12/01/09 07:58:58.27 .net
加藤君が机に伏せて震えている。さっき二年の不良に呼び出されて帰ってきてからずっとだ。僕なんかに全部はわからないけど、彼はきっと闘っているんだ。その証拠に、机の脚が鳴るほどに全身を震わせていても、眼だけは何かを真っ直ぐに睨みつけている。
声をかけようか迷う。加藤君はいつも気弱な僕たちを不良から助けてくれる。だから今回はこっちがお返しをする番じゃないかって思うんだ。だけどもし足でまといになったなら申し訳ない……どうしよう。
ガタ! と突然の音を立てて加藤君は立ち上がる。フゥフゥと息を調えて、明らかにこれから何か事を起こそうとしている。僕は思わず話しかけた。
「加藤君、一緒にトイレ行かない?」
「!?」彼は驚いた顔をする。
「さっきからずっと我慢しててさぁ」
加藤君は驚愕が抜けない様子のまま、
「ああ……いいぜ」
二人で教室を出た。「あ」加藤君が思いついたように立ち止まった。
「少し遠くのトイレでもいいか? ここの一年トイレは……不良がいるからな」
「うん。いいけど」
僕に気を遣ってくれたのか、普通に怖くて不良を避けたのか……
いやいや! 僕と一緒のときに不良に絡まれたりしたら、明らかに僕が邪魔になるだろう! だから加藤君は安全な方を選んだんだ。怖がったりなんかしてない。僕は何考えてるんだ。
横を歩く加藤君は見るからにそわそわしている。やっぱり、声かけなきゃよかったかなぁ。