14/03/28 03:20:33.70 .net
『それから』もいい
彼はしばらくして「今日始めて自然の昔に帰るんだ」と胸の中で云った。
斯う云ひ得た時、彼は年頃にない安慰を総身に覚えた。
何故もっと早く帰る事が出来なかったのかと思った。
始から何故自然に抵抗したのかと思った。
彼は雨の中に、百合の中に、再現の昔の中に、純一無雑に平和な生命を見出した。
其生命の裏にも表にも、欲得はなかった、利害はなかった、自己を圧迫する道徳はなかった。
雲の様な自由と、水の如き自然とがあった。
さうして凡てが幸(プリス)であった。だから凡てが美しかった。