ワイが文章をちょっと詳しく評価する!【205】at BOOKALL
ワイが文章をちょっと詳しく評価する!【205】 - 暇つぶし2ch804:この名無しがすごい!
20/12/03 11:10:47.67 DaVhLXKQ.net
批評をよろしくお願い致します。
実はお恥ずかしながら2ちゃんへの書き込みが10年以上ぶりで、うまく書き込めていると良いのですが。もしご迷惑をお掛けしてしまったら申し訳ありません。
なろうに載せているのをそのまま転載しました。
拙い文ではありますが、よろしくお願い致します。
「なんだか、急に臆病な性格になりんしたなぁ。」
そう祖母は言うと、テレビに目線を向けたまま、目の前の炬燵の上の林檎をフォークで差し、林檎の半分をしゃくりと音を立てて頬張った。
 炬燵の中の足の指先が冷えているのを感じた。僕は何も言い返せない。自分でも自覚しているからだ。
 二十代の頃は、自分の知らない事や新しい事、興味を持った事には意欲的に取り掛かってきた。
 しかし三十路を超えた辺りから、どうも億劫なのである。保守的になったのだろう。
 原因は、二個下の元恋人との別れだと自分でも解っている。端から見たら、そんなことで、と鼻で笑われるかもしれないけれど、僕はその恋の終わりで限りなく心と己の自信を消耗した。
 別れ際には、「あなたのような臆病な人とは長い目で見てやっていけない。」そうハッキリ言われた。
 慎重なんだ、と心の中で反論したが、その言葉は彼女に届くはずもなく、彼女の後姿を吹き抜けた風にかき消された。
 祖母はそう僕に言ったことは、ついと忘れたのか、なんでもなかったかのように「あんたも林檎お食べ。」と勧めてきた。
「うん、ありがとう。」
 僕はそう言って目の前の皿に立てかけられたフォークに手を伸ばした。
 この家は、木造でとても古いので冬は凍えるように冷える。炬燵とエアコンの暖房が欠かせない。
 お年寄りではエアコンの風を嫌がる人も多いと聞くが、うちの祖母は「エアコン様様や」と、むしろ積極的にエアコンを使う。僕のスマホで画面を出すところまでを僕が用意してあげれば、指をスライドしてフルーツをスパスパと切るゲームも嗜む。齢84である。全く、恐れ入ったものだ。
 この祖母との古民家での二人暮らしは、心地が良い。小さい頃からおばあちゃん子だった。僕の実家は京都だが、盆暮れ正月、祖母とその頃は生きていた祖父に会いにこの山梨県甲府市の山の梺にあるこの家に遊びに来るのが、何よりも楽しみだった。電話もよくしていたし、小学生の頃祖母に会いにある日突然一人で勝手に出かけて大騒ぎになったこともあった。
 祖母はいつも優しい。今も昔も、祖母が冗談を言ってフフ、と茶目っ気たっぷりに笑う祖母の笑顔を見ると、僕も釣られてよく笑った。
 そんな暮らしが気に入っている。
 祖母が寝ると言うので、「おやすみ」と声を掛けると、祖母はゆっくりと立ち上がりながら、「あんたもはよう寝んさいね、はいおやすみ」と言って襖を静かに開けて居間を出た。
 テレビの左下に出る小さな時刻は午後22時を差していた。足の指先が温かいのを感じる。
 残りの大皿の上の林檎をたいらげ、大皿とフルーツ用の小さなフォーク二つを洗い、エアコン、炬燵、電気のスイッチを切って僕は二階へ上がった。階段を上る手前にある祖母の部屋の襖から、羽毛布団が掛けられる音が聞こえた。山梨の夜の11月は冷える。
 臆病者になって冷え切った僕の心は、炬燵でぬくもりを得る。

お読みくださりありがとうございましたm(_ _)m


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