12/01/15 00:25:27.67 ckBqiRPm0
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TLT関東支部『フォートレス・フリーダム』の深部、TLT関係者のほとんどが踏み込むことが出来ないような区画の一室にて、吉良沢優ことイラストレーターが一人で新システムのチェックを行っていた。
内容は新たなナイトレイダーの戦闘機―クロムチェスターの新しい飛行形態―『ストライクフォーメーション』であった。
目的は、最近出現した銀色の巨人―コード名『ウルトラマン』の発生させる位相転換フィールド、メタフィールド内での戦闘活動である。
イラストレーターはスペックやメタフィールド内での活動時間など、技術部から送られてきたその他のデータに目を通して、この形態の有用性を確認した。すぐさま実戦投入への準備を進めるべきという旨の報告書を作成し、管理官へ電送した。
イラレ「ふう…」
息を吐きながら椅子にもたれかかる。これでスクランブルさえなければ、今日のノルマはこれで終わりとなる。普通ならすぐに自室に戻って眠るのだが、少しだけ調べたいことがあった。
イラストレーターは、本来使う戦闘用の高機能PCではなく、一般隊員たちが使う汎用PCを起動させた。当たり前だが、私用で戦闘用を使うと管理官何を言われるか分からないし、勿論そこまで馬鹿でもない。
イラレ「…」カタカタ
TLTの一部のメンバーを除いて、連絡や報告はPCなどを通じて行われている。そんな彼にとって、TLTのデータバンクは馴染み深い庭のようなものである。
そのため、彼は何の苦もなく目的の情報―事件の目撃者リストへとたどり着き、その中のうちから目的の人物の情報をピックアップすることが出来た。顔写真とともに情報が画面に映し出される
イラレ「巴マミ…見滝原中学3年、先日行われたペドレオンせん滅作戦を同じ中学の後輩2人と目撃、MPによる記憶処理は完了。監視の必要なしと判断。」
情報だけを見る限り、なんの変哲もない女子中学生のように思える。本来はだれも見ることなく、そのほかの情報の洪水の中で沈んでいく程度のものであろう。
だが、西条凪は、バグバズン戦後、このデータを閲覧していた。別にデータをみることは何の違法性もないのだが、感情がないのではないかと思われるほどの実直さを持つ凪副隊長がなんの理由もなくひとりのデータを閲覧するとも思えないのだ。
そしてその時期はバグバズン戦後…ある仮説が既に浮かんでいた。すなわち、彼女がバグバズンのいる現場に現れたということではないか、と。しかし、記憶処理は行われているという報告もある。
偶然だろうか?…いや、そうではないだろう。もしそうなら一般人として報告が来るはずである。では一体…
もう一つの仮説へたどり着く。もし、彼女がビーストを感知する力…あるいは戦闘能力を有していたら?
イラレ「ウルトラマンとも、ビーストとも違う、全く別の力がある…?」
本当だろうか?にわかには信じがたい。だが、前例がないわけではない。思えば、そんな事例に心当たりがある。
記憶処理を何度も受けているにもかかわらず、ビースト攻撃の現場に何度も立ち会い、情報を探していた少女がいたことを思い出した。彼女はMPから一級要注意人物として扱われていたはず。そう、彼女のコードネームは…
イラレ「『赤い幽霊』…君は、この小さな国の中で、まだ生きているのかい?」
数年前のある時を境に姿を消したあの少女が、また活動を再開したのだろうか…誰かの指示なのか?では何の為に?
一般人では知りえない情報すら持つ彼でも、その理由を知ることはできなかった…
作戦立案などで完璧な手腕を持つと思われている彼も、ミスを犯すことがある。彼は未知の力に気を取られて気付かなかった。
彼女のデータが、TLT上層部の人間しか知らない超国家機密の中にもあるということを…