12/10/04 14:41:56.04 IGyInzk7
2008年9月4日、北関東カネシ製造プラント。
警報が鳴り響く中、技術者達が机上の図面を睨んでいた。
「ここです。この油圧ポンプの崩落によって、冷却水供給が完全に停止している。」山田技師補が図面を指差す。
「このままカネシ濃度が上昇し、臨界を迎えれば・・・」室長が山田を見る。
「炉心は爆散。二郎換算で約8億杯分のカネシがばら撒かれ、関東は千年の荒野となるでしょう。」
沈黙。油圧ポンプの故障により制御棒も稼動しない。絶望的状況。
「…臨界を止める方法が、ひとつだけ…『乳化』です。
故障した油圧ポンプは、カネシ槽の直上にあります。これを利用する。ポンプの油を流し込みカネシを乳化します。」
おお…と、感嘆の声が上がるも、山田の表情は硬い。
「…問題がひとつ。そのためには手動でポンプのバルブを回す必要があります。
ポンプは炉心の直上…高濃度のロット線の中での作業になる。」
再び沈黙。山田が挙手をする。
「私が行きましょう。ポンプの構造は、私が一番詳しい。他に何人か私に命を預けて欲しい。」
こうして決死隊が結成された。
カネシシャッターの前で山田技師補、鈴木、田中、エンリケが待機する。
「全員ロットカウンタは持ったな。1.8ロットが被爆リミットだ。ポンプまで走りバルブを回し
カウンタが1.0を指したら走って戻れ。無理はするな。では、私から行く!」
山田が駆け出す。足場を渡りバルブに取り付く。1回転半回したところで、カウンタが1.0を指す。
想像以上に濃縮の進行が早い!
続き佐藤、田中、エンリケが挑むが作業は遅々として進まない。
再び山田が走り、バルブに取り付く。その時、足下のカネシ槽がまばゆい輝きを放つ。
―臨界だ。
カウンタの値が急上昇。1.5、3.0、6.0、12.0!しかし山田は手を止めない。
「皆、これは私の遺言と思って聞いてくれ。私はバルブを回しきる。生き残った者はこの事実を公表して欲しい。
カネシがどれほど危険な物かを世間に訴えてくれ!」山田がインカムで叫ぶ。
どっ、と油圧ポンプからカネシ槽に大量の油が注ぎ込まれる。乳化が始まり、カネシ濃度は徐々に減衰していった。
モニター越しに前のめりになって動かない山田に向い、皆が涙を流しつつ軽く会釈した。
しかし、この史上最悪のカネシ臨界事故はついに世間に公表される事は無かった。