島尾敏雄at BOOK
島尾敏雄 - 暇つぶし2ch35:吾輩は名無しである
10/10/25 22:55:33 .net
蓮實:だけど、いま柄谷さんが島尾敏雄の小説を読んだのを聞いていて思ったんだけど、すごく日本浪曼派っぽい文体ですね。
柄谷:たぶんそれは一般的な気分としてあったでしょうが、島尾は本当に“人間魚雷”になるわけで、そこにイロニーの余地は一切ありませんよ。
    あれは、むしろ旧約聖書的な終末のイメージでしょう。一方、三島は死ぬはずがないのに、あるいは死ぬはずがないから死の観念、滅亡の
    観念をもてあそんでいたに過ぎない。
浅田:そう。だからそういう意味でいうと、徹底的な偽物としての三島由紀夫が極限的なパラダイムであるのは事実でしょう。戦争で世界が滅び、
    自分も「世界最後の作家」として夭折する筈が、何の意味もなく生き残ってしまった。従って、それはゾンビのような偽物の生であり、後は
    その虚構を美しく磨き上げるだけだ、と。このまことしやかな物語自体を含めて、すべてが嘘なんですね。その完璧な嘘に対抗できるリア
    リティというのは、非常にわずかな人しか持てなかった。
蓮實:大岡昇平ですら、緒戦では三島に負けてるんです。


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