15/06/22 00:41:48.55 .net
潮騒が聞こえた。
太陽はすっかり水平線の上に顔を出してしまっている。
うす曇り。海は穏やか。
沖で海鳥たちが戯れていた。
口の中がネバネバとして目がゴロゴロとする。
起き上がるとスーツは砂まみれ。全身がじっとりと湿気っていた。
胃腸は二日酔いでムカつき、腰と肩は強ばっている。
光りの内でしか見えないものがある。
この朝の陽の内が事実なら、昨夜見たのは夢か幻。
そう言えば、宝箱の中味はなんだったのか。
闇の内でしか見えないものがある。
叶えられない夢だったからといって、すべてが無意味になったわけでもないだろう。
いや、エイハブ船長の義足か入れ歯。
俺にはそんなところしか思い浮かばない。
蓋を開けて、零号機がガッカリとしないといいのだけれども。いや真実何が出てくるかはやってみた者にしか分からない。
ダメならダメでそれは新しい冒険のはじまりというものかもしれない。
朝の涼やかな風に鼻水が出てきた。クシャみも……。
灰色の空で海鳥が
滑空、旋回、獲物を狙って急降下。羽ばたいて上昇。魚をしとめたかどうかまでは遠くて見えない。
今日一日を戦うには十分なコンディションだ。
おでん屋で借りた鍋はなくしてしまった。零号機に託された車のキーはしっかりとポケットに入っている。
幻だったからといって、まったくの無価値だったというわけでもない。
……「真奈美さ―ごめん―
メールは入れておいたんだけど―君と七海ちゃんの両方の―
道に迷ってね―大丈夫、ありがとう―
もう近くまで来ている―大丈夫、待ってて―」君に伝えたいことがある。