15/07/10 16:36:57.61 .net
「彼はこちら側で商品を輸出していた仲買人で、美世のおかげで損害をこうむったと言っている、あと女性には言ってはいけない事も」
セルゲイは契約を果たした。美世は悪い笑みを作って頷きながら男に向き直った。
「ほーう」
美世は一度男の下半身に目をやるとまた男を見上げて言った。
「イキるんやったらチャックぐらい閉めてからイキれや」
セルゲイは男の股間が正常な状態を見て釈然としないまま美世の言葉を翻訳した。男は慌てて自分の股間を見た。その瞬間美世が跳躍した。
男の後頭部を跳び箱のように抑え空中でピタっと止まってストンと着地した。
美世の衣装のせいで何をしたのかは周りの人間にはよくわからない。ビクトルが目を覆って顔を振った。男がドサリと倒れる。
「おやおや、飲みすぎはあかんで」
そう言いながら美世がぐるりと回りを見渡すと、呆気にとられる人の中にあって真顔になった人間が二人、すぐ近くに居た。男達が身構えるより速く美世は瞬間移動するように前に出ると
手近な男の股間を蹴り上げた。長身のロシア人の頭が射程距離まで下がる。膝にキスをしそうなほど高々と足を上げた美世は一気に踵を振り下ろした。重いポックリブーツの踵でしたたかに頭を蹴られ
よろけた男に追撃をする、刀が踊らないように鞘を握り、回し蹴りで完全に意識を刈り取った。白目をむいた男の体を転がるようにタンゴステップで回転しながら、相棒の死角に入り
刀を鞘ごと抜いた。回転の勢いそのままに美世を追って回り込んできた男の顎を正確に薙ぎ払った。ドタリドタリと二人の倒れる音が響いた。
「だから飲みすぎあかんて」
周りが「おお」とどよめき、拍手が上がった。上座の方で有事を感じて足を踏み出そうとしていた玲一が呆れて顔を振っている。ロシア人の群れの中で頭が抜けているとは大したやつだと美世は頬を緩めた。
「お騒がせした、今から日本の伝統芸を披露するから許して欲しい、あと特別席までの道を開けてくれ」
セルゲイが大声で知らせている間に美世は刀の柄頭をトントンと叩くと、帯にに挟んであった根付を抜き取り、ぶら下がっている細い金属を柄の穴に差し込んだ。反対側についている柿の種ほどの角細工は柄糸の隙
間に押し込んだ。
1025:名無し物書き@推敲中?
15/07/10 16:38:29.75 .net
人垣が割れて道ができると美世は帯刀してスラっと刀を抜いた。あるはずの無い白刃にまた一段と会場がどよめく。席で頬杖をついて呆れ顔をしていたブレイフマンはビクっと身を起こして目を見開いた。
構わず美世が詠う。
「われ道行く者、野を越え海越え国越えて、鬼に会うては鬼を切り、仏に会うては仏を切りまする」
なんと訳しているのかはわからないがセルゲイがアナウンスをしている。美世は刀を振り下ろし居合い演舞を始めた。前、右、左、後ろと雛子に習った動作より
数倍素早く演舞をしながら摺り足で進み始めた。衣擦れの音と、「えい」という気合い、そして風切り音、正式な作法には無いパチンという納刀の音以外、会場は静まり返っている。
受流し、介錯、月影と刀を振りながら徐々に派手なアレンジを入れていき、ハイキックを交える等外人が喜びそうな演出を織り交ぜていく。着物の裾をヒラヒラとなびかせ
頭では蛇踊るその妖艶な姿に会場の人間が息を呑む。
玲一がテーブルに立てかけてあった筒の中から五枚巻きの畳表を取り出した。美世が演舞を続けながら花道に飛び乗ると、玲一が跪いて畳表を立てながら突き出した。
直前で身構えた美世が畳表を見据えて刀を引き付ける。
「エエエイ!」
凄まじい勢いで抜刀した美世は気合いをあげながら三回斬撃を加え、畳表が四分された。太刀筋に対してやや遅れ気味にポトポトと落ちる畳表に会場がまたどよめいた。すかさず
玲一が手に残っていたピースを投げる、それを切り上げながら真っ二つにした後、素早く、しかし緩急をつけながら刀を納刀する。蟹股で重心を落とし、右足に体重を乗せた体制で
わざと大きくパチンと音をたてると一瞬静寂があったあと大拍手が起こった。お約束のサムライ、ニンジャ、シニチンといったワードが聞こえる。そうしている間に泰蔵が雛壇横の機材に自前のCDを突っ込む。
流れ始めたのはロシア人おな�
1026:カみのカチューシャだ。会場は不思議な空気に包まれて人々がきょろきょろとした。前奏が終わり、美世がくるりと会場に向いて そのままカチューシャを歌い始めた。今回の訪問に合わせて練習していたのだ。 腹筋に裏付けされたよく通るハスキーボイスに会場は魅了された。日本人が祖国の定番を歌っているという驚きと祖国を尊重されている気分に人々は一瞬で心を掴まれた。
1027:名無し物書き@推敲中?
15/07/10 16:40:24.58 .net
泰蔵と玲一は肩を痙攣させて笑いをこらえていたが、それとはうらはらに会場は盛り上がってきた。膝を叩いて踵を鳴らし、一緒に歌い始める人が増えていった。美世の表情と腕を煽る動作に誘われ
歌詞が国境の兵士を思う少女の話になってきたあたりで会場総立ちの大合唱となった。そしてロシア民謡独特のキレのいいアウトロで曲が終わった瞬間美世が抜刀して天を突いた。
「ウラー!」
それに続いて会場全員が声を上げた。
「ウラー!!!」
「ロシアと日本の友情のために!」
少し離れた所にいたセルゲイが大声で翻訳するとまた大拍手がおこった。満足そうにその様子を見ていた美世は回れ右をしてブレイフマンに視線をやり、つかつかと近寄りながらパチンと納刀した。
ブレイフマンは満面の笑みを浮かべていたが、急に姿勢を正すと眉間に皺を寄せ、刀と美世の顔を交互に見ながら咎めるような顔をした。しかし構うことなく美世は両手で刀を水平に持って
ブレイフマンに差し出した。
「プレゼントフォーユーや」
困惑から徐々に笑顔になったブレイフマンは刀を慎重に受け取ってよく観察した。会場から羨望の眼差しを受けたブレイフマンは会場を見回した後美世を見上げて笑いながら何か言っている。
「単純なジジイやで」
美世が席に戻りグラスを手に取ってウォッカを一気に飲み干すとビクトルが来た。刀がブレイフマンに送られたのを見てビクトルがにこにこしながら言った。
「友好の印を送ったんだね」
美世は目を向ける事なくウォッカをドボドボと継ぎ足すとグラスを口に持っていき寸前で止め、対面のブレイフマンににっこりと笑いかけるとボソリと言った。
「日本では友好の印に刃物は送らん、特に和平にはな」
美世が見上げるとビクトルはがっくりと肩を落としていたが、気にする事なく美世は一気にグラスを開けた。
「ウォッカもわりかしいけるようになったやろ?」
1028:名無し物書き@推敲中?
15/07/10 16:41:32.31 .net
ビクトルは改めて震撼していた。美世は表で微笑み、裏で舌を出しながら経済力を支配し、武力を呑み込み、そして人心までをも自分の物にしてしまうつもりなのだ。
逆う者に自らの手で制裁を加え、そうでないものにはエンターテイメントを与えると同時に武術の腕も見せつけた。とどめにその刃を皮肉としてボスに捧げた。
もう既にギポロス社は大蛇の腹の中にいるのかもしれない。自分の運命も知らないうちにじわじわと消化され始めているのかもしれないとため息をついた。
そこへ玲一と泰蔵が集まってきた。美世が自慢気に言った。
「どや、ウチの戦略は」
泰蔵が小馬鹿にした笑いで答える。
「どこのチャンバラ一座かと思うぐらいベタやったな」
ビクトルは思った。腹心たちは美世の恐ろしい戦略がわかっていないのだろうか。
「アホか、この見事な策士っぷりがわからんのか」
ビクトルはうんうんと頷く。
「これでウチをメドーザやなしにカチューシャって呼ぶ人が急増やで」
「ああなるほどな」
ビクトルはちょっとコケた。
1029:名無し物書き@推敲中?
15/07/10 19:30:21.25 .net
ケツメドなんとかって人かな
1030:名無し物書き@推敲中?
15/07/10 20:20:03.44 .net
ニートの暇つぶしか。確かに小説の枠を超えてるなw
vineで中学生のギャグ見てるほうがいい。
読んでないけど。
1031:名無し物書き@推敲中?
15/07/10 20:22:16.88 .net
そんなことより田代がまたやったらしいぞ
【社会】田代まさしさん、スカートの中を盗撮の疑いで書類送検へ©2ch.net
スレリンク(newsplus板)
1032:名無し物書き@推敲中?
15/07/10 20:57:57.77 .net
>>989
もう許さねえからな!
1033:名無し物書き@推敲中?
15/07/11 00:23:40.84 .net
批評する奴のレベルに相応。
しかし小説書こうって奴の割にはあまりにも低レベル。
1034:名無し物書き@推敲中?
15/07/11 01:50:29.72 .net
『血肉から脱獄せよ』
作家はな、そもそも目指すべきものじゃないんだよ。おまえはそこんとこがわかってない。だから、「もう作家を目指すのをやめる」だとか、「次に何をすればいいのか」だとか、きわめて陳腐な発想に陥ってしまう。
いいか、そういうおまえの思考は、ある種プログラミングされた出来合いのものだ。だからそのプログラムを書き換えなければ、すべてにおいて同じ反応をする。これからもずっとな。
ではどうしたら書き換えることができるかだが、それは「幽体離脱」だ。
意識を解放しろ。個という存在から抜け出せ。飛び出せ。おまえの魂はどこにある? あん? いつまでその血肉の中に閉じ込めておくつもりだ?
いいか、そこは牢獄だ。檻の中にすぎん。神がおまえを、いやおまえの魂を、そこに閉じ込めたんだ。この、うす汚え罪人め。
―おっと、まさか、いま貴様、「血肉」を「ちにく」と読んだんじゃねえだろうな? 「けつにく」だぞ。ったく、おまえの頭んなか、こっからだと丸見えだぜ。
おまえの魂、つまり心魂とは、すなわち、神。ゆえにおまえも神になれる。ただちに我欲を捨てよ。心頭滅却すれば火もまた涼し。わかるな? もう悩むことはない。心のままに生きよ。余計なことは考えるな。おまえの進むべき道はすでに決まっているのだから。
1035:名無し物書き@推敲中?
15/07/11 07:44:22.96 .net
言わんとすることには概ね同意だがなんか陳腐だな
1036:ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
15/07/11 07:57:01.64 .net
>>978
>「どこにも行かないって、約束してくれますか?決して私を一人にしないって……」
>「素晴らしい!素晴らしいぞ!巴殿」
(感嘆符の後ろは全角スペースを入れた方がよい! これ以降、同様の指摘は省く!)
>「旅の音楽師にございます~
>「どうした、楽師さん、何かようか?」
(表記は統一した方がよい!)
>必死に走り続け、火照った頭が、火花のようにうずく。
(静馬の心情!)
>塩辛い雫が、唇に染み込んでくる。
(真琴の心情! 二つは同じ段落に書かれていた!
客観的な三人称ではなくて神視点に近い感じを受けた!
意図的に行っているのであれば問題はない!
視点がぶれている可能性を考えて指摘した!)
>「鎌倉? あんな死都に何があるかね」
>こうしてある早春の日、二人はこの街にやってきた。
>武家政治の中心として栄えた鎌倉も、今は荒涼たる寒村となっていた。
(鎌倉は死都であり、街であり、寒村であった! この時代に死都の表現は少し引っ掛からないでもない!
現在の鎌倉が「街、寒村」と両極端の表現になっていた! 「村、寒村」でいいような気がする!)
>脳裏には、今までの短い生涯の記憶の断片が、雪洞のように、暗い心の闇の中に灯っている。
(わかり難い表現に見える! 暗い心の中、雪洞に収められた記憶の断片に光が灯っているのだろうか!
1037:)
1038:ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
15/07/11 07:57:38.72 .net
>狩野探幽の絵着けの助手に選ばれた。
(絵付けではないだろうか!)
>今日はよく晴れている。
>こんな日は、絶好の日和だ。
(重複気味の文章! 「今日はよく晴れている。絶好の日和だ」と纏めてもよい!)
>~島津さんがほとほと美麗な景色に感服している。
(「ほとほと」を「ほとんど」の意味で使っていると思われる!
困った時の意味合いが強いので少し引っ掛かった!)
>~夥しい靴音を響かせて、押し寄せた。
(時代背景を考えると靴音に引っ掛かる! 浅沓を含めているのだろうか!)
第一章の前半は時代劇として読んだ! 主人公は真琴であった!
後半から話がずれて探幽が主人公となって物語は進む!
しかも絵の勝負の辺りからファンタジー要素が介入してきた!
描いた絵が動き出す! そのような伏線はまるでなかったので驚いた!
真琴が探幽と出会った時に目にした桜の絵を伏線に使えばよかったのではないだろうか!
話の所々に観光ガイドのような細かい説明があった! 物語の本編と関係ないものが多く含まれていた!
物語の流れを悪くするので程々を心掛けた方がよい! 作者の癖なのかもしれない!
最後の桜の対決は落ちが読めた! 最初の勝負よりは納得がいくので悪くはない!
設定が少し不十分! 描いた絵を作者が自在に操れるのか! それとも勝手に動き出すのか!
その部分の説明が足りないので最初の対決の勝敗が腑に落ちなかった! もう少し説明を足した方がいいだろう!
嘉の付く人の作品だと思うが、文章は洗練されてきたように思う70点!(`・ω・´) 文中の「面影」の多用が少し目に付いた!
1039:ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
15/07/11 08:03:32.47 .net
時間的な余裕がなくなったので残りは明朝に回す!
スレッドの残りのレス数が気になるところ!
ちょっと出掛ける!(`・ω・´)ノシ
1040:名無し物書き@推敲中?
15/07/11 08:08:44.03 .net
うめ
1041:名無し物書き@推敲中?
15/07/11 08:09:09.68 .net
うめ
1042:名無し物書き@推敲中?
15/07/11 08:09:35.47 .net
うめ
1043:1001
Over 1000 Thread.net
このスレッドは1000を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。
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