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やわらかい草を踏む足音で、のび太は我に返った。
音のする方を見ると、そこにはジャイアンが立っていた。
その全身から、凶暴な気配を発散させている男だった。
紺色のズボンにつつまれたやや短いが太い足は、どっしりと地面をとらえ、
胸、および腕から肩にかけての筋肉は、黄色いポロシャツの薄い布地をはちきれんばかりに
もりあげてその存在を誇示している。
なにか動作をするたびにセルロイドのような筋肉のかたちがピクピクと動く。
―来たか。
のび太は体の向きを変え、足をかるく開いて立ち、ジャイアンと対峙する。
ジャイアンは相撲取りのそれのような両手を組み合わせ、ぼきぼきと指の関節を鳴らしながら、
きしるような不吉な声を出した。
「わざわざ、殺される為に俺を呼びだしやがったのか。」
怒りのためだろうか、顔が赤黒く変色している。