この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十七ヶ条at BUN
この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十七ヶ条 - 暇つぶし2ch300:名無し物書き@推敲中?
14/09/29 22:51:09.46 .net
「缶詰」「雨戸」「魔法瓶」

缶詰状態でネタを書いている。
ホテルの一室などではない。
人里離れた山奥の一軒家で足首を鎖で繋がれながらの、いわば監禁である。
魔法瓶のコーヒーをすすりながら、もう何日経ったろうか考える。
雨戸は閉め切ったままなので今日がまだ今日なのか昨日なのかもう明日なのか定かでない。
「オチだよ! オチのある話を書くんだよ!」
少しでも気を抜くと女王様の檄が飛んでくる。
私はほとほと嫌気がさしたので言ってやった。
「そうそうすとんとはオチやしませんよ」
すると間髪いれずムチが飛んでくる。
そっちの女王様である。
ムチが当たってクチが切れた。
「どうかショチを……」
「誰が韻を踏んでいいといった! 書き直すんだよ、このすっとこどっこい!」
神様はいないと思う。


「大袈裟」「川」「ヨーグルト」でお願いします。

301:名無し物書き@推敲中?
14/10/02 00:08:13.51 .net
「大袈裟」「川」「ヨーグルト」

自動機販売機でコーヒーを押したらヨーグルトが出てくるくらいの不幸。
死に至る大袈裟な物ではない。しかし、それが毎日続いたらどうだろう。
一滴の雨が川になり海になるように気がつけばそれに飲み込まれている。
ゴトン、と鈍い音とともに運命の歯車が回る。藁にもすがる気持ちで
右手がつかんだものはプラスチックカップに入ったヨーグルト。
「お値段以上ってのは、うそじゃないけどなぁ・・・」
100円の自販機に今日も敗北した俺は渇いた喉に半固形物を流し込む。

次「まんじゅう」「葉巻」「札束」でお願いします。

302:名無し物書き@推敲中?
14/10/06 07:48:10.31 .net
「まんじゅう」「葉巻」「札束」

アジトは血の海と化していた。
火薬のにおいが充満し、煙の中を紙片が舞う。
即死した仲間と、まだ息がある自分とは、どちらが運がいいのか考える。
苦しまずに逝ったやつらと、今からじわじわ死にゆく自分と。
弱々しい笑いが男の口から漏れた。
差し入れの箱が爆発したことを不意に思い出す。
地元の少女が持ち込んだまんじゅうの箱だった。
まだ子どもじゃないか……。
足元に転がる札束を蹴散らし、携帯電話を握りしめた。
待ち受け画面には幼き日の娘の笑顔があった。
生きていれば美しい娘に成長したであろう俺の天使。
男は壁にもたれジャケットの内ポケットから葉巻を一本取り出した。
「効きゃしねぇじゃねぇかバカ野郎」
お守りだったものに毒づいてから男はそれに火をつけた。
煙を吐き出しながら、俺はやっぱり運がよかった、と男は最期にそう思った。


「国旗」「三匹」「カボチャ」でお願いします。

303:sou
14/10/06 20:43:41.38 .net
自宅の窓を僅かに開ける。まずい。既に周囲は異形の集団に囲まれているようだ。
初動を誤り先手を取られたいま、早く応戦しなければ手遅れになってしまう。
だが私は動けなかった。トイレで凄まじい腹痛と格闘中だからだ。
がっでむ。生焼けのチキンにここまでの破壊力があるとは誤算だった。
プロの傭兵で屈強な肉体を誇る私も、胃腸の粘膜に弱さを抱えていたということか。
むっ。敵が三匹、玄関に向かうのを確認。ややあって呼び鈴が鳴った。
もう猶予はない。今こそ戦場で培った強靭な精神力を発揮する時だ。
肛門括約マッスルを渾身の力で引き締め、決壊を止めようと試みる。
よし、いける! 私は自らをトイレと言う名の牢獄から解き放った。
リビングから拳銃とタマを詰めた紙袋を持ち出し、玄関扉を蹴り開ける。
そして間髪いれず照準をあわせて引き金を引く。躊躇などしない。
ぱあん! 反撃の狼煙をあげる撃発音が一帯に響き渡り、
銃口からは紙吹雪と紐に括りつけられた色とりどりの国旗が飛び出した。
面妖なカボチャのマスクを装備した襲撃者達は驚いてひっくり返り、
「ト、トリック・オア・トリート……」
そう力なく口にするのが精一杯だった。HAHAHA、私の勝ちだな。
退却を始める敵部隊に大量のアメ玉を施した私は、真の敵である腹痛と決着をつけるべく、
屋内に撤収した。プライドを懸けた戦いだ、けして敗北は許されない。
おや、パトカーのサイレンだな。ハロウインだと言うのに物騒なことだ。
平和な国と言えど、現実と妄想の区別がつかないイカレた奴は多い。私も気を付けねば。


次は「幻想」「現実」「卒業」で

304:名無し物書き@推敲中?
14/10/08 13:54:36.56 .net
「幻想」「現実」「卒業」

帰宅した私を三つ指ついて妻が迎えた。
「あなた、お風呂にします? それともごはんにします?」
上着を脱がせながらそう訊ねるのもいつものこと。
「先にひと風呂浴びようか」
私は湯に浸かり目を閉じると、虎と格闘する戦士である自分を想像し始める。
危機一髪のところで形勢逆転、虎の喉に剣を―
「お湯加減はどうかしら?」
佳境を台無しにされムッときたが、おくびにも出さず私は答える。
「いい塩梅だよ」
風呂からあがるとスキヤキの準備が整っている。
松坂牛を堪能し、玉露をすすっていると、やがて妻がお喋りを始めた。
「今日お洗濯物を干していたら電線のスズメたちが私に歌をね―」
私は一通り聞いたのち、諭すようにいった。
「そんな幻想に囚われるのはよして現実を見なさい。夢見る少女はもう卒業」
ちょろっと舌を出しおどけた妻を、たしなめることも忘れなかった。


「連続」「ブルドーザー」「反撃」でお願いします。

305:「連続」「ブルドーザー」「反撃」
14/10/08 23:46:06.25 .net
 日曜の朝は少年にとって家庭内闘争の座り込みで始まる。
 今日も体勢側の母ちゃんという名のブルドーザーに追い立てられながらも布団に噛り付き、休日の睡眠時間延長を訴えていた。
 カーテンの開け放たれた窓から部屋へと強く差し込む朝日が冬の夜気を霧散させていく。布団に残る温もりと併せれば、それは気持ちよく眠れるだろうにと。
 こうなればもう武力闘争に移行せざるを得ない。少年の寝ぼけた頭が何かで読んだか聞いたのか物騒な言葉を弾きだす。
 圧政に対しては武力による反撃のやぶさかではなく、こうなればやぶれかぶれ―と、立ち上がろうとして頬が弾けた。左の頬が熱く、少年を急速に覚醒させる。
 母親を睨んで沸騰した感情を声に乗せようとしたら、今度は右と左を連続で打たれた。
 そして再度要求を突きつけられる。せっかくの天気だから布団を干せば今日の安眠が確約される。だからどけ。すぐさま顔を洗い片付かないから朝食をとるように。
 屈した少年は促されるままに部屋を後にした。
 そして、その次の朝の目覚めは格別だった。
 こうして大衆は飼いならされていくのだろう。やはり寝ぼけた頭がそんな一文を選択するが、少年は気を払うことなく朝の準備を始めた。

次は「焚火」「給湯室」「屋根」で

306:名無し物書き@推敲中?
14/10/09 20:13:43.67 .net
「焚火」「給湯室」「屋根」

給湯室でタバコを吸っていたスズキさんに声をかけた。
「パワハラってか、セクハラってか、あいつ最低ですよね」
彼女が課長から理不尽に叱責される一部始終を私は目撃していたのだ。
タバコを勧められたが、私は吸わないので断った。
スズキさんはふうと煙を吐き出すと、遠くを見る目をしていった。
「キャンプしたいなぁ。マシュマロ焚火であぶって食べたりさぁ」
そんな経験ないです、という私の言葉に、スズキさんが目を丸くする。
「じゃ、屋根の上に寝転がって星を眺めたりとかは?
 あと、パチンコでリス仕留めて皮剥いだり……」
固まっている私を見て、都会の人はこれだからなぁ、とスズキさんは笑った。
「今度一通り教えてあげますよ。一緒にキャンプ、いやサバイバルしましょう」
私の肩をぽんと叩くとスズキさんは出ていった。
バカ上司にへこまされない精神はキャンプやサバイバルで培えるのか……。
「でもリスの皮剥ぎは無理だなぁ」
私は隠し持っていたウイスキーをキュッとやると、給湯室をあとにした。


「マスク」「呪い」「からくり」でお願いします。

307:sou
14/10/15 04:44:38.14 .net
私は笑顔がはりついたマスクをはずす。
善良な自分を心の奥底にしまいこむ。
よき子羊には常に試練が降りかかり、
あしき狼は労せず欲を満たしていく。
運命は不条理なからくりで組みあげたもの。
世界は不道徳な意思こそが勝ちのこるもの。
人生は不思議にふと終わらせたくなるもの。
私は笑顔がはりついたマスクをはずす。
自分にかけた呪いは解いた。
でも呪われてなければ生きていけない。
私は生まれついての子羊だから。
私は鋭くとがったナイフをかざす。
私は首にナイフをつきたてる。


次は「旋律」「声音」「透明な」で

308:名無し物書き@推敲中?
14/10/15 19:08:06.33 .net
「旋律」「声音」「透明な」

「ダンソン! ピーザキー! トゥーザティーサザコッサ」
君の繰り返す旋律が耳にこびりついて離れないよ。
「ダンソン! ピーザキー! トゥーザティーサザコッサ」
君がバ○ビーノが大好きだというのはわかったよ。わかった、わかったから。
「ダンソン! ピーザキー! トゥーザティーサザコッサ」
その声音から表情は読み取れないけど、きっと僕を元気づけてくれているんだろうね。
「ダンソン! ピーザキー! トゥーザティーサザコッサ」
いつもありがとう、僕の唯一の透明な友達。
「ダンソン! ピーザキー! トゥーザティーサザコッサ」
感謝してる、感謝しているよ、でもね……。
「ダンソン! ピーザキー! トゥーザティーサザコッサ」
そろそろ成仏してくれないかな……。
「ダンソン! ピーザキー! トゥーザティーサザコッサ」
してくれないかな、成仏……。
「ダンソン! ピーザキー! トゥーザティーサザコッサ」


「可憐」「星座」「炭酸水」でお願いします。

309:名無し物書き@推敲中?
14/10/15 22:30:34.83 .net
このスレの連中のなにがキモくて救い難いかって、
誰にも評価されない駄文を延々と書き連ねていることだよ
お互いになんの感想すらわかない駄作を投下しても意味ないから
だから一向に上達しないんだよお前らは
あ、一人二人の日記帳だったかなあ ごめんよお

310:名無し物書き@推敲中?
14/10/16 00:09:50.44 .net
雑談は感想スレで

311:新参者G ◆MWGd4Eggtk
14/11/13 16:54:49.85 .net
「可憐」「星座」「炭酸水」

幼い頃、その炭酸水を飲むと星になれると教わった。
僕は、まだ生きていたくて星にはなりたくなかった。
ただ、その気持ちは、三十歳になるまでだった。
三十歳になる頃、僕は、おぼろげに、おおよその僕のこの先の人生が見えてしまった。
『可憐』という今は営業をしていないスナックに、日曜の昼間に同志は集まった。
年齢はバラバラであったが、自ら自分の人生の先が見えてきたと感じる人達で作られた倶楽部だった。
いつの時期か覚えていないけど、僕は主催者という立場に置かれてしまった。
僕を含む8人の倶楽部のメンバーの前に、炭酸水がある。
何か気の利いた言葉でも言いたかったが。
「一つ一つの星になるのではなく、僕たちは集まって星座になろう」としか言えなかった。
みんな、慰めが欲しくて可憐に来ているわけじゃないから、それで十分だったのかもしれない。
僕たちは、星になり、星座になれたのだろうか。誰か、教えて欲しい。

「銃」、「クロワッサン」、「黒炭」でお願いします。

312:「銃」、「クロワッサン」、「黒炭」
14/11/13 20:48:14.60 .net
いじわるじいさんは驚いた。火鉢にくべようと竹炭を割ったところ、中から黒焦げの
蛙の死骸が出てきたのだ。いや、蛙ではなかった。それは、もしや……。
と、奥の壁が赤い光で点滅した。窓から入る赤色灯の光だ。老夫婦は慣れた所作で
窓際の壁に背を当てる。おもむろにそっと外を覗いた。ポリスが来ている。
「いま包囲しました! 月からの通報で、ここの家人が月世界の姫を
黒炭の檻に閉じ込めてるって話で! 外交問題です! ムシャムシャ」
刑事の顔には見覚えがある。緊張するとクロワッサンを貪りだす、フランスかぶれの九州男児だ。
「しまったな、バアさん、銃をとってくれ」
爺の言葉に返事がない。ふりかえると、老婆の喉に投げナイフが刺さり、紫の唇から血の泡を吹いている。
「バアさん……!」
慌てて老婆にすがりつく爺さん。光の消えゆく濁った瞳に、二人の人生への
惜別のうんたらかんたらがアレしていた。
「出て来い、いじわるじいさん! お題は消化した! もう家ごと焼き払ってもOKなんだぞ!」
割れ気味のメガホンががなりたてる。このデイビー・クロワッサンめ! 爺の怒りはコマンドーした。
爺さんは火縄銃を取ると、さきっちょに黒焦げの香具夜を差し、戸を蹴破って
路地に飛び出した。銃声。銃声。銃声。銃声。
頬に感じる土の感触に、爺は百姓としての因果を感じた。と、頭を蹴られて空を見上げる。
「どうだ、悪党の末路ってのは」パン食う刑事がにやついている。
(てめえの爺はいい奴だったが、孫ともなりゃ関係ねえな……)声が出ない。
「あばよ、いじわるじいさん。昔話はもう終わりだ」
ガキの銃口に旋条が見えた。終わりだ! と、爺の懐で香具夜がティンクルした。ああっ!
次の瞬間、香具夜が爆発していろんなものをなかったことにした。
めでたし、めでたし。

次「桃」「キジ」「摩天楼」で。

313:「桃」「キジ」「摩天楼」
14/12/23 18:20:37.66 .net
猿は右手、キジは頭上を警戒中。さあゆくぞ!
という、その時だ。耳障りなスマホが胸で騒ぎ出したのは。

「あー、はいはい」
「私だ。武器とキビダンゴは、ちゃんと届いたかな?」
(あいつだ)
鎧の中で、苦い表情をしている自分が、ハッキリ判った。
宝物の価値が判った矢先、なぜか急に現れた、あいつからの電話だ。

「ご支援有難うございます、ただ今突入します」
「頑張ってくれ給え。桃産まれのせいか、私は虚弱体質で・・・」

桃から産まれた?本当か?まあ、どうでもいいか。
どうせ摩天楼のスイートルームからの電話さ、わかる訳ないよな。
とは思いつつも
「心配要りません、お任せ下さい!」
と、おべっかまで使ってしまうのは習性なのか。

彼はもはや「従業員」。犬でしかない存在に堕ちていた。

※ 次のお題は:「穴」「雪」「姫君」でお願いします

314:名無し物書き@推敲中?
14/12/30 17:12:17.83 .net
ウサギ追いし彼の山、小鮒釣りし彼の川……
ハスキーな声が隣の小学校の窓から聞こえてくる。
雨靄に紫陽花の煙る6月の午後、換気にあけた窓を閉めると、
ヨックモックのシガールで紅茶タイムをはじめよう。
姫よ花よと箱入りで育った細指に、労働なんてバカげてできやしない。
君もどうかな、優雅で気楽な家事手伝いライフ。

次「皺」「師走」「手話」で。

315:「皺」「師走」「手話」
15/01/08 20:08:24.23 .net
皺だらけの手で、イネ婆さんが草鞋をあんでいる。
ホタテ爺さんは師走に傘と箕のを売りに出かけたまま戻ってこない。
「吹雪で街で足止めを食らっているのだろう」
餅を持って新年の挨拶に来た花房さんが手話でそう伝えた。
イネ婆さんは、花房さんが手のひらを揺らしながら上下するのを見て
「そうじゃね。十年ぶりの豪雪じゃ。止んでもすぐには戻ってこれんかもしれんね。暖かい雑煮を用意しておいてやらんとね」
と返した。囲炉裏で薪のはぜる音が響いた。

さて、七日後、やっとホタテ爺さんが戻ってきた。
「なんや、イネ婆さん、家の外に米俵のあるの気づかんかったか。どえらく気っ風のいい地蔵さまたちがいてな、わしゃ小判もろうて街でちょっくら遊んでおった」
イネ婆さんは、ホタテ爺さんの着物の襟にお約束の紅の痕を見つけると
「……」
囲炉裏で薪のはぜるような音が響いた。「パキッィ」


次は「地蔵」「雪女」「毛布」でお願いします。

316:「地蔵」「雪女」「毛布」
15/01/26 22:24:51.37 .net
知っているか。伊吹山から見える一番東の果ての峠に、雪女の地蔵があることを。
知っているか。夏の間、地蔵に被せおいた鵺の毛の布を取り払うと、あずまなる峠に雪の降ることを。
知っているか。地蔵峠の風は伊吹山の鬼を起こし、伊吹山の怪は比叡の天狗を急いて、
京の高楼に暗夜はばたくことを。
雪の甍に細く爪掻くは烏にあらず。そは天狗なり。月まどかなる冬の夜に耳を澄ませ、
そぞろなる静かに怯える幼子らよ、忘れるな、お前の屋根に天狗がいるぞ。

次「梅」「池」「ソ連」

317:名無し物書き@推敲中?
15/02/08 09:33:53.26 .net
「梅」「池」「ソ連」
公園のベンチで昼寝をした。
目覚めると、目の前で知らないガキが池の鯉をじっと眺めている。
なにか悪さをしたら叱ってやらなきゃ、と注意深く見ていると、
ガキが急にこちらを振り返って言った。
「眠くなりますよねぇ。良い陽気ですものねぇ」
その年寄りめいた口ぶりに言葉を失っていると、ガキは不意に視線をあげ、目を細める。
そしてため息を漏らしながら言うのだ。
「梅に鶯、はぁ、なんとも風流ですなぁ」
なんだこいつ、究極のじいちゃん子か!
度肝を抜かれている俺に、ガキが畳みかけた。
「ちょっと度忘れしちゃったんですがね、
 あれ誰でしたっけあの、今のソ連の大統領、名前がどうしても出て来なくて」
俺は確信した。こいつ絶対中身ジジイだ。
なんかの事情で見た目が子供になってしまったじーさんに違いない。
俺は「プーチン」と言い捨て、その場から走って逃げた。
       
「腕時計」「大丈夫」「無人島」

318:「腕時計」「大丈夫」「無人島」
15/02/15 15:24:49.59 .net
「大丈夫ですか?」
公園のベンチで鳩の雌雄を眺めていたら、ふいに男子に声を掛けられた。
人の良さそうな、高校生ぐらいの男の子だ。
ここ別に自殺の名所とかではないよね?
いけない、通行人に心配されるほど具合の悪そうな顔をしていたようだ。
「あ、いや。ちょっと考えごとしていただけで。転勤みたいのがきまったもので……大丈夫ですので!」
年上なのに、恥ずかしいと思いながら、しどろもどろに返事をする。
「どちらに転勤するんですか」
会話を切ったものか続けたものか判断がつかない。腕時計をみるとまだ昼休みは十分にあった。
スカートの裾を直しながら答える。
「知らないと思うけど、南太平洋のサムサム島」
「それサムサム猿の住んでいる無人島ですよね。まじですか? おねいさん、おれのことからかっています? 」
怒ったのかちょっと眉間に皺がよっている。おばさんと言わないのは褒めてつかわすが、なんかナンパっぽくて笑えるなぁ。
「あら、知っているの? わたしは先週、はじめて聞いたのに。うちの会社、ちょっと変わった製薬会社なんだけど、
サムサム猿の調査で一年、常駐するのよ。企業秘密なんで詳しいことは言えないけど」
「へ~。それは大変そうだけど、うらやましいな。俺、動物が好きで、獣医を目指しているんです。
この春から○○大の獣医学部に通うんですよ」
ああ、高校の同級生で、実家が獣医でそこに進学した友達がいたなぁ。
しばらく、その子とベンチに並んで座って世間話をして、名前とアドレスを交換して別れた。
そのうち、証拠にサムサム猿の写真を撮ったら送ってあげよう。
忙しくて、きっと一年なんてあっという間だ。……そういえば、今日はホワイトデーだったか。
口の中で貰ったのど飴がちょっとこそばゆいや。

次は「昼休み」「南の島」「ホワイトデー」でお願いします。

319:「昼休み」「南の島」「ホワイトデー」
15/02/17 13:40:27.17 .net
ホワイトデー連続殺人事件。
バレンタインチョコをもらった男子が巨大な飴に練り込まれ、死んでいるという事件が頻発していた。
大の甘党で菓子作りが趣味の刑事、安浦はこの飴に使われている砂糖に注目。
それが某南の島固有のヤシ砂糖であることを調べ上げた。
普段は菓子作りなんて乙女趣味だと馬鹿にされてきた安浦の面目躍如。
彼はさらなる意気込みでヤシ砂糖の国内輸入を調査した。
ところが、どう調べても輸入量は事件で使われた量にははるかに足りない。
大規模な密輸? なぜ? 疑問は深まるばかり。
そんな中、あるパティシエが安浦に言う。あのヤシ砂糖は、現地では恋愛成就の薬と言われている、と。
すべての謎が解けたのは、昼休み、署の仮眠室で。身体がだるくて休んでいた安浦は違和感に気づく。
身体が動かない。そして鼻の奥に突き刺さる甘い香り。それは自分の毛穴から溢れ出る飴の香り……
そう、あのヤシ砂糖。安浦も調査中に何度となく味見をしてきたあの物質は、砂糖などではなかったのだ。
何かの生き物か、あるいは未知の物質……食べた人間の体内で増殖し、
約一ヶ月後に爆発的に溢れ出して、宿主を殺す……寄生虫のような甘い罠。
ああ、これが砂糖に紛れ込んだら、有史以来『甘み』に取り憑かれている人類は生き残れるだろうか……
安浦は全身の内側から甘みを感じながら、とろけるように息絶えた。

次は「嘘」「親指」「三年」でお願いします。

320:「嘘」「親指」「三年」
15/03/01 14:41:50.23 .net
「君、バンカラ部に入らないか」
高校に入学早々、校門でいきなり肩を鷲づかみにされた佳代子は、
地面から飛び上がらんばかりに驚いた。
「バンカラ部はバンカラを目的とする文化部である。この軟弱な時代に、
俺たちと本当のバンカラを極めてみたいと思わないか」
振り返ると、下駄履きに褌一丁の筋肉質な男たちが、歯の欠けた笑顔で
佳代子を見つめている。褌の前垂れに『三年』『二年』などと書かれているからには、
上級生なのだろう。
「いえ、私はその、そういうのは……」
「安心したまえ。我々は健全な活動を旨としている。女子生徒は褌の下に
スクール水着を着てもよいことにしている。なあに、夏までには慣れる」
男は笑顔で親指を立てた。
ビシッ
佳代子の目潰しが先頭の部員の眼に炸裂した。同時に自らのネクタイを解くと、
片手に薙ぐ赤い布が男の顔に絡みつく。「ぐおーっ!」半裸の肉体が回転し、
褌の前垂れがフィギュア選手のスカートのように浮き上がった。
佳代子は驚く部員たちの前でセーラー服の上着を脱ぎ捨てると、
青空高く放り投げる。真っ白なサラシを巻いた胸が少女の形に引き締まっていた。
「おうおう!サムアップでバンカラたぁ、軟弱ここに極まれりじゃ!今日からアタイが
この学校を締めるけぇ、覚悟しいや!」
倒れた部員の頭に靴を乗せ、啖呵を切る佳代子。「へへーっ!」ひれ伏す部員たち。
が、そこに割って入ったのは同中出身の美沙だ。
「嘘……。そういうのは卒業して、あたしと薔薇色の高校生活送ろうって決めたじゃない……」
「悪ィな、血がよ、騒いじまうのさ……」
佳代子が美沙を抱き寄せると、落ちてきた上着が二人の頭上に被さった。
二人の肩が触れあ
田中、数学が分からなくても答案で遊ぶな。この解答用紙は掲示する。
次は「春」「蕎麦」「百回目」で。

321:名無し物書き@推敲中?
15/03/06 23:37:40.44 .net
「春」「蕎麦」「百回目」
春だ。
花粉の季節だ。
家の中でできる何か面白いことはないか。
考えついたのが蕎麦打ちだった。
妻に聞く。
「美味い蕎麦を食いたくないか」
妻は答える。
「いりませんよ!」と。
怒ることはないじゃないか、と抗議すると、妻はキッと睨み返して、
「何回言ったらわかるんですか! 私は蕎麦アレルギーだって言ったじゃないですか!」
ああそうだった、と私は引き下がったが、妻は怒りはおさまらない。
「なんですか! あなた私を殺したいんですか!」
うっかりしていたと頭を下げても、妻はもう止まらない。
「何度同じこと言わせるんですか! もう百回目―」
私はゴーグルとマスクを装着し、花粉の舞う外に飛び出した。

「忍者」「ぽっくり」「和尚」

322:「忍者」「ぽっくり」「和尚」
15/03/08 20:54:06.78 .net
男がそろそろかと見に行くと井戸の前で念仏を唱えていた。
「おい、なんでアンタが生きている?」
男がそういうと途中で唱言をやめて振り返って答えた。
「あれはアンタの仕業かい? あの忍者なら寺の瓦で足を滑らせて井戸の底に真っ逆さまだよ」
「そんなバカな!?」
「この高さだ、今頃ぽっくりいっちまっただろう」
半信半疑で男が井戸を覗いたのを見計らってそのまま背中を一押し。
男が井戸に落ちたのを確認すると変装をといて、後ろからひょっこり現れた本物の和尚に数珠を返した。
「あの男はやはり馬鹿だ。本物は瓦で足を滑らせないし、本物は念仏を途中で止めたりしない」
迷惑な男がいなくなったその寺は阿呆寺としてたいそう有名になったそうな。


「妖怪」「かわや」「大工」でお願いします

323:「妖怪」「かわや」「大工」
15/04/03 22:45:29.69 .net
「あっ、おまえは妖怪かわや大工!」
太郎君は叫びました。草木も眠る丑三つ時、屋敷の厠をせっせと直す、
妖怪かわや大工を見つけたのです。
妖怪かわや大工は厠の不具合を勝手に直してくれるいい妖怪なのですが、
修理中は厠が使えなくなるという弱点があるのでした。
「おーい、もれちゃうよぅ、厠を使わせてよぅ」
太郎君が懇願します。しかしかわや大工はそれを無視し、
せっせと厠を直すのでした。
「仕方ない、庭でやろう」
太郎君は植込みの陰で用を足しました。
そしてスッキリした太郎君は、オチをつけることも忘れて寝床に戻ったのです。
次「審判」「ノーパン」「クリームパン」で。

324:名無し物書き@推敲中?
15/04/12 14:34:21.32 .net
小学三年生の競技はクリームパン食い競争だった。一郎ならびに三年生が四人、
スタートラインに並んだ。五月の突き抜けるような青空と父兄や生徒の歓声が、
一郎の頭に強い印象を残した。ふいに、審判の女教師が、「いちについて!」と叫んだ。
一郎は前を向き汗のにじむ手を握りしめた。そしてピストルを打たれる一瞬前、風が吹き抜けた。
思わず一郎は女教師へ振り返った。
女教師の細やかな手が制止するのを待たずして、風をはらんだスカートが地面と平行になった。
女教師はノーパンだった。小学三年生の眼前に、二十代半ばの女の股間がさらけ出された。
ほっそりとした両脚の上、黒々とした毛の茂りに一郎の足は完全に止まった。
ピストルの音が鳴り、走り始める同級生をよそに一郎は女教師を見たまま立ちすくんでいた。
青空の下、一郎の遠くでクリームパンが、糸に吊られ揺れていた。

次「上司」「情事」「定規」

325:名無し物書き@推敲中?
15/05/02 00:52:59.77 .net
上司の情事を目撃ショウジは狂気に駆られて裁きを行使。
鋭利な定規で上司を殺し、残った情婦と淫靡な行為。
薔薇の馨りと吐息と熱気、二匹の獣の原始の叫び。
甘美と耽美に夢中な番い、近づく焦眉に気付かず謳歌。
輪廻の使いが扉を開き、無縫のループが矢庭に開始。
上司の情事を目撃コウジは狂気に駆られて……

次題 「碁石」「馬蹄」「ホロスコープ」

326:「碁石」「馬蹄」「ホロスコープ」
15/05/10 21:00:35.60 .net
さあ、新春恒例の桜花賞に16頭の優駿馬が出そろった。
全ての馬がゲートインして、今スタートを切った、まず先頭を切るのはセントルイス、
続いて追い上げるのがツヅイテイオウ。その後ろ、ソノウシローズがいいポジションに付けている。
セントルイス速いがツヅイテイオウを交わしたソノウシローズが徐々に追い上げてきた。
後方からはコーホーキャップが狙っている、レースは団子状態でまだ分からない。おっと、どうやら一頭出遅れた馬がいるようだ。
騎手はムチを振るっているが、沿道の芝生を食べながらホロホロしている一頭の馬、全く走る気配がない。
なんとこの馬はホロスコープのようだ。去年V3を達成したホロスコープが全く走らない、どうしたというのか。
そうこうしているうちにレースは大詰め、最終コーナーを回って直線勝負に入った。
速い速いぞこの馬、他を寄せ付けずぐんぐん伸びていく、ぶっちぎりだー、ぶっちぎりで1っ着はセントルイス続いてツヅイテイオウ、3着にソノウシローズが入ったーーー。
ピンポンパンポン、桜花賞払い戻しを発表します。1着馬番⑦セントルイス一二〇円、2着馬番④ツヅイテイオウ、フタヒャク・・・尚このレースで馬番⑨のサマタゲータは反則により失格となったため、馬蹄が外れ、全く走らなかったホロスコープは15位になりました。
「なんだよー、馬蹄が外れたのかよ!まあ、馬蹄が外れたんなら15位でしかたないな。15位しかたない。ジュウ碁石カタナイ。」


「挽きたて」「風船」「カーラー」

327:「挽きたて」「風船」「カーラー」
15/06/07 03:40:18.24 .net
帰宅中、ふと道路脇の植木の根元を見ると、しぼんだ風船から伸びた紐の先に、透明な袋に包まれた手紙がついていた。
何処かの学校の生徒が飛ばしたものだろうか。
よく見ると袋が破れて手紙は泥だらけになっていたが、拾って中身を読んで見ることにした。

『…きたての…ー…ーでお待ちしております。喫茶 栄螺』

「なんだ、喫茶店のチラシか」
滲んでしまって『…きたての…ー…ー』の部分は読めなかったが、挽きたてか淹れたてのコーヒーだろう。
しかし、『栄螺』はなんと読むんだったか。
スマホですぐに調べて、チラシのもう一つの可能性に気づいた。

巻きたてのカーラーで待っててくれるのかよ、サザエさん。


「雪」「便利屋」「脚本家」

328:「雪」「便利屋」「脚本家」
15/07/19 08:14:46.06 .net
スマホの天気予報では最高気温36度、文句なく猛暑日だというのに出演者たちはコートやジャンパーを着て
真冬の山荘で起きた殺人事件の謎に迫っている。
元々は秋の温泉旅館を舞台にしたサスペンスだったのだがPが念願の韓流アイドルの出演取り付けに成功して
何もかもぶち壊しにしてしまった。「スノーホワイトにはやっぱり冬が一番よ」鶴の一声である。それにしても
色白だが男なのにスノーホワイト(白雪姫)とは名付けた奴には最低限の教養もないらしい。

制作会社などPの意向の前では単なる便利屋にすぎず俳優女優の不平不満にひたすら頭を下げる日々が
続いている。脚本家も突然冬の話に変えろと言われて泣く泣く書き直したようだがまだ「これが休暇だったら
もみじ狩りを楽しむのに」という台詞が台本に残っていて修正してもらわなければならないだろう。

経験上今回のドラマは今から駄作になることが目に見えるようだがPには視聴率がすべてでドラマの内容など
お構いなしだ。スノーホワイト君が作中で殺されたりしたら文句を言うだろうが。普段ろくに顔も出さない
くせに今回はお気に入りがゲスト出演しているためかこのくそ婆はほぼ日参状態。今からでもこの婆を絞め殺す
脚本になってくれればいいのにと思う。


次「火事」「マニュアル」「情」あついあついあつい

329:「火事」「マニュアル」「情」
15/07/20 21:31:20.47 .net
私が小学生のころ、重点科学教育対象校とかいうお題目で、学校に最新型のロボットが導入された。
「ウィーン、ウィーン、ミナサン、超高度情報機器ノジョーデス。ウィーン」
上半身は配線を巻きつけたパイプ椅子みたいな出来で、よく外れるキャタピラで走り、
言葉よりもモーター音のほうが気になる彼を、友達はみんな馬鹿ロボットと呼んだ。
そんなある日、学校で火事が起こった。
「ウィーン、ミナサンニゲテクダサイ。ウィーン、ワタシガクイトメマス」
ジョーはマジックハンドで消火器を掴もうとしたが、申し訳程度の握力しかないために
持ち上げることはできない。
「ウィーンウィーン。ミナサンニゲテクダサイ、ニゲテクダサイ」
普段ジョーを馬鹿にしていた私たちは、この健気なロボットを救いたいと思った。
しかし教師が引っ張ってもジョーはびくともせず、持ち上げることもできない。
「ウィーン、ウィーン」
仕方なく私たちはジョーを見殺しにした。逆巻く火焔の向こうに、ジョーのモーター音だけが
しばらく聞こえていた。そして一瞬、黒煙の向こうから、はっきりと聞こえたのだ。
「サヨナラ……」
私はこのとき、死を、あえていおう、生き物の死を、初めて知ったのかもしれない。
そしてまた、自分たちの無力をも。
翌年、新しいロボットが来た。
「キュイーン、キュイーン、ミナサン、超高度情報機器ノジャックデス。キュィーン」
私たちはまずマニュアルを開き、ロボットの電源を落として、体育倉庫にしまっておくことにした。

次「警官」「景観」「鶏冠」

330:名無し物書き@推敲中?
15/08/22 22:03:49.14 .net
茅野駅を降り、ヤスシには感嘆の声も無かった。
その鶏冠のさまに息を呑み、絶句するしか無かったのだ。
日本に有りながらアルプスを臨む。本場アルプスでは無い事は分かっていても、その感慨は測り知れない物だった。
あぁ、この山頂からの景観を臨めるのであれば命すら惜しくない、とすら思える。
駅前でタクシーを拾い「美濃戸口まで」と告げる。
そう、ヤスシは知らなかったのだ。
この後、美濃戸口の山荘で警官が殺される事件に巻き込まれる等とは。
次「焼き鳥」「私生児」「メニュー表」

331:「焼き鳥」「私生児」「メニュー表」
15/09/08 15:41:33.07 .net
それは人肉だという噂があった。
とある焼き鳥屋の、メニュー表には載っていない「はだいろ」という裏メニュー。
豚肉に似た串焼き。独特の香りと質感。和わさびを乗せて食べるらしい。
私は目の前の「はだいろ」を手に取り、恐る恐る口に運んだ。
咀嚼し、咀嚼し、咀嚼し、舌の奥へ強く押し込むようにして、飲み込む。
……食べ慣れた、普通の肉の味がした。僕は、思わずほっとした。

僕がこの店に来たのには理由があった。
隣家に住む母子家庭の、十一才の娘が行方不明になったのだ。
同じ私生児であるという共通点からか、彼女は二十才も年上の僕によく懐いてくれていた。
最後の目撃証言はこの焼き鳥屋のそば。徹底した捜索が行われたが見つからない。
でも……「はだいろ」の噂を知っていた僕はある不安に駆られて、この店で、このメニューを頼んでみずにはいられなかったのだ。

僕は怪しげな目つきを送ってくる店主と目を合わせないようにしながら会計を済ませ、店を出た。
よかった……どうやら、彼女がここのメニューになっているかも、なんて僕の心配は杞憂に終わったらしい。
「はだいろ」の、あの味。食通なんかじゃなくてもわかる。
あれは明らかに、生後十一年の味ではなかったもの。

次は「駅前」「豚」「社長」でお願いします。

332:「駅前」「豚」「社長」
15/11/12 23:14:38.11 .net
おおよそ200日振りの休み。うっかりブラック企業に入ってしまい、完全に社畜と化している私にとっては既に何をしたらいいのか分からなくなっている時間。
まともな感情や人格を保ちながら社畜を続ける事など出来る筈はなく、既に私の人格は存在して居らず歯車である。
歯車には動いていない間の価値などはないので、休みなどと言うものは存在の否定でしかない。
たった1日の休み。それすらも私にとっては焦燥感で耐えられない物となっている。
このまま部屋に居たら狂ってしまう。とにかく、と逃げるように部屋を飛び出した。
駅前まで来ると少し気持ちが落ち着き、周りを見る余裕が出て来た。どうやら今日は祭をしているらしい。
色々な屋台が出ている。焼きそば、イカ焼き、豚トロ串、りんご飴、綿あめ…
こんな時も飲食の呪縛は私を離さない。自然と目が追っている事に気付き絶望する。
あんなに気楽に調理できればどれだけ私の心は救われるのだろう。なぜ私は救わないのだろう。
あぁなるほど。明日起きたら社長を殺しに行こう。
そうすればきっと私の魂は救われる筈。

次『こたつ』『落丁』『雄鶏』でお願いします

333:名無し物書き@推敲中?
15/11/12 23:22:21.00 .net
あっちの>>331
短いながらもしっかりと伏線があってぞくっと来た
ネタバレ前に気づける要素もあっていいね

334:名無し物書き@推敲中?
15/11/12 23:23:20.44 .net
おうふ
感想スレに書こうと思ったのにorz

335:「こたつ」「落丁」「雄鳥」
15/11/17 13:41:06.81 .net
落丁混じりの雑学本に、首を切断されても死ななかったマイクという雄鳥の話が載っていた。
首無しマイクはグラム50セントの鶏肉ではなく、ドル箱スターとして大切にされたという。
つまり、マイクは死を乗り越えることで新しい人生をつかみ取ったのだ。
それは例えば、僕と彼女との関係のように。

当時、僕らの上には激しい雷雨が降っていた。連日連夜の口喧嘩、上がる絶叫、うなるDV。
ついに彼女は包丁を持ち出し、僕は必死に抵抗する。気がつくと彼女は倒れ、血が流れていた。
「殺ってしまった」……と思った。取り返しがつかない、もう彼女は帰ってこない……
そう思った瞬間、僕は急激にすべてを後悔し、倒れた彼女にすがりついて泣いて謝った。
すまない、すまない、すまない、すまない、すまない、すまない…………その、直後。
倒れていた彼女が、無言でそっと、泣き叫ぶ僕を抱きしめてくれた。
そう、彼女は生きていたのだ。僕は泣いて彼女に許しを乞い、彼女もまた僕を責めなかった。

まさに奇跡だった。その出来事は、僕らのすべてを一変させた。
彼女はかつてのような不平を漏らさなくなり、僕も二度と彼女から離れなかった。
僕らは二度と争わず、我が家には平静な空気が流れていた。
最初は戸惑っていた僕も、この新しい人生を受け入れ、前向きに生きていくことにした。

ただ二つの問題は……彼女が二十四時間、休まず僕を抱きしめ続けようとするから
外出もままならず、会社を辞めなければならなかったこと。それと、
処分に困ってこたつの上に置いたままになっている彼女の頭部―包丁を持って
もみ合った際に切断されてそのまま動かない彼女の頭部を、どうするべきかということ。

相変わらず僕に抱きついたままの首のない彼女は、相談に応じてはくれそうになかった。


次は「リモコン」「緑茶」「山」でお願いします。

336:「リモコン」「緑茶」「山」
15/11/29 19:18:07.56 .net
 「緑茶ダイエット、もちろんノンカロリー!」
 「カテキンが殺菌に効く!」
 「1ヶ月で4キロ減!お値段はたったの598円」

 山の様なキャンペーン文句は見事に的中した。
 スーパーの緑茶の棚は、番組終了後、見事に空となったのだ。

 「まあっ!」と一応驚いて見せた大臣に、男は売り込む。
 「貝柱、納豆、古くは紅茶キノコと実験は大成功です。
 ダイエット・健康・激安の条件を満たせば、リモコンは簡単ですよー」

 計画は実行された。
 毎日の様に、テレビにランニングの光景が写される。
 おなじみの「3ヶ月後」さんの体型も、申し分なかった。
 しかも、これが全て無料で・・・「実はお金もくれるんです!」

 これがウケないわけがない。
 「軍隊ダイエット」キャンペーン大成功。予定人員は無事確保されたが・・・
 大臣は、さすがに複雑な表情を隠せない。

※そういえばブートキャンプなんとかもw
 次のお題は:「紅茶」「怨恨」「川」でお願いします。

337:名無し物書き@推敲中?
15/12/09 23:22:17.16 .net
「ポイントはね、隠し味に紅茶を入れる事なの」
あまりにも美味しかったので作り方を訪ねると妻はこう答えた。
その時の事を思い出しつつ、自分で再現してみようと四苦八苦してみたもののどうにも上手くいかない。
何しろ『紅茶を入れる』という事以外は暗中模索、五里霧中。食材から調味料まで何が入っていたかは分かっても、どの位入っていたかは分からない。入れるタイミングも。
何も怨恨で離れた訳ではなしに今からでも作り方を聞けばいいのかな?なんて思ったがそんな事ができる訳はない。
そんな考えがよぎってしまった自分に少し失笑した。
今も君はあの川の向こうで両親と楽しく笑って過ごせて居るのかな?
あの時、君に押し戻されたけどやっぱり君が居ないと張り合いがないよ。
君と一緒に進みたかったよ。




ポエムか

次『痛い』『ポエム』『陶酔』

338:名無し物書き@推敲中?
15/12/13 00:58:26.83 .net
「ェイアーッ!」 ガシャーン!!「出た! 陶酔拳!!」
アナウンサーが叫んだ。若く筋肉質の武道家がマットに沈む。リングの上では足元もおぼつかない
初老の酔っ払いが、もげた甕の取っ手を握って鶴の構えに移行するところだ。
ぶちまけた安物の酒の匂いが、リングサイドまでもわりと漂った。
「酔拳と陶器による凶器攻撃、これは痛い!」解説のミスターポエムこと死神(しじん)三十郎ががなり立てる。
ここまででお題を消化してしまったが物語はまだ続く。甕の取っ手を握るアラフィフは、
悲しい過去を背負った香港だか海南島だかのアンチヒーローだったのだ。
その、過去とは……!?

次「さくらんぼ」「必殺」「普通の娘」

339:名無し物書き@推敲中?
15/12/20 15:59:34.63 .net
「遅刻遅刻~!」
私、田中咲欄慕!
キラキラネームだけがコンプレックスの普通の女の子!
朝食の食パンを咥えたまま曲がり角を曲がると何かを跳ね飛ばしたような衝撃があったけど気にしない!
急がなきゃ電車に乗り遅れちゃうもん!
ギリギリで電車に乗り込むと、大変!痴漢に胸を揉まれてる女の子がいるじゃない!
私は、近づくと痴漢の肩に手を置いて言った。
「貴様、それでも男か!必殺太陽神竜拳!」
私の必殺技をくらい痴漢は電車の窓からぶっとんで行く。
「ありがとうございます、あの、お名前を……」
痴漢に胸を揉まれてた女の子は、顔を赤らめながら私に聞いていた。
「私の名前はさくらんぼ、普通の娘だ」
それだけ言うと、私は壊した窓から飛び降りた。
逃げろさくらんぼ!鉄道会社から窓の弁償代を請求される前に!

次は
「酒」「女」「煙草」

340:「酒」「女」「煙草」
16/01/09 15:04:42.30 .net
「私は女性というものを尊敬している」
 伯爵は手にしたグラスをかかげてそう言った。
「なぜなら女性は、その全身すべてに深い深い意義があるからだ。例えば……」
 言葉を区切り、グラスに突き立つ細長い女性の指に吸い付き飲み物を吸い上げる。
「……ふぅ。例えばそう、切断した中指から骨を抜き加工すれば、理想のストローとなる」
 食卓に招かれた客人たちが微笑んでうなづく。和やかな注目の中、伯爵が続けた。
「それに、女性の体毛の皮巻き煙草。実にいい香りだ。……これはね、三十年物だよ」
 おお、と一同から驚嘆の声があがる。三十年物とは、女性が絶命するギリギリの投薬を
三十年も続けた逸品ということだ。大抵の女性は十日の投薬で廃人と化すというのに。
「体液酒もいいね。一口に体液と言っても、なにをどう使うかで無限の広がりを見せる。
合成酒ではたどり着けない神秘的なフェロモンが私たちを狂わせる。最近は羊水酒だね。
はじめは十代の羊水で満足していたけれど、いまは一桁だ。八歳で妊娠させ、
九歳で羊水を絞る。これに、生きたまま腐らせた女性の膿をひと垂らしすると通好みだ」
 鷹揚に語る伯爵の通人ぶりに一同が尊敬のまなざしを送る。
 そこに、従者が現れ耳打ちしてきた。
「申し上げます。人工子宮より新しい子供が生まれました。うち、女性は八六七人」
「それはめでたい。一人として無駄にしないように、しっかりと面倒を見るのですよ」
「は。それで、残り九二一人の男性のほうは」
「男……? そんなゴミ、いつものようにミキサー処分を。はぁ……遺伝子操作もせず、
仕上がりまで未開封が人間蔵の鉄則とはいえ……男などが生まれるのは癪に障る」
 伯爵は機械の指を揺らし、機械の脳から無線で指示を飛ばした。
 週末世界を支配する性別なき機械生命たちは、即座に彼の命令を実行するだろう。


次は「ヨーグルト」「郵便」「寒中」でお願いします。

341:「ヨーグルト」「郵便」「寒中」
16/01/13 09:41:39.32 .net
 決定通知がそろそろくる筈だ。
 老人は、ワクワクしながら待っていた。
 くすんだ水色の病院の前で、寒中ずっと佇んでた。

 郵便配達が来るや否や、自分のをさっと抜き去る。
 マイナンバーみたいな、白い地味な封筒だが確かにこれだ。

 なんせ今回は頑張った。
 巨額の寄付もしたし、慈善事業だって・・・
 入試結果を見る時の、あのドキドキで封筒を開く。

 <来世決定通知 : 貴方の来世は 結核菌 と決定致しました>

 「ええっ」と落胆!
 後を読むが、堅苦しい文句が並ぶだけだった。

 <本決定は、貴方の殺生実績を基に厳粛な審査の上・・・>

 「来世は空中を漂うだけとは・・・トホホ」
 ションボリしながらヨーグルトを飲む。
 老眼なもんで、「乳酸菌 10億個以上」は読めなかった。

次のお題は:「築城」「焼却」「納豆」でお願い致します。

342:無名草子さん
16/01/26 06:37:29.53 .net
URLリンク(youtu.be)

343:「築城」「焼却」「納豆」
16/04/06 05:35:34.24 .net
 焼却炉の中で音がした。のぞき込むと、同級生の通称・納豆マキ子がいた。

 それはまだ中学校に焼却炉のある時代。くすんだ空に昭和の残滓が漂っていた世紀末。
 彼女は半畳程度の焼却炉の一角に、紙くずや空き袋、わた埃などでゴミの城塞を築城し
膝を抱えて立てこもりながら、小さく震えて、僕を見ていた。

 なにをしているのか聞くと、「死にたくて」と答えた。
 理由を聞くと、「私の体は納豆みたいに、つぶつぶが糸を引いて、臭いから」と泣いた。

 そう、彼女は納豆マキ子。誰でも知っている。
 1年前に恐ろしい呪術をかけられた彼女はいまや、皮膚という皮膚、パンツの中から
頭皮の先まで、小指の先ほどのつぶつぶに覆われている。そのつぶつぶは、ぽろぽろ取れた。
ねばつく糸を引きながら。膿をぴゅっぴゅと吹きながら。腐った肉のにおいを漂わせて。
 彼女の周囲は常に異臭と粘液に包まれた。その醜さは、大の大人でも三日は夢に見た。
 死ぬのは当然だ。むしろいままで生きていたことのほうが不思議なくらいだった。

 どうせ死ぬなら……と、僕は彼女に頼むことにした。その前に、君の納豆を食べさせて欲しい。
 彼女は驚いた後、答えた。「……いいよ。あなたは、あなただけは、私がこの原因不明の病気で
納豆になる前も、後も、同じ目で見つめててくれたから。いまも、私を探しに来てくれて……」
 今度は僕が驚く番だった。まさか……気づかれていたとは。恥ずかしいが、正直に答える。
「そう……実は、僕は君が納豆になる前から、なった後もずっと―君を食べたいと思ってた」
 彼女の頬が赤く染まり、その拍子に二、三粒の腫瘍が、ねちょねちょと取れ落ちた。

 彼女は僕につぶつぶを食べさせてくれた。それは腐った人肉の、まろやかな味がした。
 ああやっぱり。僕は確信した。やっぱり彼女に呪いをかけたのは、正解だったのだと。


次は「ランダム」「気温」「春」でお願いします。

344:「ランダム」「気温」「春」
16/04/25 01:38:09.71 .net
  山頂には着いたけれどこの天気だ。いい景色なんて拝めないとわかりきって登った。だがため息は出る。
  うつむいて帰ろうとしたとき一陣、風が吹いた。めりめりと眼下の山肌に張り付いた雲を剥がしていく。今の今まで雲に覆われていた丹沢の尾根筋が足元から刻々と浮かび上がってくる。その尾根筋を境に雲の毛布が左右に引き剥がされていく。
  うねる雲がさらに巻き上がり、隠されていた青い山々がどこまでも続いていく。山々に引っかかって残る雲が、灰色と白と微かな日の光で千の沢を絡めたような海になる。
  僕はその時間と空間を独り占めしていた。土砂降りの丹沢最高峰蛭ヶ岳山頂。そこから雨雲が消えていく様は、例えるなら地獄の幕開けのようだった。そしてそれは晴天の富士山に負けるとも劣らない美しさだった。
  さっきまでの雨が体温を奪っている。でも、しばらく立ち尽くした。
  雪こそ融けたものの地上1800メートルはまだ春になりきれていない。気温は一桁だろう。だけど脳みそがまだこの景色を記憶として焼け付かせていなかった。魂が戻ってくるのに少し時間がかかっていた。
  丹沢なんて所詮は神奈川で景観は甲信越の山々には適わないだろうと思っていたけれど、どっこい、こんなに山深くて壮観なのかと思い知らされた瞬間だった。その山が持つ良さというものは登ってみなければわからないのだ。
  曇りはしているものの雨の気配は去っていた。青根のバス停からここまでは雨中行軍訓練のようなものだったから視界が拓けただけで気分はかなり晴れた。
  水を飲みタバコを吸って丹沢山荘方面に歩き出した。しばらく青と白の地獄は続き、塔ノ岳に着いた頃には人里が見えるようになった。
  午後の光が人工物にランダムに反射するのを見て、少しもったいなく思う。下界を忘れてもっと山の中にいたい、が、同時に人も恋しくなってくる。
  丹沢の山は整備が行き届いているのでこっちから頑張ってふっかけてやらないと遭難なんてできないが、それでも無事に下山できるとほっとする。
  さて、温泉に入って一杯やって家に帰ろう。そして友人連中に言ってやろう。丹沢はいいところだったと。今度は一緒に行こうと。

次は「カステラ」「電球」「背後」でお願いします。


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