17/04/16 21:15:58.50 .net
上弦の半月
「しまった」
もうすぐお天道様も真上に来るという頃。私はオフィスで頭を抱えていた。家に弁当箱を忘れたことに気がついたのだ。家には妹がいるはずだが、果たして気がつくだろうか。
きっと気づかないだろう。私がお昼抜きを覚悟した時、同僚に名前を呼ばれた。慌てて返事をしてそいつのところまでいくと、届け物だと言って、なんと弁当箱を渡されたのだ。
「妹が届けてくれたんですか?」
私は尋ねた。といっても、それしか考えられないが、しかし、同僚は首を横に振った。そして同僚はこう言った。
「中学生くらいのかわいい男の子が届けてくれましたよ。甥っ子くん? 色が白くて綺麗な子でしたね」
私は一瞬にして覚った。例の少年だ。しかしなぜ、彼が私の弁当箱を届けてくれたのだろうか。
「いえ、近所の子供ですよ。最近、挨拶しあうくらいには友達なんです」
私は当たり障りのなさそうな返事を返した。その後席に戻って弁当箱を開けると、お世辞にも彩りがいいとは言えない昨晩の残り物は、間違いなく私が詰めたものだった。