10/10/16 21:11:58 .net
歴戦の人である王常が、一戦もせずに敵に背中をみせたのは、これが最初であろう。
─ここで戦えば、勝てたであろうに……。
劉秀の計画はまたたくまに崩壊した。
劉秀の隊だけがとりのこされたかたちになったので、配下の兵には、
「いそいで逃げると、敵もいそいで追う。いそがず退却すれば、かならず死ぬことはない。むしろいそいで逃げると死ぬ。」
と、いいきかせ、おもむろに後退した。
これ以前に、劉秀の兵術がいかにすぐれているか、気づいた将や兵がいたが、大半の将は、劉秀を良将とも猛将ともみていない。
この場合も、逃げおくれた将である、とみられた。
とにかく劉秀の隊が悠然と退いたため、これを怪しんだ官軍の将卒は、猛追することをひかえた。
すでに昆陽の城に逃げかえっていた王常と王鳳だけは、劉秀の肝の太さに気づいたが、自体が最悪になりそうなので、城に帰着した劉秀をみてもほとんど声をかけなかった。
むしろ劉秀がふたりに近づき、
「おもだった者たちを集めてください。話したいことがあります」
と、強い声でいった。
すぐにも昆陽から去ろうとしていたふたりは、鬱屈をかくさず、うなづいた。やがて集まった者たちは、いらだっていた。
「昆陽を棄てるしかあるまい。いまから軍議をはじめて、どうなるというのか」
大半の者がそういいたそうである。が、劉秀は落ち着いていた。
「よくきいてもらいたい。城内の食料はすくなく、まもなくやってくる敵は強大である。
それゆえここをでる。それから分散する。すると、どうなるか。
宛城が陥落していない現状では、避難するところもない。つまり、みな斃れる。
力は分散してはならない。力は、合わせるものである。
昆陽を失えば、ほかの軍旅も全滅する。
ゆえに、いまここで心胆をひとつにして、ともに功名を挙げなければ、とても妻子や財物を守ることはできない」
今日の読売の草原の風ですけど、これくらいの文で十分なんでしょうねえ。