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かえすがえすも残念なことは優れた頭脳に恵まれた青年たちが、今隣に居る青年も明らかにその一人であるが、
不品行な女を相手にして貴重な時間を浪費した上に一生付いてまわるかもしれない結構なお土産をうつされたり
することであり、 いつの日か似合いのお女性が現れたら当然結婚するものとして、それまでの独身期の女遊びは
〈必要ヤムヲ得ザル行為〉であろうし、 もちろん田中夫人のことで一郎に(あんなに朝早く
この街までやって来たのは彼女という特別な北極星のせいだろうが) 鎌をかけてみる気はさらさらない。
ただし極めて重大な疑問を感じてしまうのは果たしてこの青年が青臭い少年少女の恋愛とか、
くすくす忍び笑いをする一文無しのお嬢さんと二、三週に一回ほどの交際をして
人並みに陳腐な賛辞を捧げたり一緒に遠出したりしながら 花だチョコレートだと甘い恋人の戯れに踏み込むことで
心から満足できるかどうか。彼の年齢で住む家もなく家庭もなく 継母よりももっと悪どい下宿屋のおかみに金を
まきあげられているというのはあまりにも惨めではないか。 時々彼が突然ふと口にする奇抜なせりふは
もう十いくつも年上で父親同様の年恰好の自分ですら面白いと思うけれど、 ともかく何か栄養になるものを
食べなければいけない、純粋な母乳にも匹敵するミルクに卵を入れてエッグフリップをこさえてもいいし、
それも駄目なら、ハンプティダンプティを茹でたものでいいんだから。