11/04/09 15:58:20.37 .net
俺はスパイだ。任務の重大さを感じながらある国に到着した。
子供の頃から憧れていた職業。失敗は許されない。これが初めての仕事である。
決意は炎の如く燃え、神経は緊張でぴりぴりしていた。
だが、それを表に出すわけにはいかない。スパイが目立ってしまうのは、それだけで失格。
服装も地味なものを選んだ。職業はサラリーマンということになっている。
俺はその足で質屋に向かった。仲間と合うために。表向きは質屋でも、そこがアジトなのだ。
小さな店。入り口の横にガラス張りの棚がある。中には貴金属、宝石、時計といったものからゲームソフトや古着まで並んでいた。あまりいいセンスの品揃えとはいえない。
入り口のドアを押す。すぐ正面がカウンター。好好爺然とした男性が新聞から顔をあげた。七十歳くらい。
「いらっしゃいませ」
「ジッポライターはあるかな」
「どのようなものですか」
「日本風なものがいい。富士の絵が描かれたようなやつが」
「では、奥へ」
俺は老人に続いて奥の部屋に入った。ただ椅子と机があるだけの殺風景な部屋。ここに仲間がくる。
先ほどの老人とのやりとりは、暗号のようなもの。山といえば、川。
俺は鞄から書類を取り出し、今回の任務の確認をする。もう何十回となく読んだものだ。
これも暗号になっているので、それを知らない人が読んでも問題はない。普通の会社の書類にしか見えない。