10/10/03 18:15:08 .net
>>46
だねー。
とりあえず、燃料投下。二次創作サスペンス。超超短編。
ラノ臭がただよってたらごめんね。くまたんよろしこ。
トントントントン、木製の階段を二階に駆け上がってくる足音。続くふすまの開く音に振り返ると、そこにはのび太が立っていた。彼の顔は蒼白で血の気がない。彼がこんな表情を見せるのは、いつも。
「……すまないが、タイム風呂敷を貸してくれないか?」
やはりそうだ。またなにか道具が必要になるようなトラブルに見舞われている。
「どうしたんだよ。また剛田がらみのトラブルか? どうした」
溜息交じりに俺は訊ねた。よく見ると、いつもののび太とは少し様子が違う。いつもは泣きがるようにして、便利な道具はないのかと聞いてくる。
今日に限って道具を指定してきた。それに彼の表情も妙だ。いつもの困惑顔と思っていたのだが、どうもおかしい。目が暗い。そうとしか言いようのない宙を見るその目は、すっかり生気を失ってしまっている。
「……」
のび太は黙ったままだ。
「黙ってちゃわからない、俺とお前の仲じゃないか。信用してくれ」
「……刺した」
「え?」
聞こえた言葉に不安が募る。彼からの返事を聞く前に、自分の額に冷や汗が滲むのがわかる。聞き間違いであって欲しい、そんな俺の想いとは裏腹に、予想通りの言葉がのび太の口から告げられた。
「刺しちまったんだ、源静香を」
悲痛の表情を見せるのび太、彼が背後に隠していた手を前に出す。その手にはどす黒い血の塊が刃先についた大型のアーミーナイフが握られていた。
くそ、こんな時、俺の手に指があれば片手で両こめかみを押さえて悩むことができたものを。今悩むべき問題ではないとわかっているが自分の手の構造の簡易さに腹が立つ。が、今はそれどころではない。
証拠となるナイフを処理しなくては。タイム風呂敷か、のび太にしてはよく考えたものだな。
「とりあえずそのナイフをよこせ。お前が言うようにタイム風呂敷でナイフから証拠を消しておこう」
刃先に血糊のついたナイフを風呂敷で包む。しばらく置いて風呂敷から出てきたナイフは、新品同様に綺麗になっていた。
(つづく)