12/04/13 17:02:56.10 発信元:122.26.111.186
>パン
白蓮「窯の温度はよし……はい」
アカツキ「ふむ……白蓮殿、その……パンはあとどれくらいかかりますか?」
白蓮「フフ。大丈夫ですよアカツキさん。一時間もかからないで焼きあがります」
アカツキ「う、うむ」
白蓮「はぁとちゃんが教えてくれたちゃんと発酵させるパン料理ですと、どうしても時間がかかりますからね」
二人は縁側に並び、静かに玄米茶を飲む。
アカツキと白蓮の仲も、発酵するように静かに進んでいくだろう。
……と、二人を見守る命蓮寺に住まう総勢10名以上の、
常人ならざる妖怪聖人仙人のレディたちは悶絶しながら思った。
148:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/04/18 16:12:41.02 発信元:206.223.150.45
>>147
くっ、このパン甘すぎるぜ…今から歯医者行かにゃならんのにw
乙です
一方お隣りのロジャースさん家は
今日も朝飯をパンにするか白飯にするかでNo Escape!! でしたとさ
149:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/04/24 20:38:42.25 発信元:111.86.142.208
某所のはぁと様が真っ黒すぎて吹いたw
あの考え…人格が悪魔に支配されt(ry
150:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/04/24 20:42:13.23 発信元:124.214.211.247
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151:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/04/25 23:11:47.37 発信元:126.189.244.219
pixivのイラストも霊夢改変系ばかりでカプ絵見なくなってきたし、もう終わりかな・・・
152:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/04/26 01:24:09.65 発信元:223.133.46.161
アマガミの七咲を見るたびに
七夜と咲夜のカプかと思ってしまう俺はMUGEN脳
初めて見たストーリーがリュウが咲くだったせいだな
153:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/04/26 01:56:25.32 発信元:124.146.174.15
しぶは文字の方は盛り上がってるようだが
154:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/04/26 18:25:41.98 発信元:206.223.150.45
>>151
You、脳内妄想ペア曝しちゃいなYO!
155:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/04/26 18:52:45.05 発信元:175.108.245.109
ERROR:アクセス規制中です!!(KD\d+\.ppp-bb.dion.ne.jp)
ここで告知されています。
ホストKD175108245109.ppp-bb.dion.ne.jp
名前: 名無しさん@そうだドライブへ行こう
E-mail:
内容:
>>410
スズキのお客様相談窓口に電凸すればOK。
★ アクセス規制中でも書ける板たち ★
--------------------------------------------------------------------------------
こちらでリロードしてください。 GO!
アクセス規制・プロキシー制限等規制は、2ちゃんねるビューア を使うと回避できます。
自分で解決してみよう! 書き込めない時の早見表
分からないことがあったら2ちゃんねるガイドへ。。。
156:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/01 00:01:13.46 発信元:118.109.221.153
求聞口授のネタはこっちにも影響するんだろうか
みすちーがギター弾けるらしいよ、とか、さとりんがロリ巨乳らしいんだけど
草薙さんそのへんどうなのよ、とかだけども
157:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/01 05:21:23.89 発信元:124.146.174.71
え。俺は白蓮さんが弟子の行状知らないうっかりさんとか、こいしちゃん寺入信とか、さとりんが隠れ同人作家とか聞いたが
そのへんどーなんですか(ry
158:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/01 17:50:19.53 発信元:114.155.195.48
なんというか、みんな二次創作よりも愉快な性格してるな、と・・・
159:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/02 14:07:14.50 発信元:206.223.150.45
そんな本が出てたのかー 早く手に入れねば
鯉のぼりのシーズンになったが、鰤光ペアは飾るのか否か
160:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/02 17:13:01.75 発信元:1.78.6.88
>>156
俺も早く買いたい
みすちーがギター引けるのは闇夜のライブ的に超でかくね?
161:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/02 18:19:53.42 発信元:126.233.21.215
資料が増えるのはありがたいが、東方+その他スレ化が加速するのはにんともかんとも
もっと発掘してもいいのよ?
162:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/02 21:36:27.80 発信元:202.229.178.8
かといって好きなタッグに関係する話するなというのもおかしな話だがな
アキトもボーカルだからみすちーがギター&コーラスできたら確かにデカいなあ
163:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/03 02:04:44.91 発信元:114.146.70.88
俺のアカ白妄想は更に加速した!
164:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/06 22:04:18.20 発信元:114.17.180.220
ほむほむとスコールか…アリだな。
165:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/08 13:53:08.61 発信元:206.223.150.45
時間停止(アルティミシア)+銃火器(ラグナ)と申したか
GFジャンクションに副作用があったりラスボスが逆さ吊りだったり意外にこじつk繋げられるなw
願わくば、MUGEN世界の魔法少女達が自分の『騎士』に巡り会えますように、と
キシン? 何の事かな
166:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/08 19:50:38.66 発信元:111.86.147.99
NKT……
167:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/10 20:35:05.41 発信元:122.26.5.3
彼女たちの上司は高確率で聖騎士団長だな
雷属性の
カイ爆発しろ
168:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/10 22:55:45.18 発信元:111.86.147.109
むしろ敵対しそうだが
169:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/11 17:44:22.59 発信元:206.223.150.45
聖騎士団や聖霊庁は魔法少女の保護なり支援なりしてそうだが
聖堂教会や神聖クラブ辺りは喜々として排除に動きそうだから困る
170:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/11 19:02:29.73 発信元:110.67.196.239
組織の中の個人の考え方の違いだろう。
カイやペトラは人外にも心があるなら割りに寛容だが、埋葬機関なんかは人外=必殺な考え方だし。(一応全面的に利用できる場合は利用するから死徒いるけど)
結局は組織の中で立ち回んないといけない立場だから、組織の保護よりは強くて信頼の置ける騎士様一人の方がいいんじゃねーかな。
男女タッグ的に考えてもそっちの方が好みです(キリッ
171:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/11 21:48:08.09 発信元:182.168.138.246
ほむほむ「やっとまどかを助けられる時間軸に…」
悪魔博士「あ、ごめんこっちが失敗したから時間巻き戻すわ」
172:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/11 22:30:32.31 発信元:111.86.142.199
ま さ に 悪 魔
このどむどむ博士は間違いなくアインソフオウルされる
173:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/11 22:45:02.89 発信元:114.17.180.220
>>165
二人とも前半の印象が孤高であるという点、もう誰にも頼らなくても戦える的な所。
あと過去の自分とのギャップもあるかも。
なんというか、カプという感じはしないような気がする。自分でアリとか言っておきながら。
174:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/12 00:02:45.32 発信元:116.89.221.220
はぁととまどか
冴姫とほむら
はなんかそれぞれダブる
175:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/12 07:12:37.34 発信元:206.223.150.45
>>174
その流れだと
・リリカ→杏子
・頼子→さやか
・舞織→マミ
になるのか
176:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/13 17:19:19.76 発信元:111.86.142.199
ブラハ「僕と契約してデビルサマナーになってよ!」
さーたん「その必要は無いわ」
177:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/14 07:22:54.12 発信元:122.26.5.3
うむ、渋にまとめ絵があって充実できた
178:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/15 10:19:58.36 発信元:182.249.235.101
うわぁぁんアチャ(エミヤ)×まどかとかエクシア(つーか刹那)+さやかとかランサー(クー・フーリン)+あんゆまとか七咲とかネタは浮かぶのに書けねえよう
179:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/15 10:52:36.14 発信元:211.1.206.219
泣き言は聞かん、書け
書くのが無理なら描け
そのどちらも無理なら諦めろ
というか、4・5行くらいのちょっとした妄想会話とかシチュすら書けないわけ?
そんなんじゃ誰か書いてくれないかなー(チラッ って言ってる風にしか見えないんだけど
180:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/15 11:22:39.45 発信元:210.136.161.66
実際そうじゃろうなー。時間がないって意味にしろないなら作れとしか言いようがないし。スルー安定。
ゴールデンウイークにおける好きタッグについてでも語ってる方が有意義だろね
181:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/15 12:14:17.52 発信元:114.17.180.220
「だったら壁にでも話し掛けてなさい」ホムゥ・・・
「(どこかで聞いたセリフだな)」
厳しい世の中である。
182:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/15 13:02:59.49 発信元:206.223.150.45
>>181
どうあがいてもスコールやないですかーもっとやれ
あれか、因果を越えて宇宙の歪みと戦う女神まどか&番人クォヴレーとか
そんな感じの妄想でもしていればいいのかしら
…いや、某大会のおまけでまどかが旧神夫婦と一緒にいたもんでつい
果たしてフラグジェノサイダーに春は来るのか?
183:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/15 13:49:17.65 発信元:114.17.180.220
4、5行の簡単なってこうですか?分かりません>< うっおとしかったらごめんね
「魔女は全て倒す」
「か、どこにでも魔女はいるんだな」
「(魔女を知っている・・・?)」
「(冷めた奴だな)」
ストーリー前半の誰にも頼らない同士、
どっちも心を開いた状態と、色んな要素があって楽しめるなこの二人
もう少し時間掛けて書いてみるかー
184:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/20 01:36:16.97 発信元:124.146.174.50
貧乏繋がりで上条さんと霊夢とか、不幸繋がりで上条さんと雛とか思いついた
…うん、俺が上条さん好きなだけなんだ
185:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/20 04:50:57.41 発信元:206.223.150.45
ナミキヨサーンとイカ娘でコレジャナイ禁書目録…すまない忘れてくれ
186:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/20 07:28:32.53 発信元:210.136.161.65
>>184
俺も上条さん好きだからタッグ戦の活躍見たいなー
さやかが今のとこ多めな気はする。名前ネタだけど
187:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/20 10:29:32.71 発信元:210.153.84.205
>>184
上条さんと八頭身雛で厄(病)神タッグ組ませて遊んでたりしたが、中々良いタッグだったよ
謎のバグでそげぶラッシュ中に敵のライフが一気に消失したりする現象が起こったりしたんで動画にはならなかったがw
188:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/20 14:13:55.47 発信元:223.132.71.140
ここ半年ほどタッグ大会見てないんだけど
最近の大会で良かったタッグって何かあるかな?
新規タッグでオールスターでもやってみようかしら
189:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/20 14:22:04.72 発信元:124.146.175.106
最近の動画でってなら地獄仲良しとかライダーと魔法少女タッグ大会とかから発掘すればいいんじゃねーかな
このスレでちょくちょくSSで出る最近のってーとゆとさと?
190:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/21 10:08:32.41 発信元:113.151.157.137
新規タッグでオールスターなら既に無かったか
191:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/21 17:50:02.46 発信元:202.55.116.130
>>184
上条さんって貧乏ってわけじゃなくね?
192:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/21 19:39:15.09 発信元:206.223.150.45
それを言ったら霊夢かて(ry
元々は物欲も金銭欲も無い(と言うか、無さ過ぎる)キャラだったはずなのになー
星あたりから俗物化し始めてるような
193:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/21 22:49:03.07 発信元:121.3.134.111
>>190
あってもやりたいものはしょうがない
というか、どの動画のことか教えてくれないかな
是非参考にしたい
ゆとさと、男乙女、Bライヤんもぅぐらいは俺の見てた大会でもあったけど
他にあったら頼む
194:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/22 02:02:42.67 発信元:124.146.174.40
>>192
茨見ると「あのくらいは普通の人間が持ってる欲の範疇」「むしろ無邪気なくらい」らしいですよ奥さん
……どうにもそうは見えぬがな
195:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/22 07:31:59.58 発信元:202.229.177.59
>>193
「ルーキーズ」で検索だ。
ただこの大会は新規メインのそこそこ大規模大会とはいえ、オールスターではないと思う。
オールスターっていろんな大会から集めてくるってイメージだけど
この大会はそこまで手広くない。
なので193が新規メインオールスターやるなら期待。
196:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/22 08:54:54.91 発信元:210.136.161.77
>>188で最近の大会でよかったタッグを聞いてる以上は、>>193の言う新規は初出のあるタッグだと思うのだが
あー、でも集めてると自作タッグとかもいれたくなるもんなのかもな
197:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/22 09:13:19.45 発信元:202.229.177.57
195は190の言ってるのはこれじゃねっていう意味のつもりだった。
完全にオールスターではないと思うけど自分の知ってる範囲では
該当するのあれぐらいだったんで。
既出の新規タッグ(新規ってことはここ半年~だいたい一年ぐらいか?)のオールスター大会はほんと見てみたいな
198:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/23 00:45:08.25 発信元:114.17.180.220
だいぶ時間掛かったのにこの文字数、ほむスコです。2レスに分けてお送りします。
時の魔(法少)女と獅子でタッグ名いいのかな。
--------------------------
彼女と行動を共にしてどれほど経っただろうか。
スコール=レオンハートは少女、暁美ほむらと共に目的地に向かう電車にいる。
共にしている理由は動機の一致、それだけ。と暁美ほむらは言う。
「・・・・・・聞きたいことがあるわ」
「?」
ふと向かいの席に座っている彼女が声を掛けてくる。沈黙は肯定の証のように、ほむらは発話する。
「さっきの戦闘・・・何故貴方は反応出来たの?」
「さっきの?」
それは、ほんの数十分前。
ほむらは彼の技量を試すと同時に、自分自身の持つ強さをまるで誇示し、
これからの目的は全て自分で片付けるかのように見せ付ける意図もあった。
しかし、それはまるで積み上げた積木をボーリングで容赦なくぶつけたように崩れた。
スコールは彼女の能力の一つである『時間停止』、それに反応したのだ。
勿論ではあるが彼に時の領域に入り込むような術は持っていない。これは本人がそう言っている。
「たまたまだ、そういう奴が相手にいた・・・そう思えばいい」
「・・・」
平然とした面持ちで返すスコール。そう、彼の言うことに一理ある、
実際に時を止める能力を持つ者が自分だけではないというのはこの世界では大いにあるからだ。
199:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/23 00:45:32.76 発信元:114.17.180.220
それでも今はそれを難しく考える必要は無い、ただ目の前にいる男はそれが出来るだけで充分に価値がある者になっているからだ。
「スコール=レオンハート」
「なんだ」
「貴方が何者か、私は知らないし知ったことではないわ。ただ・・・」
「・・・」
「ここからは、騎士として務めて貰うわ」
突飛もない彼女の言葉にスコールはある人物が浮かぶ、それは『魔女の騎士』
『魔女の騎士と悪の傭兵が戦う宿命の物語、一緒に楽しもうぜ、スコール。俺をがっかりさせるな!』
騎士というヒーローを演じた男、自分がこの世界でも当て嵌められようとされている状況。
「時の魔女とその騎士。か(ここでも、そこに行き着くのか俺は)」
「どこへ行くの?」
思わず含んだ表情のままスコールは立ち上がる、目的の駅は近い。
「・・・・・・カードゲームの誘いがあったんだ、直ぐに終わらせてくる」
騎士の名を受けた獅子は、レアを蓄えたカードを携えて隣の車両へ向かった。
とりあえず終
--------------------------
ちょっと最後辺り無理があったかも、記憶薄れてるわー 出会いとかはこんな感じであってもいいものだ
どの世界に行っても同じ状況に合う、それ同士でもいいんじゃないかしら、過去形にしちまってもいいんじゃないかな
しかしまだ勉強足らずですね、セリフにや描写に自信も感じ無いし、もっと書かないとダメだ
ほむスコほむスコー
200:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/23 00:56:30.51 発信元:211.1.206.219
クレクレするだけではなく、妄想としてアウトプットしたことに敬意を表する、乙
平時は落ち着いていても静かな激情を秘めた二人、見た目も黒系ベースで割りと似合う、か?
もし次書くことがあれば、『なんでこのタッグにしたか』に注意して書いてほしいかな
他のタッグじゃ代用の利かない、そのタッグだけの特徴とか魅力があったからこうして形にしたんだろうし
名前と口調差し替えたら他のキャラでも全然通用しちゃう、というのは折角魅力的なタッグでも価値が半減してしまうと思うからね
201:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/23 01:56:22.29 発信元:114.17.180.220
>>200
ありがとうございます。こういう物書きは初めてなので、調べたり学んだりで時間掛かりました。
本当は動画からネタを拝借とかも考えたりもしましたが、まずはオリジナルな設定で挑戦してみました。
それでもちょっと怖いんで、もう少し上達したらアドバイスを生かして書いてみようと思います。
202:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/23 20:11:41.76 発信元:110.67.196.239
>>201
いや、普通に面白かったよ?
どこに行っても同じめぐりあわせ、結構なことだと思うぜ。
あとはそれに対する感傷について思うことを深く掘り下げていけば問題ないしね
というより、これが本当にはじめて? すごいと思う。
長いものがかきたくなったらしぶにでも来てみるといいと思うよ。色んな人が書いてるしな。
できたらまた、あなたの書いたものが読んでみたいな。
203:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/26 01:13:01.44 発信元:206.223.150.45
食堂で頼んだ定食に海老フライが出て困った顔のフーン(嫌いなもの:海老)が
たまたま通りかかったイカ娘にその海老フライを分けてやったら
何故か妙に懐かれるという電波が飛んできた
「あんなに美味しいものを食べられないなんて信じられないでゲソ!
これは矯正すべきじゃなイカ?
……でもそうしたら海老分けてもらえなくなるでゲソムムム」
って一人で悩んでるイカ娘とか可愛いかなって思ったが
カップリングかどうか微妙だった
204:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/26 05:39:28.00 発信元:114.17.180.220
案外早めに書きあがりました。ほむスコ、調子に乗って書きました。
今回は某動画の力を借りました。ありがとうございます。
うーん、各キャラを生かすのもまた難しいですね。特に知らないキャラは勉強しないとですからね。
----------------------------------------
この世界で戦う力を持つ者は自らの技量を示す為に大会に参加する。
その構成は多種多様、勿論だがスコール=レオンハートと暁美ほむらも様々な大会に顔を出すことで自身のステータスを上げている。
そんな中、今宵行われている大会は特殊な物。『学園物』と評したチームバトル、
ルールはチームの中から割り当てられた係をこなし総合ポイントを競い合うと言うもの。
スコールとほむらも、元は学生という事で参加招待が来たのである。
「貴方を頼る気はないわ」
「・・・」
出会って早々に放たれた一言だった。『お前と俺は魔女と騎士じゃなかったのかよ』、
と言いたい所だが周りに人も多く、多少注目されていたので黙っていることにした。
205:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/26 05:39:57.71 発信元:114.17.180.220
そのままほむらは彼から遠ざかり、スコールもそれを止めようとせずに取り残される。
ここで彼女と代わり代わりに来たのは斬真狼牙、同じクラスに割り当てられたチームメイトであり番長。らしい。
「フラれたのかスコール?ああいうのはもう少し入り込まなきゃ心を開いてくれそうにないな」
「・・・一つ言っておく」
「なんだよ」
どうやら女性経験は多い狼牙。ほむらとスコールが初対面同士ではないと見るや、
冗談交じりに話しかけたがそれはスコールの心情を曖昧にした。
―それは魔女と騎士の関係―
「お前が考えているほど単純じゃない」
「・・・・・・孤高と孤独は違うぜ、スコール」
互いの心情はすれ違い、歩みもすれ違う。スコールの頭にはまだほむらの言葉が残されていた。
次に彼の前に立ちはだかったのはトキ、見た目からして教師・・・ではなく生徒として参加している。
北斗二千年の歴史の中でもっとも華麗な技を持つ男として、この大会でもトップクラスの強さを誇る男である。
その為にハンディキャップとして彼は戦闘時、大会を盛り上げる為にとても面白い動きをするように意識しているらしく、
それが逆に華麗過ぎると評価されている。
「スコール、君の心はどこに向かおうとしている」
「(今日はヤケに絡まれるな)」
早速トキは何かを悟ったような言葉で話しかけられる、やはり生徒というより
教師を相手にしているようだとスコールもうんざりになり軽く溜息を付く。
「仲間の大切さを君も知っている筈だ」
「・・・」
そのまま言葉を聞き流してスコールはその場から離れる、まるで何かを拒むように。
言われずとも『仲間の大切さ』、それは彼自身が経験上充分に知っている。
206:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/26 05:40:21.78 発信元:114.17.180.220
そして陽が落ち始めた頃・・・
「・・・(どうしてこうなっている)」
「私が準備した。たまにはこういった宴で士気を上げるべきだろう」
校庭中央に設置された巨大な焚き火・・・いわばキャンプファイヤーがごうごうと燃えている。
それを見てはスコールも当然の反応を示すが、既に自分のクラスや他のクラスが混ざりわいわいと盛り上がっているのが目に入る。
この催しを主催したのは、同じ1組のシャア・アズナブルなる人物。
モロにスコールの心を読んでドン引きされているが、考えは悪くないので許可云々以外の否定は出来ないでいる。
「先生からの許可は出て・・・あぁ、そこにいましたか」
「先程からここにいる、意識されずに虐げられたのか私は。あー、このまま空気でいれば私も死ねるのかなぁ・・・・・・・・・死なせてどうする!!」
「(ノリツッコミ・・・?)」
最終的な許可である教師陣の一人。1組担任の糸 色望先生が全体的な許可を通した途端や他の教師も賛同した為にこの大所帯になったとのこと。
糸色望先生の自殺未遂は財前教授から釘(メス)を刺され、そのまま連れて行かれた。
兎にも角にも場に流されるしかないと判断したスコール、とりあえず離れで見ている事にしたが、そこで追い討ちが降りかかる。
「はーい、二人組み作ってー。作らない人は財前教授からの耐久トルネードスピンタイムです」
「!?」
―その時、ぼっち勢に電撃走る―
207:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/26 05:40:51.17 発信元:114.17.180.220
「シャア大佐、何やるんだよ?」
「フォークダンスだ」
『フォークダンス(英語:folk dance)』とは、世界各地で踊られる土着の踊りの総称である。
広義には盆踊りや神楽のような日本の踊りも含まれるが、
一般的に日本では外国から紹介された踊りを指すことが多い。また、キャンプファイヤーでも使用される。
アトリームにだってフォークダンスがありましたよ・・・地球のダンスとは比較にならないほどの巨大なダンスがね・・・
--wikipedia 「フォークダンス」、「ミストさん語録」より改変転載--
とても良い雰囲気を出しながら燃え盛るキャンプファイヤー、空もすっかり暗くなり生徒達もフォークダンスをやる気満々である。
「(この状況からそんな気はしていたが・・・よりによってダンスかよ・・・)」
「フッ、このダンス。クワトロ・バジーナに戻らねば、彼女達の相手は勤まらないだろう」スチャ
「(コイツ・・・それが狙いか!!)」
ぼっち勢からすればやられたとしか言い様がない状況、しかもダンスである。自分自身、過去のミス以来それなりに克服は出来たつもりではいる。
だがこのフォークダンスには、個人の欲望があった。
主に主催者がサングラスを掛けた途端、その姿は少女趣味のオッサンと化していた。(※あとで修正されました)
208:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/26 05:41:15.86 発信元:114.17.180.220
早く相手を見つけなければ元祖トルネードスピンでタイムショックしてしまう。ダンスは苦手だがそれ以上にトルネードスピンが怖い。
それだけは避けなければならないと探そうにも、既に殆どがペアを組んでしまっている。
「相手、か・・・(このまま見つからなかったと言い訳すれば・・・)」
「Shall we Dance ?」
「!?・・・暁美ほむら」
色々と回避する策も考えていたが、それも声を掛けられることで抹消される。声の主は暁美ほむら、
最近覚えたのかどこかで知ったのか流暢な英語で話しかけられたので思わず振り向いてしまったが、これも彼女の想定範囲だったらしい。
長く伸びた髪を掻き、くすりと笑みを零すほむら。してやったり・・・という意志表示でもあるのだろう。
「こういう言葉、案外釣られるのね」
「何のようだ」
「この状況下で分からない?それに貴方は・・・」
「魔女の騎士、か」
スッと手を差し伸べるほむら。スコールも合わせる様にそ目線を下げれば、ゆっくりと彼女の顔へ視点を戻し手を差し出す。
「あの後、多分・・・教えられたと思うわ。貴方と同じで」
「・・・そうか。丁度手が空いていた」
「踊りましょう、孤高の獅子」
あの時の言葉の後、ほむらもまた様々な人に絡まれたのだろう。明らかに態度が違う所がある、それはスコールも同じこと。
全員の配置が終われば、ケルト調のミュージックが流れる。
それに合わせて踊り出す生徒達。たどたどしい者もいれば、綺麗に踊る者もいて各々が楽しんでいる。
209:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/26 05:42:30.02 発信元:114.17.180.220
そしてそれを見守る二つの影・・・それはもう一つの『魔女と獅子』
「Oh・・・カッブーキ・・・」
「ほむらちゃん、私も魔法少女になることができたわ・・・!」
「誓いの時はきた、今わたしはあなたを越える・・・!!」
獅子でいることがフラグと、誰が思ったか魔法少女となった鹿目まどかはカッブーキを掴んでいた。
それに何故か対するはトキ、頭上にはカブキの死兆星が光っているのかもしれない。
一つの世界に入りこむとでも表現すべきか、闇の中で照らされた二人はたどたどしくもあるが、なんとか魅せれる程度に踊れている。
「スコール」
「・・・」
「自分でも見えないほど、仲間に囲まれてしまったのね。私たち」
「そうだな」
あの日、『誰にも頼らずに生きていく』こと、『親友を救う為に頼らずとも戦い続ける』・・・そう誓った二人が今は沢山の仲間に囲まれている。
それが何を意味するか、二人は充分に分かっている。
「仲間がいるからこそ信頼が生まれる。離れていてもその絆は崩れない、それが二人にも強く表れればいいね」
「スペランカー先生の一言一句が心に染みるでぇ・・・」
あとはお互いが素直になるだけかもしれない、だがそれはいつになるか分からない。
二人の行く末を予感するスペンランカー先生はそう頷いていた。が・・・
「あっ」
\テンテ テンテ テンテ テンテ テッテッテ/
「「「せ・・・先生ェェェェェェェェッ!!」」」
最後にスコールがステップを間違えた事で先生の残機が儚く消え去った。
終
210:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/26 05:43:36.14 発信元:114.17.180.220
----------------------------------------
あとがきっぽく書く。
ほむスコがいいやすいからアレだけど、正式な名前は『時の魔(法少)女と騎士』で確定かな。
だいぶ盛り上がっちゃいましたね。なんだかかんだか。
さて、今回は文字数と複数のキャラに挑戦。次は戦闘とかやりたいね。
んー、しっかり出来てないかも・・・アドバイス下さると助かります、精進します。
暫しの間、私のオナニーに付き合ってくださり、ありがとうございました。
では、またいつか。
211:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/26 08:54:04.65 発信元:206.223.150.45
投下乙です
仲間に囲まれた二人には何か胸にこみあげるものがありました
ダンスシーンも素敵です
しかし先生ェェェ!
212:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/26 14:26:02.98 発信元:123.225.53.163
学級崩壊の世界観に絞ったわけか
転校生ネタも入れてみたいのう
213:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/26 20:13:43.02 発信元:206.223.150.45
投下乙~ このシャアから某SRWアンソロ作家臭がするのは気のせいだな(キリッ
214:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/28 20:02:09.24 発信元:122.132.35.222
萌え方としてどうかとは思うけど、時には失恋する話なんかも見たくなる
雷バルで、さーたんがカイデズが仲いい所を偶然見かけて真っ白になる
はぁとやフィオナじゃフォローしきれないだろうし、そもそも言いたがらない
どん詰まったところで、紅丸あたりに諭されて、ようやく友人に相談できて
ちょっと余裕ができた冴姫が、笑顔でカイからの誘い(紅茶かなんか)を断るようなそんな話
団長、知らん間に惚れられてよくわからないうちにフラれるの図
215:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/29 23:46:20.42 発信元:113.151.157.137
いいねえそういうのも。
216:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/30 18:00:54.28 発信元:182.168.138.246
死んでは実は生きてましたを繰り返すうちに
あんまり上海に心配してもらえないケーブル
217:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/31 15:51:14.24 発信元:124.146.175.36
まあ実は生きてましたはアメコミだと良くある事だし仕方ない
218:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/31 18:32:13.41 発信元:206.223.150.45
小町「どうでもいいけど乗船キャンセルだけは早めに頼むよ」
219:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/05/31 18:51:12.19 発信元:182.168.138.246
>>218
キャップ「すまないが往復で頼む」
220:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/06/03 06:33:13.55 発信元:220.109.242.182
白黒操剣士が地味にマイブーム
221:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/06/03 12:24:06.91 発信元:125.192.35.126
DMCのネロとアルカナのヴァイスだっけ、可愛らしいコンビだよな
しかしコンビ名どこが初出なんだろ
222:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/06/03 14:53:32.71 発信元:202.229.176.46
>>221
初出大会。
大会はWikiにはのってないけど「白黒操剣士」でググればすぐでるよ
223:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/06/03 21:21:32.02 発信元:111.86.142.175
共通点はシリーズの次世代機作品の主人公、名前が白と黒、表向きは宗教団体に育てられたか…
性格は任務に真面目で融通がきかないのと皮肉屋で不良と正反対だが
224:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/06/05 00:59:26.12 発信元:180.11.53.25
ネロと言えば異形の腕も良いと思う
某所の絵が可愛くてだな
225:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/06/05 18:27:52.02 発信元:111.86.142.197
>>216-219
MARVEL勢が死亡→キャンセルを繰り返す
↓
手続きやら何やらで冥界が忙しくなる
↓
管理職がロクに休めず、イチャつく暇も無くなる
リーゼ「ちょっとアメリカ行って蓬莱の薬散布してくる」ガタッ
226:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/06/11 19:11:25.75 発信元:206.223.150.45
それはそうとジューンブライドの時期だぞ諸君
227:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/06/12 12:12:42.98 発信元:111.86.141.83
ブリジット&アルダーでふたなりネタをなんか書きたいが思いつかない
男だとか女だとか!ついてるとかついてないとか!
鰤ほむとかどうなんだろ
228:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/06/12 16:24:43.41 発信元:182.249.240.31
それ以前にスレ違いだ。
性転換でもなくふたなりということは十中八九エロだろ?
むこう行け
229:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/06/13 01:36:48.52 発信元:202.229.177.28
結婚情報誌のモデルとしてバイトすることになったMUGENカップル達
普段着とは違った清楚な花嫁の、凛とした花婿の姿にお互いドキッとかありそうですね
まあ一部ウェディングドレス×2とかその逆とか居たりするがMUGEN故致し方無しということで
230:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/06/13 01:50:25.93 発信元:124.146.175.233
白無垢と紋付袴にも愛の手を……
231:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/06/13 10:10:31.28 発信元:202.229.176.27
>>230
巫女さんとかサムスピ系列ヒロインは白無垢じゃないかなあ
別に式の途中のお色直し?で両方来ても良いのよ?
まおりん「白無垢か」
ほむほむ「ドレスか」
光「どっちを着たい?」
鰤「どっちを着て欲しいかじゃないんですか!?」
232:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/06/13 15:49:18.89 発信元:114.17.180.220
救いはないんですか!
233:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/06/15 01:31:22.89 発信元:113.151.157.137
ないね
234:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/06/23 20:39:55.39 発信元:206.223.150.45
>>229
服とか無縁な人外勢どーすんだと思いかけたが、三大主夫が一晩で仕立て上げてくれる光景が見えた
つーか良く考えたら三人中二人が人外枠じゃないかww
235:大剣タッグ6月ネタ
12/06/26 20:39:26.93 発信元:111.169.214.38
何レスかお借りします
大剣タッグが好きすぎて勢い余った拙文ですが
宜しくお願いします
================================================================
季節は6月。
極東の島国は『梅雨』という蒸し暑い雨期に当たるらしいが、ここMUGEN界のイギリスに似た島国は
実際のイギリス同様日も長く、気温も高すぎず過ごしやすい気候といえるだろう。
そこでは日々、様々な無差別格闘技大会が行われていた。
会場近くにある選手村の一角で遅めの朝食を終えたアンジェリア=アヴァロンは2枚の紙を得意気に、
突きつけるようにして差し出した。
「とゆーわけでだ、ベソかきメイドにコレをやる!」
「はわ?」
朝食を済ませたミルドレッド姉妹に食後のお茶を出そうとしたフィオナは、アンジェリアの意図が掴めず
不思議そうにそのチケットを見返した。
「だーかーらー、天気も良いからちょっと遊んでこい。
この前の大会で食事券もらったんだけどな、2枚しかないからお前たちで行け♪」
「えっ、それでしたらお姉さまのお姉さまとお姉さまで行かれては……」
「いーからあの朴念仁誘って行ってこい!
でないとウチに入れてやんないからな、いじょ!」
「ええぇぇ?! は、話がさっぱり見えてこないんですけど!?」
ミルドレッドが簡潔なアンジェリアの言い方に混乱するフィオナを見かねて苦笑しながらも口を挟んだ。
「姉さん、言葉が足らなすぎるよ。
タッグ大会でよくお世話になってる彼、いるだろう?」
「はい、ソルさんのことですね」
「そう、その彼と食事に行っておいで。今日は私たちの事は良いから」
「え、でも……」
「なんだ、アイツは顔を合わせて食事をしたくないようなヤツなのか? 食べ方が汚いとか」
笑いを含みながらアンジェリアがそう煽る。
236:大剣タッグ6月ネタ
12/06/26 20:41:13.39 発信元:111.169.214.38
からかいだと判りはしたがフィオナは困ったように寄せていた眉を吊り上げた。
「そんなこと、ありません」
「おー。だったら何の問題もないな♪」
「はわっ! その聞き方はずるいです!」
「ぷぷー♪ 何がずるいのかなー?」
「まぁ、ほら、偶にはフィオナも外で遊んでくるといい」
「だ、だったら、ソルさんでなくても……」
「出場者にちょっかいを出す者が居るとは思わないが、念のためにね」
「いえ、でも、ソルさん今は大会中のはずで……」
「今日は中日で一日待機の予定だ、大丈夫」
「で、でも~……」
フィオナは反論の材料がなくなり顔を真っ赤にして口ごもる。
「はー、まったく。うりゃ!」
焦れたアンジェリアがデコピンをするといい音が響いた。
「イタッ! お、お姉さまのお姉さまぁ~……」
「たかが食事に行くくらいでグズグズするな!
第一その男のこと、どう思ってるんだ?
大会で組んだ時は格好良かった強かったってうるさいくらいなのに。
好きじゃないのか?」
「それは……その……嫌いじゃ、ありませんけど……」
「もしソイツが他の女、例えばすっごいグラマーな女と歩いてたら許せるか?」
「そ、それは……大会で、他の人と組むことだって、あるでしょうし……」
もごもごと言って俯くフィオナにアンジェリアが畳みかける。
「手繋いで歩いてたら?」
「えっ……あの……」
「ちゅーしてる所見ちゃったら?」
「いやです!!」
咄嗟に自身でも驚くほどの声を上げていた。
237:大剣タッグ6月ネタ
12/06/26 20:42:22.55 発信元:111.169.214.38
思い出したのはとある大会の試合開始前。
相手を鋭く睨む横顔を見上げていると、赤い目が不意に向けられくしゃりと頭を撫でられる。
武骨で大きな手のひらの柔らかい所作に笑みが溢れ緊張が解けた。
そのソルの横に、自分以外の誰かが立つと思うと、締め付けられるような胸の痛みを感じた。
(あ、そっか……
あの時にはもう、好きになってたんだ……)
そうと自覚したフィオナが我に返るとアヴァロン姉妹が揃って笑顔を浮かべていた。
これ以上ない程に顔を赤くするフィオナにミルドレッドが優しく問いかける。
「彼のこと、好きなんだ?」
「……はぃ……」
「ぃよーし♪ だったらやることは1つだな♪」
「一応聞きますけど……なんですか?」
「ソイツをぶん殴って子分に加える!」
「姉さん、話がややこしくなるからそれは止めて」
「えー、だって同じ子分ならフィオナもソイツと一緒に居られるぞ?」
「お気持ちだけ頂いておきますっ」
「仕方ないなー。じゃ、取りあえず告白だな♪」
「取りあえずでするものじゃ無いと思うんですけど……」
「あのなー、ソイツのこと好きなんだろ?
んで相手はそれを知らないんだろ?
ならそれを伝えないと、なにも始まらないじゃないか」
「それはそうなんですけど、タイミングとか色々……」
「臆病者はそーやって言い訳をしていて機会を逃すんだ!
いーから駆け足! 私の命令に逆らったら死刑! いじょ!」
「わ、分かりました! 分かりましたからムーンライトは止めてくださいぃ~!」
「あ、フィオナ! チケット!」
バタバタと慌ただしく出かける準備をするフィオナにミルドレッドが券を渡してやる。
238:大剣タッグ6月ネタ
12/06/26 20:44:28.19 発信元:111.169.214.38
「はわっ、ありがとうございます!」
「じゃあ、慌てて転ばないように。それと、頑張って」
「はいっ、行ってきます!」
元気の良い足音が遠くなり、奇跡的に転ばなかったらしいのを確認してから姉妹は再びテーブルに着いた。
「本当にベソかきメイドは手がかかるなぁ」
「そこがまた可愛い所でもあるけどね。はい、お茶」
「おー♪ さっすが我が妹、気が利く~♪
気が利くと言えば、今日なんだよな? あそこのイベント」
「そうだよ。まさかあっちの都合とも噛み合うとは思ってなかったけどね」
「よしよし♪ これだけお膳立てしたんだ。
告白は当然として、ちゅーくらいはして帰って来て貰わないとな♪」
「それは難しいんじゃないかな……」
苦笑するミルドレッドにアンジェリアが目を丸くした。
「なんだなんだ、アイツはそんな甲斐性無しなのか?」
「いや、甲斐性とかじゃなくて……そういうものなんだ」
「ふーん。そういうもんかー」
初めは追い立てられるように駆けていたフィオナだったが、徐々に落ち着きを
取り戻すと足取りが重くなっていった。
待機期間とはいえ、ソル自身に用事がないとは限らない。
そもそも今の時間にソルがホテルに居るかどうかすら知らないのだ。
(ソルさんが居ても、断られたら……)
そう考えただけでちくりと胸が痛んだ。
すごすごと帰った場合のアンジェリアの怒りも恐ろしいが、それ以上にソルに断られる事の方が恐ろしい。
もし今後タッグを組むことがあっても、ソルは気にしないだろうが、非常に気まずい。
重い足取りが宿泊施設前で遂に止まってしまった。
大会の時はよくソルを迎えに来て、何の気無しに押していたインターフォンに手が伸びない。
門前で溜息をつくフィオナに散歩から帰ってきた赤いバニー姿の少女が気付いて声をかけた。
239:大剣タッグ6月ネタ
12/06/26 20:45:22.79 発信元:111.169.214.38
「お、幽霊メイドやん。こんなトコで何してん?」
「幽霊じゃありません! って、キャサリンさんこそ、どうしてここに?」
「なんでて今大会中でチーム組んどるからここに泊まってんねん。
誰かに会いに来たん?」
「えっと……その、ソルさんに用事が……」
「そうなん? 今日はなんも用無い言うてたけど」
「ど、どうして知ってるんですか?」
「そらチーム組んどるのその兄さんやもん。
もう1人、トニーのおっちゃんと3人で赤い科学者やでー」
「そう、なんですか……」
キャサリンがソルと同じチームだと知り、先程までとは違う靄のように正体の掴めない感情が湧き上がる。
それを悟られまいとフィオナは俯いた。
その反応にキャサリンはピンと来て含み笑いを堪える。
「兄さんなら居るはずやからはよ入り」
「はぇ? あの、ちょっと」
「ええから ええから」
「押さなくていいですって~」
強引に施設内に押し込まれると広いロビーには待機中や休憩中らしい選手が数人居た。
この時間だと早い大会は既に始まっており、その観戦などをする者も会場に行っているのだろう。
「ほら、あそこおったで」
キャサリンがテーブルでトニー=スタークとチェスを指しているソルを示した。
声に気付いたのかソルが盤面から顔を上げて、少し不思議そうな表情をした。
事前に連絡することなくフィオナが尋ねてきた事が無かったからだろう。
「しっかりしいや。兄さんに会いに来たんやろ。深呼吸してみ」
肩を叩かれ固まっていたフィオナが我に返る。
言われた通り1つ大きく息を吸ってテーブルへ向かった。
「おっ、おはようございますっ!」
240:大剣タッグ6月ネタ
12/06/26 20:46:44.93 発信元:111.169.214.38
「あ、ああ……。どうしたんだ、急に」
「あの、あのですねっ。い、一緒、に、食事に行きませんかっ!
深い意味はないんですけどっ、チケット貰ったのでっ、
つ、都合がよければ……で、良いんですけどっ!」
「……なんだか知らんが、ちょっとそこの椅子に座れ」
「あっ、はい、失礼しますっ」
ソルは緊張で台詞が上擦るフィオナを座らせると水を出してやる。
今更ながらに喉の渇きを憶え、勧められた冷やを一息で飲み干した。
「ふー……。ありがとうございました」
「落ち着いたか? それで、何かあったのか?」
「え? いえ、特に何もありませんけど……。
ソルさんにはお世話になっているので、お食事でもどうかなって……」
「こんな可愛らしいお嬢さんとデートの約束があったなら
引き留めたりしなかったのに。人が悪いな」
「そうだな。暇だからって勝負吹っかけて来て負けたりしなかっただろうな」
「負けてないぞ、ここからの逆転劇を演出するためにだな……」
「あ、お邪魔でしたか……?」
「いやいや、良いんだ。どうせ今日ウチのチームはオフだからね。
心おきなく行くと良い、引き分けにしておく」
「この盤面でそういう台詞の出るのも逆に凄いな」
そそくさとチェス盤を片付けるトニーを横目にソルは思案するように頬を掻いた。
正直に言えば、出かけるのは面倒だ。
癖の強い連中が揃っているMUGEN界では頻繁にトラブルに遭遇する。
ソル自身は戦闘狂という訳でもなく、あの男の手がかりを求めてこの界に渡ってきただけで、
厄介事には極力関わりたくない。
ついでに言えばソルはGEAR細胞から直接エネルギーを得ているので、食べ物を食べる必要もなかった。
241:大剣タッグ6月ネタ
12/06/26 20:47:46.75 発信元:111.169.214.38
食べられなくも無いが、それよりも先に面倒という感情が立つ。
甘味だけは好んで食べるが、それも高級なスウィーツと言った類よりも手軽なジャンクフードの方が好ましい。
どうしたものかと考えていると、返事を待つフィオナの、妙に緊張した表情が気に掛かった。
もしかするとアンジェリア姉妹に出来ない相談事でもあるのかもしれない。
世話になったとフィオナは言うが、大会では助けられることも多い。
何よりソルは、望まずして人外になったという生い立ちを持つ少女を無下に出来るほど冷たくはなかった。
溜息をひとつ吐いて席を立つ。
「不味かったら帰るからな」
「えっ、それじゃあ……」
「暇だったのは本当だからな。んで、場所は何処だ?」
「あ、えーとですね……」
「そこなら、あっちの通りだ。何でそっちに行こうと……」
並んで出て行く2人を見送ったトニーとキャシーは顔を見合わせてニンマリと笑った。
「賭けるか?」
「ええよ。くっつく方に賭けるわ。あんだけ好き好きオーラ出てるもん」
「いやー、あの反応は子供としか思ってないぞ。言われても断ると見たね」
「ウチが勝ったらおっちゃんが解析してたスパイダーウェブのデータ貰おうかな」
「高機動体戦用にか? ならこっちはエーテル炭素鋼のサンプルを頂こう」
「性質上、おっちゃんに扱いきれんと思うけどなー。
ま、あの兄さんがどんな顔して帰ってくるのか楽しみや」
「だな」
チケットに記載されていた場所には街の中心部から離れた古風な屋敷が建っていた。
建物は赤煉瓦を多用した英国風のゴシック建築だったが、庭園はフランス風の
幾何学的な均衡が取れた広い庭園を有していた。
242:大剣タッグ6月ネタ
12/06/26 20:51:36.68 発信元:111.169.214.38
そして季節はバラの盛りでもある。
高低差をつけて剪定された物、あるいはアーチ状に作られた物、テーブルの上に
アレンジメントされた物。
彩りも形も様々な種類のバラが咲いていた。
だが、今日に限って言えばバラよりも大きな華が咲き乱れていた。
この屋敷は結婚式の披露宴会場としても使われている。
今日はそのPRイベントである、ウェディングドレスの試着会が行われていた。
マーメイドのような細身のドレスから、たっぷりパニエを着込む古風なラインのドレス、
珍しい所で白無垢等々を着た女性達が楽しげに談笑している。
色は白がやはり多いが、淡い緑や落ち着いたピンクも見かけた。
ヘアメイクまではしていないようだが、それでも軽く結い上げ大きいコサージュやティアラを
挿すとボリュームが出る。
これが2、3人程度ならともかく、軽く見積もって20人以上ともなれば壮観を通り越し圧迫感
すら感じた。
ちらほら見知った顔が居るのを考えると、今日が大会の調整日なのは人数が集まらないからではないかとすら思えてくる。
会場の隅で、ぐったりとしながらソルはそう邪推した。
殆どは女性同士で来ているようだが、パートナーに連れられてソルと同じように疲労困憊な男性も見られる。
ごく少数だがこの光景にも圧倒されることなく感想を述べている者も居た。
フィオナはイベントの事を知らず、ただのビュッフェだと思っていたようだが、ドレスのカタログを見せられると
目を輝かせて案内について行ってしまった。
何故フィオナのような子供サイズのドレスがあるのかというと、このMUGEN界には見た目と実年齢が
釣り合っていない人物が多いからだった。
見回してみても人間と人外の比率はほぼ同じだが、端から見る分にはあのドレスの方が良いだとか
似合わない恥ずかしいだとか、髪型はどうだこうだといった、至って和気藹々とした雰囲気だ。
ソルは聞き覚えのある少年の、助けを求める声から意識を反らしながら確保したサンドイッチを口にする。
イチゴの酸味と、刻んだチョコレートを混ぜ込み固めに泡立てられた生クリームは思いの外相性が良かった。
イベントが無ければもう少し余裕を持って味わえただろう。
243:大剣タッグ6月ネタ
12/06/26 20:54:28.03 発信元:111.169.214.38
隅のテーブルでその疲れた様子のソルに小柄な花嫁がおずおずと近付いていった。
「そ、ソルさん……あの……どうですか……」
フィオナは顔を真っ赤にして普段着ているメイド服よりも裾の長い純白のドレスに、
白とピンクのバラをあしらったカチューシャを付けていた。
「……花嫁のベールを持って歩く子供みたいだな」
「うっ……た、確かに、ちょっと自分でも思いましたけど……」
正直な感想にフィオナはガックリと項垂れ肩を落とした。
下を向いて「似合わないとは思いましたけどそんなにハッキリ言わなくても……」等と呟く。
「別に今、似合う必要はねぇだろ。人間に戻って10年後にでも心配しろ」
フィオナの髪を、いつもの調子だと髪が乱れる為、軽く撫でてやる。
10年後の自分など想像も出来ないが、それでも大人になればという想いが口からこぼれ落ちた。
「……10年経ったら、来てくれますか?」
ソルの顔を見ながらではとても言えない台詞に、今更ながら鼓動が逸る。
「憶えてたらな」
まさか自分と一緒に、という意味だとは思わず、式に出て欲しいと思ったソルは軽くそう返した。
だがフィオナは反射的に顔を上げ喜びに表情を輝かせた。
「憶えてますっ、絶対、憶えてますから!」
「あ、ああ……?」
ソルはフィオナの反応に腑に落ちない物を感じたものの、心底嬉しそうな様子に
まぁ良いかとサンドイッチを平らげた。
この2人がお互いの勘違いに気付くのは暫く後の事。
================================================================
以上となります。
長々とお目汚し失礼しました。
244:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/06/27 23:05:15.73 発信元:206.223.150.45
>>235-243
ホいつの間に力作がw GJです!
はよ素直になれや旦那、な?
あとこの手の話題にトニー社長が介入するとロクな事にならないと思うn(空爆
245:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/06/28 01:03:48.83 発信元:123.218.60.197
>>235-243
投下激しく乙。さあはやくお互いの勘違いに気付いた後の話を書くのd(ry
ソルにとってフィオナが保護対象から恋人へとランクアップするのはいつになるのか…
それはそうと聞き覚えのある少年の声ってまさかブr
246:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/06/28 21:19:44.59 発信元:182.168.138.246
カイ・キャップ・きら様にすると途端に共通点が無くなる不思議
247:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/06/29 20:30:40.66 発信元:111.86.142.203
>>246
男二人はまだ解る(敬礼交わす系の特殊イントロが欲しいw)んだが、やはりきら様が浮いてるなー
パートナー連中を見ると更にバラバラなのがまた笑うw
さーたん・戒厳・ドゥーム閣下って何の集まりなんだか
248:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/06/30 13:58:42.15 発信元:122.16.254.76
後にも先にもWBCって銘打たれたのってパワメジャだけか?
249:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/06/30 13:59:17.45 発信元:122.16.254.76
すんません誤爆です
250:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/07/01 02:41:14.17 発信元:202.229.176.170
ヒャッハー大剣だぁ!GJ!!
今書いてみてる文があるんだけど、
萌えスレエロパロスレ問わず、キャラクターの生活感が出過ぎてる文章っておkなんだろうか…
かなりのキャラ崩壊かも知れなくて不安
251:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/07/01 05:19:38.72 発信元:206.223.150.45
日常ほのぼのとか大歓迎ですわ
急かさないからゆっくりネタ練ってね!!!
さーて七月、そろそろ永夜の竹林から七夕用の竹が届く時期かね
ああ局長、古代植物生やさないで下さいね。あとそこの宇宙大群獣マザー、草体は捨ててこい
252:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/07/06 19:55:16.60 発信元:220.156.252.92
生活感丸出し文はあっち方向になったのでこっちには違うやつを投下ー
よければお付き合い下さい。5レスくらい?
※大炎上(もう飽きたなんて言わないで) ※日常的ほのぼの
253:うたかた1/5
12/07/06 19:56:45.14 発信元:220.156.252.92
長雨の合間の晴れた空。風は無い。それでも雲の流れは止まらない。
ゼロになる事のないそれにはそれなりの生活を送る者達にとって一種の威圧感がある。
それは子供には関係の無い事だった。
長靴を履けば心が躍る。傘の透けたビニール越しのぼやけた景色も胸を擽る。
泥だらけに汚した服も親に預ければきれいになるし、裸でリビングに駆け込めば夕餉の匂いが漂う。
今にも降り出しそうな曇天の下、止んだ晴れたと外へ駆け出す。
そんな元気いっぱいの子供に巻き込まれたのか、少女は雨がやんで間もなく、空の下に居た。
総当たり形式の格闘大会が終わった後の事だ。
タッグを組むことの多い軋間紅摩と今回もやはり背中を預け合い、結果、準優勝を果たしてみせた。
闘う人々は凛々しく強く逞しく、観戦者の中に紛れ込んだ子供達の憧れの的だ。
(それだけオープンな大会だったという事でもある)
アネル=ロランジュは屋内会場での大会終了後、自分についたファンの子供達に連れ出されて今に至るのだった。
子供というものの事ははよく分からない。
自身が番人を務めていた研究所を抜け出し生活が安定するまで、接する機会の無かった生き物だ。
よく分からないこの生き物達はしかしよく笑いよく泣きよく怒り、見ていて飽きる事が無い。
友人との楽しみ方も様々で、表面に出してはいないが、興味が尽きない。
子供達を見守るように佇む彼女の顔には微笑が浮かんでいた。
「アネルねーちゃんこれやろー!」
「アネル、やってー!」
普段は壇上で舞うのを見るばかりの闘者に子供達は無邪気に呼びかける。
何をやれと言うのかと彼らを見下ろせば、その手に小さな筒を握って差し出して来ている。
もう一人の女の子の手には長細く小さな笛のような形のもの。
よく分からないまま二つとも受け取る。
蛍光色のプラスチックの筒の中を覗き込むと、中には何か液体が入っていた。
容器の中ほどまで溜まっていてかすかに泡立ったそれは透明。
254:うたかた2/5
12/07/06 19:59:13.62 発信元:220.156.252.92
「……これは?」
「えっ?」
「知らないのー?」
これはこうやるんだよ、と。
手渡したそれをまた受け取った女の子が、筒の中に笛の先端をそっと突っ込んだ。
引き抜いて、息を深く吸って口を付けて、息を吹きつける。
ぷくぷく出て来た真ん丸い透明の虹色の球。シャボン玉。
ふわふわ飛んで、ぱちんと消えるまあるいそれらをアネルは凝視した。
「やってみる」
「うん!」
至極真剣な表情で女の子に告げて、筒と笛を受け取る。
黄緑色の筒の中、シャボン液に細管をそうっと差し込んだ。
ほんの少し浮かせて液だれを落ち着かせてから引き抜いたそれを、
深く吸い込んだ息で頬をいっぱいにしてから口に付けた。
ふううう。
力加減が悪かったのか。シャボン玉の数は幼女が吹き出したときよりも少ない。
ならばもう少し弱い息でとまた同じようにシャボン液を細管の先に浸からせ、息を吸い、吹く。
ふう。ふう。ふう。
「わー!」
「しゃーぼんだーまーとーんーだー!」
今度は、うまくいったようだった。
断続的にいくつもいくつも吹き出てきてはふわふわ浮かぶシャボン玉に子供ははしゃぐ。
手の届く内にぱちんと割って、手の届かないそれに飛び跳ねて腕を伸ばして振り切って。
凪いだ風に吹かれることも無くぷかぷか漂うシャボン玉。まあるい虹色。
255:うたかた3/5
12/07/06 20:00:56.06 発信元:220.156.252.92
「なんだ、それは」
何を考えるでも無く、彼らが喜ぶので、それの生成を続けていたら、背後からかかった声。
振り返ると、相棒の軋間紅摩が立っていた。
ここまで至近距離に近づかれるまで気付かなかったのは、闘いを終えて気が抜けているせいだろうか。
それとも、シャボン玉を作る事が、シャボン玉と戯れる子供達を見ている事が、楽しいからだろうか。
「シャボンダマだそうだ」
「……泡だな、そう言われてみれば」
一個一個が独立したそれらの球形は一見、
石鹸や洗剤を使って何かを洗ったりしたときに出る無数・極小のものとは全く違うものに見えた。
沢蟹が噴き出すぶくぶくの泡とも違う。
流れ落ちる滝の麓から跳ね上がる水飛沫とも違う。
「あっ!軋MAXだー!」
「軋間もシャボン玉割るー?」
「……俺はいい」
「ええ~~?」
「やればいいのにー。シャボン玉全部掴んでみせてよー、ドガーンって」
無限界の子供であるからか。
睨んでいるわけでもないのに鬼のような鋭い目つきの筋骨隆々とした男に、
彼らは何恐れる事無く駆け寄り、声を上げる。
ふう。ふう。ふう。
「しゃーぼんだーま、とーんーだ!やーねーまーで、とーんーだ!」
「やーねーまーでーとーんでー!」
「こーわーれーてーきーえーたー!」
正に泡沫。
アネルが次々作るシャボン玉は、幼児達のわらべ歌の通りに、ぱちん、ぱちん、と割れては消える。
256:うたかた4/5
12/07/06 20:02:42.92 発信元:220.156.252.92
紅摩にもアネルにも、シャボン玉で遊んだ記憶など、微塵も無い。
紅摩は近親交配に因り流れる色濃い鬼の血による性質を恐れられ、
ヒトの子供と遊ぶことも大人と遊ぶこともなかった。
アネルは秘密組織・ネスツの研究所で生産されたクローン人間であり改造人間だ。
児戯や遊戯とは無縁に等しい半生である。
それでも、わらべ歌がある程度には子供の遊びとして
古くから定着しているものなのだろう、と双方判断する。
ふう。ふう。ふう。
ふわふわ、ふわふわ、浮かび上がっては消えて行くシャボン玉。
微かな気流に乗ったのか、薄い紫色を孕んだ雲へ向かって飛び上がるそれを紅摩は見上げる。
広い空に掻き消えて行くようにシャボン玉はぱちんと割れる。
それを、どうしてだろうか。命のようだな、と、そう思えば。
紅摩のごつごつとした手の平が、アネルの頭の上に乗る。
「……?どうした?」
楽しいのかどうかも分からないが、無表情のまま、機械のようにシャボン玉を作り続ける少女が振り返る。
多分、楽しいのだろう。僅かに緩んだその頬に触れる。
鬼に近い人である紅摩も一つの命。
複製された特殊な人間であるアネルも一つの命。
元来魔や天に属する者達とは違う。
大地と海に比べれば、ヒトの命などこれらのまあるい泡のようなものだ。
生まれては消える。また生まれては、また消える。
違うのは、生まれたそれらが連なり合って、新たな命を生み出す所だろう。
257:うたかた5/5
12/07/06 20:04:42.31 発信元:220.156.252.92
「なんでもない」
「そうか」
紅摩がそう答えれば、アネルは何ら疑問を抱くことなく素直にその言葉を受け入れて、
彼の手の平に温かみに甘んじる。
この時間もまた泡沫。
虹色の夢のような時間。
無限に繰り返されることなどなく、いずれは消えゆく温かい時間。
それはそれでいい。
この世の何もかも、何もかもは、大概が限り有るものだ。
いずれは壊れ、いずれ死ぬ。
この刹那を、一つの泡なりに飛び上がって行けるのであれば、それでいい。
「あー!!MAXがアネルねーちゃんとイチャついてるー!!」
「言ーってやろー言ってやろー!しゃーめーいまーるにー言ってやろー!!」
「おい」
「まだ取材やってるかな?」
「やってるやってる!さっきあそこで飛んでたもん!」
「いこいこ!ネタのリークだ!きっと何かもらえるよ!」
「おいっ!」
冗談ではない。あの清く正しいと自称する敏腕記者に追い回されるのはごめんだ。
相棒との関係についてあれこれ根掘り葉掘り問い質されるのはもっとごめんだ。
些細な触れ合いをこれはと見留て指差し謡う子供達。
そうはさせるかと、にこにこ笑い騒ぎ立てながら会場方面へ駆け出した彼らを追う。
一歩を強く踏み出した紅摩の周りに、アネルが作ったシャボン玉が、浮かんでは消えていった。
258:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/07/06 21:38:36.18 発信元:111.86.147.110
書く速度早すぎるw
これだけ早いのにこんなに甘い物書けるとは凄いですGJ
大炎上最高
259:聖女と魔王の七夕
12/07/09 17:32:31.21 発信元:114.179.95.220
ちょいと連投します
はぁと&クロちゃんの七夕SS……遅刻じゃないやい、雨天順延だい!w
==================================
七夕祭りの夜。満天の星空の下、黒い人影が笹を見上げていた。
商店街の照明も決して暗くはなく、男の全身を充分に照らしてはいるのだが、なにぶんその体表が上から下まで真っ黒なのだから、『黒い』としか言いようがない。
「おお、ブラックハートではないか。一人とは珍しいな」
「……貴様は俺を日頃どんな目で見ているんだ、ミケランジェロ」
体も黒けりゃ名も黒いその男、地獄の皇子ブラックハートが憮然と振り向いた先には、これまた高位魔族のミケランジェロ(ただ今猫形態)が、契約者の頼子に抱えられていた。
自分と同じ『聖女と契約した悪魔』であるミケランジェロ(以下ミケ)に対し、ブラックハートはあまり良い印象を抱いていない。
本来の姿も満足に保てず、契約者に半ば餌付けされている癖して、自分には先輩風を吹かせて人界の常識―主に美味いドーナツ屋の情報など―を得意気に語ってくるのだから。せめて自腹で食え。
それだけならまだいい。このヒモ猫は自分に……もとい『自分達』に対して、何か間違った認識を抱いている節がある。そこが問題だ。
「実際珍しいであろう、何せ最近の貴様ときたら……」
「―愛しのマイマスター様といつも一緒…っひゃあ!?」
夜空に紫電が走って、消える。
頭上から会話に割り込んできた―割り込もうとして危うく対空ダークサンダーで撃墜されかけた―のは人魔ハーフのリリカだ。
空中で強引に回避運動を取り、そのまま親友の隣に着地する。流石は空中戦に定評のあるアルカナ勢である。対空見てから空4D余裕でした。
「り、リリカ……大丈夫?」
「へーきへーき。……コラァ皇子ー! 殺す気かー!」
「自殺願望がある様子だったので手伝ってやったまでの事だ、不満なら一人で首でも吊れ」
「吊るかアホーっ!!」
260:聖女と魔王の七夕
12/07/09 17:34:15.95 発信元:114.179.95.220
腕を組み、平然とのたまう様はまごうことなきヴィラン。
……口が悪くなるのも当然と言えよう、何せ彼女こそブラックハートにとって目下最大級の頭痛の種なのだから。
前述の通りリリカは悪魔の父と人間の母の間に産まれた混血児である。この時点で既に頭が痛いのに、ミケ同様の『勘違い』を抱えて隠そうともしないからタチが悪い。
魔王の逆恨みが込められた暴言で、両者の間に一触即発の空気が満ちる。いつラウンドコールが聞こえてきてもおかしくない。
「えぇと……そ、そう言えば、愛乃さんは?」
「……俺が見た時は、まだ願いを決めかねている様子だった」
恐る恐る割って入った頼子に、律儀に答えるブラックハート。同時に商店街の入口―そこで記入用の短冊が配布されている―の方角に視線を向ける。
珍しく真剣な表情で短冊と睨み合う、己の契約者の姿を思い出しながら。
―愛を謳う稀代の聖女。愛があれば何でも出来ると信じて疑わず、事実いかなる困難も障害も殴り飛ばす、強き意志と行動力を持つ者。
―正邪善悪を問わず、あらゆる者と―それこそ、自分のような悪魔とさえ―心通わせる、ある意味異常なまでの寛容さを持つ者。
「……随分悩んでいたが、よほど大それた願いを書くつもりだろう。奴ほど欲深い人間も、そうは居るまい」
「ふーん……」
魔王のどこかズレた友人評に、臨戦態勢を解いたリリカが相槌を打つ。
「それはそうと、アンタは何書いたの?」
「まさか、『世界征服』とか『打倒ゴーストライダー』とか……」
「さては『フレンチクルーラー食い放題』だな?」
「貴様と一緒にするなこの暴食駄猫が。そもそも、こんな馬鹿げた催しなどまともに付き合うものか」
261:聖女と魔王の七夕
12/07/09 17:36:20.11 発信元:114.179.95.220
心底どうでも良さげな口調の魔王。だが、次第に語気に冷たい物が混ざる。
「復讐の精霊も、ヒーロー共も、我が父も、全て俺の力で叩き潰す。星に願いなど、捧げる必要は無い」
「「「…………」」」
しばしの沈黙。通りを行き交う人々の声だけが、やけに遠く感じられる。
「だが、万に一つもあの星々が『願いを叶える力』とやらを持つのならば。そんな大それた存在ならば。
せめて愚痴の一つも聞いてみせろ、と思ったまでだ」
「……へ? ぐ、愚痴?」
平熱に戻った口調―世間一般と比べればまだ低いが―に混ざった妙な単語。思わず頼子が復唱すると、
「ああ。馬鹿げた催しに相応しい、実に馬鹿げた愚痴だ。読んでみるか?」
ブラックハートは先程まで見上げていた笹に手を伸ばし、そこに結ばれていた一枚の短冊を外した。
三人が覗き込んだ、濃紺の短冊。そこには―
【契約者が俺の事をふざけた仇名で呼ぶ。何とかしろ】
「「「………………」」」
今日一番の沈黙が場を支配した。もはや周囲の音も耳に入らない。
「……うわぁ……」まずリリカが辛うじて口を開き、
「……まぁ何だ、強く生きろ……」続いてミケが慰め、
「……綺麗な、字、だね……」頼子は話を逸らそうと試みた。
262:聖女と魔王の七夕
12/07/09 17:37:27.78 発信元:114.179.95.220
……と言うか、それは下克上より困難な事なのだろうか。なんかもうMARVEL社涙目である。
「もっとも、今更怒りも湧かんがな。どうにもならない事ならば、いっそ諦め―」
そんな微妙極まる空気などいざ知らず、クロち…もといブラックハートが自嘲気味に呟いたその時。
「ぉーーー待ーーーたーーーせーーー!!!」ドゴォ!!!
「もっぶぉおおおおおおおおおッッ!!?」
彼方からカッ飛んできた『何か』が魔王の巨体に直撃。そのまま歩道を10メートルほど転がり、電柱に激突する寸前でようやく停止した。
まさかの超展開に三人が唖然とするなか、土埃越しに見覚えのあるアホ毛が揺れる。
「遅くなっちゃってゴメンねクロちゃん、さっきようやく書けたから急いで飛んできたよ!」
「そうか、それは、良かっ、たな……グッ……契約者よ、怪我は、無いか?」
「うん、大丈夫だよ! だってクロちゃんが受け止めてくれたから!」
辛うじて搾り出したブラックハートの問いかけに、彼に飛び付いてきた―彼を超速のスピアータックルで押し倒した―『何か』こと彼の契約者、愛乃はぁとは笑顔で答えた。
自己申告の通り、魔王の両腕に抱えられたその身には擦り傷一つ付いてはいない。
「……お前が望むなら、いくらでも受け止めてやろう、我が契約者よ。
だが次からは側面ではなく正面から来い。速度も出しすぎだぞ、よく事故を起こさなかったものだ」
「うー……ゴメンなさい」
「パルティニアス、貴様もだ。こんな事で『力』を貸し与えるな」
交通指導に続いて、ブラックハートははぁとの背後に向けて呼びかけた。
彼女の守護聖霊にして、すっごい聖霊力全開タックルの推力源でもある、愛のアルカナ・パルティニアスに向けて。
263:聖女と魔王の七夕
12/07/09 17:39:00.87 発信元:114.179.95.220
「前々から言おうと思っていたが、貴様は―」
「あの~、皇子サマ~?」
スーパー説教タイム略してSSTが始まろうとしたその時、リリカが声をかけてきた。
それも何故かニヤけ顔で。なんだその顔は気持ち悪い。
「俺はパルティニアスに話がある、用なら後にしろ」
「うん、それは結構なんだけど~。アタシらもハートと話したいんだよね~。
でもさぁ、そのハートはアンタが後生大事に抱きしめちゃってる訳じゃん? いつまでそうしてるのかな~、って」
「……何!?」「ふぇ?」
言われて、顔を見合わせるブラックハートとはぁと……近い。めっちゃ近い。
当然である。二人は先程と同じ姿勢―飛び込んできた彼女を抱き止めている―のままなのだから。
……こうして見ると、思ったより小柄に感じられる。戦闘の最前線で並み居る闘士達と殴り合っているとはとても思えないほど華奢で……ってそうではない!!
「うおおっ!?」「わわわっ!?」
慌てた様子でブラックハートが腕を解くと、これまた慌ててはぁとが飛び退く。
「ク、クロちゃんゴメン! えーと、重くなかった? 腕とか痺れたりしてない?」
「い、いや、俺の心配は無用だ! むしろ軽すぎ……違う!! お、お前こそ、何だ……その、もう立っても平気なんだな!?」
「あー、もしかしてアタシ、余計な事しちゃいました?」
揃ってテンパる二人―理由や度合いは両者で大違いなのだが―に、リリカがわざとらしく声をかける。顔はニヤけ顔のままだ。
もはや魔王の視界になど入っていないが、周りを行き交う人々の何割かもニヤニヤしながらこちらを眺めている。中には口から黒砂糖ぶちまけて死にかけてる者までいる。パルパルしてるのも数人混ざってるって? 気にするな!
……もしもこの場に冴姫が居たら、間違いなく殺生沙汰になっていただろう。幸いにも彼女とその親友は、祭りの警備を担当する『知り合いの騎士達』に同行しているようだが。ダレカSSニシテモイイノヨ(チラッ
264:聖女と魔王の七夕
12/07/09 17:41:10.60 発信元:114.179.95.220
「全くだ、大変な事をしでかしたなリリカよ。よりにもよって七夕の夜に、せっかく出会えた二人を引き剥がすなど無粋千万。なぁ頼子?」
「え、えぇ!? ……そうだ愛乃さん! さっき『ようやく書けた』って……短冊の事だよね!?」
やはりわざとらしく煽るミケにネタを振られた頼子が、辛うじて魔送球を流した。こちらに矛先が向いては堪らない。
実際のところ彼女も、二人の関係が自分とミケのそれとは―少なくとも悪魔側から人間側への『感情』は―違う事には感づいている。事実、自分の親友もそうした『感情』の上に産まれているのだから。
ただ、それは決して口に出さない。ブラックハートとミケは気の短さもまるで違う。命は投げ捨てる物ではない(断言)。
「あ、そうそう。ありがとよりぷー、危なく忘れるところだったよ」
「いや、今日ソレ忘れてどーすんの。んで肝心の中身はどーなのよ、力作書けた?」
「何しろ相方を一人で待たせる程の願いだ、どれ我輩にも見せてみろ」
「貴様等……まったく調子の良い連中め」
こちらを煽りまくっていた二人が態度(と標的)を一変させるのを見て、ブラックハートは内心溜息をつく。戯言を許す気はないが、それよりもはぁとの『願い』に対する興味が上回った。一体何を書いた?
はぁとがポケットから取り出した短冊を、魔王以外の三人が覗き込んで―その表情が固まった。
「……えーと、愛乃さん……? お願いはこれでいい、の?」
「うん! これしかないかなー、って」
「「……」」
横目でブラックハートを見ながら、何故か気まずそうに訊ねる頼子。リリカは肩を震わせ、ミケもうずくまり震えている。
……お前らのリアクションはおかしい、何が書いてあったのだ? 何やらとてつもなく悪い予感がするが、構わず魔王は己の契約者に歩み寄る。
265:聖女と魔王の七夕
12/07/09 17:42:46.10 発信元:114.179.95.220
「……契約者よ、俺にも見せろ」
「はい、どうぞ♪」
彼女の手から桜色の短冊を受け取り、ざっと目を通―
【クロちゃんが私の事を、名前で呼んでくれますように。愛乃はぁと】
―魔王の思考が完全に止まった。
「―んなっ、な……おま……ぐ、ぬ―」
もはや言語の形すら失った呻き声しか出てこない。何だこれは? 名前で呼べ? 俺が? 己の契約者の事を? 名前でだと?
棒立ちのまま大混乱に陥るブラックハート。その光景に耐えられず、ついに二人が爆発した。
「……プッ、アハハハハハハハハッ! まさかのっ、まさかの名前呼びフラ……アッハハハハ、お腹、よじれ―!」
「カハハハハハ!! 全く、貴様等は、どこまでも……カハハハハhゲホッ! ゴフッ―!!」
震えるほど笑いを噛み殺していたが、流石に限界を越えてしまった。リリカは腹を抱えて爆笑し、ミケに至ってはむせて転げ回っている。
いまいち状況を飲み込めないはぁとが、とても笑う気になどなれない頼子に小声で問う。
「……ねーよりぷー、二人ともどうしちゃったの?」
「えぇと……これを読めば解る……んじゃないかなぁ……」
消え入りそうな語尾の代わりに頼子が差し出したのは、濃紺色の短冊―ブラックハートの『愚痴』が書かれた短冊だ。ちなみに書いた本人は未だ脳内神キャラ大会状態にある。\リカイデキナイー/
迷わずそれに目を通すはぁと。しばし黙って熟読していたが、唐突に声を上げた。
「私とおんなじお願いだね!」
「……って何ぃ!?」
まさかの爆弾発言に、ブラックハートの意識は現実に引き戻された。どうしてそうなる!?
266:聖女と魔王の七夕
12/07/09 17:44:06.39 発信元:114.179.95.220
「だって、私はクロちゃんに名前で呼ばれたいし、クロちゃんも私に名前で呼んで欲しいんでしょ? おんなじだよ!」
「いや待て落ち着け契約者よ! 俺のはただの愚痴だ、お前の癖が今更直るなどと思っている訳では……!
そもそも本当にそんな願いでいいのか!? 他に何かあるだろう、『世の中を愛で一杯にしたい』だの『皆と仲良くなりたい』だの、こう……いかにもお前らしい願いが!」
「それは自分の力で叶えてみせるよ! ぜ~ったい!!」
ある意味予想通りな台詞と共にサムズアップを決めるはぁと。某青空のライダーやケンジィも顔負けである。
一方の魔王は完全に頭を抱えている。こう返されては何も言えない。もう言えば言うほどドツボに嵌る。
―まさにその時。腹筋破壊地獄から復帰したリリカが、恐るべき案を挙げた。
「そうだ! この際だからさ、お互い『せーの!』で名前呼び合えばいいじゃん!」
「そいつは名案だ! 何を恥じるブラックハート、ほれさっさと言ってしまえ」
「要は慣れだと思うな、こういうのは。私だって呼び捨てにされてるもん」
「貴様等、何をたわけた事を……っ!!」
事ここに及んで、ついに頼子もブレーキ役を投げ捨てた。
「それ、言ーえ♪ 言ーえ♪」「男を見せんかー!」「二人とも頑張って~」
口々に囃し立てる三人。
それだけではない、いつの間にか集まっていたギャラリーも野次やら口笛やらを飛ばしてくる。魔王完全孤立である。
「どいつもこいつも……ふざけるな! おい契約者よ、お前も黙ってないでこいつ等を……」
「ふー、なんだか緊張してきたぁ……ドキドキするよ……」
「既に準備万端か!」
思わず天を仰ぐ。先程同様、満天の星空が自分達を見下ろしている。見えてはいけない死の兆したる星も、今なら見えるような気がした。
こうなればヤケだ。たかだか名前を呼んでやるだけだ。大して難しい事でもない。
……最悪、この場の全員の口を封じてしまう手もある。騒ぎを起こせば制裁を受ける可能性もあるが……知ったことか!
ブラックハートは意を決して―後半のはしてはいけない決意だが―己の契約者と向き合う。
267:聖女と魔王の七夕
12/07/09 17:46:16.27 発信元:114.179.95.220
「…………」
自分をまっすぐ見上げる、その眼差し。いかなる魔眼・邪眼の類を以ってしても、これほど自分を脅やかす事は出来まい。
―これも、命令のようなものだ。従ってやらねば、な―
そして両者は、全く同時に口を開き―
『喧嘩だーーーっ!!』『なんかあっちで大勢喧嘩してるぞ!!』『誰か警備担当に連絡しろー!!』
―突如巻き起こった喧騒にかき消された。
騒ぎに近づこうとする者と騒ぎから逃れようとする者とで、商店街の一角はごった返す。当然、直前までのムードなど台無しである。
「……だぁーっ! どこのどいつよ! この日に! こんな時に! 喧嘩なんか起こす奴はー!!」
怒声を張り上げたのはリリカだ。喧嘩が起きているであろう方角を睨みつけ―その時、聞き覚えのある音が、決して聞きたくなかった音が、耳に飛び込んできた。
バイクのエンジン音……それと、馬の嘶きが。
『煉獄と伊達軍の抗争だーーっ!!』『またアイツ等か!!』『警察、いや連邦軍呼んで来ーい!!』
「「「…………」」」
リリカと頼子は―ミケは杖に姿を変えている―怒気を噴き出しながらその方角へと歩き出す。
「あんのパーティー狂め、よりにもよって……っ!」
「いくら男の意地って言っても、これは酷過ぎるよ……」
「空気の読めぬ悪餓鬼共めが……夜空の果てまで吹き飛ばしてくれるわ!!」
268:聖女と魔王の七夕
12/07/09 17:47:44.26 発信元:114.179.95.220
二人の体が僅かに宙に浮く。その傍らに顕現したのは、それぞれの契約聖霊。風のアルカナ・テンペスタスと、魔のアルカナ・ディウー・モール。
「マサムネの……アホーーーっ!!」
「煉クンの……バカーーーっ!!」
聖霊力全開、二人の聖女(+杖一本)が空を翔ける。……七夕の夜に巡り合う、二組のカップルの間に果たして何が起こるか。少なくとも極一般的なロマンスとは言い難いだろう。ダレカSSニ(ry
……そして、この場に残されたカップルがもう一組。
「……行っちゃった、ね」
「騒ぐだけ騒いでこれか……まるで台風だな」
「私達も行った方が良いかな?」
「あの二人が向かえば、両陣の頭は戦意を失おう。残りの有象無象など騎士連中にでも任せておけば良い。
契約者よ、お前も覚えておけ。バイクなんぞ乗り回してる連中にロクな奴はおらん」
心配そうな様子のはぁとに答えつつ、どさくさ紛れに宿敵のイメージダウンを企てるブラックハート。
もっとも、今回ばかりはその『ロクでもない連中』のおかげで、先程の公開羞恥プレイを聞かれずに済んだ訳だが―
「ねぇ、クロちゃん」
「何だ」
「やっぱり言いにくいな、『ブラックハート』って。なんだか長いし」
―間近にいた当人同士にはしっかり聞こえていたのだ。
久し振りに―出会った最初期以来か?―彼女から本来の名前で呼ばれはしたが……実際のところ、それで何が変わったとも思えない。どうも仇名呼びに慣れてしまったようで、むしろ軽い違和感さえ受けた。
自分と彼女との距離が、開いてしまったかのような、嫌な感覚を。
「……そんなに難しいなら、無理に本名で呼ばなくても構わん。お前の好きに呼べば良い」
「ゴメンねクロちゃん。お願い、叶えてあげられなくて……」
269:SS投稿者@携帯
12/07/09 18:08:05.96 発信元:206.223.150.45
※連投規制です ちょっと待って下さいorz※
270:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/07/09 18:35:02.22 発信元:202.229.178.133
がんばらはるなあw 連投規制って毎時0分リセットじゃなかったっけ。シベリアよく知らないけど
271:聖女と魔王の七夕
12/07/09 18:41:28.56 発信元:1.33.211.244
失望されたとでも思ったのか、彼女の表情が沈む。
……そんな顔を、俺に見せるな……
「……今日は謝ってばかりだな、はぁと。お前らしくもない」
「うん……って、えっ? 今……」
思わず顔を上げるはぁと。先程まで沈んでいた表情が、今度は驚きに変わっている。
ブラックハートに名前を呼ばれた、驚きに。
「何だその顔は、願いを聞いてやったのに不満なのか? 散々考えて決めた願いだろう」
「だって、私はクロちゃんのお願いを……」
「あれは『ただの愚痴』だと言ったぞ。お前の『七夕の願い事』と違ってな。
お前が俺をどう呼ぼうが、今日一日、俺はお前を名前で呼ぶ。いいな、はぁと」
「…………クロちゃーーーん!!」
感極まったはぁとが、本日二発目のスピアーを敢行した。前回より勢いは無いが、何ぶん至近距離である。バランスを崩した魔王の巨体が尻餅をつく。
「お、おいはぁと! 誰が突っ込んで来いと言った!」
「ありがとクロちゃん! これでもっと、もーっと仲良しになれるね!」
「今日だけだと言ったのが聞こえないのかお前は……とりあえず離れろ、人が見ている!」
272:聖女と魔王の七夕
12/07/09 18:42:39.90 発信元:1.33.211.244
―それから。家に戻ったブラックハートは文字通り『今日一日』ギリギリいっぱいまで、はぁとの名を呼ばされ続ける羽目になった。
それだけではない。翌日のデイリー・ビューグル誌の一面を、とんでもない記事が飾っていた。
【魔王ブラックハート、ついに契約者に手を出した!?】【魔族達による地上侵攻の前触れか!?】
先日の祭りの写真―自分がはぁとに抱きつかれている―がデカデカと載ったそれを引っ掴み、ブラックハートは単身ビューグル社のビルに乗り込……もうとして。
同じく記事について問い合わせに来たのだろう、冴姫や舞織、ペトラらとハチ合わせてしまったのだ。
……その後の惨状については、敢えてこの場では触れないでおく。
結論―愚痴はチラシの裏にでも書いておきましょう。
273:聖女と魔王の七夕
12/07/09 18:45:11.48 発信元:1.33.211.244
セルフツッコミなど
Q.なんかクロちゃん残念&テンション高すぎない?
A.仕様です。天真爛漫少女に振り回されるツンデレ人外っていいよね
Q.クロちゃんってバイク嫌いなの?
A.バイク乗り炎使い鎖使い骸骨みーんな嫌い。お前は子供かw
思い起こせばタッグ初出のアメコミ大規模トナメでも魔眼チームに負けたような
Q.アルカナ勢って空飛べるの?
A.原作でも最終ステージが高所だし、やろうと思えばいけるんでない?
Q.頼子はもっと弱気のような
A.族のヘッドと付き合ってれば度胸もつくかと。恋をすると女の子は強くなる(キリッ
Q.なんでラストにデイリー・ビューグル?
A.当初は安定の文々。だったけど書いてる途中でアメイジングスパイダーマンを観たので
クロちゃんのパパはピーターにひどいことしたよね
Q.メイン二人はお互いをどう思ってるの?
A.はぁと→すっごいすっごい仲良し。たぶん 冴姫≧クロちゃん>舞織、その他 くらい
ブラハ→無自覚ベタ惚れ。でも他人に茶化されるのは大嫌い。
Q.まさか二人って一緒に住んでるの?
A.いつでも呼び出せる類の契約なんでしょう。まぁミケも頼子ん家に住んでますし
魔界組の立ち位置を考えてたらえれぇ長くなっちったよ……次はクラリスでも出そうかなw
では、ド長文失礼しました
274:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/07/10 00:29:15.25 発信元:210.153.84.47
グッ………ジョブだ…!
眼福眼福。笑った和んだ、乙です!
ツンデレ人外マジかわいい
275:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/07/12 12:17:06.58 発信元:220.156.248.68
>>259
ごちそうさまでございました!
真昼間、時間が取れたから我慢出来ずに投下ー
10レスにおさまってるといいな。良ければお付き合い下さい。七夕?知らぬ存ぜぬ
※大炎上(もう…喰ったか?ハラァ…いっぱいか?)
※某タッグ大会初回開催寸前を想定 ※京子が出ますが口調・性格掴めてません誰かオシエテクレー
276:黒鬼と銀奴1/10
12/07/12 12:19:26.33 発信元:220.156.248.68
街と街の間に山がある。
山の間に里があり、里の間に林があり、林の間に森がある。
この山奥の深い森には、黒い鬼が住んでいた。
鬼とはいえども角の一本も生えちゃあいないし牙も無い。
一見は黒髪に焼けた肌色を持つ筋骨隆々とした青年だ。
人里に害を及ぼす事も無いこの物静かな鬼は、時折里に下りては酒を求めたりしていた。
黒鬼――軋間紅摩は気まぐれに、里に無い酒を飲みたくなった。
白い外套を羽織る。森を出て、林を抜け、里を過ぎ、山を下り、街に出た。
街には山ほど高くはないがのっぽの箱がごまんと立ち並ぶ。
その箱の内に外に人もごまんと暮らしている。
人里のただ中を歩いても、彼を鬼だ鬼だと囃し立てる者はいない。
山里においては彼を恐れつつ鬼と称する者達が居る。
彼はそれを知っていたが、気に留める事は無かった。
さて、その山里では自分の手仕事の品と酒とを物々交換していたが、この街ではそうもいかない。
金が要るのだ。普段金の要らない生活を送っている男は無一文。
住処に事情により得た金はあるが、それを持参はしなかった。
金銭を得るあてがある。
尊い労働に従事してもいいだろうが、そうではない。
この世界各地では連日と言っていい程の頻度で格闘大会が開かれているのが常だ。
闘いを生業とし、その賞金を糧に生きる者も少なくない。
大会に出場し、賞金を得る。それが彼の“あて”だった。
277:黒鬼と銀奴2/10
12/07/12 12:23:26.93 発信元:220.156.248.68
紅摩は普段物静かなその性質の割に喧嘩好きだが、武人ではない。
手慰みとして武術の真似事をしているのみだ。
それでも、鬼と人との混血の中でも鬼の血が色濃い彼にしか扱えない独自の戦闘術は身に付けており、
此度と同様の目的で街に下り大会に参加し、賞金を得た事はある。
武闘の饗宴。彼にとっては一つの娯楽でもある。これに参加しない手はない。
大会会場として使用される事の多い大型の民営ドームは山側にあった。
ドーム外周部掲示板に張り付けられた多種多様な開催大会のポスターやその概要のプリント。
過去に終了した大会結果などの記事。最も近日中に開催されるものを目で探す。
すぐに見つけ出したそれは明日に開催されるものだった。
しかしでかでかと書かれた見出しにもある通り、出場者の最低条件として“男女二人組のタッグである事”が挙げられている。
女。黒髪・長髪の厄介な女に、ある姉妹の顔くらいしか浮かばない。
生憎これには出られそうにないと、紅摩が他のポスターに目線を遣ったとき。
「そこの男」
鈴を鳴らしたような高い、凛とした声。周囲に紅摩以外の人間の気配は無い。
ならば自分の事かとそちらへ顔を向けると、結い上げた白銀の髪に白い肌、濃い緑の眼を持つ、
女とも少女とも言える者が立っていた。
どうでもいい事だが、二の腕も生足も露出した格好はやや目のやり場に困る。
「……小娘。俺に何か用か」
「うむ。そこにある、男女タッグの大会のポスターを見ていただろう」
少女の言葉は外見の可憐さに反して端的だ。纏っている雰囲気には合っているように思えた。
「そうだが、それが?」
「参加するのか?」
「生憎、片棒を担げる女性(にょしょう)が知人に居らんのでな。しようにも出来ん」
「それなら、私と組め」
「何?」
聞き返すまでもなかったが、簡易かつ単刀直入なその発言は少々意外だった。
少女は色濃いのに澄んだその眼を背ける事なく頷く。
「私にもタッグを組む男の相方が居ない。ひとり同士だ」
「確かに話は早いが」
278:黒鬼と銀奴3/10
12/07/12 12:28:06.41 発信元:220.156.248.68
「なんだ」
「小娘。俺は貴様の手並みを知らん。その細腕で何が出来る」
後半は侮辱とも取れる紅摩の言葉だったが、少女の素直さはそれを純粋に受け入れた。
成る程、と頷く。少女の腕はしなやかな筋肉に包まれているが、確かに細い。
自分の前腕を少し持ち上げて眺めていたが、視線を目の前の男に戻す。鋭い眼光と真ん丸い瞳とがかち合う。
「それなら、身を以てやってみるのが一番いい」
何でも無い事のようにさらりと言ってのける少女に紅摩の眉間の皺が寄る。
「ほう。喧嘩を売るか」
力量の知れぬ、名も知らぬ少女との試合。経験の無い事だ。興味はあった。
如何様に闘うか。どれほど闘えるか。楽しませてくれるのか。
「近くの公園に丁度いい広場がある。やるのならそこへ行こう」
「……手馴らしにやってみるのもいいか」
「よし」
そうと決まれば話は早い。こっちだ、と促しながら少女は踵を返し、男の先を歩き始めた。
夕方に近い、重さを増した空。芝生。広々とした大型公園。色鮮やかな遊具も数多い。それらに用は無い。
子供が遊ぶ場所とはわざわざ金網を設けて隔離された広場。周囲を囲むフェンスと金網。
分厚いコンクリート製の簡素極まりないフェンスの所々は焼け焦げていたりひび割れていたりする。
自然のものではない風に飛ばされたであろう土。いくつも残る踏み込みの痕跡。
成る程、ここは闘う人間の寄る辺の一つであるらしい。二人の先客が居たが、彼らはここでの用を終え、立ち去る所であるようだった。
「よう。今からか?」
先導する少女が広場に立ち入って来たのを見て、二人の内の一人である
黒髪に白いバンダナを巻いた浅黒い肌の青年が二人に声をかけた。
眼球の白いはずの部分が充血以前の問題として赤く、瞳は黒。
人の形を取った妖の類に見えない事も無いが、白い歯を見せて笑いかけてくる口調は気さくそのものだった。
「あれっ、見ない顔が二つも。この街には?大会に出場しに来たの?……あっ、私は京子!よろしく」
青年と同じ様に白いバンダナを頭に巻いた女――京子も尻馬に乗ってきた。
「俺はKUSANAGIだ。お前らは?」
並ぶと二卵性の兄妹のような二人だ。
279:黒鬼と銀奴4/10
12/07/12 12:30:04.33 発信元:220.156.248.68
お前らと言うことは自分も勘定に入っているらしい。
銀髪の少女の後ろで瞠目していた紅摩が目蓋を開く。
名乗られて名乗り返さぬ理由も特に無い。
「軋間紅摩だ」
少女はどうしてか、少し戸惑っているように、黙っていた。
しかし背後の男が名乗ったのを見て、
「……私、は……アネル=ロランジュだ」
そう、ややぎこちない口調で自己紹介をした。
それを受けた京子はにこっと笑って、
「よろしく、アネル!私が予想するに、ん~……明日からあるタッグ大会に参加するの?」
「多分、そうなる」
「多分だぁ?」
「……これから、決める所なんだ。この男が、私の手並みを知らないからと」
「へえ」
KUSANAGIと名乗った男が黙ったままの紅摩にじろりと目を向ける。
少女――アネルも礼儀を知らないような言葉遣いだが、この男の場合はそれ以上に口が汚いように感じられた。
「ああ、アンタ、見た事あるぜ。こう、相手の首根っこ掴んで燃やして投げてたろ」
「そうだな」
肯んじた。紅摩にも何度かの大会出場経験はある。ギャラリーも大勢だ。
その中にこの青年も居たのだろう。
『こう』と伸ばした腕の先で空を掴む手指の動きは、紅摩の仕草を真似ていた。
280:黒鬼と銀奴5/10
12/07/12 12:32:06.49 発信元:220.156.248.68
「燃やす?」
青年の言葉の一端を拾い上げた少女が聞いたが、KUSANAGIは答えずひらひらと手を振って、
「そいつはこれから分かるだろーよ。まっ、参加するにせよ、しないにせよ、がんばんな」
「あっ、待って待ってっ!アネル、紅摩、またどこかでねっ」
巾着式のスポーツバッグを引っ提げ男はアネルと紅摩の前から立ち去る。
それを京子が追って行って、壁に囲われた広場には二人だけになった。
去る二人の後ろ姿を最後まで見送る事は無く、少女が口火を切る。
「では、やるか」
「ふむ」
躊躇などない。弱ければ適度な所まで叩きのめすのみ。
拮抗出来れば面白いが、灼熱の力を行使するつもりは今の所無い。
広場の真ん中辺りまで二人は歩く。十数歩の間合いを取り、向かい合った。
紅摩は羽織っていた白いコートを投げ捨てる。
「来い」
武術家ではない彼には構えらしき構えが無い。
空手家や柔道家、拳法家のように腰を低くしたり拳を顎に添えたりする事無く、仁王立ちする。
言うなれば、この様にただあるがままに相手に向かい合っているのが彼の構えだ。
アネルはそれに茶々を入れる事も無く彼を見据えた。
上衣に手を掛けたかと思いきや次の瞬間には
彼女の服装が先程とは全く異なったものに変わっている。
真っ黒いハイネックのノースリーブにたっぷりとして肌離れの良さそうなフレアパンツ(と言っていいのかどうか)。
拳法家のような出で立ちで、腰を低く落とし、片腕をこちらへ伸ばすように構えた。
結い上げていた髪が下りている。銀糸が夕方の風にさらさら流れる。林がさざめく。
281:黒鬼と銀奴6/10
12/07/12 12:33:51.18 発信元:220.156.248.68
「いくぞ」
静かで涼やかな宣言から一拍。
緑の眼がこちらを見据えたまま拳を握り向かってくる。
速い。そう来ると読んでいたわけでもないが、突風のようなその拳を真正面からがっしり掴む。
存外重い衝撃を腕一本で殺す。
「ちっ!」
鳩尾に拳を叩き込もうとするが女はその一撃をかわし、片手を絡め取られて尚踏み込む。
男の懐に入り込み体躯に肘を突き当て、顎目掛けて拳を打ち込む。
下顎への一撃をまともに食らい天を仰ぐ紅摩から一旦逃れようと
アネルは掴まれたままの右腕を引くが、びくともしない。ダメージが無い筈は無かった。
アネルはしかし戸惑いの色など見せない。
男の武骨な手がぐんと伸びて来る。
首目掛けて円をなぞる動きで向かって来たそれを左腕で防ぐ。
左腕が取られる。
(まずいっ…――!)
視界がぐわんっと動く。
「くっ!」
ざざ、と地面を滑る。アネルの擦れた靴底から乾いた土煙が上がった。
少女を低く横方向へ投げ飛ばした男は仁王立ちのまま煙の向こうに佇んでいる。
アネルの鮮やかなそれとは違う、暗い色の隻眼。
「それで終わりではあるまい」
「はあっ!」
答えず、応えとして、また向かって行く。
低い姿勢を崩さず踏み込む。男の足元へ飛ぶ、地面すれすれの蹴り。
男の立ち位置は変わらない。
返事のように容赦なく頭目掛けて降りてきた足を両腕で防いで、体重移動。
背中側に回り込み、掌底を打ち込む。先程のように手応え自体はある。
衝撃に仰け反った紅摩だったが、振り返り見る眼光には少しの揺らぎも見当たらない。
282:黒鬼と銀奴7/10
12/07/12 12:35:10.91 発信元:220.156.248.68
ざっ、とこちらへ向き直り様、回し蹴りを放つ。アネルは遅いそれを難なく避ける。
半歩動いた先にまた閃くような速さで腕が伸びて来る。
「そう何度も!」
伸びて来た腕をするりと受け流しつつ再び潜り込んだ懐。
硬い筋肉に覆われた腹に胸に一撃ずつ見舞い、頬を殴りつける。
豪の腕を除き、紅摩の動きはアネルに比べ全体的に遅い。
防御が間に合わず喰らった拳の重さ。
小娘と見くびっていたようだと悟る。
吹き飛びもせず、頬に拳を叩き込まれたままぐぐぐと顔を元に戻して来る紅摩。
アネルはそれに驚く事も無く身を引いた。構え直す。
真ん丸い瞳が、一挙一動見逃すまいと、真っ直ぐにこちらを見つめている。
「なかなかやるな」
「理解したか」
「応。だが、まだ全力ではあるまい」
アネル=ロランジュは否定しない。
事実、彼女は力の全てを解放していない。
「それは、お前だって同じだろう」
その言葉通り、軋間紅摩もまた、余力を残してある。
軋間一族に受け継がれて来た、自身を文字通り“燃やす”力、炎獄の灼熱。
やろうと思えば頭蓋握り潰す事など容易い、圧壊の腕。
それら全てを振るって勝負に望んではいなかった。
この細身の少女がそれらを受け切れるかどうかを心配したからだったが、杞憂だったらしい。
「一つ聞くが。お前、本当に人間か?」
「……そうだと思いたいな」
出会したときから感じていた事だが、少女は、どこか市井の人間らしからぬ空気を纏っているように見えるのだ。
283:黒鬼と銀奴8/10
12/07/12 12:37:10.47 発信元:220.156.248.68
それはその並外れた容貌故かとも考えたが、どうもそうではないらしい。
「多少、弄くられている。親の顔……いや。親が居るのかも、分からない」
「随分と複雑な事情を抱えているようだな」
「お前こそ、私と似たようなものではないのか」
「そうだな。俺は、鬼だ。正しくは、鬼にならずに済んでいるだけの人間だが」
「オニ……?」
「それについては後で話してやろう」
構えたまま首を傾げたアネルに向き直る。
遠慮は要らないのだ。
この喧嘩を買って正解だった。
紅摩の身体中が歓喜している。これほど楽しいのは久方振りだった。
血液が熱くなる。掌に、腕に、つま先に、膝に、熱が籠もる。
ごきごきと鈍い音を響かせながら握った拳の隙間から熱気がこぼれてしまいそうだ。
「うむ。ケリをつけてから、だな」
対して少女は構えを解く。
祈るように願うように両拳を突き合わせ、瞠目した。
大気がざわめく。木々が鳴いた。
火花だろうか。瞬く間に、熱い光が紅摩を突き抜けていった。
開眼した少女を、太陽光のような金の輝きが取り巻く。
人間のどこをどう弄くったらこうなるのかなど紅摩には全く想像もつかない。ただ、綺麗だな、と感じた。
孔雀石のようなのに透き通った、しっかりと意志を持っている瞳は、こちらを見据え続けている。
「折角の喧嘩に折角の相手だ。残念の無いよう、手を尽くして――闘(や)るか!」
「望む所だ!」
ぎゅ、と大地を踏みしめて。
異なる熱を纏った男女は、合図も無いのに同時に相手に向かって地を蹴り、跳んだ。
284:黒鬼と銀奴9/10
12/07/12 12:38:43.36 発信元:220.156.248.68
夕日も地平に隠れ切り、夜の帳が下りた広場。
本当に手を尽くし全力でぶつかり合った二人が、地面に横になっていた。
さながら青春漫画の如しである。
明るい月が東の空からのぼり、地上を淡くも明るい光で照らしている。
今夜は奇しくも満月だ。酒が欲しくなるがまだ金が無い。
自動販売機のコーラ一本購う金すら持っていない。
「この世の全ては有為転変。次に勝つのが俺かどうかは分からん」
「……慰めているつもりか、それは」
「分からん。分からんが……そうだな。多分、そうだ」
互いに内なる火焔を出し合っての全力勝負を制したのは、軋間紅摩だった。
手数足数で拮抗してきた少女の身体を何度掴み何度地面に叩き付けたかも分からない。
少女は何度も立ち上がってきた。
緑の眼光の強さを弱める事など一度たりともなかった。
何度となく倒し倒され立ち上がっている内に、
まだ何もしていないのにぱたりと仰向けに倒れてしまったのが、彼女の方だったのだ。
勝者となった紅摩も満身創痍だ。
彼女が天を仰いで倒れたのを見て、やれやれ、と自身にも倒れる事を許したのだった。
柔らかくもなんともない土は堅く冷たく痛いぐらいだったが、火照った身体には丁度良い。
「オニというのは何なんだ」
「日本の伝説上の化け物だ。人型で、頭に角を生やしている。
人を食ったりさらったり、害を及ぼす事もあるが、神にも近いとされる。酒と宴会が好きだというのが通説だ」
「お前は、その鬼なのか」
角などないように見えるが、と、アネルの顔がこちらを向いてくる。
土煙と焦げ臭さにまみれた銀髪だが相変わらぬ美しさだ。
285:黒鬼と銀奴10/10
12/07/12 13:01:32.07 発信元:220.156.248.68
「厳密には鬼ではない。鬼と人との混血、その末裔だ」
「人を食うのか?」
「食うか!……俺が好きなのは酒だ」
「酒は、飲んだことがない」
「勿体無いな。今度飲ませてやろうか」
「うん」
この美麗(それこそ酒の肴になり得るほどの麗しさである)
とも言うべき少女は尋常でない強さを持っていたが、
こうして話してみると、じきに成熟しようというその外見や言葉遣いにそぐわない
幼さと素直さを持ち合わせているのがよく分かった。
大抵の場合発する言葉は至極ストレートで、飾り気が無い。
疑問点はすかさず問いかけてくる。こちらの言葉を疑ったりする事が無い。
「私は、さっきも言ったが、改造を受けた人間だ。クローンでもある」
「“くろおん”?」
「“コピー”。“複製”だ。だからきっと、親など居ない。居るのはオリジナルと、似たような仲間だ」
「そう、か」
「こんなに自分の事を話したのは、仲間以外では、お前がはじめてだ」
少女は、妙に清々しい顔をして満月を見上げる。気持ちの良い、白い気質。裏表など多分無いのだろう。
286:黒鬼と銀奴11/10←
12/07/12 13:13:00.99 発信元:220.156.248.68
「さて。俺は勿論、お前にも飲ませてやるには、大会で一つでも多く勝ち進まねばならんな」
「じゃあ、組んでくれるのか?」
「願ったりかなったりというやつだ。組んでくれれば寧ろ俺が助かる」
「よし、なら、組もう」
アネルがちょっと嬉しそうに頬を緩める。
雪のように白い肌に、ほんのり紅色が差していた。
参加受付は当日朝までやっていた筈だった。
明日(既に今日かも知れないが)の朝一番に会場に向かえばそれでいい。
「お前の事は、何と呼べばいい?」
「うん?」
――そういえば。二人は互いに対しては、きちんと名乗ってはいないのだった。
今更なその事実が可笑しかった。声を上げて笑う男に、少女は横たわったまま首を傾げる。
「軋間、紅摩だ。何とでも呼べばいい」
「それなら、紅摩と」
「俺は、お前を何と呼ぼうか」
「私の名前は、アネル=ロランジュだ」
「では、アネルだな――アネル」
「なんだ、紅摩」
「少し、眠るか」
「うん……」
少し、喋り疲れた。こんな風に誰かと会話した事など、今まであっただろうか。
群青の空、満ちた月光、煌めく星空の下。
男女は疲弊した身体を硬い地面に預けたまま、目蓋を閉じる。
誰に教えられたわけでもないのに、疲れたからと横になり、自然に目蓋を閉じる。
二人のヒトの子。鬼と人の混血児と複製・改造された人間。
そんな二人が自身らの共通した力を取り上げられ、“大炎上”という徒名の二人組として世に現れるまで、後、数時間。
287:黒鬼と銀奴12/10←
12/07/12 13:16:33.29 発信元:220.156.248.68
さて。
ひとりの相棒を得た黒鬼は、しかし、街に長くは留まらなかった。
数日経たない内にまた山をのぼり、里を抜け、林に入り、黒鬼の棲む森へと帰って行った。
酒を求めて街へ下りたはずなのに、その大きな手にはなあんにも持っちゃあいないみたいだった。
それなのに上機嫌で畦道獣道を歩いて行く黒鬼に、みんながきょとんとしてしまった。
それからまた数日経たない内に、街から山へ、山から里へやって来た者が居た。
見目麗しいその娘。櫛を通す髪は銀。肌は白雪。
瞳は深い深い湖のように透き通った色をしていた。
娘は見とれてしまっていた里の住人にこう聞いた。
「黒髪・隻眼の男を知らないか?」
里人は大層驚いた。
夜闇の鴉みたいに黒い髪に潰れた片目。
それは黒鬼の事としか思えなかった。
「お嬢さん、黒鬼に何か用かね」
「黒鬼?……そうか」
娘は妙に得心がいった様子で頷いた。
里人は黒鬼の棲む森を教えなかった。
美しいその娘が鬼に騙くらかされているに違いないと。
段々の田んぼやら畑やらの真ん中で困ってしまった娘を見兼ねた童が、
大人が止めるのも構わず駆け寄り聞いた。
「おねえさん、黒い鬼いさんに何か御用?」
「うむ。棲んでいる森に来いと言うから会いに来たのに、詳しく道を聞いていなかったものだから、道が分からないんだ」
288:黒鬼と銀奴13/10←
12/07/12 13:17:56.04 発信元:220.156.248.68
「おねえさんは、鬼いさんの仲間なの?」
「そうだな。相棒と言うのかな」
「そんなら、あっちの道を真っ直ぐ行けば、段々深い森に入って行けるから。
黒鬼が決まって通る道があるのさ。迷ったって平気さ。鬼いさんが見付けてくれて、村まで連れて行ってくれるもの」
「そうなのか」
「ああ。あの黒い鬼いさん、背格好はおっかないけど、優しいよ」
「うん」
娘は、童に教えられた通りに道を真っ直ぐ歩いていって、林の中に消えてしまった。
戦々恐々としていた里人達だったが、
けろりとした顔で戻って来た娘に仰天して、大勢で囲んで口々に問い掛けた。
「鬼は居たかね?」
「うむ」
「どこにも怪我は無いかね?」
「無い」
「鬼に何もされなかったかね?」
「ああ。二日酔いだと言うから、お使いに走らされたんだ。良かったら何か、二日酔いに効くものをくれないか」
娘はさらりと、こんな風に答えた。
黒鬼が二日酔いだなんて!!
里人達はますますびっくり仰天、ひっくり返って驚いた。
娘は村人どもに譲られた肝(かん)に効くという薬草などを
両手に山盛り抱えて、また森へ入り、そしてまた戻って来た。
ありがとう、と村人や童達にお礼を言って、里から出て行った。
それから、その美しい娘が里にやって来る事が、段々と珍しい事ではなくなっていった。
鬼の相棒を名乗る娘をはじめはみんな気味悪がったが、
竹を割ったような性格をした娘に、みんなが心を開いていった。
――酒好きの黒鬼の元へ足繁く通う銀髪緑眼の見目美しいその娘を、
里の者達はいつしか、“銀奴(ぎんやっこ)”と呼ぶようになったとか。
おわり
289:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/07/12 13:23:13.26 発信元:220.156.248.68
投下完了ー バイさるひっかかった上に10レスでおさまらなかった…
改行制限、文字数規制、侮り難し
290:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/07/12 21:46:55.01 発信元:60.239.18.181
>>275
乙ですー 昔話みたいなほのぼの空気がたまらねえ
お前ら現代の鬼と超科学の申し子だろうにw
291:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/07/12 21:54:35.92 発信元:206.223.150.45
>>275-289
ヒャッハー大炎上の人だぁーっ! 馴れ初め話乙です
ノリノリで書いてて字数膨らむのも愛だから仕方ないね
292:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/07/12 23:39:15.90 発信元:111.86.147.108
なんともほのぼのとした大炎上だ
GJです
293:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/07/23 19:12:15.30 発信元:206.223.150.45
保守~
今書いてるブツがまぁた長ったらしくなりそうだが、やっぱロダ使うべきですかねぇ
294:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/07/23 23:28:33.87 発信元:111.86.147.111
自分のやりやすい方で良いと思う
何レスも使うとサルになるかもしれんがロダなら1レスですむ
295:いやあ名無しってほんとにいいもんですね
12/08/08 23:30:59.20 発信元:210.153.84.34
ああ…大炎上以外のが書けた…!
5レスくらいいきます
※現代の忍者 ※ちょろっと甘味処六文銭 ほのぼのー?
※口調や設定に捏造が見られます ※師範は出ないよ! ※ロリコンちゃうわ!(説得力/zero)
296:あまみどころ1/5
12/08/08 23:32:44.90 発信元:210.153.84.34
あやかし・犬若丸一族縁の甘味処、稲穂庵。
みつまめ、あんみつ、しるこにぜんざい。
串団子、饅頭、練り切りに焼き菓子。
品書きに並ぶのは正に“かんみどころ”の名に相応しい品揃えだ。
それに加わる季節の菓子。
青い空、入道雲、鮮やかな色彩の花々。
噎せ返るような草木の香り、土の臭い、しょわしょわしょわしょわ、蝉の声。
夏、真っ盛り。
「んんん~っ、冷や冷やっとして、美味でござります~!」
元気よく上がる感激の声。
夏季限定メニューが並んだラミネート済みの品書きから少女が選んだのは、宇治金時のかき氷。
いわゆる氷あずきの抹茶シロップがけだ。
対して、少女の右隣、同じ床几に座した男の手にあるのは椀。
傍らに抹茶餡が乗った串団子。
色合い的に夏らしいと言えば夏らしい。
日射しを避ける傘は差されているがそれでも暑い。
見た目には涼やかだが冷たくはなさそうなそれら。
現代の忍者・小犬丸このはは度々左手側で折り目正しく姿勢良く正座して抹茶を啜る男に声を掛ける。
「影二殿は本当にそれだけでよいのでござりますか?」
「何度も言うが、我はこれでよい」
何度目の問答だろうか。
冷菓を楽しもうと誘ったのになあ、このはは少し残念がる。
この炎天下だ。
照りつける太陽だとか、上がってくる地熱だとかの中で食べるかき氷の美味しさと心地良さを共感したいと彼女は望む。
が、同じく現代の忍者である男・如月影二は要らぬと言う。
『忍者に好き嫌いなどない』と豪語しつつも実は甘いものが嫌いな彼にしてみれば、
こうして甘味処に付き合っている事自体が大変珍事なのであるが、頻繁に付き合ってもらっているこのははそうとは知らない。