20/10/02 12:50:36.35 HesnmpXr.net
>>348
兄さんは凶悪な笑みを浮かべ、愛刀の切っ先をこちらに突き付けた。
「くそ……っ」
仕方なく、腰に差した剣を引き抜いたそのとき―違和感に気付いた。
「……ん……?」
一日ぶりに握った剣は、恐ろしく手によくなじんだ。
なんというか、そう……手と・・剣の・・境が・・わからない・・・・・。
まるで体と剣が一体になったかのような……とても不思議な感覚だった。
俺が小首を傾げていると、レオ兄さんは天高く右腕を掲げる。
「さぁさぁ、驚き慄おののき刮目かつもくせよ! これが神より授かりし、レオニクス様がギフトの力だ! ―<黄金火焔レファルド>ッ!」
彼が勢いよく右腕を振り下ろせば、金色の光を纏った光炎こうえんが、俺に向けて解き放たれた。
<黄金火焔レファルド>―レオ兄さんが天授の儀で獲得した、とてつもなく強力なギフトだ。
彼はこの力で百の魔獣を打ち払い、王国政府から『火焔かえんの騎士』の称号を授与された。
だけど……。
(なんだ、あれは……? もしかして、魔力を込めてないのか?)
迫り来る黄金の炎は、マッチの火に劣るほど弱々しく見えた。
(こんなの剣を振るうまでもないな)
俺が吐息をフッと吹き掛ければ、やはりというかなんというか、黄金の炎は一瞬にして消し飛んだ。
「ん゛なっ!?」
レオ兄さんは目を大きく見開き、まるで餌を求める魚のように口をパクパクと開閉させる。
「きょ、今日はなんか調子が出ねぇみたいだな……っ。こりゃ向かい風の影響もあるかもしれねぇ……!」
「……向かい風……?」
今は完全に無風状態だ。