12/01/07 14:48:35.26 NjHFlaqS
治療を通して学んだこと
「ある種の愛情」が人間の心理発達にとって根源的に重要であるということ。母子間の共生関係の中で基本的信頼感が
培われやがて子供が分離と自律の課題に直面する時期の0歳~3歳の間の愛情のことである。親の側に即していえば、
子供を将来しかじかの人物にしたいとか、あれこれの職業に就かせたいといった、そうした親が子供に対して個人的・現
世的な願望を抱く以前の時期の愛情。つまり元気な子になることを願ってひたすら慈しみ育む時期の愛情。子供が自律
の時期にさしかかったとき、親が自己の分離不安を克服して子供の自律を見守る愛情のことである。
これを一つの光景に例えよう。子供が初めて立って歩き出したとしよう。このとき親が思わず支えようとして手を差しのべ
たとする。しかし子供はその手にかまわずフラフラ歩
くうちに転ぶかも知れたい。子供が助けもかまわず歩いて転んだからといって、親はこのとき眉をひそめるだろうか。いや
むしろ目を輝かせて子供を見るだろう。
境界例患者が求めているのはこのような“反映”の眼差しと愛情だと思う(注6)。
患者の呈する多様な症状や行動の背後には、こうした愛情の喪失不安がある。