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155 名無シネマさん(東京都) [sage] 2024/01/24(水) 20:28:32.74 ID:vjgvH01r
⚫『ゼロヴィル』は映画にとりつかれた男についての話であり、映画そのものについての話である。
つまりそれは映画の魔性についての話だ。映画の本質とは魔、まがまがしいもの、ありえざる世界へ人を誘う魔性の存在なのだということである。
セオドア・ローザックの『フリッカー、あるいは映画の魔』(文春文庫)がまさにそう語ったように。
小説にはさまざまな映画にまつわるエピソードが登場する。
ぼくがいちばん好きなのはかつて反フランコ闘争を戦ったゲリラ戦士だった男が語る話である。男はある夜、夢でルイス・ブニュエルから話しかけられる。
夢のブニュエルは、ゲリラ戦士に世界中の人々の正義と自由を勝ち取るか、シルヴィア・クリステルと1回ファックするか、どちらかを選べと迫る。
その瞬間、男は悟るのだ。
「私は真実とともに目覚めたのです、ムッシュー、私は、ミス・シルヴィア・クリステルと一度ファックするチャンス
のために世界中の抑圧された大衆の自由と正義を引き替えにする人間なのだと。
そして目覚めとともに訪れたこの真実を、私は永久に、実際に一度もミス・シルヴィア・クリステルと
ファックしたことなく抱えて生きないといけない——言うまでもなく、それこそが悲劇なのです。」
その残酷な真実を突きつける力こそ、言うまでもなく映画の無慈悲なる魅惑なのである。