この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十七ヶ条at BUN
この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十七ヶ条 - 暇つぶし2ch150:「王様」「逃げ腰」「エプーリス」
13/10/01 19:26:56.37 .net
お后様と王様、毎朝パイを食べた。
テーブルの足元でお姫様の一人はそれをみていた。
骨は鼠にかじられた。

お姫様の一人は王様の口の中から
その夜お后様の口に宿って
お后様からまた生まれた。
土になって虫に塗れた。

生まれたくなかったお姫様はエプーリス。
王様の口の中で妹のパイを食べる。
最後はお父さんと一緒にミンチにされた。

国民はパイが食べたくて怒ったのに。
逃げ腰の王様は気にせずパイを食べた。
何もかもパイにして最後は自分をパイにした。

国中にパイがなくなってお姫様もお后様も王様も
みんな肉詰めパイになった。
残った国は隣の国からパイのように分けられて後は何にも残らなかった。
それからは鼠と虫が崩れた城に居て、パイの夢を見ている。

「菊」
「音楽」
「まるい」

151:「菊」「音楽」「まるい」
13/10/02 22:54:30.28 .net
―菊の花は舞い散った

 私は何もしていないのに、ここではまるで案山子のようで。
さえずる鳥達、なすがままの私、時折カラスが突いてくる。
いつしか添えられていた花は、私にそれを望んでいるのか。
まーるいまるい輪の中は、限りなく外であって。
皆が奏でる楽しそうな音楽も、私にだけは雑音で。

 それでも私は?を吐く、堪える。
いつかにはきっと終わると信じる、思い込む。
思いつくこと、できることはそれだけなのだと。

だからソレは、救世で、確かに私の世界を救った。

菊の花は舞い散った―


次は「憐憫」「ひらがな」「ゲペックカステン」

152:名無し物書き@推敲中?
13/10/03 05:07:59.47 .net
男は背に突き出た瘤をゲペックカステンと呼んでいた。
戦車の外側に取り付けられた工具箱を意味する言葉らしい。
とても寒い、氷が笑いながらゆっくりと消えてゆく場所からやってきたと自称するその男は、
ひらがなしか書けないし、口を閉じてものを食べることができず、
容貌は「はかほりメアニヌ」という名の絵本に出てくる薄ら笑いを浮かべた食屍鬼そっくり。
憐憫を向けてやるにはあまりにも気持ち悪すぎ、嫌悪を向けてやるにはあまりにも哀れすぎる、
そういった類のやつだった。
怖いもの見たさ、あるいはゲテモノ趣味のために彼に話しかけてやる人間も、
数分後にはそのことを後悔する。
「あんた、そのゲペックカステンてのでね、体を修理するなら今だよ。あんたこのままじゃどうしようもないよ。
ぼやぼやしてないで早く、あんたの工具を取り出せよ」と初老の酔客がある日言うと、
男はべろんと舌を出して笑って、「この瘤は俺を治すためのものじゃないんだよ。
まず治すための工具じゃない、いじくるための工具だし、いじくるのは俺じゃない、人類という種なんだ」
酔っぱらいは頭の横で指をくるくる回した。そして次の朝、妻と子の背中に、大きな瘤を見た。
男の笑い声が聞こえた。

153:名無し物書き@推敲中?
13/10/03 05:13:21.09 .net
次は
「うわごと」「証人喚問」「ランダム化」

154:「うわごと」「証人喚問」「ランダム化」
13/10/03 06:45:34.08 .net
エクセルにうわごとを表示させるプログラム
標準モジュールにコピーして貼り付けてください。

Sub uwagoto()
'エクセルVBA うわごとを三回繰り返す
For i = 1 To 3
'ランダム化 乱数の作成
Randomize
乱数 = Rnd
'うわごとの作成
If 乱数 < 0.2 Then uwa = "薬の治験データごまかした!" Else
If 乱数 >= 0.2 And 乱数 < 0.4 Then uwa = "政治問題になっちゃった!" Else
If 乱数 >= 0.4 And 乱数 < 0.6 Then uwa = "国会で問題になってる!" Else
If 乱数 >= 0.6 And 乱数 < 0.8 Then uwa = "証人喚問されちゃう!" Else
If 乱数 >= 0.8 Then uwa = "助けて!" Else
'うわごとの表示
MsgBox uwa
Next
End Sub

155:「うわごと」「証人喚問」「ランダム化」
13/10/03 06:51:55.36 .net
次は、「世界を」「おれの」「ポケットに」でお願いします。

156:名無し物書き@推敲中?
13/10/04 05:22:29.63 .net
福村幸のバカやロー 望遠鏡で隣の家の浴室や洗濯物を覗くな!!

URLリンク(ja-jp.facebook.com)

157:名無し物書き@推敲中?
13/10/07 21:08:57.21 .net
 新築の未入居アパートの二階の真暗な一室の窓の端から外を監視している西浦は、寝袋にくるまりながら白い吐息をついた。
 窓に結露が生じる恐れがあるため暖房を使えない部屋は冷え切っていた。監視対象が住む建物と道路をへだてた正面の部屋を大家から特別に借り受けることができたのは幸運であった。
 しかし、まだ誰も入居者のいない新築そのもののアパートでは、不自然になるため電灯をつけることもできなかった。
 電灯も暖房も、人間の生活から生じる様々な熱気がまったく存在しない空のアパートには、ただ張り込みをする二人の刑事、西浦と山木の体温だけしかなかった。この条件は、二月の札幌の夜では厳しすぎるものだった。
 西浦の肩が山木に軽くたたかれた。見張りの交代の時間である。西浦はそっと体をずらし、山木に位置を譲った。そのあいだ一瞬も監視対象から目をはなさなかった。
 窓から離れ、外からの視界を完全に逃れると、西浦は寝ころがって両腕を思い切りのばした。寝袋から這い出て両足も思い切りのばした。しかし数秒後には寝袋に再びもぐりこんだ。
 山木が配置につくこれから1時間は基本的に自由に使ってよい。西浦は上着のポケットから古い文庫本を取り出した。ハドリー・チェイスの「世界をおれのポケットに」だ。西浦は窓の外から入るかすかな明かりで読もうとした。しかし暗くて読めなかった。

158:名無し物書き@推敲中?
13/10/07 21:13:33.97 .net
次は 十年後 休息 谷底 でお願いします。

159:名無し物書き@推敲中?
13/10/22 22:49:42.34 .net
谷底に突き落とされた十年後、井原は目を覚ました。
大きく息を吸い込んで吐き出すと、錆び付いた肺から噴き出した塵にむせ返る。
その苦しさがいかにも「生きている」ものらしく、懐かしい。
随分長い休息になってしまったが、たまにはこういうのも悪くない。
新品同然になった自分の体を見下ろし、心の中でそう呟いたものの、ふとあることに気付いた。
服がない。
大半は転がり落ちた時に破れてしまったのだろう、残骸と思しきものが体のあちこちに張り付いていたが、大切な部分を隠すには到底足りない。
これではとてもではないが外の、もとい谷の上には出られない。
井原は少し思案したあと、ほとんど光の差さない谷の底を歩き出した。
自分と同じような目に遭った「人間」が他に居るかも知れない、探してみよう。


次は「誕生日」「インク」「展覧会」でお願いします。

160:誕生日 インク 展覧会
13/10/24 10:06:57.58 .net
大河原はもう一時間半もひたすらサインを続けている。
小さな机に座り、並んだファンから展覧会の図録を受け取り、少しの会話をしながらサインして返す。その繰り返しだった。
初めは会話にももう少し余裕があったけれど、だんだん疲れてもくる。
サインする場所を指定してもらい、相手の名をたずね、献辞とともにサインをする。
時間内に終わりそうにないほどの行列を早くさばきたかったので、気持ちがせいてきていた。
顔はだんだんファンの一人一人を見ていないようになり、ほとんど図録の方を向いているようになった。
使い続けたペンはインクが切れてすべりが悪くなってきた。
次の人は和服の女性らしく白い手をしていた。
「ここにサインをいただけますかしら」
すずやかな声で、あるページが開かれて差し出された。
香菜子像。大河原の代表作である。
大河原はサインペンのインクでそのページを汚すのがうとましくて、思わず顔を上げて相手の顔を見た。
驚いた。十年ぶりに驚いた。
そこで微笑んでいたのは、十年前に大河原の前から忽然と姿を消した香菜子だったからだ。
しばらく声も出なかった。ようやく声が出たときには、思いもかけないバカげたことを口走っていた。
「そういえば・・・・・・今日は君の誕生日だったかな」


次は 気さく 破壊 遊離 でお願いします

161:気さく/破壊/遊離
13/10/27 10:48:46.24 .net
世にも気さくな親父がいた。
しかし彼は一人娘を殺害されてから、性格が一変した。見るもの全ての人々を、こいつが犯人ではないかと睨みつけ、ちょっとでも目が合えば喧嘩をふっかけるようになった。
「お前が犯人だろ。俺の娘を犯して殺してバラバラにしてコンビニのゴミ箱の前に捨てたな。白状しろ」
「何言ってんだキチガイ。やめろ。あっ」
娘の殺されたコンビニで、親父は隠し持っていたプラスのドライバーで見知らぬ男の胸を数回突き刺していた。
男は「警察、救急車」と切れ切れに叫び、蹲って血を流したまま、動かなくなった。
「ざまあみろ」
嘲る親父の目に奇妙なものが見えた。
「なんだ?」死んだ男の体から、白く薄光りする玉が浮かび上がり、宙を舞い始めたのだ。
「死んで、魂が遊離したってわけか。こいつはいいや」
親父は血だらけのドライバーを握ったまま光の飛んでいく夜空に高笑いをした。
その大きく開けられた口に、飛んでいた魂がひょいと入り込んだ。
だが親父は、それが喉の奧に入り込む前にがぶりと噛んで噛み砕いた。
魂の中には、突然命をなくした男の無念と恨みの味が、これでもかという程つまっていた。
「うむ、いい味だ。だが、俺の恨みは貴様ごときの比ではないぞ。まだだ、まだ殺したりない」
親父は殺した相手の魂をも呑み込んで、恨みを重ね、夜の町を歩き出す。
「殺してやる。俺の人生、この世の中。全てを破壊して終わりにしてやる」
翌朝、親父の死体が川縁で発見された。付近の不良たちに単独で挑んで返り討ちに遭ったらしい。
それまでに付近で数件の通り魔事件が発生している。
犠牲者は五人。その魂が今はどこを泳いでいるのか、誰も知らない。

次「サイコ」「読書感想文」「火傷」

162:名無し物書き@推敲中?
13/10/29 20:04:31.52 .net
ほんとうに久しぶりに来たスレは過疎で、創作版でも最下位に位置している
あれほど好きで、はまって張り切って書きこんでいたのに、何でこんな処まで
此処は落ちているんだ。でお題は何だって?
サイコだろう、サイコと言えば羊たちの沈黙レスター博士が思い浮かぶ。小泉今日子が
ある番組でそのオマージュをやっていたような。どうでも俺には受け付けないと言いつつ
思わず見たくなってしまうよな? それでもそれでなくても
サイコという人の名前でも此処はいいんだ。喫茶店の名前に使用してもいいのがこのスレの
特徴だった。俺が遊んでいた時はそうだった。で、次は読書感想文ね。俺の作文なんて
読書感想文以下だよ。今変換で烏賊が出てきた。オモロイだろ、以下と烏賊の関係で
4百字詰め原稿用紙十枚以上埋めるのが作家志望の実力か? 俺は本を読まないからな。それでも
此処までやってりゃそれは自信あるぜ。最後火傷だろ。昨日サスペンスみたんだけど
その最後の犯人特定とかにこれは使用されるよな。俺ってこれだけサスペンス好きなのに
あんまり書いてないんだよな。何かコツとかあるのかな。荒唐無稽な話はお任せと言う位得意なんだけど
「文学界」「スバル新人賞」「暮らしの小説大賞」

163:名無し物書き@推敲中?
13/10/29 21:28:39.46 .net
固有名詞でしたのでお題を変えます
「山」「地獄」「カクテル」

164:名無し物書き@推敲中?
13/10/30 03:34:21.33 .net
バーテンダーから赤いカクテルを受け取ると、ふっと昔の記憶が蘇ってきた
あれは30年前のことだ。私が読売巨人軍の一員として腹監督の下で東北連合軍と戦ったあの最後の日のことだ。
私達は最終防衛線である奥多摩の山地の地下壕に篭り、来るべき決戦に備えてバットに釘を打ち、
残り少ないボールを磨いたりしていた。その次の日の明け方、私に水汲み番が回って来たので裏手の谷間にある
湧き水を汲みに一人出かけた。湧き水に反射された朝日は地下壕暮らしだった私の陰鬱な顔を変えていった。
その湧き水で喉を潤し、ボトルに湧き水を入れていたその時、ゴゴゴゴと地鳴りが山という山を揺らしたのだった。
「敵だ…」
私は急いで水の入ったボトルを片手で持ち山を駆け地下壕に戻ろうとしたが途中で友軍の杉内が暗い表情で立っていた。
ユニフォームはズタボロで泥と血にまみれていた。左腕がなかった。
「どうした?敵が地下壕をやったのか?」
「ああ、みんなやられたよ、一発だよ、ミサイル一発だ、壕の中は地獄だ」
杉内はそう言い、右手に持っていた釘バットを私に向け
「ああ痛い痛い痛いんだよ、腕千切れたんだぜ、投手生命終わったよ、これで俺はやってくれ、痛いんだよお……」
私は戸惑いながらも杉内から釘バットを受け取り
「我が巨人軍は永久に不滅だ、後楽園で会おう」と言い杉内の頭めがけてフルスイングした。
私は後を追おうとしたができなかった。血のついた釘バットで突撃すらできなかったのだ…
 
次「軽蔑」「革命」「妖怪」

165:名無し物書き@推敲中?
13/11/03 05:45:15.99 .net
あげ

166:名無し物書き@推敲中?
13/11/03 14:09:06.36 .net
>>149
ニュースに、特別捜査本部を入れてほしかったなw

167:軽蔑 革新 妖怪1 ◆4pgI1EkLlCjP
13/11/07 23:05:33.16 .net
こいつはどうもしばしお付き合い願います。
しかしまあ夜が長くなりまして、今夜のような細い月、
まことに夜らしい夜月らしい月でございますな。
昨今は電気、という野暮な技術が夜を明るくいたしまして
風情も情緒も押しやられておる次第ですが
いやしかし、この座敷にそなえた広い庭が風情も情緒も守っておるようで
月は月らしく見えております。うちに陰を備えるからこそ月は美しい
わたくしはそう思いますね。
そして夜はかそけき光を含むから美しい。
ええまことに今晩はよろしい心地で語ることができますようで
わたくしには何よりの興でございます。

168:軽蔑 革新 妖怪2タルギはゲーム
13/11/07 23:06:46.71 .net
さて、妖怪の話でございます。
妖怪は何の益にもならず、ただ人をぎょっとさせる、そういう存在でございます。
無益、いや害悪という人間もおりましょうな。
小さい肝っ玉を後生大事にしておる様はわたくしは心底軽蔑いたしておりますが、
多少の肝など潰しても、飄然とする妖怪にはわからない事情があるのですかねえ。
まあ人間も悲しい生き物でございますな。
飄然といえば妖怪は飄然とするのが本性、サガというものでして
ふらりふらりといるのやらいないのやら、世俗に関わるようで
その実、世俗に関わらないのが妖怪でございます。

169:軽蔑 革新 妖怪3タルギはゲーム
13/11/07 23:08:17.25 .net
ところが、でございます。
昨今の技術革新というやつですか、
妖怪にも革新の風が吹き付けておりましてつくも神なんかには
電化製品だったものにも生まれているそうでございます。
新参のはやぶさなんかは神がかりを世間に晒して妖怪仲間からは顰蹙を買っておるらしいですが
小豆洗いの全自動を持ち込んだあのじい様よりかは
馬鹿にはされておらぬようです。
じい様、小豆洗いの音がしないってんで弱ってましてね
隣住民の洗濯音と間違われる馬鹿なじい様ですよ。
まあ手洗いに戻したそうです。
さてオチも流れてこの話会もお開きといたしましょう。
どうもお付き合い頂きましてありがとうございました。

170:名無し物書き@推敲中?
13/11/08 02:25:00.58 .net
長過ぎ、out!

171:軽蔑 革新 妖怪
13/11/09 00:34:43.58 .net
さて、妖怪の話でございます。
妖怪は何の益にもならず、ただ人をぎょっとさせる、そういう存在でございます。
妖怪は害悪という人間もおりましょうな。
小さい肝っ玉を後生大事にしておる様はわたくしは心底軽蔑いたしておりますが、
多少の肝など潰しても、飄然とする妖怪にはわからない事情があるのですかねえ。
まあ人間も悲しい生き物でございます。
飄然といえば妖怪は飄然とするのがサガというものでして
ふらりふらりといるのやらいないのやら、世俗に関わらないのが妖怪でございます。
ところが、でございます。
昨今の技術革新というやつですか、
妖怪にも革新の風が吹いておりまして、つくも神が
電化製品だったものにも生まれているそうでございます。
新参のはやぶさなんかは神がかりを世間に晒して妖怪仲間からは顰蹙を買っておるらしいですが
小豆洗いの全自動を持ち込んだあのじい様よりかは
馬鹿にはされておらぬようです。
じい様、 隣住民の洗濯音と間違われて弱ってんですよ。
まあ手洗いに戻したそうです。
さてオチも水に流れてお開きといたしましょう。
どうも馬鹿馬鹿しい話にお付き合い頂きましてありがとうございました。 =====
字数制限あるのに気づかんかった

172:名無し物書き@推敲中?
13/11/10 09:57:10.13 .net
次のお題も出してないし、前の継続でええんか?

173:名無し物書き@推敲中?
13/11/10 10:45:02.63 .net
指定がない場合は前の継続っていうことになってる

174:軽蔑 革命 妖怪
13/11/11 02:04:55.81 .net
ぬらりひょんは顔を朱色に塗り、肛門に胡瓜を刺しこんで首を吊って死んだ。
かつて人間達の科学技術に真っ向から戦ってきたぬらりひょんは妖怪達の総大将として絶大な支持と人気を集め英雄と化していた。
しかし、妖怪研究家がぬらりひょんが一部の人間達と癒着し、妖怪達を欺き続けていたことを告発したのだ。
ぬらりひょんは元々、人間の家へ勝手に上がりこみ居座ることによって人間達に恐怖を与えていたが、
それが一部の反社会的な革命家やヤクザと手を結び、麻薬、覚せい剤や銃器の密売に手を染めるにまで到ったのだ。
この告発は妖怪界を震撼させた。かつて、ひだる神がやったことは嘘で、人間は食事を取らずに長時間歩けば低血糖状態に
なり倒れるという科学的根拠によって追い詰められ失脚し自殺したあの時以上に震撼させたのだ。
「あの偉大なる英雄ぬらりひょんが…嘘でしょ…」
「あの野郎、俺らを欺き人間達と手を組みやがって!」
「儲けた金でワシら妖怪の生活を良くする為なら話はわかるが、それさえも知らせずに自分の懐だけを肥やしていたとは…」
妖怪達はぬらりひょんを軽蔑し、さらには憎悪と怒りを募らせ、やがて爆発した。
妖怪達は高台にそびえ立つぬらりひょんの家に押し寄せ、
「人間と手を組むぬらりひょんを追い出せー!追い出せー!」とシュプレヒコールを上げ、ぬらりひょんを自殺に追い込んだのだった。
しかし妖怪界の中枢を支え持つぬらりひょんの死によって妖怪界は混乱と混沌の渦に巻き込まれ、
さらには人間達による徹底的な浄化作戦を許す形になり終焉を迎えたのだった。

次は「包丁」「警察」「嫉妬」

175:名無し物書き@推敲中?
13/11/18 05:31:35.07 .net
あげ

176:名無し物書き@推敲中?
13/11/18 05:35:55.18 .net
盛りあがってるワイ杯よりも敷居が低くて誰でも参入しやすいスレなのになあ、もったいないあげ

177:包丁 警察 嫉妬
13/11/22 11:45:49.18 .net
 ベンチで目を覚ますと額に違和感がある。湿ったものが貼り付いているようだ。

「動いちゃダメ!!」顔に手を伸ばそうとすると、妹の声に遮られる。
 少し離れて彼女の立ち姿。手には、包丁?……それに果物?
 説明によれば、俺の額にアボガドのスライスがあり、そこでスズメバチが休んでいる、とのこと。

「で、なぜ俺にフルーツを盛った?」もろもろの買い出しの途上、俺達は公園で休んでいた。
「熱があったから冷やそうかと……ていうか、喋らないで」急な引越しの疲れが今ごろ出たらしい。
「警察が飛んできて職質されるぞ……食い物と一緒に仕舞えよ」
 しかし、飛んできたのは警官ではなく白黒の猫。ベンチの背に乗り、こちらを伺っている。
「猫、頼む。蜂を追い払ってくれ……アボガドはくれてやる」俺の依頼に首を振る猫。そして交渉を始めた。

「……猫の奴、『私を飼えば追い払う』と条件を変えてきた」帰り道、その時の様子を妹に語る。
「猫に足元見られたんだ?しょうがないなあ……で、何て答えたの?」
「『妹が嫉妬するから無理』……それを聞くなり何処かへ行きやがった」

次「冬支度」「封筒」「カラ元気」

178:名無し物書き@推敲中?
13/11/24 17:10:16.70 .net
 森の動物たちが冬支度を始めた。
リスは木の穴にたっぷりとドングリを詰め込んでそこに潜った。冬眠するならそんなに食料はいらないはずなのだが。
「俺は冬眠はしない。冬期の深夜アニメを録画なんぞに任せて春先になってから見るなんて馬鹿げてるからな」
 リスはそう言うと、ドングリを両頬につめながら、穴の奥に隠されてあるソニーのBlu-rayディスクレコーダーの前に陣取った。

 野ウサギは人間の作った廃屋の下で冬を過ごすことにした。
 そこへヤマト運輸の配達員がやってきた。
「おや、こんな所にいたんですね。住所が変わったので探しましたよ」
 そう言うと、一通のメール便を野ウサギに差し出した。
「ああ、すまんすまん。こいつを注文したのを忘れていたよ」
 野ウサギが封筒を開封すると、中には『劇場版・魔法少女まどか☆マギカ』のBlu-rayディスクが入っていた。
「そうだ、リスの穴に尋ねて行って見せてもらおうか。奴も喜ぶだろうし」
 野ウサギは円盤をくわえて、レコーダーを所持しているリスの穴へ向かった。

「ちぇっバカどもが。野生動物が豚に成り下がってどうするよ?」
 その様子を遠くで見ていた熊が言った。
「人間界に毒されやがって。まったく森の動物たちの風上にもおけん奴らだ」
 仲間に入れない熊は持ち前のカラ元気で山々に咆哮すると、最後は寂しげにその場を去っていった。
 その熊はほどよい穴蔵の寝床を探して冬眠に入った。
 しかし、そんな熊の腕にも、実は遭難者から奪ったカシオのプロトレックが黒く輝いていた。
 こいつは動き続ける。春先に熊が起きても、あるいは起きなくても、いつまでも正確な時刻を刻み続けている人類の英智であった。

「マッサージ器」「最新型ゲーム機」「女帝」

179:「マッサージ器」「最新型ゲーム機」「女帝」
13/11/30 00:09:16.60 .net
冬の到来はすぐにきた。
秋めいたのはほんの瞬間で、もはや寒い。
「あ~寒い寒い」
身をちぢこませながら夕暮れの家路をぼやいて歩いていると、
古いゲームセンターの前に一台のトラックがとまっていた。
商店街にある小さなゲームセンターで俺のいきつけだ。
すると店の中から運送業者らしき人とそのゲームセンターの店主である
バアさんが出てきた。
運送業者の人はバアさんに挨拶をして、急ぐようにトラックで走り去って行った。
それをながめていた俺にバアさんは気づいて、ニコニコしながら近づいてきた。
「あらおかえりかい、ちょうど今ね最新型のゲーム機が入ったんだよ」
「最新型のゲーム機?」
俺は少しいぶかるように聞き返した。
とても最新型のゲーム機を入れられるほどの余裕があるようには
思えなかったからだ。
それよりマッサージ器を買ったほうが良いんじゃないかとも思った。
「そう、女帝っていうんだよ、あんた知ってるかい?どうだいやってみるかい?」
俺の女帝との出会いはこうして始まった。
これがやがて世界をかけた大いなる戦いへと続くとは、
その時の俺はみじんの予感もしていなかったのだ。

180:「マッサージ器」「最新型ゲーム機」「女帝」
13/11/30 00:13:20.83 .net
次のお題
『価値』『ブルー』『灼熱』

181:名無し物書き@推敲中?
13/11/30 00:36:08.87 .net
俺の価値はなんだろう。
灼熱の炎天下。こころなしか靴底が歩くたびに粘る気がする。
溶けてでもいるのだろうか。
ただ、歯車として社会によってすり減っていく日々。
会社に行きたくない。行きたくないい。
月曜日にはいつも脳内でわめき散らして電車に揺られている。
ブルー?そんな綺麗なもんじゃないんだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
お局 猫なで声 救急車

182:「お局」「猫なで声」「救急車」
13/11/30 21:40:46.03 .net
 寿司ロボット『お局 Mk-III』には顔がない。其れを失くしてから稲荷寿司しか握らなくなったと云う。
「―私の顔を複製し、ツボネさんに嵌め込むのですか?」
「ツボネさん本人からの頼みでは仕方ない。―早速、此処に顔を浸して呉れ給え」
 洗面器の底に沈着した砂に目を凝らすと、横たわる平目の姿が判る。立体物の表面をサンプリングする能力を持つ魚、との説明を受ける。
「嫌です、何か臭います。―あと、失くした顔の代わりと云うのも気味が悪い。抑、失くした、とは如何なる経緯でしょう?」
「聞く話じゃ、モデルの女性の仕業らしい。複製した顔の出来が良過ぎた事に腹を立てたそうだ」
「疑わしい。完成前に壊されたなら未だしも……」
「その女性は複製作業中に救急車に運び込まれ、長期入院を余儀なくされた」
「平目など顔に貼るからですよ!」
『其の頃は品種改良が不十分だったニャア』
「猫なで声で巫山戯ないで!」
「おい、今のはツボネさんの声帯模写だぞ?」
 唐突に平目が跳ね、瞬く間に顔を覆われて仕舞う。意識が混濁する中、私は、寿司を握っていた。
 ―おや?ツボネさんが普通のネタを握るなんて久々だなァ
 談笑する男達に混ざり、澄ました私の姿が見える。居た堪れない。……もう稲荷寿司しか握るものか、固くそう誓った。

============
次のお題は「工事現場」「プレゼント」「笑う技術」

183:名無し物書き@推敲中?
13/12/11 08:05:14.65 .net
「笑う技術」って何、意味わかんねえや。いちおう上げとくな。

184:名無し物書き@推敲中?
13/12/11 22:02:42.60 .net
おれも。
笑う技術って、わけわからんタイトルで作るスレの範疇だろ

185:名無し物書き@推敲中?
13/12/11 22:25:42.49 .net
でも作ってみる

186:「工事現場」「プレゼント」「笑う技術」
13/12/12 00:01:03.23 .net
赤と白の紙でくるんだプレゼントの包み。
それを食卓に置いたまま、御主人様は眠ってしまった。
3日徹夜して、初めて編んだセーターだったのに・・・

表情が堅過ぎたのだろうか?
「そんな無表情で渡されても」という困惑した表情を思い出す。
「クリスマスプレゼントだろう、もっと明るくなれないのか」
しょんぼりと肩を落とす彼女を置き去りに、イブは過ぎ去って行った。

時は過ぎ、彼女は某工事現場で、来月に向けた最終準備を行っていた。
今度こそ、次のイブには、もう一度プレゼントを渡そう。
今は薄汚れた作業着姿だが・・・その時は白いドレスに天使の微笑で!

笑う技術を実現した「人間脳シュミレーションセンタ棟」が
彼女の電子脳に接続される日は、ようやく間近だ。

残る問題は御主人様。
あれから250年。もしも無事解凍できなかったらと思うと・・・
まったくもって、笑えない話だ。

※なんとかムリヤリ書いたー
  次のお題は:「クリスマス」「猫」「ダイオード」で御願いします

187:名無し物書き@推敲中?
13/12/12 00:19:19.25 .net
そもそも、「笑う技術」だと「笑う」と「技術」で2語になるんじゃね?

188:名無し物書き@推敲中?
13/12/12 02:01:29.81 .net
「語(句)」っていうのは2語以上でもいいっていう意味だと思う

189:182
13/12/12 09:39:39.96 .net
>>186
お手数を取らせてしまいました。反省しています。

190:名無し物書き@推敲中?
13/12/12 18:37:17.27 .net
そーだよなー、
笑う技術はロボットネタに落とすしかないよな!

191:名無し物書き@推敲中?
13/12/17 02:28:09.97 .net
>>189-190
いや、こちらもアリガチというか、キリギリスマケというか
よくある展開で失礼しますた;

192:名無し物書き@推敲中?
13/12/17 07:19:37.36 .net
感想・雑談等は↓こちらでどうぞ

この三語で書け! 即興文スレ 感想文集第13巻
スレリンク(bun板)

193:クリスマス、猫、ダイオード
13/12/22 09:36:37.53 .net
凍てつく雪の夜なのに仕事とはやれやれだ。俺は湯気のたつカップ麺をすすりながら望遠鏡を覗いていた。
十五歳年下の女の相棒は、熱いシャワー室で呑気に鼻歌を唄ってやがる。前の事件でこいつの裸を見たことがある。胸の薄いまだガキだ。
冗談じゃねえ。なんで張り込み捜査に男女ペアなんだよ、ドラマじゃあるまいし。
とその時、外からドアをノックする音がした。はっとした俺は短銃を確かめて応える。
「空いてるよ」
ドアが開いた。「宅急便です」
ヤマト運輸の青年がにこりと笑って荷物を差し出した。香取慎吾に似ている。
なんでここに荷物が届くのかわからんが、俺はサインをして荷物を受け取った。
「わー、何が入ってるの? 一人だけずるーい」シャワーから出てきた相棒がすぐに荷物に興味を抱いた。
「俺は知らん。欲しけりゃやる」相棒は喜んで、荷物を開けた。
中には一匹の本物の三毛猫が丸くなって入っていた。
「死んでるのか?」
「暖かいわ」
やがて猫が息を吹き返して、にゃあとないた。
「かわいー」リンダは猫を抱きかかえた。
しかし猫を見て俺はぎょっとする。「おい、見ろよ。猫の背中だ」
猫の背中に、規則正しく並べられた光の点滅が認められた。なんだこりゃ?
「猫の皮膚の下に発光ダイオードが仕込まれているぞ」
発光ダイオードは光の文字を形成した。《メ…リ…ー…ク…リ…ス…マ…ス》
「差出人はしゃれてるつもりか。気持ちの悪い演出だぜ」
「誰のプレゼントかしら?」
俺ははっとして先程の望遠鏡を覗く。裏窓の奥から女がこっちを見ている。テレビ東京のキャスターに似た巨乳の女は笑って手を振った。
グッドバイ……だと?
「ねえ」と相棒。
「なんだ?」
「この猫、お腹の中から時計の音がするよ」
「バカ! 早くその猫を捨てろ」俺は窓を開けて、猫を空に放り投げた。
大爆発。ホワイトクリスマスに赤い花火がまき散らされた。そして雪も血も、何もかもがストップモーション。
映画のタイトル『ダイオード』が映し出される。
2013年12月全国一斉公開。前売り券お求めは当劇場にて……

次「ICレコーダー」「エージェント」「ガングリオン」

194:「ICレコーダー」「エージェント」「ガングリオン」
13/12/31 00:32:16.62 .net
ガングリオン(結節腫)だろうか?
向かいに足を組んで座った男の上の脚の、ズボンの裾から突き出した踝の辺りが、
ヤケに膨らんで夜店のヨーヨーのように見えた。
黒の靴下がゴム風船で中にパシャパシャと水を抱えていそうな感じだ。
昔のスパイ映画のようなベージュのトレンチコートに同色の中折れ帽を被っている。
日本人離れしたぱっちりとした目にくっきりとした鼻。顎のラインは四角くがっちりとしている。
誰かを思い出せそうで思い出せない。

気を取られながらも、俺はICレコーダーのスイッチを入れる。
丁度良く、「次は桜田門……」のアナウンスが流れはじめた。
車両内は閑散としていて労せずしてクリアな録音が手に入りそうだった。
ICレコーダー……桜田門、IC……警視庁。あッ"ICPO"。
「銭○のとっちゃんか」と俺はうっかり呟く。すると、向かいから、
狙い澄ましたように「ルパ~○!」と、ダミ声の物マネが返って来た。
コスプレか。

次は「手帳」「コスプレ」「雪」でお願いします。

195:「ICレコーダー」「エージェント」「ガングリオン」
14/01/02 17:43:19.34 .net
>194 訂正 すみませんorz
× 昔のスパイ映画のような
○ 昔のスパイ映画に出てくるエージェントのような

196:名無し物書き@推敲中?
14/01/02 18:58:35.56 .net
おかしいなと思ったぜ

197:「手帳」「コスプレ」「雪」
14/01/02 20:48:59.12 .net
「かけそば2人前で1200円です」「はい。ごちそうさま」
今年最後の客を見送り、、怪人手帳マンはふうと大きく息をついた。
午後23時40分。年越しの客が寺へと向かう頃合だ。だがほんの30分もすれば、
甘酒を求める帰りの客でまた賑わうだろう。
「今年も、なんも、なかったなあ」
自然とため息がでた。と、ブルンというバイクの音がして、馴染みの客が一人暖簾を潜る。
「やあまいった。雪だぜ。単車にはつれえや」「あ、本郷三」
入ってきたのは元仮面運転手、本郷三丁目猛だ。昔交えた干戈を懐かしみ、
いまでは蕎麦屋の主人とは往来のある仲だ。
「燗で頼む。なあに、帰りは押していくさ。しかし、暇そうだな」
「今だけですよ。ええと、セグウェイ? あれだと雪でもいけるんですかね」
「さあね。最近の仮面運転手はセグウェイだのロケットパックだの、変なモンばっか押し出しやがる。
ガキの夢はね、やっぱバイクだ。バイクじゃなきゃ駄目だよ」
と、ガラガラと音立てて入り口の戸が開いた。4歳くらいの子供連れの男が入ってくる。
「寒い寒い。とても並んでなんていられないよ。年越しはここで暖まって、人が減ってからいこう」
「やだい。ぼくは、年が変わるのをお寺でみるんだい」
「そういうな。大人閑居して高志を養うという。ここはひとつテレビでも見ながら……おっ、怪人さんじゃないか」
「へえ。恐縮です」
「わあ、おじさんそれコスプレ? 変なのぉ」
手帳マンは言葉に詰まった。猛がくつくつと笑っている。
「コスプレじゃないよ。改造人間だよ」
「うそだい。そんなつくりもの、テレビで見るのと全然違うや。やーい、コスプレ、コスプレ」
「コラッ、失礼じゃないか。この人は本物だ。すみません、どうも」
「お構いなく。私みたいに古い怪人は、いまいちリアリティが薄くって」
そういうものだ。それにこの父親も、怪人には気づいたが元運転手には気づかない。
と、くるりと踵を返した童子の背に、古臭いヒーローのお面が裏返っているのに二人は気づいた。
「……変わらなきゃいかんのは、俺らのほうなのかもな」猛が呟く。
「いえ、いいんですよ」手帳マンは微笑んだ。
「僕ら夢は夢のまま、大人がふと懐かしんだときに、この格好でなきゃ嘘ですもの」
そんな会話をよそに、店の片隅では親子が赤い手をさすっていた。

198:名無し物書き@推敲中?
14/01/02 20:50:29.74 .net
次は「ラムネ」「山の学校」「プール」でお願いします。

199:ラムネ、山の学校、プール
14/01/05 14:37:52.68 .net
「ほう珍しい物を買ってきたな」
「じいちゃん上げるよ。懐かしいだろ」
孫が初詣の出店で買ってきたラムネを、欽三は珍しげに手に取った。
欽三は寝たきりでほとんど外に出ることができない。
それを慰めようと、孫が買ってきた昔の飲み物だった。
「これは飲み方にコツがあるのじゃ」
孫はすぐに外に遊びに行ったが、欽三は誰にともなく独り言を言いながら瓶を傾けようとした。
その時である。
「なんじゃこりゃあ?」
瓶の中にある玉が黒い。それだけでなく、液体の中に黒い何かを放出している。
よせばいいものを欽三は瓶を傾けてそれを味見してしまった。
「う……うぅむ」
欽三は白目を剥き、失神でもするかのように見えた。
しかし逆であった。
立てないはずの欽三は、すっと立ち上がり、囈言のように呟くのだった。
「行かねばならん。思い出した。わしは、行かねばならんのだ」
家族が止めるのも聞かず、欽三は身支度もほどほどに杖を掴んで家を飛び出した。
欽三の視界には、電脳ナビの画面のような地図と矢印が映り、彼の行く先を案内していた。
それは現地点から206キロ離れた、彼の学んだ片田舎の、山の学校。
そしてその中の雑草の生えた廃プールに、若き日の欽三が犯した罪が眠っている。
事実なのか、妄想でっち上げなのかわからない。
ただ言えるのは、寝たきりの欽三が一人で歩いて旅だったという事実である。

次「防空壕」「社長」「電動歯ブラシ」

200:「防空壕」「社長」「電動歯ブラシ」
14/01/26 10:46:28.70 .net
2月14日はバタンレインが降る。
残業ですっかり遅くなった俺は諸悪の根源のバカ社長と市の共同防空壕に逃げ込んだ。
市の共同防空壕は主要道路に3㌔間隔で設置されている。
0時数秒前のことだった。
重い鉛の扉を閉めると、すぐにバタンレインデーの嫌らしい音が聞こえだす。
防災休日のしかものんびりとした地方のオフィス街で防空壕に他に人は居なかった。
バカ社長がコートの懐から電動歯ブラシを取り出し歯を磨きだした。歯周病が気になるお年頃になったらしい。
超音波が五月蠅い。バタンレインの音は脳へ直接響く音なので不快音が二重になる。
しかもバカ社長「みゅかしは にゅがつ じゅよっか は……」ぶしゅぶしゅと何か話そうとするな! まったくブサイクな女だ。
俺はもの凄く疲れたとジェスチャーをしてみせ、簡易ベットの一つに横になると、さっさと眠りに落ちた。
夢の中でバタンレインのドクダミと梅干とドリアンを混ぜ合わせたような禍々しい匂いの
黒いスライムに圧し掛かられてもがいて―目が覚めると枕元に黒いリボンの掛かった小箱が置かれていた。
防空壕の中に社長の姿はない。あのバカ、バタンレインの中に出たのか!
命に深刻なダメージは無いらしいが、今とは違うベクトルでおバカになられると会社が危ない。
小箱をポケットに突っ込み、社長を探しに外へ出ようと重い扉を開け―ああ諸悪の根源の妄執は……
俺は暗雲渦巻く空を見上げて差し出されたチョコを囓った。バタンレインは止んだ。

次は「蚤」「心臓」「告白」でお願いします。

201:「蚤」「心臓」「告白」
14/02/08 23:36:35.26 .net
猫を拾ったはいいが全く懐く素振りがないまま1ヶ月が過ぎた。
「なつ」か「な」いからナツナなんて名前にしたから余計に拍車がかかったのだろうか。
ナツナが蚤持ちなのは分かって居るんだが触らせ無いのでどうしょうも無い。
お陰で6畳1間の俺の城は蚤パラダイスになってしまった。
「お前なんか拾うんじゃ無かったよ」などと告白して見ても猫に言葉なんか通じる訳でも無く、この先どうしたものかと頭を抱える日々が続いていた。

ある日帰るとナツナが見当たらない。心配にもなったが懐かなかったと言う事はここが居場所だとは思え無かったんだなと思い
「怪我も治ったんだ。達者でやってけよ」
と届く筈も無い言葉を呟やいて買っておいたバルサンを炊いた。
部屋の外で待機しようと扉を締めると中からにゃあと声が。
心臓がきゅっとなって慌てて扉を開けるとへ?なに?と言うような顔をしたナツナ。
神出鬼没過ぎんだろ!と毒づきつつもナツナを抱えて動物病院へ駆け出すのだった。
結果炊き出して直ぐだったから影響はナシ。ついでに蚤も見て貰えて返ってラッキー。
あれ?そう言えばいつの間に抱っこさせてくれる様になったんだ。

次は「積雪」「筋肉痛」「ダンボール」でお願いします。

202:「積雪」「筋肉痛」「ダンボール」
14/02/09 09:59:57.71 .net
師走に都内に引っ越した。4年ぶりの東京だ。
部屋はかなり狭くなって、満足に荷解きする余裕もない。おまけに全室フローリングだ。
ベッドを買えば余計狭くなる。一計を案じ、空いたダンボールを畳んで
毎夜フローリングに敷くことにした。大きさが足りないから上半身と下半身でセパレート、
各3箱で6重のクッションになる。ここに敷布団を敷くと具合がいい。片付けも楽だ。
正月を越すと引越しの熱も冷め、なんだか面倒なことはやりたくもなくなる。
結果ふた月たってもダンボールベッドのままだ。が、一朝目覚めてふと首の後ろが騒いだ。
雪が、積もっている。
小生北国の育ちで朝の空気で雪が降ったか降らないかわかる。というと少々誇りすぎで、
外の物音をきくと雪が積もっているかどうかわかる。雪のない土地の人でも、
雨の降った降らないはなんとなくわかるだろう。あれである。
ダンボールベッドは床に近く、フローリングは音をよく響かせる。
内地へ来て20年になるが、けさ目が覚めた瞬間に床全体が自分の耳となって、
雪の日の物音を聞き分けたのだ。育ちは争えない。
期待してカーテンを引くと案の定の銀世界だ。積雪はささやかだが東京では珍しい。
人には見せられぬダンボールの寝床も、案外いいものじゃないかと思い直した。
少々筋肉痛が残るのが玉に瑕だが。

次「梅の季節」「納屋」「うさぎ」でお願いします。

203:名無し物書き@推敲中?
14/02/11 10:47:16.54 .net
梅の季節の納屋にうさぎがいたので捕まえて食った。
梅の季節の納屋にうさぎがいたので捕まえて食った。
梅の季節の納屋にうさぎがいたので捕まえて食った。
梅の季節の納屋にうさぎがいたので捕まえて食った。
梅の季節の納屋にうさぎがいたので捕まえて食った。
一話なのに五羽。

次「立春」「改悛」「急峻」でお願いします

204:「立春」「改悛」「急峻」
14/02/17 01:33:14.25 .net
ふと、人を殺した時の事を思い出した。
こうして唐突に浮かんで来るなんて改悛の念なのだろうか。ただ単に人生の節目だからなのだろうか。
相手は父親。どうしょうも無い奴だった。仕事もせずに昼間から知人を集めては酒を飲みながらの麻雀。
母が身をすり減らしながら稼いだお金はそこに消えて行く。私が小学校を卒業する頃に母は私を置いて出て行った。
それから父は私を売り物にした。
初めて売られた日、私に土下座して「父ちゃんはバカで稼げないんだ。お前に頼るしかない。勘弁してくれ」の様な事を涙ながらに言われた。私が支えないと、と強く思ったのを覚えている。
いつも通り学校から帰って直ぐに父が連れて来たお客の相手をしていると、隣の部屋から麻雀の音と共に
「折角あいつが置いてってくれたんだから有効に使わにゃ。バカでも股開く位はできますわ」
と笑いながら話す声。
あぁやはりこの人はバカなんだな、そう言う話は本人に聞かれたらダメでしょう?
安普請なアパートの急峻な階段。アル中の父。後ろからとん、と押すだけで済んだ。打ち所が良くて即死だった。止めまで考えて居たのは無駄になった。
その後、自首して施設に入り、そして独り立ちしてなお、心療内科の世話になりながら今日まで過ごして来た。
あれから10度目の立春を迎えた今日、私は結婚します。相手は私の過去を知った上で受け入れてくれる、私と同じように少しネジの緩んだ人です。
お父さん、お母さん。産んでくれてありがとう。少なくとも貴方達よりは幸せになります。

205:名無し物書き@推敲中?
14/02/17 01:36:41.13 .net
次は「南国」「ビーチ」「浮かれ気分」でお願いします。
寒いからお題位は暖かくw

206: ◆rOkt/ARo8M
14/02/22 14:22:28.01 .net
てすと

207:名無し物書き@推敲中?
14/02/23 17:26:31.28 .net
南国 ビーチ 浮かれ気分

確かに寒いよりはいい。
だが、日本の「南国」を売りにした観光地は一体何を考えているのだろう。
努力で越えられない壁がある。これがわからない世代が観光地産業を担っているとは思わないのにどうして浮かれてしまうのか。
南国の記号化されたイメージ。それは、輝く太陽、青い海、白い砂。肉感的な女。
こういう爽やかなビーチであって、「お泊まりはこちら」「南国マンゴー饅頭」「お食事処 漁り」だのの、地元感溢れる地域産業の入る隙間は本来ないのである。
異国情緒、せめて非日常を求めているのに、日本語で商売っ気を押し出されては、浮かれ気分は台無しだ。
だから、ひとつ提案しようじゃないか。
異界を作れ。
代替品はやめろ。
日常を離れた場所のユートピアは、もう現代には架空にしかないことは、ディズニーランドでわかってるじゃないか。
夢をつくれ。
ドイツのノイシュヴァンシュタイン城は、ファンタジーに傾倒した馬鹿王の産物だ。
それが今はロマン街道で観光名所だ。
だから。
テンプレの、ギルドがあり飯を食うのに架空の通貨を使い、猫耳メイドがいる総コスプレ、やってみて。お願い。

次は
白い皿 温かい 湿度

208:「白い皿」「温かい」「湿度」
14/02/26 18:10:57.55 .net
雲一つない青空いっぱいに、巨大な白い皿が何百枚も浮かんでいる。
皿の周りは赤い光で縁取られ、ピカピカと明滅している。
俺はこのシュールな光景にあんぐりと口を開けた。
「いったいこの国はどうなっちまうんだ……」
そんなことは誰にも分からない。
湿度が高く空気がむしむしする。
夏休み直前、学校帰りに空を見上げていたら、
こんな事態に出くわしてしまった。
20××年……! 未知の飛行物体が日本に襲来……!
俺は地球外生命体が地球にやってくるという歴史的瞬間に立ち会っていた。
でっかい白い皿の群れは所在なくフワフワと浮かんでいたが、
突然、円の下の中心に穴のようなものが出現する。
「何をするつもりだ……!」
俺の胸に興奮と恐怖が同時に去来する。
皿の真ん中に空いた丸型の黒い穴から、金色の温かい光が降り注ぎ、
それを浴びた俺の身体がフワッと浮き上がる。
俺の体は上空数十メートルまで重力を無視して浮き上がる。
ああ……俺は宇宙人に誘拐されてしまうんだ……。
そして手術をされてホルマリン漬けにされて、
宇宙の博物館におもしろおかしく展示されてしまう運命なんだ……。
悲嘆に暮れながら、眼前を埋め尽くす白い皿の中に俺は吸い込まれる。
この事件から数日後、俺とタコ型宇宙生物の奇妙な共同生活が始まるが、
それはまた別のお話――。
次のお題は「赤」「推理」「猫」でお願いします。

209:赤 推理 猫
14/02/26 21:43:34.29 .net
「赤か黒か、どちらかのカードをお選びください」
 西洋風の古びた洋館の一室に、アンティークな木製のテーブルが置かれている。紫色のローブを纏った占い師風の女と向かい合わせに座っているスーツの男は、机の上に置かれた二枚のカードを真剣な顔で見つめている。
 二人の周囲には屈強そうな大男が数名、拳銃を持って立っていた。部屋の片隅には銀髪の小さな猫が一匹いて、じっとしたまま切れ長の目を光らせている。
 スーツの男は額から滲む汗を手の甲で拭いながら、必死の形相でなにやら思考を繰り返していた。
 おそらくカードの選択次第で、この男の命運が決まるようだ。男は震える手を右側の赤いカードへと伸ばす。だが触れる寸前でその手を戻した。
 男は頭を抱え、その後顎に手をやり、落ち着かない様子で貧乏揺すりをしながらしばらく迷っていた。その姿はさながら推理小説に出て来る探偵のようだった。
「そろそろ決めて頂けますか。こちらも暇ではないので」
 待ちくたびれたように女が言うと、大男二人も追従するように威圧的な態度を見せる。焦った男はわかったと何度も頷きながら、震える手を黒いカードへ伸ばす。
 まさに手が触れる寸前で、男の耳に甲高い猫なで声が響いた。直後に銀髪の猫を見つめた男は、意を決した様子で口を開く。
「あの猫が選んだほうにする」
 そう言って立ち上がると、彼は猫に近づき抱き上げた。ふらつく足取りで席に戻り、カードの前に猫を近づける。
「さあ、選んでくれ―」

 古ぼけたアパートの一室に、しわがれたスーツの男が立っていた。その傍らで銀髪の猫ががつがつとキャットフードを食べている。
「お前のおかげで命拾いしたよ。借金も帳消しだ。ありがとうな」
 銀髪の猫は、男の声に応えるように愛らしい鳴き声をあげた。

次のお題は「旅館」「温泉」「怪獣」

210:名無し物書き@推敲中?
14/02/26 22:22:17.55 .net
温泉怪獣あらわる!
湯治客をまとめて三十年のおやっさんこと、立花は温泉から生まれた怪獣をみて呟く。
ラジウムが、そんなにも活性化しているというのか?
温泉旅館街はパニックだ。
この不景気に、大雪に消費税に、さらには怪獣なんてあり得ないわ、と。
そこで、ある男が、立ち上がった。
産湯から温泉に浸かり続けた男。
温泉効果で追従を許さない餅肌と、水泳で鍛えた体。
水鉄砲の命中率は世界一、いや宇宙一。
地元企業協賛のもと、リョカンダーに改造された甲斐充(かい・じゅう)
行け?!リョカンダー。戦え、リョカンダー!

待て、次回。しかして希望せよ。

次回題:次回 放送 未定


いけ、リョカンダー。倒せ!リョカンダー!

211:次回、放送、未定
14/02/27 13:33:34.49 .net
ひとりのテレビプロデューサーがある企画を実現させた。
過激な番組作りで局内でもカルト的な人気がある男だ。
議論に議論を重ね、ついに待望の新番組の放送が決まった。

タイトルは『男だらけの水泳大会! ポロリもあるよ!』。
肉体美に自信のある益荒男たちが水泳競技を通じて、
友情を育み、熱く闘い、互いに鎬を削るという番組内容だ。
新聞広告欄に登場するまでは、順調であった。

―が、一度衆目を集めてしまえば視聴者がそんな内容の番組を許すはずがない。
当然のごとく放送局はクレームの嵐で大騒ぎになった。
「気持ち悪い」「お下劣すぎる」「そんな番組見たくない」「株を売る」
連日のように電話越しに罵詈雑言が叫ばれ、脅迫まがいの内容の手紙がTV局に山ほど届いた。
悪い意味で話題性抜群のこの番組は急きょ放送中止になった。

番組はニュースに取り上げられ、新聞やゴシップ誌に嘲笑され、
ついにはお蔵入りになり、番組を企画したプロデューサーは降格させられた……。
新しくプロデューサーになった男は汚名返上のために新たな企画を立ち上げる。
待望の次回作、番組のタイトルは『老人だらけのゲートボール大会! ポロリもあるよ!』。

―放送は未定である―
次のお題は『迷宮』『銀の剣』『ランタン』でお願いします。

212:名無し物書き@推敲中?
14/03/07 20:39:46.46 .net
村の郊外に「大迷宮」と呼ばれる洞窟がある。
その洞窟は山脈へと続いており、村よりもその全貌は大規模らしい。
洞窟の奥底にあるという「銀の剣」は大変高価なものである。
それは村を都市に変えてしまうほどの財産なのだ。
そのため、年に1回、選ばれた村人の屈強な男を探索に行かせる「スペランカー」という行事があったりする。
だが、そこに行って帰ってきた者は誰独りいないのだ・・・。

そして、ぼくは「大迷宮」の奥底にいた。
装備は、もうぼろぼろの服にランタンとショットガン。
幸い、拳銃を使うような機会はなかった。
目の前には「銀の剣」がある。
ぼくは、それを引っこ抜こうとした。
無事、抜くことができた。
全く錆びたところがない、見事な剣だ。
「ん?」
揺れている、地面がうなるように。
「まさか・・・盗人に天罰が下るとか・・・」
剣が刺さっていた穴だ。そこから水流が・・・。
大きい肉体は吹っ飛び、ぼくはどこかに流されてしまった・・・。

意識が覚醒して、半ば瞳を開ける。
「ここは・・・」
温泉だった、とても気持ちがよい。
まるで、羊水に浸かっているような、母性を感じられた。
「ママン・・・」
大勢の男たちがそれを呟く。
ふと、ぼくは握っている剣を見た。
フツーに錆びていた。ただの剣だったのだ。
こうして、ぼくもマザコン、帰らぬ人になってしまった・・・。

長過ぎですかね?
次のお題は「ホモ」「森」「環境問題」でお願いします。

213:ホモ、森、環境問題
14/03/09 09:48:14.34 .net
「あの連中とは一緒にしないでくれたまえ。私は何も環境問題に興味があるわけではないんだよ」
白髪の老人はしわがれた声で眼鏡の女性に言った。
「じゃあなぜ島の開発に反対するんですか」
フォーマルな身のこなしから、彼女はジャーナリストのように見える。
「君にはわかるまい。わかってたまるものか」
「はあ……?」
「あの島は、男のロマンが詰まっておるのだ。だから誰にも渡せない。国にも、外国にもだ」
「どういうことですか。私にはサッパリだわ」
「すまない。これでは説明になってないね。ではこれを見たまえ。その方が話が早い」
室内の一面に大きなスクリーンが広がる。老人は机上のボタンを押した。
「ぽちっとな」
冷静だった女の表情が、さすがに変わった。
「ああっ、なんですかあれは?」
女の口が、リアルなダッチワイフのように開かれたままになった。
スクリーンには、問題の島が移っている。青い海と緑に覆われた美しい孤島だ。その中央部の森が、老人のボタン操作によって真っ二つに割れはじめたのだ。
「ふふふ、これを作るのに二十年かかったよ。二十年と言えば赤子が成人になるまでの年月だ。今君が見ているあれはね、私の夢の子供、ドリームチャイルドなんだよ!」
老人はまるで少年のように興奮していた。
映画のワンシーンのように割れた森から、漆黒の機竜の勇姿がせり上がってきた。
「巨大ロボット? しかもゴジラ型だなんて!」
「女の君でも興奮するんだね。うれしいよ、私の趣味をわかってもらえて」
「いえ、呆れました。島にあんた私物を建造するなんてばかげてる。世界指折りの資産家のやることが特撮ごっこだなんて。私、帰ります。どうやら時間の無駄だったようだわ」
女は、取るものも取らずに早々とその場を立ち去った。
あとには老人の出したホモ牛乳が一口も飲まれずに残されている。その液面は、女の荒々しい動作のために微かに揺れていた。
「残念だ。ショーはこれから始まるというのに」
一人残された老人は別のボタンを押す。スクリーンの映像は、詳細な情報を表示した平和な日本地図へと切り替えられていた。

次「タブレット」「燭台」「戦闘機」

214:タブレット 燭台 戦闘機
14/03/14 23:58:37.48 .net
そう遠くない場所から戦闘機の爆撃音が聞こえる。
日が暮れそうだからと灯したこの蝋燭も、もうすぐ消さねばなるまい。
いや、家から明かりが漏れていようといまいと、彼らはその弾の威力で、
ここいら一面をすべて瓦礫の世界へと変えてしまう気だろう。
蝋燭の明かりに照らされた燭台は、先祖代々受け継がれてきたものだ。
それももうすぐ、打ち砕かれるのだろう。
私達がなぜこれほどまでに彼らに憎まれるのか、私にはわからない。
もちろん、国には地下資源があり、立地的にも貿易に有利な場所なのだが…。
我々はその恩恵に心から感謝し、他国に敵愾心を持つことなど、一度もなかった。
今私の目の前に、発展から少し取り残されたこの国には珍しい、今風のタブレットがある。
どういう仕組みなのかはわからないが、指で画面をチョコンと押すだけで、あの仕掛けが発動する仕組みになっているらしい。
彼らに一矢報いるために、今は亡き同士が考えてくれた方法。
十分に引き付けてからでなければ、意味がない。
と。近くでダダダと、一斉掃射の音がした。
いまだ!
私の指が画面に触れたのに数秒遅れて、ひゅるひゅると不気味にタマの上がる音がした。
そして閃光と体を震わせる強烈な音。
窓から、この世のものとは思えない光の芸術が降ってくる。
一瞬掃射の音が止んだ。が、それもわずかな間だった。
弾の直撃で、蝋燭が、燭台が、跳ね飛ぶ。
しかし…私の心は満たされている。
心にあるのは恐怖ではない。
今見た光の美しさへの純粋な感動、それだけだ。


次のお題「桜」「コンクリート」「わら草履」

215:桜、コンクリート、わら草履
14/03/16 10:24:27.61 .net
男はわら草履を履いていた。この感触がいい。足裏が刺激されて、いい話が思い浮かぶ。
男は作家だった。
「もう四月か」
すでに第二の古里となっているこの地を踏みしめて、男は呟く。視界には一本の桜の巨木が見える。
「あなた、作家の信藤基さんですよね」
桜の木に見とれていると、いつの間にか隣に女が来ていた。
見るからに都会の女だ。とても観光に来ているようには見えない服装には、静かな緊張が張り詰めていた。
「あなたは? なんとお呼びすればいいのかな」
「刑事さんで結構です」女は黒い身分証明書を示して言った。
「ほほう、これは」
「ずいぶん探しました。まさか事件の容疑者にミステリー作家が浮かぶとは思わなかったわ」
「ようやくたどり着いた……というわけですね。しかし私は何も話しませんよ。法律ならあなたより詳しいつもりだ」
「あいにく、私は大藪春彦しか読まないんですよ。手っ取り早く事を進めませんか」刑事の懐から取り出されたのは、短銃だった。
「これは、本物ですか」作家は物珍しげに自分に向けられた銃口を見た。
「死体のある場所に案内しなさい」
作家はスコップで桜の木の下を掘り始めた。
「刑事のお嬢さん、あなたが想像しているものなんてありはしませんよ。青いビニールに包まれた大きな長い塊、白骨化して蚯蚓が絡まった死体、そんな類いの物はないんです」
「作業中の長台詞はリアルじゃないわ。黙って働くのよ」
やがてスコップが、ひどくわざとらしく何かに当たって音がした。
「何よそれ? コンクリート詰めにしたの。壊すのに一苦労しそうね。爆薬でも持ってこればよかったかしら」
「その必要はありません」男は言うと、何かを短く詠唱した。
それを合図として大きなコンクリートの塊が揺れ、二つに割れた。
「ああっ!?」
粉塵の奥から二つの目が光る。
「女刑事さん、はたして大藪春彦だけでこいつに立ち向かえますかな。私はこれを封印するつもりだったんですがね。あんたは運が悪い」
男の言葉は遠くに聞こえた。
「それからもう一つ、私はもうミステリーなど書いておらんのです」
モーターの駆動音と冷却ファンの音が近づく。しなやかな影からそれが女性型だというのはわかった。

次「領空侵犯」「蘭虫」「パチスロ」

216:名無し物書き@推敲中?
14/03/16 10:49:54.50 .net
「バリア、バリアー」
「空中はセーフ?」
「領空侵犯だからダメー」

近所の子どもだろう声が外でしている。
領空侵犯、などと言う言葉が遊びで出てくる時代だ。
玄関でボロいサンダルを踏みつけながら蹴りいれるようにはく。
その物音でか、妻と、世間ではいうらしい同居女の金切り声も飛んできた。
「どこへいくの?仕事探してんのか?てめえはよ!」
はは、随分汚い女になったじゃないか。
「パチスロ」
一言、聞こえるかわからないが優しく答えてやる。
恐らく聞こえないだろう。
しかし、聞きたいなら近くにきて話すはずだ。
聞きたくないなら、聞かなくてすむようにしてやるから。
ガチャッと扉をあけて外を出た端から、玄関の鍵がかかる。
ホウシャノウという言葉は、領空侵犯もなにもなく
この町を侵して久しいのだろう。
なにもかも不確定だ。
答えを出せないのか、出したくないのか。
ひとつ、確定なのは俺たち夫婦間には、死んだ子どもがいた、ということだ。
それは、蘭虫のような頭部をもっていた。

217:名無し物書き@推敲中?
14/03/16 10:55:03.49 .net
次は、
姉様人形、いかものぐい、夕煙で

218:名無し物書き@推敲中?
14/03/17 10:53:31.72 .net
少女は砂浜でピラミッド型の何かを作って遊んでいた。
動物の毛皮を袈裟懸けにしているため、片方から未熟な乳房を覗かせている。
ずっと独りで遊んでいるようだ。
同年代の子供がいないのだろうか。
その時、波が砂浜に押し寄せ、少女の作品は消え去った。
「あーあ」と少女は溜め息をついた。
しばらくして、遠くから夕煙が立ち上った。
「あ、もう行かないと」
チャンスだ、見張っていた甲斐があった。
僕は友人と共に少女に近づき、喋りかけた。
「ねえ、これ知ってる?」
見せたのは姉様人形。
「なにそれ?キレイな人・・・」
完璧に変装をしているためか、少女に警戒心はなかった。
「僕の作品なんだ、もっと見せたあげるよ」
少女は森までのこのこと付いてきた。
僕は本性を晒し、少女を性欲のままに蹂躙した。
「お前も如何物食いだなあ」
友人が呆れたように言う。
「この女の子も他人とは異なる素晴らしい美的感覚だよ」
縄文時代でも僕の作品が認められるなんて、とても光栄だ。

219:名無し物書き@推敲中?
14/03/17 10:55:32.11 .net
次は「SMクラブ」「妖怪」「殺人事件」でお願いします

220:名無し物書き@推敲中?
14/03/18 22:21:06.41 .net
「SMクラブ」「妖怪」「殺人事件」

その村さついにカソッチンが現れただよ。
過疎地に出現するっちゅう、あの妖怪カソッチンさ。
天真爛漫なカソッチンは幼子のように振る舞って年寄りをみんな元気にしちまう。
みなカソッチン囲んで手を叩いて大声で笑ってさ、もう家にじっとなんかしてられない。
ただただ愉快でどんどんどんどん元気になって、そのうち村の再興なんか企てたりし始めてな。
外から人を呼び込むのにSMクラブなんかこさえたらどうだべ、って村長さんが言ったもんさ。
誰一人その道に精通する者はなかったけど、「やる気になればなんでもできる」に異論を唱える者もなし。
世界中からその手の人間が押し寄せたって、迎え入れるどころか迎え撃つ気概すら持っていた。
決して殺人事件なんて起こらなかった長閑な村だったけども、様相は変わってくるだろうなぁ。
なんたって目をギラギラさせてSMクラブ運営に取り組む老人が待ちかまえている村だよ。
平穏でいられるわけがない。愛憎だってこんがらがってさ、命を落とす者もあるだろうよ。
それもこれも踏まえてなんだろうなぁ、村長さんがミカン箱に乗っかって声張り上げたもんさ。
「餃子の町だの、ゲゲゲの町どころじゃねぇ。わしらの村はSMの村だで! 横文字だで!」
もう起死回生。みんな灰になるどころかハイになっちゃってハイタッチなんかしたりしてな。
で、カソッチンが姿を消していることに、だぁれも気づかないんだなぁ、これが……。


「365日」「ポイント」「小型犬」でお願いします。

221:名無し物書き@推敲中?
14/03/21 19:22:16.32 .net
子犬を1匹、36500円で買った。かわいらしい小型犬だ。
その帰り道、スーパーマーケットで「100円で1ポイント」の張り紙を見た。
私は毎日このスーパーマーケットで最低100円は買い物をしている。
私は手もとのキャリアの中の子犬を覗き込んだ。
それから財布の中のポイントカードを見た。ちょうど365ポイント貯まっていた。
私はポイントカードを子犬の目の前で破り捨てた。子犬は首をかしげただけだった。
私は言った。
「君は運が良かったね」


次は「充電器」「蟹」「テレビ番組」でお願いします。

222:名無し物書き@推敲中?
14/03/23 10:20:21.64 .net
「充電器」「蟹」「テレビ番組」

俺はひとりで蟹を食べている。
通販で取り寄せた産地直送の美味いタラバだ。
妻は充電器ポットで眠っている。
俺の妻は電気人間なので当然蟹など食べない。
だから俺は好物の蟹をいつも決まって妻の寝ている間に食べる。
好きなテレビ番組も録画して妻が寝ている間に見る。
掃除も洗濯も、たいてい妻が寝ている間に俺がする。
なぜなら妻は23時間充電で1時間しか稼働しないからだ。
そして俺たちは毎日濃密な1時間を過ごす。
毎日1時間しか会えない俺たちは、さしずめサイクルの短い織姫と彦星だ。
30分後に目覚める妻を思うとドキドキが止まらない。
蟹の残骸を片づけ、風呂に入って身を清め、そして24本の剣をテーブルに並べるんだ。
妻の喜ぶ顔を早く見たい。
彼女はどんなふうに目を輝かせ、どんな声を上げるんだろう。
俺たちは今日、黒ひげ危機一髪で大いに盛り上がるのだ。ワォ!


「スズメバチ」「お好み焼き」「軍隊」でお願いします。

223:「スズメバチ」「お好み焼き」「軍隊」
14/03/24 17:44:50.83 .net
ザッ ザッ ザッ ザッ
まだ微かに人の気配がする廃墟に響き渡る軍靴の音
壊れたスピーカーから流れるるは今はもう忘れ去られた軍歌

一つの国があった
一つの国が滅びた

灼熱の業火の前に
千万からなる軍隊は8日ともたず
破れ、敗れ、倒れ伏した者たちは皆
今もまだ戦渦に囚われ此方を彷徨う
人の在り方を忘れても
誇りと想いは忘れずに

軍靴は通り過ぎ去った廃墟に
一件のお好み焼き屋があった
店の主人は軒先の鉢に水をやる

水やりを終えると空を眺めて呟いた
「八日八夜の涼め鉢、業火に灼かれた命を静め…か」

どこで響く軍靴の音はやがて
ガチッ ガチッ ブーン ブーン と音を変え
曇り空には蜂が舞う

次に次にと空に消ゆ
一千万のスズメバチ

224:名無し物書き@推敲中?
14/03/24 17:47:06.33 .net
次は「カード」「燐光」「副次効果」でお願い

225:名無し物書き@推敲中?
14/03/25 18:42:19.31 .net
「カード」「燐光」「副次効果」

腕にしがみつき震える女に向かって、男が愉快そうに言った。
「どうしたんだい、君が来たいって言ったんじゃないか。
 それにしても、よくできたお化け屋敷だなぁ、ここ。
 あ、あの揺らめく人魂の正体は燐光、夜光る文字盤に使われる物質だよ。
 あの切り離された首を抱えている人だって、蓋を開ければなんてことないからくりさ。
 この世に科学で証明できないことは何もないんだからね。
 ただね、この手の脅かしって、人を謙虚にさせる一面もあると思うんだ。
 死んだご先祖様からのメッセージって、むしろみんな触れたがるだろ。
 怖いもの見たさの楽しみのほかに、驕った己を顧みるって副次効果もあると思うんだ。
 僕はお化け屋敷の面白さはよくわからないけど、怖がりたがりの君をかわいらしいと思うよ。
 今日は本当に誘ってくれてありがとうね、まさか君が僕なんかを―」
と、その時、墓石から飛び出した無数の手が男を墓の中に引きずり込んだ。
女は無表情のままポケットからカードを取り出し、いつの間にか隣に立っていた首なし男に手渡した。
首なし男はポンとハンコを押すと愛想の良い声で、
「ずいぶん貯まったねぇ。あと3人獲物を連れてきたら、死んだ恋人に会わせてあげるからね」


「地図」「ハッピー」「バイオリン」でお願いします。

226:「カード」「燐光」「副次効果」
14/03/25 19:16:03.47 .net
被ってしまったけどせっかく書いたので投稿。

満月の夜、村はずれの墓地に三人の子供たちが集っている。
眼前には彼らの膝ほどの高さしかない小さな小さな墓標があり、これを正面に手と手をつなぎあい声をそろえる。
「大魔王サタンの名の下、永遠の庇護を」
文句を終えると、足もとの土が動き、「わっ」とゼルが退いた。地表突き破ってきたそれは青い光をまとっている。
「平気さ、ただの燐光だよ。蘇生式の副次効果にすぎない」とシキセが解説する。
出てきたのは一匹の子犬。だがその首は垂れて伸び下がり、右目は飛び出で、左足は奇妙な方向に折れている。
「さすが君のおじいさま、大魔道士との呼び名高いルディスのカードだ。僕らのような力の弱い者でもあつかえた」
シキセは実に感心した様子で、墓上に置いてある死者蘇生の魔法カードを手に取り、ツゥに返す。
「カードもどす時ヘマして見つかるなよ……。ていうかツゥ、早く防腐剤かけてやれよ」ゼルが急かす。
「ふふ、おそろいね」生気のない片目で見上げてくる子犬の土を払い、ツゥは持参してきた薬剤をふってやる。
子犬は「ボフッ」と、空気の洩れたような鳴き声を発し、それでもうれしそうに尻尾を動かした。
「愛情だよ! 互いの愛情の強さがこの魔法のキーなんだ。それが証明できて僕はとても満足だ」片腕しかない手を
大げさに揮い、シキセは演説するように言う。ゼルは「フン」と鼻を鳴らし、縫い目の生々しい首筋をさすった。
子犬と同じく右目だけのツゥは、土気色の顔でやさしく微笑み、子犬を愛おしげになでる。
生気のない六つの目が、夜の墓地に鈍く光っていた。

「地図」「ハッピー」「バイオリン」でお願いします。

227:「地図」「ハッピー」「バイオリン」
14/03/25 19:25:31.52 .net
その地図には幸せが詰まっているという。

生まれてこのかた幸せなどと言う言葉とは無縁に生きた私だ。
ハッピーエンドな映画が大嫌いで良く見に行く私だ。
そんなものの存在を聞けば「ありえない」と口では言うものの、
心の底では欲しくてたまらないに決まっている。

だからだ、だから。
涙ぐましい努力の末に、
一括現金前払いで手に入れたそれがこんなものでは堪ったものではない。

なんだこれは?
違う、分かっている。
演奏の経験こそ無いものの、一時は良くその音色を耳にしていたのだ。

これはバイオリンだ―地図ではない。

結局のところ私はまた騙された、そういうことなのだ。
世の中ホントに見事なものだよ。

―だが、まあ。

口実くらいにはなるだろう。
「高い金払ったんだからそれくらいには使われてくれよ?」
そう語りかけ私は『地図』をポンと叩いた。

力の抜けた私は、久しぶりに。
ほんの少しだけ、笑えた気がした―。


次は「小旅行」「賞用」「金満」でお願い。

228:名無し物書き@推敲中?
14/03/25 22:05:18.24 .net
「小旅行」「賞用」「金満」

姪っ子を一日預かることになった。小学3年の女児である。
もう食い物を食い散らかす年でもなかろうと、賞用のヴィンテージカーに乗せてやった。
小旅行に繰り出そうぜぃ、とハイタッチを求めると、「しょーりょこーってなに?」と気のない返事。
近場へのお出かけだよ、と答えると、「じゃ最初からそう言って」とこうだ。
頭をひっぱたいてやりたい衝動をぐっと堪え、
おじちゃん今にわか金満だから肉でも寿司でも何でもご馳走すんぞー、とひきつる笑顔でそう言うと、
「きんまん? なにそれ? なにきんまんって? どういう字?」と興奮気味に訊ねる。
金曜日の金と満月の満だよと教えた途端「ぎゃーーーおじちゃんやらしい! ママに言いつけちゃお!」
俺はたまらず車を止めた。
俺に非はない。俺に非はないのだが……。
だが俺はこの世の中でこの姪の母、つまり自分の姉ちゃんが一番怖い。
非はない。非はないのだけれども……、姉を恐れるあまり姪に謝ってしまった。
どうか秘密にしておいて下さいと頭を下げ、お札による口止め料まで支払ってしまった。
姪は別れ際「またしょーりょこー行こうねー」と満面の笑顔で手を振ったが、
俺はもう成人するまで会ってやんないつもりでいる。


「ヨガ」「欠席」「爆笑」でお願いします。

229:「ヨガ」「欠席」「爆笑」
14/03/27 09:54:34.49 .net
 一週間前、風邪で学校を休んだ日。母はパートの後すぐ帰ってくると言ったのだけど、平気だからと答え、毎月
のヨガ教室にもいくよううながした。月謝がもったいない、というのは口実で、ようは厄介ばらいをしたわけ。
 夜までの自由を手にした私は、リビングで毛布をひっかぶり、バラエティなど見ては爆笑して過ごしたんだけど、
昼くらいに玄関のチャイムが鳴った。面倒なのでテレビの音量を下げシカトしていると、しばらくしてガチャっ
とドアの開いたような音がした。「え?」と思い、おそるおそる廊下を覗いたがだれもいない。みても玄関の鍵は
かかっている。気のせいかと思うことにしたんだけど、それからは人の気配があるように思えてしょうがない。
 向こうをふいに人影が横切る、後ろの床がきしむ、触れていないドアが少し開いている……そんな気がする。
もうなんだか落ち着かなくって、こわくなって、結局家族が帰ってくるまで自室で布団をかぶってじっとしていた。
 次の日登校すると、私は忘れ物をしたことになっていた。図画に使う道具セットだけど、そんなの聞いてないし
メールももらってないというと、私の後ろの席のMさんが昨日プリントを届けるついでに連絡したはずといわれる。
で、そのMさんは私と入れ替わるように欠席。というかその日からMさんは行方不明になった。私はMさんと特に
仲がよかったわけじゃないけど、席は近かったし、それに時々腕とかにアザがあったりしたから、心配になって
声をかけたり話したりしていた。彼女は帰宅部で友達もいないような子で、おとなしく目立たない存在だった。
 プリントは後でなぜか通学鞄から見つかった。そして家ではいまだに人の気配がする。時々父がうろうろと確認
しにいくけど、結局無言で戻る。無駄だと私はなんとなく思う。彼女ほんとに目立たない子だったから。

次は「病院」「コーヒー」「オーケストラ」でお願いします。

230:名無し物書き@推敲中?
14/03/28 18:50:32.80 .net
「病院」「コーヒー」「オーケストラ」

悪夢を見た。
一生に一度見るか見ないかの、ひどい悪夢だった。
俺は大ホールで「森のくまさん」を独唱させられることになっているのだ。
振り返れば整然とオーケストラが居並び、しかつめらしい顔の指揮者がタクトを振るっている。
観客席に視線を戻すと、着飾った紳士淑女で埋め尽くされているではないか。
指揮者がぬっと俺に近づき、こそっと耳打ちしてきた。
「微笑んで。由紀さおりとその姉のように、微笑みをたたえて」
俺は呼吸困難に陥り、ある日森の中でクマさんがいったいどうしたのか、歌詞がすっとんでしまった。
前奏の終わりとともに自分の悲鳴で目覚めた俺は、病院のベッドに寝かされていた。
付き添っていてくれたのか、コーヒーをすすっていた友が、覚醒した俺の顔を嬉しそうに覗き見る。
そして、酔って噴水に飛び込み溺れて死にかけたのだ、と事の顛末を教えてくれた。
俺は友の口髭にうっすら乗ったカプチーノの泡を眺めながら、
「ああ、夢で良かったよ」と思わず呟いた。
友は顔を曇らせ、指を提示し何本に見えるか、などとあたふたしていたが、
俺はこの至って平和な現実に心底胸を撫でおろし、本当に夢で良かったよ、ともう一度呟いた。


「科学捜査」「羽毛」「コショウ」でお願いします。

231:名無し物書き@推敲中?
14/03/31 19:38:05.29 .net
「科学捜査」「羽毛」「コショウ」

祖父母宅は友樹の家より大分離れているので、めったに来れない。一緒に夕食を食べるのも今日が初めてだ。
「鶏肉かぁ、めずらしいなお袋」とからあげを見て父がいうので、「そうなの?」と友樹が聞く。
「友樹がからあげ大好きじゃいうからな、特別じゃ。普段うちじゃ食わん」
首を傾げる友樹に祖母が続ける。「ウン……まあ、ある学校の話でな、娘さんが飼育当番やっとったんじゃ。
んで、ある朝、同じ学年の男子らが血相変えてきて、おまえの世話しとった鶏がおらん、逃げてしもうた、
いうてな、急いで見にいくと、たしかに小屋におらん。戸の金網に穴が開いとって、こりゃ猫じゃ、猫に
やられたんじゃ、と騒ぎよる。娘さん、そうかぁ、いうて懐からルーペだして科学捜査じゃ。小屋んなか
みて、羽毛つまんでな、たしかに猫の仕業じゃ、でも気の毒な猫じゃなあ、この羽毛の色からして、あの鶏
は病にかかっとる、たちの悪い伝染病じゃ、あんなもん食うたら、はよう水んなか入って体冷さんと、一日
もたず死んでまうで―いうてなぁ」
「……それで、猫死んじゃったの?」
「いんや。猫は無事じゃ。そげな病ウソじゃからな。そンかわり猫の仕業じゃいうてきた不良どもが、その
あと貯水池にとびこんでちょっとした騒ぎになったくらいじゃ。前の晩に鶏あぶって食うとったらしい。
で、その悪ガキどもの主犯格は、以来鶏肉が苦手になったっちゅうてな……―のう、爺さん」
そう祖母が声をかけると、祖父はくしゃみを一つし、「コショウ効きすぎじゃ……」ボソッとつぶやいた。

「旅行」「鬼」「太陽」でお願いします。

232:名無し物書き@推敲中?
14/03/31 22:03:39.46 .net
「旅行」「鬼」「太陽」

子供の頃、我が家では「サバイバル鬼ごっこ」という遊びがあったんです。
父と母が鬼になり、私と弟が捕まらないよう逃げるわけですが、
本格的というかなんというか、食料をリュックに詰めさせたりするんですね。
0700時、と1200時と、1800時にそれぞれ1時間ずつ食事の時間に当てられて、
その時間だけは、音を立てても、明かりをつけても、火を使っても大丈夫。
何故か太陽に当たったら焼け死ぬ、というドラキュラ設定だったため、昼間外に出られない。
一年に一度のペースで行われるこの鬼ごっこ、なんと3、4日続いたりする。
私と弟はこのスリリングな鬼ごっこが大好きだったんです。
お彼岸に実家に帰ったおりに、その話になりまして。
私と弟が思い出話に花を咲かせている横で、母は一切覚えてないと言う。
ボケるにはまだ早いだろうと、ああだったでしょうこうだったでしょうとヒントを与えておりますと、
突然母がポンと膝を叩きまして、そして口にしたのが「ああ、旅行行ってたわ」と。
「あんたたちおりこうさんだったから、お父さんと二人でお出かけしてたわ」と。
私と弟は絶句いたしましたが、悪びれもしない母と、やはり朗らかな笑顔の遺影の父を見ましたら、
とても怒る気にはなれませんでした。


「エイプリルフール」「財布」「メモ帳」でお願いします。

233:エイプリルフール 財布 メモ帳
14/04/01 00:14:17.08 .net
さっき携帯を寝る前に充電しようかと
入れっぱなしだった鞄を覗いたらですよ、
「探さないで下さい 財布」とメモを残して
財布が家出をしたようなのです。

え、嘘でしょうと、再度確認してもやはり
メモが残り、財布はないのです。
あ、メモに使ったメモ帳は見つかりました。
そうか、エイプリルフールか、もう0時を過ぎたのだ
と思い当たりまして、家人に
「きみのところにいるのだろう」
と聞いたのですが、知らないというのです。
一体どうしたことでしょう?
もし、見かけましたら金が財布から逃げたのは
お前のせいではない、といってやって下さい。
また金が逃げてもそれは消費税が悪いのだといってやって下さい。


次のお題

桜 歯科医院 定期

234:「桜」「歯科医院」「定期」
14/04/01 03:31:04.29 .net
「はい。これで治療は全ておしまいですよ」

 私はその声を聞いて、閉じていた目を開ける。舌で探ってみると、少し前まで穴の空いていた奥歯は、すっかりと平らになっていた。
 私は舌を戻し、変な味のする口を濯ぐ。すると待っていましたとばかりに、いつものお小言がはじまった。

 『詰め物が取れてしまうので、一時間は物を食べないようにしてください。』はい。
 『これからは奥歯も丁寧に磨くように気を付けて。』はい。
 『くれぐれも甘い物も食べ過ぎては駄目ですよ。』はい。
 『ちゃんと定期検診も忘れずに。』はい。

 あと、と先生が切った。椅子から降り、最後にもう一度口を濯いでいた私が、はい?と疑問符を付けてそちらを見ると、手袋を外した先生の掌が、私の頭を軽く叩いた。

「明日から高校生なんだってね。卒業おめでとう。もうここには来ないで済むといいですね」

 先生はそう言って、にこりと笑った。私ははじめての笑顔だと思いつつも、その言葉にもはいと頷いて、ついでに今までのお礼を言ってから頭を下げた。
 受付で会計を済ませて医院を出ると、庭に植えられたら梅の花が散りかけていた。そうなると、今頃桜は満開なことだろう。
 辛かった週一の苦行も終わり、明日からはこの島を出て高校生だ。多分もう地元に帰らない私は、二度と口うるさい先生にお小言を言われずとも済むのである。なんと素晴らしきかな。

 さあ日も落ちるし、そろそろ家に帰ろうとした時、ふと、卒業おめでとう、と言った先生の笑顔が頭を過ぎった。だけど私は、あんまりおめでたくないかなあ、と、ぼんやりと呟いた。


次のお題
「マグカップ」「青春」「かなしい」

235:「マグカップ」「青春」「かなしい」
14/04/01 22:28:31.89 .net
珍しく彼女の部屋に呼ばれた。
「料理作った。食べて!食べて!」
大学生になるというのに、どこか子供じみた言葉遣いをする彼女。
そして、思考もそれに負けないくらいどこか幼さを残している。
まぁ、そういうとこが俺には可愛くうつるんだけどね。
「で、何を食べさせてくれんの?」
皿を見ると、三色の丸まったクレープ状のモノがのっかっている。
赤いのはたぶん紅しょうが。緑のはほうれん草でも練りこんだのかな。
黄色は素直に卵焼きだ。
彼女にしては、一応外見が料理になっている。問題は中身だが…。
「こ、これ、何て料理?」
間髪入れずに
「赤春巻き・青春巻き・黄春巻き!」
俺たちは同じ演劇部で、昨日ベタな早口言葉の発声練習をしたところだった。
あの時彼女は最後をつっかえて、顔を真っ赤にして自分に憤っていたが、
今回の発声は見事だった。ま、『黄春巻き』って、言いにくくないけどね。
けど、これ“春巻き”かなぁ…。
箸でつまんで中身をのぞきこんでいると、彼女がマグカップを差し出してきた。
「タレ!」
…底が深すぎて、つけにくいよ。それでも頑張って押し込んでつけた。
食べてみて…まぁ、人間の食べる味ではないかもとは経験上わかってたんだが。
目のふちに涙をためた俺を見て、
「かなしい…?」
彼女がのぞき込んでくる。
彼女の顔をまじまじと見つめ、彼女との前途多難な将来を思い、それでも胸に湧いた感情は。
「うれし涙だよ。良い彼女をもって幸せだなって」
そのあと彼女が顔をくしゃくしゃにして泣いたのは、かなしかったからではないはず。


「春風」「豆腐」「地下鉄」

236:名無し物書き@推敲中?
14/04/04 19:48:56.29 .net
「春風」「豆腐」「地下鉄」

年のせいだろうか、最近ますますキレやすくなった。
今日も電車内で隣に座った男が瓶詰の柿の種を抱えて食べ始めたことにキレてしまった。
すぐさま他の乗客に羽交い絞めにされ、ことなきを得たが、キレると私は我を忘れてしまう。
地下鉄を降り、地上に上がった途端、春風が頬を撫でていった。
見上げると桜の花びらがハラハラ舞っている。
私は思わず立ち止った。
そう怒りなさんな、と、自然にさとされた気がした。
イライラしたってなんの得にもならないし、体にだって良くないのだよ、と。
金輪際怒るのは止めよう。禁酒禁煙のように真剣に禁怒だ。私はそう決心した。
とその時、背中をどんと押され、「邪魔だババア」と男が私を追いこしていった。
私はその若造を追いかけ、襟首をつかむと、ビルの隙間に引きずりこんだ。
ほぼ半殺しにしてしまってから、
「お前なんぞ豆腐の角に頭ぶつけてしんじまえ! ゴートゥーヘル!」
言い捨て、すぐさま後悔した。舌の根も乾かぬうちになんてざまだ。
だが自分を変えるのはなかなか難しい。だってかれこれ80年もこうして生きてきたのだから……。


「手相」「ヌンチャク」「バラ色」でお願いします。

237:名無し物書き@推敲中?
14/04/06 00:18:10.32 .net
「手相」「ヌンチャク」「バラ色」

「お、ますかけ線だね。」
友人は私の手を握り、ジロジロと見つめながら言った。
私はいままで数々の占いの練習相手にされた。
タロットから始まり、風水、星座占い、そして今度は
手相にまでどっぷり浸かってしまったらしい。
「それ、どうなの?」
「別名、天下取りの相!人生バラ色だよ!」
どうやら彼によると天職にめぐり合えば成功するらしい。
PCに向かう私にはもっとアグレッシブな道があるのだろうか。
中途半端に自分について見透かされたようで気が沈んだ。
「みずがめ座の皆さん。残念ワースト1位です。
 ラッキーアイテムはヌンチャクです」
電子に日々追われる人生なら、
ヌンチャクというバラ色の天下を追うのも悪くない。
「あ、んじゃ次は四柱推命で、、、」
彼もまた、ますかけ線の持ち主らしい。

「木枯らし」「神社」「ドイツ」

238:名無し物書き@推敲中?
14/04/06 10:39:13.41 .net
「木枯らし」「神社」「ドイツ」

あれは木枯らしの吹く頃……
飲み会でしたたか飲んで、機嫌よく千鳥足での帰宅途中、
自宅近くの神社から「カーン、カーン」と乾いた音が響いてきたのです。
やだ、丑の刻参り? などと身震いしながら、でも怖いもの見たさで境内に入ると、
図体のでかい白人が、拍子木を鳴らしながら独り言を言っています。
耳を澄ませて聞いてみると、
「エー ドイツカラ キマシター エミールサンデース ッテ ドコノ ドイツジャー」
媚びる笑いを振りまく様から、どうやらお笑いの練習をしているらしい。
私が姿を現し、おっかなびっくり話しかけてみると、彼は大道芸人だと名乗り、
ドイツに帰る旅費を稼ぐため、今シャベリに磨きを掛けているとこなのさ、
……みたいなことを、ジェスチャーを交えて言いました。
なんでこんな場所で、と尋ねると、怒られないし追い出されないから、とそんなようなことを。
神様が怒って鎌持った死神を遣わすから、と酔いにまかせて私が全身全霊で脅しますと、
「ゴミを捨てないで下さい」という立て看板に、彼は延々命乞いをしておりました。
そんなエミールですが、今では優しい2児のパパ、私のよき伴侶であります。


「目覚まし」「日記」「カシューナッツ」でお願いします。

239:「目覚まし」「日記」「カシューナッツ」
14/04/06 11:41:21.98 .net
「目覚まし」「日記」「カシューナッツ」

引っ越し先の部屋を片付けていた時、空色の本が出てきた。
前の住民の物だろうか、長年お供したであろうクシャクシャの表紙には
日記と図々しく書かれている。どこかで見たような主張の激しい字だ。
そういえば何処か懐かしい香りがする。ノスタルジックな間取りだ。 
前の住民には悪いが、他人の記憶の最後の一頁をめくった。
『4月21日(日) あいつがいきなり家にきた。カシューナッツしかねぇよ。
          なのに大好物だって。ごめんな、裕夏。明日は一緒に
          うまいもん食いに行こうな。』
それ以降の頁がない、しかし私はこの続きを知っている。
次の日もここへ来たっけか。ずいぶん張り切ってたみたいだったね。
やっと目覚めた私の歯車は、残酷にも前に動き出した。
全部思い出した。なぜここに越してきたのか、なぜ懐かしく感じるのか、
鉛色の空の下、彼の血生臭い紅い華がフラッシュバックする。
空色に似つかわしい、どこか遠くの誰かの記憶。
おなか一杯にカシューナッツが食べたい。

「楽譜」「魔術」「リセット」でお願いします。

240:名無し物書き@推敲中?
14/04/11 04:34:20.94 .net
「楽譜」「魔術」「リセット」

こんなの将来なんの役に立つんだろ、って思いながら授業受けてる。
楽譜のオタマジャクシをモンスターに変えて、床に放って埃を吸わせる、って魔法なんだけど。
これって、掃除機にやらせればいいだけの話じゃない?
しかも、埃は吸うけど、糸くずなんかは消化不良起こすから吸えないって、全然使えなくない?
「便利便利」ってクラスのみんながなんの疑問も持ってなさそうなのが不思議でしょうがない。
魔法学校なんかやめちゃって、武術専門学校に入り直したい気持ちで揺れてるんだけど、
でも一番の理由が、あそこのラクロス部のユニがかわいいからって、そんなの親に言えるわけない。
オタマ掃除機以上に、その願望ってくだらない気がする。
とりあえず回復魔法の「ゲンキニナール」修得しとこうと白魔術にポイント積んできたけど、
最近三角関係経験したら、黒魔術の「コイガタキケチラース」が気になってしょうがない。
はっきり言って、男の方はもうどうでもいいんだけど、あの女に負けるのがいや。
どうでもいい男のために黒数値上げるとか、人生無駄にしてるってわかっているんだけど。
今の私って全然ちゃんと生きてなくて、退学届出す勇気なんてのも初めからなくて、
とりあえず神殿行って魔術の数値リセットするぐらいが最大の冒険なんだ。
でもそれだってきっと実行しないから、存在自体がオタマ掃除機以下なんだよ。


「必殺技」「アルファベット」「くもり」でお願いします。

241:「必殺技」「アルファベット」「くもり」
14/04/11 23:22:36.09 .net
「必殺技」「アルファベット」「くもり」

「まだ俺はAからGまでの力しか解放していないッ!応えろ、26の聖霊よッ!」
そういって、ある物体を徐に火に入れるとたちまち橙赤色に燃え上がった。
これは彼の必殺技の開拓のための修行らしいが、おそらくこれはただの炎色反応だろう。
虚しく響く高らかな声、燃え上がる淡いオレンジの色が夕日のように明るかった。
彼曰く、これはBの能力「Barn-獄炎-」の初期段階であるという。
まぁ、5時過ぎの化学室でのみの能力使用だというので、多くの人は既に察していたのだろう。
「裕樹ぃ!お前も能力者だろぉ!」
今日は曇天。淀んだ暗さが一層彼を痛く、哀れに見せた。
彼にとってはこのくもりの空気感こそ、待ち望んでいたものだったのだろう。
日頃能力者ごっこに付き合わされている裕樹の静かな怒りも、暗がりの中浸食し続けた。
一刻過ぎるごとに、やがてどしゃ降りになって行った。
まるで裕樹の抱く憎悪と比例するように、確実に、蝕む。
「俺は能力者なんかじゃないッ!!」
次の瞬間、劈くような轟音がけたたましく唸りをあげた落雷に、彼は汗を吹き出しながら言った。
「ぜ、Zeus-審判-、、。只者じゃないぜ、、。」

「修道院」「街灯」「ロンドン」でお願いします。

242:名無し物書き@推敲中?
14/04/12 15:42:04.36 .net
「修道院」「街灯」「ロンドン」

曇りなき眼を持つその少年たちは、なにより親切だった。
なので道で困っている人に声をかけずにいられなかった。
フレンドリーな笑顔で近づくと、そのガタイのいい東洋人は、ほっと安堵の色をみせた。
彼の足元には、首輪でつながれ、何やら荷物を背負わされた真っ白い犬が一匹。
「おいどんは、キチノスケ・サイゴーでごわす」
東洋人は、体格に似合わない柔和な笑顔を見せた。
三人は気が合ったのだろう、あっと言う間に打ち解けてしまった。
「そうでごわすかぁ、あんたがたはハリーどんとロンどんでごわすかぁ。
 おっと用事を忘れるところでごわした。ここいらに修道院などありもわはんか?」
修道院は、森と山と林と横町を二つ三つ越えた先にあった。
少年らは門限破りを承知の上で、キチノスケを目的地まで連れていくことにした。
すっかり日も暮れ人影もなく、街灯にぼうっと照らし出されたキチノスケの顔から笑みは消えていた。
少年たちが油断し、お菓子の話などしていると、キチノスケと犬の目が妖しく光り始めた。
と、その時―辺りに少女の甲高い声が響き渡った。
「ハリー、ロン、気をつけて! そいつはニセ薩摩人と、ニセお父さん犬よ!」


「革命」「とうもろこし」「バレリーナ」でお願いします。

243:夜想曲 月 市街区
14/04/15 22:59:01.79 .net
立ち上がって壁の穴から見える景色は無惨だ。
 住民から取り残された建物がその傷ついた体を晒す。月明かりの下でその鉄の骨は黒々と浮かびあがる。
 市街戦となった市街区は、昼間の騒がしさが嘘のように静かになってしまった。
瓦礫も肉片もなにもかも、闇のなかで眠ろうとしている。
羽毛のように柔らかくその微睡みを包もうとしている永遠。
 壁に大穴が開いた礼拝堂の中から死にかけた街を眺めると、ここは留守宅なのだと思う。
 神の不在は明らかだ。

 人の心は神を求めてこの丘に礼拝堂を建て、美しいステンドグラスを捧げた。
そして頼って逃げこんだ。
 返品された神への捧げ物は壊れてさえ美しい。
月の光を僅かに取り込んで、硝子は青や緑の影を落とす。
 周りの闇に沈んだ黒い血溜まりや肉片だろう物とは違う。
……ああ駄目だ。白いのは見ては駄目だ。私の息子かもしれない。妻かもしれない。
 残ったステンドグラスを見上げても、夜には神の姿はみえない。そう、夜だ。神のいない夜だ。
 そのステンドグラス下のかつての私の居場所であったパイプオルガンは神殿のように残っている。
 しかし、もう何もかも眠ろうとする夜だ。神殿など馬鹿げている。
 パイプオルガンの鍵盤を残った右手で叩きつける。
悲鳴のような音が鳴る、と思われたが鳴らなかった。
 鼓膜が破れたのか。痛みはもう感じられないらしい。
 あの爆音で、左手できつく抱きしめた私の息子の頭は私の左側とともに弾けた、のだろう。妻も息子を抱きしめていたから、恐らく一緒に。
 本当の夜を知り、曲を奏でる。夜想曲は神に捧げるものではないのだ。

次は「煙管」「艶」「緋色」

244:名無し物書き@推敲中?
14/04/17 19:20:48.02 .net
「煙管」「艶」「緋色」

バカみたいな金持ちの伯父がいる。
眼下に太平洋の望める崖の上に雅な城をこしらえ、そこで一人暮らしする変り者である。
死ぬと遺産が少し回ってきそうなので、たまに酒など持ってご機嫌伺いすることにしている。
会う度不健康そうなのに、この伯父がなかなか死なない。
今日も自慢の煙管をぷかぷかふかし、咳ばかりしていた。
そのまま激しく咳き込んで、ぽっくり逝ってくれればいいのに、と思うが、俺の願いはいつも叶わない。
毎度のことながら、何の脈絡もなく、俺の色恋に話が及ぶ。
そしてこちらに充分語らせることなく、伯父の艶っぽい思い出話が始まる。
1%も真実の混ざらないファンタジーである。
半魚人みたいな顔して絶世の男前設定という、伯父は金だけじゃなく凄まじい妄想力の持ち主でもある。
話の途中で時計に目をやった伯父は、その場で服を脱ぎテラスに向かった。
沈む夕日を眺めながら、世界を制した気分を味わうのが、伯父の日課なのである。
腕組みをして茜に染まる大海原を見下ろしながら、緋色のふんどしをはためかせる枯れた半魚人。
そのまま海に落っこっちゃえ、落ちてしまえ、と強く念じてみるが、俺の願いなのでどうせ叶わない。
それに伯父は崖から落ちたぐらいじゃ死なないし、多分殺されたって死んだりしないのだ。


「おやつ」「ストレス」「一石二鳥」でお願いします。

245:名無し物書き@推敲中?
14/04/25 20:22:48.44 .net
「おやつ」「ストレス」「一石二鳥」

おやつの時間が苦痛でならない。
口の中でぱさつくビスケットを温めた牛乳で流しこめときやがる。
牛乳なんてずばり牛の乳じゃないか。
いかさきやサラミを要求したが聞き届けてはもらえなかった。
牛乳嫌いで有名なタモ○氏にはこんな逸話があるという。
お遊戯がいやで幼稚園には行かなかった、と。
激しく同意だ。できるなら俺だってそうしたかった。
だが今は園児が昼日中一人でそこらを徘徊することを許さない社会なのである。
俺は生まれる時代を間違えたのか。
ビスケットに牛乳、お遊戯にお昼寝、元気を振りまくウザい先生方……。
ストレス過多なこんな世の中で、これからしばらく生きていかなければならないなんて。
最近俺は、女児リーダー格Aにビスケットの類を、男児リーダー格Bに牛の乳を譲る契約をした。
見返りとして、女児グループからの口撃の免除と、お砂場優先使用権を獲得した。
まさに一石二鳥ではあるのだが、俺は一人占めした砂場を持て余している。
ガキどもを寄せ付けずシャベルで砂を掘り起こしながら、長すぎる人生にただウンザリしているのだった。


お題継続で。

246:名無し物書き@推敲中?
14/04/27 18:57:45.59 .net
「おやつ」「ストレス」「一石二鳥」

母はいつもよく分からないものをおやつに持ってきた、
ある時はイワシの煮付けであり、ある時はたくわんである。
友達の家に行った時に出てきた輝かしいまでのおやつに感動したあの日を忘れない。
それからというもの、母のおやつを食べる日々は少々のストレスであった。
しかし高校から帰ってきたある日、母が倒れていた、
病気である、病院のベットで横になる母に、私は泣きながら何を考えただろう。
そんな日々の先に、今の私がいる、
かつて母がそうしたように、子供にイワシの煮付けやたくわんなどを出す気持ちが、今の私には分かる。
残りものを片付けられて、おやつ代もかからない、一石二鳥なのだ。
母は実家で今頃父とお茶でも飲んでいるだろう。

「ロボット」「時計」「空」

247:247
14/04/27 19:04:16.50 .net
でお願いします。

248:ロボット 時計 空
14/04/29 11:09:21.37 .net
新緑が眩しく光っていて、夏が来る予感にワクワクする。
毎朝歩いて学校に向かうのに第一公園を通る頃、同じクラスのミチルが来て合流するのがいつの間にか定着していた。
ミチルは可愛い。すごく良い子で人気者だ。ミチルが泣きそうな顔をして立っていたら誰だって駆け寄るんじゃないかな、と思うくらい魅力的な子だ。だから私も駆けつける。ミチルは
「サキぃ、このコ……」
と腕の中の猫を差し出した。
猫はぐったりしていて、明らかに具合が悪そうだ。体が揺らされても反応がない。
「どうしよう?」
どうって、直してあげるべきでしょ!
ええと、朝だから……と東の空を見ると、08:10の表示が青空に黒く浮かんでいる。
「学校、サボろ!それで直してもらおう!」
とミチルにいうと、なぜかミチルは煮え切らない様子でうつむいている。
「え、このコより学校が大事なわけ」
思った以上に冷たい声が出たけど気にしない。
「このコがこうなるってさ、人のせいしか考えられないんだよ、じゃあ人が直すべきでしょう」
この猫は自動制御生物、いわゆるロボットで、賢い。怪我をするようなことはしない。壊れるとしたら人が傷つけたときだけ。
悲しいことだけど、たまにそういう人間がいる。なつくようになっててすごく可愛いのにそれが気持ち悪いなんて、そんな人間こそ人として気持ち悪い。なのに。

「私、人じゃないし」とぽつりとミチルが呟いてしまった。
「私も壊れちゃってるんだよ、このコ間違えて壊しちゃった。 私も直されたらどうなるんだろう」
ミチルは泣いている。悲しませたくないのに好きなのに、泣き顔ももっと見たくなるくらい可愛い。
私は人としてどうしたらいいんだろう?
人工的な青空の下で今、人間は私一人だけ。


次は
金 プラスチック 肌触り

249:名無し物書き@推敲中?
14/05/01 19:59:22.89 .net
「金」「プラスチック」「肌触り」

畜生!
あの社長また無茶ぶりしてきやがった!
肌触りがタオルそのもののプラスチックを作れだ!
何が
「この企画は世界を変えるのに必要だ」
だ!
しかし俺は部下だからやってやる!
本物のタオルより肌触りの良いプラスチックを作り出してやる!!
すべては金金金のため、金だけはよく払うあいつのために、俺は仕事をしてやる!
そしていつかあいつの地位になり金をがっぽがっぽ稼ぎまくってやる!
俺ほどの才能があればやってできないことはないのだ!
そして半年後、できた!
肌触りが高級タオルのようなプラスチックが!
さあ社長!どうですこの肌触り!すばらしいでしょう!
「うん、でもやっぱりコストかかりすぎるし、タオルは普通のが一番だね、何かすごい思いつきだと思ったんだけどな」
ちくしょおおお!!

次は
「桜」「小判」「宅急便」

250:名無し物書き@推敲中?
14/05/03 11:19:22.17 .net
「桜」「小判」「宅急便」

饅頭屋の屋根裏に魔女が住みついた。
宅急便を生業にし、落ち込んだりもしたけれど、まずまず元気にやっていた。
箒にまたがり空を駆け、仕事も軌道に乗ってきた頃、心に迷いが生じてうまく飛べなくなった。
ある日、風にあおられ木の葉のように舞うと、そのまま満開の桜の木に引っ掛かってしまった。
腹を立てたのは、花見を台無しにされた町の衆だ。
彼らは怒りをつのらせ、ついに彼女に石を投げ始めたが、群集を煽ったのは飛脚軍団だった。
空飛ぶ魔女と比べられ、自慢の健脚とプライドを傷つけられた彼らは、反撃の時をうかがっていたのである。
魔女絶対絶命……! とその時、止めに入った若い侍がいた。
彼こそは、城を抜け出すことで有名な将軍だった。
懇意にしている火消しに頼んで魔女救出に臨んだはいいが、魔女の懐から黒猫が飛び出し、また一騒動。
町民らが凶暴な黒猫にてこずっている中、飛脚はこれ幸いと魔女にとどめをさしにかかる。
自分の手には負えないと悟った将軍は、口笛を吹いて鷹を呼び、メモを託して空に放った。
およそ36秒後に現れたのは、カンガルーとペリカンの二体のゆるキャラもどきである。
優秀なお庭番である彼らは、過剰な愛想と小判をばらまきながら民衆の気を逸らしつつ、
華麗な軽業で飛脚軍団を蹴散らし、魔女と黒猫を無事救出したのだった。めでたしめでたし。


「針」「剣」「ハリケーン」でお願いします。

251:名無し物書き@推敲中?
14/05/03 13:37:27.18 .net
「針」「剣」「ハリケーン」

老人は入っている小説倶楽部から課せられた今月の小説のお題について考えていた。
針、剣、ハリケーン。
また奇異なお題を、老人は細く笑む。
目線を上げると、古い、装飾の施された剣が誇らしく暖炉の上に飾られているのが目に入る。
彼の長年の相棒である、老人はぜひともこの相棒を小説の中に持って行きたかった。
剣の飾られた暖炉の側では、老女がほそぼそと針仕事をしている。
そう、主人公は剣士、戦いに暮れる宿命を持った剣士は、ある使命を託された、
姫を助けるために、針の集合体のような外見を持つモンスターに戦いを挑むのだ。
そして不意にやってきたハリケーンにモンスターごと山の彼方に飛ばされ……。
いやまて、飛ばされてどうする。
老人は更に思考の奥底へと意識を飛ばす。
そう、主人公は鍛冶屋、世界一の剣を作り出すために命をかける鍛冶屋は疲れを癒やすためにある針師の元へ行く、
そして不意にやってきたハリケーンに針師ごと飛ばされ……。
いやまて、飛ばされてどうする。
深く深く想像力の彼方へと意識を飛ばしてる老人の側では、すばらしい剣が、静かにその様子を見守っている。
想像の彼方へと旅立つ彼の世界には、誰一人足を踏み入れることなどできはしない。
彼と、彼の剣意外。
針仕事をしていた老女は、いつの間にか、暖炉の側から消えていた。
窓の外では、木をなぎ倒しながら、何かが近づいていた。

次のお題は
「スタートライン」「紙」「ヤギ」
でお願いします。

252:名無し物書き@推敲中?
14/05/03 13:52:10.62 .net
「針」「剣」「ハリケーン」

正座をした俺を剣呑とした雰囲気を漂わせたクラスメイトの女子一同がぐるりと取り囲んでいる。
そして1台のビデオカメラが目の前に鎮座ましましている。体育前の着替え中に発見された隠しカメラだ。
今年共学化したばかりの学校でこのクラスには男子が俺しかいない。つまり犯人は俺だろうと言う言いがかりだ。
確かに昔の俺ならそうまでしてでも見たいと思ったかもしれない。しかし女の本性を知ってしまった今となっては全く見たいとも思えない。つか普段から俺が居ても構わずに着替えてる癖に。今だって半分くらいが下着姿のままじゃないか。
などど思った所でこの針の筵の居心地が良くなる訳でなし、ハリケーンの様な責めを凌ぎつつしどろもどろに言い訳するしか無いのであった。
結局「こいつは別にコソコソ隠し撮りしなくても普段から見れるし、今も真っ赤になって目逸らしてるし犯人では無さそう」と言う結論に落ち着いて容疑は逃れる事が出来た。
が、それ以来下着姿でおちょくられたり胸を触らせられて反応を笑われたりと言う「天国の様な地獄」をたっぷり味わう事になってしまった。
ちなみに隠しカメラの犯人は女子の1人で、隠し撮り映像を業者に売っていたらしい。
その犯人への吊るし上げ方は俺がもう一生女には逆らわない、と心に決めるには十分なモノで有ったのを付け加えて話を閉じたいと思う。



次は
「ダム穴」「廃墟探索」「深爪」

253:名無し物書き@推敲中?
14/05/03 13:52:49.60 .net
おっと、お題は>>251

254:名無し物書き@推敲中?
14/05/04 09:47:28.75 .net
「スタートライン」「紙」「ヤギ」

その日、行われるはずだったマラソン大会が中止になったんです。
スタートラインでウサギとカメが座り込みを始めたからでした。
ウサギは観衆に訴えかけるように叫びました。
「私はレース中に昼寝なんてしません!」
続いてカメも叫びました。
「僕をのろまと呼ばないで!」
胸を打たれた他の動物たちも、続々参加し始めました。
カラスが目に涙をいっぱいためながら叫びます。
「オイラを悪者と決めつけるのはやめてくれ!」
続いてキツネが絞り出すような声で言いました。
「わいは無実や……!」
白いヤギと黒いヤギも続きました。
「私たちは食べない! 紙など! ましてや郵便物など!」
動物たちは胸の内にあった物を吐きだし、清々しい気持ちになりました。
これが『あにま~る心の叫びフェス』の誕生秘話です。


「ダム穴」「廃墟探索」「深爪」でお願いします。

255:名無し物書き@推敲中?
14/05/09 00:17:25.79 .net
「ダム穴」「 廃墟探索 」「深爪」

普段は気に止める事も無い己れのインナーワールドに踏み込んでしまった。と、言っても果てしなく広大な精神世界の極一部なんだろう。

日常の渇いた暮らしに小さな痛みを感じ始めたのが切っ掛けだ。痛みなどと言っても肉体を痺れさせる様な激しい痛みでは無いのだが、深爪をしてしまった時の嫌な何かに触ると染み入る様な痛みなんである。

その世界は薄暗い林であった…

林は朽ち果てた楼閣と干上がった池を中心に見窄ぼらしい建家が点在する。どこか懐かしくも有る不思議な場所だ。

それらを一々廃墟探索する勇気もなく干上がった池の真ん中にポッカリ開いたダム穴だけを茫然と見詰めるのであった。

この穴こそが林の精気を抜き取り、日常を渇かせ、肉体から潤いを奪い去る元凶なのだと確信しながら。




次は「朝焼け」「愛」「横顔」でお願いします。

256:名無し物書き@推敲中?
14/05/10 16:00:03.99 .net
「朝焼け」「愛」「横顔」

濡れた地面の上で目が覚めた。
いつからそこにそうしていたのか、記憶を辿ろうとするとこめかみの辺りがズキンと痛む。
僕と彼女は―
そうだ、僕と彼女は通り雨に喜んで道路に飛び出したのだった。
愛を語らいながら踊り明かすつもりで、彼女を雨の舞台へ連れ出したのだ。
近づくヘッドライトも余裕でかわし、僕らは愉快にステップを踏んでいた。
その時、猛スピードの自動車がハンドル切って方向を変えた。
僕は気づいて咄嗟に逃げたが彼女は―
彼女はどこだ。
僕は大声で彼女の名を呼びながら、目を凝らし耳を澄まし、彼女の返事を待った。
そして僕はそれを目にする。
アスファルトにきれいにのされた彼女の姿を。
最も幸せな瞬間に召されたのだと、その横顔が物語っていた。
朝焼けに染められた東の空がぼんやり滲む。
彼女にそっと口づけすると、涙を拭い、水田にぽちゃんと飛び込んだ。


「正直」「天気予報」「五月病」でお願いします。

257:「正直」「天気予報」「五月病」
14/05/12 20:43:46.18 .net
――ざあざあざあ、と雨が降る

4月1日、全力で嘘を吐いた。3月中に上手い嘘の吐き方を猛勉強、研究研鑽して吐いた自信作だった。
4月2日、彼女ができた。まさか誰も嘘だと気付いてくれないなんて思いもよらなかった。
最初のうちは良かったんだ、その内バレるだろうと気安い付き合いをしていた。
勿論仲良くなれたこと自体は正直とても嬉しかったので終始デレデレしっぱなし。

2週間くらいしたとき、気付いた―
本気で…惚れてる

それからはもう酷いもので、彼女に嘘を吐いたことへの罪悪感に悩みながら、嘘を続ける毎日。
ゴールデンウィーク、彼女と友人数人とで小旅行に出かけた。
楽しかった、楽しめなかった。
嬉しい、苦しい。

『最近元気無いね、何かあった?』

辛い…つらい…ツライ…

「ううん、大丈夫。ちょっとダルいだけ、五月病…かな?」

明るく声に出して笑う。
それから幾つか言葉を交わした後、電話を切った。
ははっ、と、哀しくて嗤った。

私はどうしたら良いのだろう、わからない。
明かりの無い部屋、ふと窓を見る。
天気予報はあてにならない。

――ざあざあざあ、と雨が降る

次は「年少」「偏屈」「大本」でお願い。

258:名無し物書き@推敲中?
14/05/16 19:45:17.75 .net
「年少」「偏屈」「大本」

遠く南の島からポリポリ族の一団がはるばる我が家にやってきた。
滞在初日、そろそろ食事にしましょうか、という段になって一騒動。
ポリポリの男たち総勢5人が庭に飛び出し、繋がれていた犬を取り囲んだのだ。
桃太郎、赤柴オス3才、危うく屠られるところだった。
犬は家族なのだということをなんとか理解してもらい、寿司とスキヤキで我慢してもらったが、
彼らは食事中、窓の外の桃太郎に視線を送り続け、それをおかずに飯を食べているようだった。
犬から意識が離れないので、散歩という習慣について説明すると、目の色を変えて皆が行きたがる。
私たちがただ困惑していると、長老らしき偏屈そうなじいさんがムスッとした顔で、
「ひょっとして、わしらが食っちまうとでも?」
らしきことを言ってから、破顔一笑、いたずらそうにケケケと笑った。
それを合図にその場は笑いに包まれ、年少の若者など座敷で宙返りしながら大はしゃぎ。
「まさか!」「またまたぁ!」と、お互いの体を突っつき合いながら腹がよじれるほど笑い合ったのだった。
肌を埋め尽くす刺青などから、果てしない距離を感じていたが、笑いは全世界共通なのである。
人間同士、大本のところは変わらないのだなぁ、と親近感を覚えた瞬間だった。
私たちは楽しい一週間を過ごし元の生活に戻ったが、かわいそうに桃太郎はしばらくの間うなされていた。


「大魔王」「パラシュート」「ふわふわ」でお願いします。

259:名無し物書き@推敲中?
14/05/23 01:27:47.97 .net
「大魔王」「パラシュート」「ふわふわ」

「え?」
「だ、か、ら!
 まず着地点を見定めておいて、お前がパラシュートを落とす。
 おもりに火種をつけておいて、
 俺が先日完成させた、ふわふわシュークリームの蝋燭の上へ、見事点火」
「なんで誕生日にシュークリームなんですか」
「あいつの好物なんだから仕方ないだろ!で、そのシュークリームの中から…」
「婚約指輪が出てくる」
「そう!」
「『このふわふわ製法で特許を取るから、君を決して貧乏にはさせない…』の言葉で号泣」
「そう!そう!」
「でもなぁ…」
「なんだよ」
「あの人って婚約指輪より…」
「あ、来た!」

「えっ!?」
「なに?美味しかったけど」
「……だよなぁ。この人、食欲大魔王だもん。
 多少硬めの中身のことなんか気にもとめないで丸のみですよ」
「30万円のシュークリームがぁ……」
「バカね、そんな高いお菓子あるわけないでしょ」
「ぐぬぬ……な、なぁ、でもこのシュークリームの皮って、とんでもなくふわふわしてただろ!?」
「え、普通でしょ?」

「…うん、別れようか」

次は
「六法全書」「石鹸」「やまんば」

260:名無し物書き@推敲中?
14/05/27 21:23:52.15 i+qT7v8UC
「昔の漫画で、六法全書をアナルに挿れるってのがあったわね…」
病室のベッドで酸素マスクの下から、森田剛が苦しげに呟く。
「ああ、確かふんどし刑事ケンちゃんチャコちゃんだったかな。お前、あれ好きだったもんな」
俺は病でやつれ、やまんばのような姿になった剛の耳元でそっと囁く。俺は原輝夫。
刑務所で知り合い、ゲイの森田に優しくされてついおホモだちになった俺たちは、出所後も付き合っていたが、森田はゲイ特有のあの病で余命幾ばくもなかった。
「死ぬ前に、あなたの肛門に六法全書全書を入れてみたかった…」
森田がとんでもないうわ言を言うが、俺は気にしなかった。どんな願いでも叶えてやりたかった。
「おう、いいぜ、やってやらあ。今、石鹸持って来るからな」
流石に滑りをよくしないと、俺のブラックホールも耐えられません。
「しかし六法全書がないな…本屋に行くか」
「いえ、六法全書はもういいの。代わりに違うものを挿れて欲しいの…」
森田が俺を引き止める。
「 ? 」
「ねえ、私、今酸素マスクしてるでしょ。この状態なら試せると思うの。あの究極のプレイを…」
「ま、まさか…」
俺の全身が緊張で震える。呼吸器を使わねば出来ない伝説のプレイとは…
「そう、スカルファックよ」
俺は覚悟を決めた。

次は
「おっぱいマウスパッド」「自衛隊」「専業主婦」で

261:名無し物書き@推敲中?
14/06/01 12:24:42.36 .net
>>259
新2chへの書き込みはこっちに反映されないんだ 必要なら再投稿を
スレが落ちた時に削除されたっぽいのはコピペしとく

262:名無し物書き@推敲中?
14/06/01 12:26:02.36 .net
「大魔王」「パラシュート」「ふわふわ」

「え?」
「だ、か、ら!
 まず着地点を見定めておいて、お前がパラシュートを落とす。
 おもりに火種をつけておいて、
 俺が先日完成させた、ふわふわシュークリームの蝋燭の上へ、見事点火」
「なんで誕生日にシュークリームなんですか」
「あいつの好物なんだから仕方ないだろ!で、そのシュークリームの中から…」
「婚約指輪が出てくる」
「そう!」
「『このふわふわ製法で特許を取るから、君を決して貧乏にはさせない…』の言葉で号泣」
「そう!そう!」
「でもなぁ…」
「なんだよ」
「あの人って婚約指輪より…」
「あ、来た!」

「えっ!?」
「なに?美味しかったけど」
「……だよなぁ。この人、食欲大魔王だもん。
 多少硬めの中身のことなんか気にもとめないで丸のみですよ」
「30万円のシュークリームがぁ……」
「バカね、そんな高いお菓子あるわけないでしょ」
「ぐぬぬ……な、なぁ、でもこのシュークリームの皮って、とんでもなくふわふわしてただろ!?」
「え、普通でしょ?」

「…うん、別れようか」

次は
「六法全書」「石鹸」「やまんば」

263:名無し物書き@推敲中?
14/06/02 21:19:52.30 .net
現在18時22分。日が伸び出して来たとは言え、鬱蒼とした木々に囲まれ辺りは既に薄暗くなっている。
落ち葉が敷き詰められた斜面をガサガサと転がる様に降りて行く男が1人。
ちょっとしたハイキングのつもりが道を間違えた、と気づいたのは完全に自分の居場所をも見失った後であった。
薄暗い山の中で1人まよっt


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