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★加納城
▽忘筌亭
「忘筌」
意を得て言を忘れ、理を得て教を忘るるは猶、
魚を得て筌を忘れ、兎を得て蹄を忘るるが如し
筌は「ふせご」という竹編みで作られた漁具。蹄は兎捕りに使うわなのこと。筌や蹄は魚やウサギを捕らえるにはなくてはならない大事な道具である。
しかし、それらはあくまでも道具であって、目的ではないはずである。目的は魚やウサギである。だから、目的の魚やウサギを収獲してしまえば道具は不要であって、次に使うまでどこかに仕舞っておけばよいものである。
禅者は悟りを得んとして弁学修行に励むも、仏意を得、真理を会得すれば手段方便としての教説は不要であり、いつまでも理屈理論にとらわれてはならない。
ことに、臨済禅では古則公案を手段として悟境を高めとうとする。その公案こそ筌と蹄にあたるものである。目的はあくまでも悟りであり、悟境を磨き高めることにある。だがその公案に執われ目的を見失ってしまう学道の人が少なくない。
私たちの日常でも人生の大事なことを忘れ、枝葉末節にこだわり、執着していることが多い。あらためて忘筌(ぼうせん)の語を味わい直したい。
京都にある大本山大徳寺の塔頭に孤篷庵がある。開基は小堀遠州で、茶道遠州流で知られるが、何よりその遠州公の茶室「忘筌」(国の重要文化財)が有名である。
長井利隆は、小堀遠州に先立つこと百年、加納城に忘筌亭を造った。フィクションなので、何でも造れるのである。
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