12/07/14 22:22:08.26 3ZHJvLer
長くなったので分割>>330の続き
中世男女の身体的情愛を絵巻物などから分析した保立道久氏には、
三途の川を渡る男女の光景についての、つぎのような興味深い指摘がある。
十一世紀末ころ成立したものといわれている偽経『地蔵菩薩発進因縁十王経』には、
三途の川に奪衣婆と懸衣翁の二人の鬼がおり、
「初開の男を尋ねてその女人を負わせ、牛頭、鉄棒をもて二人の肩を挟み、疼き瀬を負い渡す」とあり、
女を追い立てて三途の川を渡すときは、その女の体を初めて開いた男を尋ねて、その男に女を負わせるという。
『道綱母集』にも、後深草院二条の『問はずがたり』にも同様な表現がある。これらを参照して絵巻物を繙くと、
『北野天神縁起』に描かれている男を女が背負って逃げる例など、
まさに庶民的な身体的情愛を表現する絵と解釈できるとされている(『中世の愛と従属』平凡社)。