20/05/11 11:19:36 WIrEXINv.net
性質のよくない人間の場合にはこの親の愛をまったく放棄することにもなりかねない。したがって
われわれは最も純粋な形ではこの愛の働きをむしろ動物において観察する次第なのだ。もっとも人間の
場合、親の愛はそれ自身としてみればけっして弱いわけではない。人間においても個々の場合には子供
への愛情が自己愛を完全に圧倒し、自分の生命を犠牲にすることさえある。たとえばつい先ごろもフラ
ンスの諸新聞はロート県のシャアールで或る父親が、兵役のくじに当たった息子のために、つまり息子
が寡婦の長男となって兵役をのがれられるようにと自ら命を断ったと報じている(『ガリニャーニの使
者』一八四三年六月二二日付)(1)。けれども動物の場合は思慮分別がないから本能的な母性愛が直接か
つ純粋に現われ(雄は自分が父であることをたいていは意識しない)、したがってその現われ方も明瞭
であるし完全な