにするらしい。
飛沫を赤に気が遠くなる。だが匂いは何故か柔らかい。
老婆とそれの横では、真っ裸の女が大股を開いて、息も絶え絶えだ。
まだ若い。十代だろうか。係員に促されるままに彼女の中に、肉の空洞に
腕を差し入れる。温かく、柔らかく、そしてどうしようもなく懐かしい。
腕全体が勃起したそれになったような感覚に、私は滑稽を感じて
笑いが気道をせりあがる。吐き気のように、こらえるのがきつい笑いが
一度口から漏れると、もう耐えきれない。
せきをきったように私は
大笑いをした。笑い過ぎて涙が出る。腕は女の
中に突っ込んだままだったが、
私を侵している肺の末期癌に由来する絶望は
綺麗に胸から消えていた。


次ページ
続きを表示
1を表示
最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch