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もし犯人が審判官のキスに対してなんらの感動をも覚 えず、かえってこれを嘲笑しなが
ら立ち去ろうとも、決して迷いを起こしてはならない。 これは詰まるとこ ろ、まだ彼の
時が来ないのであって、来べき時には必ず来るに違いない。また来ないとし ても同じこ
とで ある。もし彼が悟らなければ、そのかわりにほかの者が悟って苦しむだろう。そう
して自 分で自分を責め るに違いない。すると真理は充されることになるのである。人は
これを信じなければなら ない、必ず信じなければならない。この中に古聖の希望も信仰
も、ことごとく蔵せられているからである。
たゆみなく働く がよい。夜眠りに就いた時、『自分はなすべきことを果たさなかった』
と思い至ったなら、 すぐさま起き出し てそれを果たさなければならない。また自分の周
囲の人たちがことごとく意地悪い冷酷な 人間であっ て、自分の言葉に耳を傾けてくれな
かったら、彼らの前に倒れて赦しを乞うがよい。なぜ ならば、自分の 言葉に耳を傾けさ
せ得なかったのは、事実自分に罪があるからである。もし相手が憤激したために説き 諭
すことができぬならば、無言のまま恥を忍んで彼らに奉仕するがよい。
しかし決して望みを失っては ならない。もしすべての人が自分を見捨てた上、無理無体
に自分を追い払ったならば、そ の時はただ 一人になって大地に倒れ、土のおもてにキス
して、涙で土を潤すがよい。さすれば、土は その涙から実 を与えてくれるだろう。たと
えその淋しい自分の姿を、誰一人見聞きしなくとも、結果は 同じである。最 後まで信ぜ
よ。たとえ地上におけるすべての人が堕落して、信ある者は自分一人になって しまおう
とも、残れる唯一人たる自分が 贄を捧げて、神を賛美すればよいのである。もしそのよ
うな人 が二人めぐりあ ったなら、それでもはや全き世界が、―生ける愛の世界が出現
したのであるから、感激 の情をもって 相抱擁し、神を讃美しなければならない。なぜな
らば、わずか二人きりであるけれど、神 の真理が実現 されたからである。