20/10/03 09:50:21.71 2FkIOFob.net
>>349 ラレもマッチ吹き消してたしセーフ(アウト)
「おい。貴様、謝るなら今のうちだぞ」
ひどく冷たい声だった。
ゼペスは容赦のない視線を向け、ぐっと拳を握る。魔力の粒子が集い、そこにいくつもの魔法陣が描かれる。
ひい、ふう、みい……五つの多重魔法陣か。
ぱっと彼が手の平を開けば、闇を凝縮した漆黒の炎が召喚された。
「な……!?」
「ほうら、驚いたか。いいぞ。命乞いをしろ? 俺の靴を舐めれば許してやる。でなければ、神々すら焼き尽くすと言われたこの闇の炎、<魔炎グレスデ>で、そのお嬢ちゃんの顔を骸骨のようにしてやってもいいんだぜぇ。ひゃはははははっ!!」
な、な……なんという低次元の魔法術式だ。この程度の<魔炎グレスデ>を扱うのに、わざわざ五つもの多重魔法陣を描いたというのか。
さすがの俺も、これだけ大層な口を利いて、こんな子供の火遊びにも劣る魔法を見せられては、驚くしかないぞ。
我が子孫でありながらも、魔力にも恵まれなかったとは、なんと哀れな奴か。
「ふっ」
と、息を吐く。
「……なん……だと……馬鹿なっ!? そんな馬鹿なっ!?」
ゼペスの手の平に召喚された<魔炎グレスデ>は、俺の息に吹き消されていた。
「貴様、貴様ぁぁ……いったい、なにをした……!?」
「なにを驚く。マッチの火を息で吹き消しただけだ」
「俺の<魔炎グレスデ>が、マッチの火だと……!?」
そもそも俺とゼペスでは根本的に魔力の使い方が違う。奴は魔力を必死にかき集め、懸命に魔法を行使する。だが、俺はその所作一つに自然と魔力が伴うのだ。
神話の時代ではこれぐらいのことができなければ、死は確実だったが、いやはや平和ボケというのはここまで魔法を退化させるものか。
しかし、良い時代ではあるのだろうな。ここまで弱い魔族が、こんな大層な口を利けるのだから。
「貴様ぁ……これほどの侮辱……生きて返すと思うな……」
しかし、まさかとは思うが、こいつ……まだレベルの違いがわかっていないのか?