文藝賞でネット(2ちゃんねる?)からのパクリ発覚at BUN
文藝賞でネット(2ちゃんねる?)からのパクリ発覚 - 暇つぶし2ch47:名無し物書き@推敲中?
10/10/09 19:43:54 .net
第一章 夏の形見

     1

よろけるようにして、立ち止まった。
「どうしよう……、みられてる」
朝霧菜穂子がつぶやいた。
ゆらゆらと、陽炎のように声が揺れている。視線から逃れるようにして、空を仰いだ。ひかりの矢が顔に突き刺さる。
思わず、目を瞑った。積乱雲のように湧き上がってくる胸の高鳴りが聞える。背中の辺りまで垂れ下がった長い髪を揺らして、風が通り過ぎていった。
微かな秋の匂いを嗅いだ気がした。
菜穂子がゆっくりと目を開ける。駅舎に目をやった。
曲がり屋ふうの古ぼけた木造の駅舎。所々、色が剥げ落ちている水色の板壁。どことなく優しげな雰囲気を醸し出している。
正面に見える棟が入り口だ。
その上に掲げられた安曇追分駅というやけに大きな文字が目につく。陽射しを浴びて輝いている、紅い屋根が眩しい。
午後二時。松本行きの普通列車が到着するのにはまだ時間がある。駅舎に人影はない。
時の流れから置き去りにされたかのように、駅舎はひっそりと静まり返って佇んでいた。
―気のせいかしら……。
菜穂子が、淡いナイルブルーの帽子を被り直した。紺色のリボンがついている、麻で編んだお気に入りのブレード帽だ。
帽子に両手を添えた恰好で、菜穂子が固まってしまった。桜の木の下に男が立っているのに気づいたからだ。
駅舎の屋根の半分を被うほどの大きな木だ。黒々とした木陰を作っている。
夏の陽射しを浴びて立つ菜穂子の目には、影に溶け込んだ男の姿ははっきりとは見えなかった。
男の影が動き出す。木陰から抜け出た。男の姿がはっきりと見えた。近づいてくる。
菜穂子を見据えたままだ。髪は少し長めだが清潔感がある。肩幅があり胸が厚い。が、全体的には細身だ。
すらりと背が高い。白い綿シャツに色褪せたジーンズが似合っている。切れ長の目と、自然のままの濃い眉とが、優しい輪郭の顔に精悍そうなアクセントをつけていた。


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