12/02/05 19:55:06.27 i7bppm6B
「はは~ん。さてはクマが恋しくなって、みんな揃って寂しんボーイになっちゃったクマね? もぅ、クマったら!
何てクマは罪作りなクマなんだクマ―」
「ハイハイ、違うから」
霧越しに見えたそのシルエット同様、大まかな輪郭は逆さに置いた卵のような形をしており、
そこから短く太い四肢と丸く小さめな耳が生えている。真ん中より少し上の辺りで巨大なジッパーで
胴と頭部が区分けされており、胴は一昔前のノーマルスーツを連想させる赤い服―というよりは
模様か? ―に覆われている。一方で、頭部は紺色のフサフサとした毛の下に漫画のマスコットキャラか
何かのような大きな目と口、鼻が配置された薄い黄色の顔らしき部分があり、調子に乗った悪ガキのような表情を浮かべている。
その何とも言えない姿を、敢えて一言で表わすならば、
「……何だ? この変な着ぐるみは?」
というのが適切だろうか。
そういう訳で、その異様な姿を前にシンがそう呟くや、その変な着ぐるみが白と黒だけの単純な塗り分けの目を
尖らせて彼の方を振り向く。
「むむぅ! 誰だクマ!? このプリッチーなクマを捕まえて、変な着ぐるみだなんて言う不届きな輩は!」
思いの外頭に来たのだろうか。手首の無い両腕を振り回して、あらん限りに着ぐるみがその怒りを表現する。
「ぷ、ぷりちー……って、てか何なんだよお前?」
「クマはクマだクマ! 助けてやったのに失礼な奴クマねチミ!」
「? 何、熊?」
そう言われてみれば、まるい耳と尻の辺りから生える丸い尻尾らしき部分を持つその姿は、
確かに熊をモチーフにしているように見え無い事も無い。
そう考察するシンの態度が気に食わないのか、荒く鼻息を立ててブツブツと愚痴りながら
口らしき部分を3の字に尖らせる着ぐるみ―クマ。
「またくモー、最近の若いモンはー。―ところでキミは誰クマ?」
「……シン・アスカ」
かと思えば、あ、と今し方思い出したかのような声を上げるクマに、鈍痛がして来た額を
押さえながらシンは名乗った。
ハイテンション、というよりはマイペースといった方が正しいようだ。