山口瞳スレ 復活at BOOKS
山口瞳スレ 復活 - 暇つぶし2ch124:無名草子さん
21/02/10 02:31:11.21 .net
>>123
「治子は向田さんを贔屓にする瞳に対して、かなりの嫉妬を憶えていたようだ」 
山口瞳電子全集第5巻 草臥山房通信
「何かにつけて、瞳が、向田さん、向田さんと言うのに、妻である治子はどんな感情をいだいていたのだろうか」
第6巻 同通信
恥ずかしながら、正介氏のこれらの解説を読むまで、治子さんのお気持ちにまでは、考えが至りませんでした
改めて『木槿の花』を読み直すと、そうだよなあ、ここまで書かれたら、奥様の立場としてはかなりつらいよな、と思いますね

125:無名草子さん
21/02/10 02:34:35.09 .net
>>123
梶山さんの訃報が1975年5月11日
その当日にお書きになったのが
梶山季之の双眼鏡
週刊現代1975年5月
男性自身では第594回「酒について」
1975年5月29日号(電子全集第3巻)
以後、かなり続きます
『旦那の意見』に収録された2篇は
流行作家
1975年6月 朝日新聞ほかサントリー広告「酒の本棚」初出
梶山季之の経緯
1975年6月「波」初出
御指摘の通り、梶山さんの追悼関係文は、男性自身以外の媒体に、数多くお書きになっていますね
それほど梶山ファンの編集者からの執筆依頼が、多方面から殺到したということでしょうか
『湖沼学入門』所収
「5. 梅雨涸沼(つゆのひぬま)」
「旅に出られるような状態ではない。作者急病のためと言って、それで充分に通用する状態であると思う。しかし、一方に、私は、この十二年間にわたって続けている週刊誌の仕事がある。そっちのほうは、よしんば目が見えなくなっても、口述でも出来る仕事であり、私は休載にするつもりはない。そうすると妙なことになる。一方で作者急病、一方で面白おかしいようなことを書いてそれが活字になる。これはいけない。それが、つまりは浮き世の義理である。私は「つゆのひぬま」に出かけなくてはいけない。」
軽妙な写生描写と緻密な紀行文と熱い熱い涙の追悼の合体、この密度、瞳文学の傑作だと思います
山口瞳電子全集第17巻、ぜひ時系列順にお読みください

126:旧291
21/02/12 23:17:41.11 .net
>>124
>>125
ご教示をまことにありがとうございます。お礼が遅れて申し訳ありません。
早速、読んでみます。
確か、梶山にもらった双眼鏡で競馬を観戦していて、涙で目が曇って馬が見えなくなってしまう、という文章もありましたね。
それを読んだ酒場の女給さんが泣いた、とも書いていましたね。
これ、古き良き時代の女給と作家との関係が分かる、印象的な一篇(一節?)でした。

127:無名草子さん
21/02/13 03:52:41.87 .net
>>126
電子全集第3巻(男性自身)と第17巻(男性自身以外)を、梶山季之追悼文に絞って読み比べてみますと、
確かに、後者の熱量の方が、やや上回るかなと正直に思います
旧291氏の御指摘の通りです
しかし、私はそれを瞳先生の侠気と解釈したいですね
梶山さんを失って呆然としている編集者達に対して、いわば代役を務めあげるぞ、弔いを果たすぞ、という剥き出しの気合いを感じます
おふたり、天国で再会しておられたら良いのですが
「ヒトミちゃん、待ってたよ」
「梶山、こっちこそ会いたかった!
おや、吉行先輩に高橋先生、向田さんに村島さん、奥には三島さんに川端先生、こりゃ天国も悪くないね」

128:旧291
21/02/14 02:02:08.19 .net
>>127
素晴らしいお言葉、感動しました。おそらく120さんではないと書けないお言葉です。
蛇足ながら、吉野先生も。
電子版17巻、早速読み始めています。この電子版、本当に壮挙ですよ。奥様に心よりお礼申し上げたい。
ところで、今回気づいたのですが、「銀婚式決算報告」は良いですね。
「女房が驚喜するか、泣くか、床に倒れるかするかと思ったが」、
「こういう際には、化けるというか、牙を剥くというか、一変して美貌いや増す」、あたりのとぼけ具合が良い。

129:旧291
21/02/14 02:05:43.15 .net
もう一つ。この時に福田屋の女中さん達が銀婚式の宴に参加させて欲しいと言ってきた、との件。
山口は、何度か人生で幸福を感じた瞬間について書いている。
例えば、声を失った池田弥三郎さんと「はちまき岡田」(?)で店員を介して筆談した時、
正介さんの出版記念会の時など。この銀婚式も、山口にとって同じく幸福な時間だったはず。

130:旧291
21/02/15 23:58:23.55 .net
>>125
おかげさまで、電子書籍版17巻、楽しんで読んでいます。
読んで、思うことは沢山あるのですが、まずは、山口は本当に多才な人だった、ということ。
そして、実に激しく生きた人だった、ということ。本業は別として、野球に競馬に麻雀に酒。
『湖沼学入門』では、さらっと書いているが、顔面に異常を起こしても紀行文の仕事をキャンセルしない。
しかしその裏で、118さんの言うように梶山ショックがあり、正介さんの書くように体調不良があった。

131:旧291
21/02/16 00:11:45.52 .net
この電子書籍は、これまで書籍化されなかった対談が収録されている点でも素晴らしい。改めて、奥様に感謝。
以前に論創社が山口の対談集をシリーズで公刊し始めたが、中断してしまった。
これは残念だったが、山口死後の試みだったので、やむを得なのかも知れない。
それにしても、自分より若い人たちに、山口のことをもっと知ってもらいたいと思うのも事実。

132:旧291
21/02/17 01:21:03.94 .net
つくづく、山口が70を前に亡くなったことが残念。
しかし、あんなに激しく生きた人であれば、これは短命だったのも仕方ないかな。
生前の常盤新平さんなどにお会いして、山口の話を聞きたかったな。
スバルさんや臥煙さんはお元気なのかな。

133:旧291
21/03/02 22:06:33.23 .net
>>129
山口が幸福を感じたに違いない瞬間について、追加。
浦安の寿司屋で地元の漁師に「先生は浦安のなあ公だ」と言われた瞬間。『酔いどれ紀行』だったかな。

134:旧291
21/03/02 22:53:25.36 .net
今度は、幸福ではなく、悲しさを感じる話。
紹介していただいた電子版17巻の『湖沼学入門』での「梅雨涸沼」。
流行作家となったが、行き詰まっていた梶山と山口が講演旅行に出て、空き時間に霞ヶ浦の遊覧船に乗る。
意外に大きな船だったが、乗客は彼ら二人だけ。そして梶山は、船内の飲食物を全部注文するという、虚無的な振るまいに出る。
山口は、親友梶山が初期の魅力的なライターに戻れるかどうか疑っている。

135:旧291
21/03/03 03:11:43.71 .net
(続き)
山口は、作家として、また一人の人間として追い詰められていく梶山を見るに忍びず、
「おい、このまま、どっかへ行っちまおうか」と言う。しかし、梶山は酔っていて聞こえなかった。
今回の紀行を締めくくるのは、山口の夢。夢の中で、山口はもう一度この問いかけをする。
しかし、ここから先が、とても悲しい。山口は、夢の中の会話では、
「どっかへ行っちまおうか……三日ぐらいは暮らせるんじゃないか?」と文言を追加して言ったことになっている。
つまり、心身を消耗させる流行作家の生活(梶山の場合は破滅への歩み)から逃れられても、
それはほんの一時でしかない、ということ。

136:旧291
21/03/03 03:11:43.71 .net
(続き)
山口は、作家として、また一人の人間として追い詰められていく梶山を見るに忍びず、
「おい、このまま、どっかへ行っちまおうか」と言う。しかし、梶山は酔っていて聞こえなかった。
今回の紀行を締めくくるのは、山口の夢。夢の中で、山口はもう一度この問いかけをする。
しかし、ここから先が、とても悲しい。山口は、夢の中の会話では、
「どっかへ行っちまおうか……三日ぐらいは暮らせるんじゃないか?」と文言を追加して言ったことになっている。
つまり、心身を消耗させる流行作家の生活(梶山の場合は破滅への歩み)から逃れられても、
それはほんの一時でしかない、ということ。

137:旧291
21/03/05 01:05:18.37 .net
連投になってしまった。申し訳ないです。
唐突に、山口の女性観について。
どうした女性がタイプなのかと言った話題は、前スレでも出たので、今回は女性全般の話。
山口のように、潔癖で美的感覚の優れた人であれば、女性の「下」の部分についても、無感覚(無関心ではない)ではいられなかったはず。
この場合の「下」は、もちろん排泄系ではない。
これがはっきり示されているのが、『迷惑旅行』での「北上川遡行紀」。
飲み屋で、女性器に似ているという貝が出されて、こんなことを思う。
「もし、女性が、こんなものを持っている……とするならば、あんなに晴れやかな顔で
道を歩けるはずがないのである。」。

138:旧291
21/03/05 01:10:29.55 .net
これなど、フェミニストには叱られるだろうが、女性なる者の哀れを鋭く衝いた名文だろう。
女の哀しさは、男より体力や財力で(知力はどうかな?)劣ることではない。そうではない。
美をその大事な要素としている存在が、本質的に美と正反対な部分を内蔵しており、
そしてそれが、男と結ばれる際にもっとも活用される部分である、ということなのだ。

139:旧291
21/03/05 01:13:34.99 .net
連投失礼。
山口は、『東京百景』で浅草ロック座を観劇した際にも、似たようなことを書いている。
「どう見たって醜悪だぜ」「畏れ多くもダイアナ妃であっても、女であるからにはああしたものを」(語句は不正確)。

140:旧291
21/03/08 00:55:42.98 .net
このスレが閑散としていて良かった、と思えるようなレスばかりしています。
電子書籍版19の「物書きの端くれ」と「天の時、地の利」、どちらも山口の文章論。読むのは何度目になるだろうか。今読んでも興味深い。
「文学者ではなくジャーナリストの文章から多くを学んだ」とある。
ところが、山口の文章に影響を与えたのは両親である、とも言う。「文章とは一種の機転であり、そういう意味での機転である」とする。
ところが、山口が自分の妹の死について書いた作文を読んだ教師が泣き、編集者として学者を相手に議論になった際に、相手の弁舌に感心しつつもクダラナイと思ってた。

141:旧291
21/03/08 01:09:22.35 .net
なぜか。要するに、魂がないから。
そして、山口は、劣等生である自分であっても、妹の死のような生の実相に関わる事柄を、
真心をこめて書けば、人の心に響くということを理解していた。
加えて、吉野秀雄の奥様の亡くなる直前のことを吉野が歌したものを引用する。
この緊迫感・魂に迫るものこそが文章であり、
従って、こうした緊迫感をもつ本物の小説などは10年に一度も書けるものではない、という。

142:旧291
21/03/08 01:17:28.55 .net
ところが、文章のことで直接の教えを受けるのは雑誌編集者である、とも言う。
山口は、A=BとしたらA≠Cとしなくてはならない、と言う論理学の原則を幾分無視する傾向があり、それがこの文章にも出ている。
しかし、全体として、彼の文章観は,心情の現れということに尽きるのではないか。

143:旧291
21/03/08 01:37:32.31 .net
こうした文章観をもっている山口は、できあがった原稿を渡すときに、どうか没にして下さい、と頼むことが多いとのこと。

144:旧291
21/03/09 00:39:17.67 .net
電子版19巻の草臥山房通信、これは凄い。
とくに、山口夫妻結婚の際の正雄さんの言葉を紹介したあたりが凄い。
正雄さんの言葉にも痺れたが、これを正雄さんと静子さんの間で交わされた言葉でもあった、
とした正介さんの解釈が素晴らしい。お見事です!

145:旧291
21/03/10 23:45:47.47 .net
電子版19巻には、私の大好きな『婚約』が入っている。主人公は徳さん(徳サン)。
「要は、食べる人は食べる、食べない人は食べない」。
山口が国立に引っ越して得た人的財産で最大のものは、ドスト氏と、この徳さんだったのではないか。
徳さんは、『兆治』にも、『金曜日の夜』にも、『わが町』にも(脚色されて)登場する。他の作品にも。
この人をモデルにした人物を描くことは、庶民派山口にとって腕の見せ所だったのではないか。
そして、『婚約』ではそれに見事に成功した。色川さんの解説、もっとこの所を掘り下げて欲しかったな。

146:旧291
21/03/13 00:42:29.49 .net
『武蔵野写生帖』をあらためて読んでみると、前回の見落としを発見。
>>95
>>98
では、キチンと読めていなかった。今回強い印象に残ったのは、
第8回の「美術の秋の 上野の森」。
院展と仁科展の作品を一通り見て、「身を滅ぼしてしまうような作家的燃焼」がない、と断言。
これは凄い。これ、山口の芸術観がよく出ている。

147:旧291
21/03/13 01:04:41.22 .net
続き。
東京都美術館で院展と仁科展を見た後、山口は芸大に行く。
しかしここでも、「光り輝いて見えた」芸大生について、
「なれのはてが院展や仁科展じゃないか」と切って捨てる。
……『武蔵野写生帖』が単行本にならなかったのも少し分かる。

148:旧291
21/03/18 23:41:47.20 .net
電子書籍版には『週刊現代』に連載していた馬券予想対決も収録されている。第17巻の大川慶次郎との対決では驚いた。
前の晩に王・田淵との座談会があり、銀座で三軒を回り、
そのため猛烈な二日酔いとなって、競馬場で迎え酒を飲みながら競馬の神様と勝負。
この時山口は48才かと思うが、これ、メチャクチャな生活と言わざるを得ない。
彼は自分が「安穏が得たい」、「安気に暮らしたい」を連発していたことを自嘲していたが、とんでもない。
むしろ、これも本人の言を借りれば、「驀進した」人生だった。

149:旧291
21/03/24 00:48:54.46 .net
電子版の全集を読んでいる。『男性自身』の単行本未収録のものも多く、実に面白い。
死後に出された『最後から……』にも見当たらなかったものも少なくない。
初期の『男性自身』は、酒場での色恋に関する回が多いことを知った。
そして、驚いたのが「プロと人殺し」。

150:旧291
21/03/24 00:51:53.62 .net
この回は要するに、糖尿病で京都の病院に入院したのに、
見舞いに行くと言っていた酒場の女性達が一人も来なかったことへの恨み言。
山口は酒場に女性は不要であると考えていたかと思ったが、どうもそうではない。

151:旧291
21/03/30 01:28:40.11 .net
電子版の『男性自身』を読んでいる。第5巻で、自分にとっては大事な発見。
4巻まででも薄々そうではないかと思っていたのが、5巻で確信した。
すなわち、週刊誌に発表したものを書籍化する際に、書き換えていた、ということ。
第844回の五味康祐追悼文の末尾は、文庫本では「花を咲かせようとして咲かし切れなかった」、
あるいは「花をつかもうとしてつかみ切れなかった」という文言になっていたはずだが、
電子書籍では「花を咲かせようとした」となっている。
もっと変えられているのは、向田邦子追悼の「木槿の花」の回で、単行本とは少なからず印象が違う。
家で遊んでいる少女の記述、直木賞選考会の緊張感に満ちたやりとりの記述がないのが最大の違いだが、
全体に、単行本の方が締まっている。

152:旧291
21/05/20 02:46:23.16 .net
電子版の講読が進まないので、なかなか書けません。
と言うわけでスレ保全のために、以前の話題の蒸し返し。
山口が生きていたら、大谷の活躍をどう見ていただろうか。
いつか大リーグ球団を日本球団が倒すのを夢見ていた人なので、基本的には喜んだはず。
ただし山口という人は、野球を緻密なスポーツと思っていたので、
あのような身体能力の高さを単純には評価しないかも知れない。
ただ、大谷は盗塁も多い。そこは買ったかな。

153:旧291
21/06/21 23:14:29.41 .net
唐突に、思い出したこと。
山口は、作家は何を書いても良い、ただし、作品として優れたものでなくてはならない。
そうでないと、書かれて傷ついた人が浮かばれない、と書いていた。
確かに彼は、身辺の人間について時として傷つける形で書いた。特にお父さんと弟さん。
その一方で、東急の五島昇についての山藤章二の似顔絵にクレームをつけたことがあった。
死期が迫っているかのごとき描き方をしている、というので。
とすると、作品としては優れていなかった、ということになる。

154:旧291
21/06/28 01:48:37.16 .net
もう一つ、ファンとして違和感を感じたことを書く。
同僚と一緒に上司の家を訪ねた際、山口はオールド、同僚は角瓶を持って行った。
こちらの方が上等なものを持参することになったため、同僚からクレームをつけられた。
事前に言っておくべきだった、とのクレーム。
山口はこのクレームを理解できないと言う。
「自分だったら、あ、オールドがありますね、ではこちらから飲みましょう、と言っていたはず」と言う。
これは堂々とした態度だと思うが、とは言え、一般的に、こうした場合には事前に言っておいた方が良いのも事実。
山口は、「負けた」同僚の言葉に悔し紛れが感じられて、それを嫌ったのではないか。

155:無名草子さん
21/07/22 12:32:21.12 .net
7月22日放送のNHK映像の世紀プレミアム(15)
「東京 夢と幻想の1964年」をご覧になって、こちらにたどり着いた方へ
番組内では
「山口瞳『円谷君、有難う』」とテロップが出ましたが、
正確には
『ツブラヤ君、有難う』です
(文章内ではすべてカタカナ表記で統一)
山口瞳電子全集では第10巻、
単行本では「わが師わが友」(河出書房新社)p.201
に収録されています
(1964年10月22日報知新聞初出)

156:旧291
21/09/18 01:50:07.76 .net
ようやく時間ができたので電子版の講読続き。草臥山房通信が面白い。
山口ファンなら周知のことだろうが、弟さんはなかなか扱いにくい性格の方だった。
麻布の土地を自分のものにするため、親戚一同の前でちゃぶ台をひっくり返すとは……。
なお、戦後すぐの時期に鉄火場に通っていたと知っていたが、賭場の一つが自宅だったとは、
父上もなかなかの方。時代のせいもあるのだろうが。

157:旧291
21/09/22 00:27:09.08 .net
電子版4巻の「通信」で正介さんは、山口の喫煙は自身の肺ガン、治子夫人の中皮腫、ご自分の喘息の原因ではないかと書いている。
さらっと書いてあるところが凄い。
なお、ここに引用されている『アメリカの親戚』の一節は、良い文章。

158:旧291
21/10/26 22:49:37.33 .net
『電子書籍9巻 優雅な生活』。
これまで文庫でしか読んでいなかったので、柳原良平のイラストを見ることができたのは実にありがたい。
とくに、江分利の母の最晩年(逝去直前?)を描いたと思われるイラストが素晴らしい。
この後に何が起こるのか、そしてそれまでの江分利家に何があったのかを知っている者としては、
このイラストは涙無しでは見ることができない。

159:無名草子さん
21/10/29 18:31:04.73 .net
>>158
電子全集第9巻、僕は別の意味で感動しました
江分利満氏の華麗な生活、章の途中で別のエッセイが度々挟まれるんですね
読みにくいな、変な構成だな…と考えて、ハッと気づきました
これは執筆の時系列に徹底的にこだわった、完璧な編年体の全集であるということ
つまり、瞳先生は江分利満氏の優雅な生活で直木賞を受賞されて以降、注文原稿が殺到したと
だから、続編の連載と他誌のエッセイとが交互に出てくる
凄まじい仕事量、それでも決して落ちないクォリティ
そんな瞳先生の命を賭けた思考過程を、進行形で追体験できるんですね
こんな全集、他にないはずです
本当に素晴らしいです

160:無名草子さん
21/10/29 18:34:27.23 .net
そして、こんな便利なサイトができてたんですね
直木賞ホームページ
URLリンク(prizesworld.com)
江分利満氏の優雅な生活に対する選評
松本清張が◎付けてたとは知らなかった!
URLリンク(prizesworld.com)
そして、瞳先生が選考委員になられてからの、全選評集
URLリンク(prizesworld.com)

161:旧291
21/11/01 01:41:22.57 .net
>>159
レスありがとうございます。
まったく、仰るとおり素晴らしい全集ですよね。
治子夫人と正介さんの執念すら感じます。

162:旧291
21/11/12 03:29:24.10 .net
先の柳原のイラストの件、考えてみれば、山口の母も尋常の人物ではなかった。
大きな売春宿の娘に産まれ、財力では不自由なく暮らす。出入りの若い衆で貧乏書生だった山口の父と駆け落ちし、
山口を出産する直前に、夫の先妻から乳児が届けられる。山口の出生届は一年近く遅らせる。
戦争成金となった父の元に芸人や野球選手、相撲取りが出入り。母親本人も長唄。

163:旧291
21/11/12 03:35:12.82 .net
そうだ、その前に山口の父は懲役してしばらく家を留守にしており、
赤貧ので妻と幼子のみが待つ山口家には、借金取りが押し寄せる。
ある夜ついに、母は山口を連れて鉄道に投身自作をする寸前まで行く。

164:旧291
21/11/18 22:53:42.55 .net
誤記だらけ。売春宿→女郎屋。投身自作→投身自殺。
山口の父と母は、戦争で焼け出された後、軽井沢の別荘地を半ばだまし取られる。
山口の父は朝鮮戦争で一時的に復活するが、景気終了ととともに最終的に事業家としてはその生を終える。その後は糖尿病の療養生活に。
山口はこの時期の母の心情について、「父に見切りをつけた」無念があろう、その母の心情が悲しいとする。

165:旧291
21/11/23 12:06:49.52 .net
山口の母上も、かなり鋭い方だった。山口の独特の感性は母親譲りだが、弟さんによると、
「兄貴はお袋が生きていたら小説なんか書きやしない」とのこと。
山口も「困った奴 私の母」で、これに同意していた。つまり母上の眼力をおそれていたということ。
気難しい川端康成を笑わせる名人で、吉野秀雄に対しては畳を叩いて説教した方でもあった。
そうした方の最晩年の姿を描いたあの挿絵、あらためて見事の一言。

166:旧291
21/12/01 23:36:24.77 .net
唐突に、新庄新監督の話題。彼の手腕はまだまだ未知数だが、応援したい。
新庄監督の新方針で山口も評価したと思われるのは、塁上に出た選手は守備側の選手と会話しない、と言うもの。
敵チームの選手と試合中に親しげに話すことには、自分も違和感を覚えていた。
山口も、王貞治さんとの対談でそれを指摘し、「少し品がない」と言っていた。

167:無名草子さん
22/01/10 23:42:52.71 .net
毎日飲むようになって40年弱。山口瞳さんの影響です。

168:旧291
22/01/15 05:09:19.40 .net
>>167
私も、『酒飲みの自己弁護』にそそのかされて飲み始めたクチです。
山口は小学生の時から家の酒の盗み飲みをしていたそうですが、私は中学生の時に父親のウィスキーを飲んでみました。
山口流にストレートで飲んでみたのですが、とても飲めたものではない。
キャップ1杯さえも難しく、酒が飲めるようになる修行は大変だと思ったものでした。

169:旧291
22/02/15 05:38:00.42 .net
唐突に、酒からの連想。
晩年の山口は、酒場の女性が持つべき重要な資質として「誠意」を挙げていた。
『行きつけの店』だったかな。違う気もする。
いずれにせよ、読んだ当初、どうも「誠意」の重要性がピンとこなかった。
あまりにも当然のことと思えたから。
しかし、糖尿病発症期の『男性自身』を読んでいると、どうもあの時期に「裏切られた」体験が、
「誠意」を強調させることになったのではないかと言う気がする。

170:無名草子さん
22/03/02 19:15:36.50 .net
60才になったので、男性自身の60才の日記をスマホで読み始めた。同月同日を読む様にしている。競馬の記述が多いので、自分も先月からささやかに始めてみたけど、まったく当たらない。アハハ。

171:無名草子さん
22/03/05 12:33:47.25 .net
>>150
このスレでも名前があがる向田邦子とかと違って山口瞳再評価みたいなの見かけないのは今読むと女性差別的なのかねえ
単にオヤジの説教うざいのか
同じサントリーても開高健は再評価絶えない

172:無名草子さん
22/03/06 15:29:28.64 .net
>>169
『行きつけの店』には出てこなくて、
電子全集第25巻所収「新入社員諸君!それは誠心誠意です 」の中に、
「友人の長編小説に出てきた銀座で生き銀座で死んだホステスの話」として、誠意というキーワードが出てきます
初出1989年4月1日朝日新聞ほかサントリー広告
>>170
それは新しい着眼点ですね!
瞳先生が(公的に)還暦を迎えられたのが1986年11月3日
電子全集第6巻所収男性自身1180「還暦」
初出1986年週刊新潮11月20日号
その読み方ですと、今週は
男性自身1145「早春 」
初出1986年週刊新潮3月13日号
横井庄一に小野田寛郎か、懐かしいな

173:無名草子さん
22/03/06 20:35:45.87 .net
>>172
ごめんなさい、1年間違えました
今週は男性自身1197「叱られる」でした
初出1987年週刊新潮3月26日号
電子全集第6巻
35年前ですね

174:旧291
22/03/06 22:04:39.58 .net
凄い、一気に盛況となりました。一つ一つ、きちんと考えてからお答えします。
それにしても、山口が今のウクライナ情勢を見ていたらなんと言ったか。

175:無名草子さん
22/03/07 00:29:01.75 .net
>>174
その件について、国立ロージナ茶房のInstagram(id=poanha)にて、瞳ファンにはお馴染みの、初代マスター伊藤接氏のエピソードが綴られています
URLリンク(www.instagram.com)
そもそもロージナとはロシア語で故郷のことだそうで、そこからもわかる通り、ロシアにはかなり親しみをお持ちだったご様子です
現在の状況をご覧になったら、どう思われたでしょうね

176:旧291
22/03/07 22:01:04.03 .net
>>172 ありがとうございます! そうでした。
その「友人」は、常盤新平さんでしたよね。

177:無名草子さん
22/03/17 00:16:05.71 .net
日記形式で書かれているので、
自分の現状と付き合わせて読むと、
面白いというか感慨深い。
血圧の記録がしょっちゅう出てくる。
自分も毎日血圧を記録しているので、
山口氏と比較して喜んだり
落ち込んだりしている。

178:無名草子さん
22/03/17 00:21:16.30 .net
>>174
氏の「根本思想」からすると、
ウクライナが白旗を振るべきと
考えるのでしょうか?
今ひとつ想像できませんね。

179:旧291
22/03/18 21:17:59.01 .net
>>178
レスありがとうございます。
仰るとおり「根本思想」の論理で言うと、抵抗すべきではないと言うはずですよね。
そして山口は、「丸腰の人間を撃つような人間がいる世界にはいても仕方ない」と言っていました。
「河川敷の決闘」での、「憲法九条に命をかけた」との言葉に通じます。

180:旧291
22/04/02 06:23:24.44 .net
「非武装中立に命をかけた」でした。
>>171
山口の女性観は、今日の基準からすると偏っていたでしょうね。
これは本人も認めていたように、若い頃に女性と知り合う機会があまりなかったことも関係するかも。
中高は男子校、大学は共学だがほとんど行かず。青少年期に学友として女性と交際できたのは鎌倉アカデミアでの数年間のみ。

181:旧291
22/04/02 06:32:26.26 .net
社会人となってからは、奥さん以外には、当時のBGと酒場の女性が女性観の材料。
BGに対する山口の評価はかなり辛辣だった。
酒場の女性との疑似恋愛の作品は、今ではほとんど読者を獲得できないものだろう。
(自分は読んで印象深かったのですが)

182:旧291
22/04/11 21:00:11 .net
ただし、山口の女性観の偏りを私のように後の世代の人間が難ずるのはフェアではないだろう。
『酒呑みの自己弁護』にあったように、山口の世代は、女性を「知る」のは無理だったのだ。
三島由紀夫の「あの俊秀をもってしても」やはりダメだし、吉行淳之介に対してさえも、遠慮がちながら「純情」と言っている。

183:旧291
22/04/17 08:12:36.48 .net
4/15の朝日新聞の耕論欄で、山口の反戦論が紹介されている。
山口は、殺すのは嫌だ、それ位なら国が滅びたり、殺されりした方が良い、と書いたと言うもの。
やや端折った紹介だが、本質は捕らえている。
紹介したのは1984年生まれの社会学者で、山口が死んだときはまだ小学生だったはず。
この年齢の方でも山口を読んでいたと知り、嬉しくなってしまった。

184:旧291
22/04/20 22:07:39.90 .net
出典を示すのを忘れていました。上記は「私の根本思想」から。
以下は、別な話。小生も50を過ぎて、バーの類に行くことがある。ただし女性はいない店。
カウンターで一人で飲んでいると、山口はこうした時に何を考えていたのかな、と思うことがある。

185:旧291
22/04/20 22:13:55.35 .net
そこで思い出すのは、『なんじゃもんじゃ』での言葉。
戦後の闇市でカストリ焼酎を飲んでいるときに鷗外の遺言が囁きかけてきた、という。
初めて読んだ時には何とも思わなかったが、今ではこれはかなり高尚で格好の良い、少し大げさに言えばキザに近いことと感じる。

186:旧291
22/04/20 22:23:25.34 .net
文字化けしてしまった。鴎外の遺言です。
山口はこれに痺れたためにその文言が頭の片隅に残っており、それが不意に思い起こされるということ。

187:無名草子さん
22/04/29 19:00:18.41 .net
GOROで山口瞳を知って彼の書籍は全部集めた
もっと評価されて良い作家だと思う
老眼で読めない人向けに大きな字での再販をしてくれ慎重社さん!

188:無名草子さん
22/04/29 19:25:51.67 .net
山口瞳電子全集7還暦日記を読んでいる。自分は現在62才だが、山口氏の62才の日記を、その日に合わせて読むようにしている。
氏は脳梗塞や前立腺肥大に悩みながら、リハビリと称して競馬に入れ込んでいる。
スケールは小さいが白内障や難聴に悩む自分も、今年から競馬をやっている。はじめは分からなかったが、競馬を面白いと思うようになってきた。皐月賞を三連複で取れたので進歩しているのだろう。

189:旧291
22/04/30 01:00:04.41 .net
>>188
山口は、一般的に言えば、遊びが面白いのは60代の初めと言っていますよ。
競馬(打つ)以外にも、飲みと買いに遊びの幅を広げられてはいかがでしょうか。

190:旧291
22/04/30 01:05:22.62 .net
あれ、山口は降圧剤を飲んでいたのでしたっけ?

191:旧291
22/04/30 11:00:42.53 .net
>>188
申し訳ありません。遊びが楽しいのは50代初めと言っていましたね。失礼しました。

192:無名草子さん
22/05/01 23:28:31.83 .net
>>191
アハハ、そうでしょうね。
「飲む」方は現役ですが、60越えて弱くなってきたなという自覚があります。元々酒好きで、酒呑みの自己弁護が山口瞳との出会いです。
山口氏は一穴主義と公言してたくらいだから、買う方はどうだったのでしょう?

193:旧291
22/05/08 08:21:29 .net
>>192
山口の「浮気」は、山口ファンにとっての大いなる謎ですよね。前スレでも議論になりました。
まあ私は、未遂犯だったと思っています。

それにしても、今回の電子書籍のおかげで、山口の「競馬真剣勝負」を読むことができました。
相当に時間と労力を費やしていますね。それに将棋、麻雀を加えると、「打つ」キャリアは凄かった。

194:旧291
22/05/09 22:17:18.41 .net
>>188
返す返す申し訳ないです。気になって調べたら、『男性自身』1239回で、
遊びが面白いのは60代初めとやっぱり書いていました。
ちょっと自分の頭が心配になってきた。

195:旧291
22/06/01 22:29:50.31 .net
電子書籍の11に、北杜夫による『マジメ人間』の書評がある。
冒頭で「女優に言わせると私はマジメ人間である……」と書かれているが、これは「女房」でないとならない。
自分のことを棚に上げるようだが、北杜夫のミスだとすると、がっかり。

196:無名草子さん
22/06/02 15:23:19.70 .net
田沼武能さん、亡くなられましたか
あぁ、みんないなくなってしまうね

197:無名草子さん
22/06/03 08:09:37.22 .net
>>196
残念ですね。

198:無名草子さん
22/06/03 08:11:53.12 .net
山口氏存命なら、サントリーに対し何と言及しただろうか?

199:旧291
22/06/04 23:55:34.51 .net
>>198
悲憤慷慨に駆られたのではないかと想像します。
その時の首相が誰であってもそう思ったでしょうが、
特に安倍氏に対しては、日本語を丁寧に使えない人間として、
また菅氏に対しては、日本語での対話を蔑ろにする人間として、批判したと思います。

200:旧291
22/06/05 00:00:38.22 .net
何だか変なレスになっていました。
サントリーに対して悲憤慷慨したでしょう。
その一方で、安倍・菅両氏に対して、批判的だったはずです。
違う次元のことをまとめて書いてしまいました。失礼。

201:旧291
22/06/27 22:35:14.07 .net
いやはや、暑いですね。皆様お元気でしょうか。
山口は、総じて夏の過ごし方は老人の方が上手、と書いていましたが、今年はなかなか大変そうです。

202:旧291
22/07/10 22:49:13.11 .net
大変な事件が起こってしまいました。山口ならどのようにコメントしたかな。
反安倍だった(はず)にせよ、もちろん強く非難はしただろう。
それ以上に何を言ったかは、ちょっと思いつかない。

203:無名草子さん
22/07/12 16:08:25.16 .net
護憲の人だった山口氏は、改憲の安倍元首相を認めるはずはない。
しかし今回の銃撃殺人は、容疑者の母親の宗教狂いによる家庭の経済的破綻が動機と判明したのだから、憲法をテーマに語ることはなかっただろうと思います。

204:旧291
22/07/19 00:50:31.89 .net
>>203
その通りかと思います。
それと、向田邦子が田中角栄より先に死にたくない、と言ったことについて、良い印象を受けなかったと書いていたように、
好き嫌いと生死は別と考えていたようですから、やはり今回の事件は安倍氏の政治とは切り離して、犯人を非難したでしょうね。

205:旧291
22/07/19 00:51:29.59 .net
それにしても、国葬はやめて欲しい。自民党葬にすれば良い。

206:無名草子さん
22/07/20 13:00:08.37 .net
>>205
ホントですね。
統一協会の意向でしょうかね。

207:旧291
22/07/30 01:00:14.64 .net
今回の事件で、自民党政治、いや戦後日本の政治の暗部に光が当たることになった。
こういう時は『週刊新潮』の反権力の姿勢が頼もしい。統一教会と自民党の関係をどんどん暴露して欲しい。
それにしても、政治家は恥知らずでないと務まらないな。

208:旧291
[ここ壊れてます] .net
里見香奈さんが頑張っています。
山口は、男と女は生殖面だけでなく精神性においても本質的に違うと考えていた人間。
その根拠の一つには、本人は明言していないが、女性の将棋棋士がいないことがあったのではないか。
「女は、自分の王が責められているときに我慢ができない」との男性棋士の言に深く共感していた。

209:旧291
[ここ壊れてます] .net
しかし、里見さんがはれて4段となれば、この見方も修正が必要となる。どうなるかな。

210:無名草子さん
22/09/22 13:27:23.15 .net
昨今の、香川某やENEOSの会長の振る舞いは、山口氏から見たら言語道断だろうな。
女性への暴行は論外だし、田舎者じみた、金さえ払えば何やってもいいみたいな態度は心底嫌ってたから

211:無名草子さん
22/09/23 16:39:48.77 .net
若くて鬱屈していた頃に、寿司屋で洒落にならないことをやった(言った)というやんちゃ告白もありましたが、基本的にはお店は使わせてもらうところというスタンスでしたね。

212:旧291
22/10/02 07:02:14.75 .net
>>210
全くおっしゃるとおりでしょうね。
どのエッセイだったかな、クラス会の後に酒場に行って、同級生が隣の女性にこいつは小説家だと言うが、嘘でしょうと言われたという話がありました。
「だって小説家というのは触るのよ」との理由。

213:旧291
[ここ壊れてます] .net
>>211
飲食店に対する山口の低姿勢/遠慮しいしいを、治子夫人はお好きではなかったそうですね。
夫婦喧嘩の原因の大半はそれだったとか。


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