25/08/10 20:31:49.68 .net
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第2局を目前に控え、杉本は苦しんでいた。後手番をどう乗り切ればいいのだ。
開幕前の取材で杉本が「後手振り飛車は常に課題の局面が浮かんでいる状態です。キツイなんてもんじゃない」と話していたのが印象に残っていた。日々の取材の中でも、振り飛車党からそういう声はよく聞いていた。後手は先手に比べて1手遅いのが少し不利になるという理屈だが、具体的に何が厳しいのだろう。
すると杉本はため息をつきながら切り出した。
「AI(人工知能)で調べると評価値が悪いのであれも苦しい、これも厳しいとなって、指し手の可能性がどんどん狭まってきます。あと対振り飛車の対策は、急戦も持久戦もどちらも有力なんですよ。居飛車党の急戦派は急戦で終わっていると感じているし、持久戦派もまったく不満なしと思っている。実際にどちらを指されても、振り飛車側はちょっと息苦しいんです」
現代風な表現をすると、居飛車党の「上から目線」に苦しめられているのだ。
「確かにめちゃくちゃ上からですよね(笑)。でも居飛車党からしたら、『振り飛車党って、なんでやってるんですか?』ぐらいのテンションだと思いますよ。『私たちは相掛かりと角換わりの定跡をこんなに覚えて頑張っているのに、振り飛車党って少し苦しい振り飛車を自ら選んでおいて、何で偉そうにしてるんですか?』という雰囲気の人もいますからね(笑)。研究会はだいたい居飛車が3人、振り飛車が1人の割合になることが多いんですけど、こっちは互角ぐらいと思っている局面でも、居飛車党の人が『ちょっといいと思った』とか言ってくると、もう無抵抗で『いやあ、ちょっと苦しかったですね』って下手に出ちゃう(笑)。たまに振り飛車党が2人いると、『そんなことないよね』みたいな感じで抵抗するんですけど(笑)」
そんなにきついのなら〈飛車を振らなきゃいいじゃん〉と思った方、そうはいかない。ここまで培ってきた経験を簡単に捨てるわけにはいかないのだ。
それに棋聖戦の直前に相居飛車の定跡を覚えたとしても、そこを主戦場にしている藤井に太刀打ちするのは難しい。それこそ付け焼刃というやつだ。