11/07/20 21:54:25.01 .net
即死したかと思われた玄野計と加藤勝は、黒い球の置かれたマンションの一室にいた。
「はじめまして、僕は西といいます。貴方達に話しておかなければならないことがあります」
彼―西丈一郎は、反抗期や中二病の多く見られる中学生にしてはしっかりした丁寧な口調で、その場にいた玄野達を含む数人の人間に語り始めた。
まず、ここにいる全員が一度命を失ったこと。それを、ガンツと呼ばれる黒い球が蘇らせたこと。その代償として、地球に潜伏する凶暴な宇宙人との戦闘を強いられること。
戦果に応じて点数が与えられ、それが百点に到達した時、部屋からの解放を始めとした様々な特典が用意されていること等から、いずれ訪れるカタストロフィについてまで、西は事細かに親切に説明した。
「凄い話だけど、信じるよ。西君」
「ありがとうございます、玄野さん」
玄野と西は硬く握手を交わした。他の面々も、「わざわざ教えてくれてありがとう」「よくわからないが頑張ろう」と一致団結した。
そこに、今回最後の死者が、ガンツより発せられるレーザー光によって出現した。裸の若い女であった。その場にいた者達―いずれも男性である―は、一斉に目を背けた。
「なんだッ、俺達もこうして送られてきたのかッ!?」
「そそそそうですッ! この方、風呂場で手首を切ったのかもしれません!」
西は女の手首に付いた血を見てそう言った。しかし女の身体は極力見ないよう心掛けた。
「服を着せるんだッ」
玄野のその一声で、全員が一斉に上着を女に被せる。ふぅー、と安堵の溜息が同時に上がった。彼らの偉大なフェミニスト精神により、事態はとりあえずの収束を見せた。
やがて意識を取り戻した女は、岸本恵と名乗った。
「俺と同じ名前だね。お互い頑張ろう」
自殺志願者に頑張ろうは本来禁句であるが、玄野の爽やかさがそれを無かったことにした。
「はい……!」
服に埋もれ服ダルマとなった岸本は満面の笑みを見せた。