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バトル物を書きたい人が集まるスレ - 暇つぶし2ch73:名無し物書き@推敲中?
11/06/21 22:12:56.20 .net
山道を歩いている矢先に果し合いを申し込まれる――
この唐突な申し出に、しかし斎虎と呼ばれた男は「くくく」と笑うと
手を袖口に引っ込めたままで巨躯の男を振り返った。
殺気立つ男を面白そうに眺め、斎虎は踵を返す。
「甘いな」
「何?」
斎虎の言葉に、巨躯の男が怪訝そうに眉をひそめる。
「ぬしが、よ」襟元から出した指を男に向けて斎虎が笑った。
「俺を斬るつもりで来たならば、俺を呼び止める前に斬りかかればよいものを。
わざわざ俺に警戒させて、なんとする?」
「抜かぬ者を相手にするは武士の恥ゆえだ」
笑う斎虎に対し、言われた巨漢は臆面も無く言い放つ。
「時代がかった男よ」斎虎は益々、愉快そうに声をあげて笑った。
巨躯の男は腰の刀に手を伸ばし、鯉口を切って構えると
「抜け」
静かに言い放った。
「俺はこのままでよい」
どこまでも馬鹿に仕切った斎虎の態度。
だが次の刹那、そのしたり顔が強張った。
七尺に届こうかという男の巨体が、とてつもない勢いで眼前に迫ったのだ。
その踏み込みたるや、とても鈍そうな男の外見からは想像も出来ぬ迅速さ。
妖物のまやかしか仙術かと思わんばかりの、狂犬もかくやという身のこなし。
そして隆々とした筋骨に包まれた腕が、轟と腰の物を抜刀し斎虎の横凪ぎに叩きつける。
しかし、次に驚愕したのは巨躯の男の番であった。
鉄柱すら斬る筈の必殺の抜刀が、よもや止められるとは。
それも、まともに受けた斎虎の枯木の様な細腕で。
「むぅ」
「ぬっ」
男達は双方身を引き、間合いを広げた。
「これは参った」と口を開いたのは斎虎である。袖から出した血の滴る上腕を
べろりと舐めて地面に履き捨てる。「俺の体が傷つけられたのは実に十と六年振りよ」
巨躯の男はそれに答えず、体を開いて刀の切っ先を下げて斎虎を睨めていた。


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