17/01/01 19:48:45.25 .net
不思議だ
2:名無し物書き@推敲中?
17/01/02 02:40:53.80 .net
ぼくちんまだ生きてる可能性あるもんっ
3:名無し物書き@推敲中?
17/01/09 20:45:37.27 .net
100年後ここにいる誰もが死んでいる
題を見て、当然と言う一言で済ますのは容易い。しかしそうではないと、彼は腕を組んで考える。
「100年後ここにいる誰もが死んでいる」
この題が指し示すのは、この記事を見ている他者ではない。100年と言う期間が長いのか
短いのか、速いのか、遅いのか…人間の寿命と言うものにあてはめて言うことでもない。
おそらくこの題をつけた人物が論じたかったのは
「波の速い情報技術が、果たしてそれほど長い猶予を我々に与えてくれるだろうか」
ということだ。
1980年代後半、前身を遡れば1960年代に頭角を現したその技術は、今や日進月歩で変貌を遂げて
いる。安全性の向上や利便性を追求していけば限界は無く、開拓しては再び未知の領域に放り出さ
れる。一見すれば四角形でしかない鉄の塊を、利用できる機械として動かす為の文字の羅列は、当
日の晩には加筆修正されているのだ。
そんな技術が人間達を100年もの間、同じ場所に留めておいてくれるだろうか。いや、1年もてば
良い方だろう。とすれば、ここにいる誰もが死んでいる……と言う題は少し違ってくる。同一の風
景が存在しているか否かだ。
或いは、存在と消滅、生と死という概念すら、この機械が生成した世界には無いのかもしれない。文字だけの無機質な街並みには、ヒトという生物が本来持ち得る全ての情が、全ての道徳的価値観が排されているのだから、そうであっても何らおかしくはない。
……腕を組み直し、彼は思考の闇に踏み込んでいく。
ここにいる誰もが死んでいると、そう題を掲げた者はただ一言、こう発している。
4:名無し物書き@推敲中?
17/01/09 20:46:33.74 .net
「不思議だ」
それに対して、ある者はこう反論している。
「まだ生きてる可能性がある」
成程、上手い返しだと、彼は唸った。
確かに、生存の可能性は否定できない。情報技術が発達していると同時、医学もまた発展の
途上にある。戦後、食の欧米化と共にあらゆる疾病が渡来してきたが、罹患率の増加と比例す
るように様々な療法が確立されつつある。おかげで日本に限定して言えば、平均寿命はおおよ
そ80代で、平均を上回る世代でも現役という人も少なくない。
つまり、この掲示板が原型を留めていなかったとしても、2017年1月1日に掲示板を訪れてい
る者達は生きているかもしれないのだ。これから半世紀を過ぎて尚、存命し続ける可能性は誰
にも否定できないのだ。
この掲示板はそう遠くない未来で、膨大な歴史の海に飲み込まれていくが、存在を知り語り
継ぐ人々は確実に残る……そうだ、不思議なものだ……世界の理は、不変ではないか。人の手
が生み出した文字の羅列、その羅列によって生成されたWWWという街中においても、残らな
いはずの痕跡や史料が別の場所で拾われていくのだ。なんと不思議な事象か。
この題を提示した人物は、どのような思いを抱えて訪れたのだろうか。何を論じようとした
のだろうか。どう展開しようとしたのだろうか。
腕を解いた彼は、両手を前に伸ばす。ぼんやりと、橙の光を灯す薄暗い部屋に、かたかたと
文字を打つ音が流れ始めた。