25/06/06 20:18:56.55 2klkZEMb.net
炎が爆ぜ、雷鳴が地を割る。
レンは息を切らし、血まみれの剣を構えた。足元には砕けた瓦礫と、倒れた騎士たちの亡骸。
空に浮かぶ“神”は、まばゆい光をまとって降りてくる。
「ここまで来たか、異世界の勇者よ」
「……仲間を殺したのは、お前か」
「運命だ。世界の均衡を保つため、君たちは“滅びるべき存在”だった」
神が指を鳴らす。
瞬間、無数の光の矢が天から降り注いだ。レンは跳ねるように回避し、剣を構える。目が焼けるような輝きの中を、雷のステップで切り裂く。
「うおおおああああッ!!」
地を蹴った瞬間、魔力が爆発する。スキル《迅雷斬》―高速の斬撃で神の胸を狙う。
が、届く前に光壁が張られ、跳ね返された。体が壁に叩きつけられ、肺が潰れる。
「……くそがっ!」
血を吐き、立ち上がる。剣を拾い、再び駆けた。
攻撃、回避、カウンター。
《竜顎裂き》《裂空の牙》《魔喰らいの斬》。
すべての技を、限界まで使った。魔力も、命も削って。
「まだ届かねえんだよ……!」
叫びながら剣を振るう。かつて仲間がくれた“希望”の剣。
刃は折れかけ、指は血に染まっていた。
やがて―
レンの最後の一撃が、神の肩を斬り裂いた。
神が眉をひそめる。「なるほど。君には“意志”がある。だが、それは脅威だ」
神の手から放たれた光が、レンの心臓を貫いた。
胸に激痛。意識がぐらつく。
「これで……この世界は……救われるのか?」
「君がいなくなれば、また安定する。だから、感謝するよ」
レンは笑った。かすかに、悔しげに。
「だったら……この世界なんて、最初から滅びてればよかったんだ……」
剣が落ちた。
世界は静かに、いつもの均衡へ戻っていく。
―勇者の存在を、誰も知らぬままに。